SCP-2719-JP
評価: +85+x
blank.png
インコ

SCP-2719-JP実体の一例

アイテム番号: SCP-2719-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-2719-JPの自然発生を完全に妨害することは事実上不可能であるため、SCP-2719-JPの情報拡散を防ぐことが特別収容プロトコルの要点とされています。出現期間中にSCP-2719-JPが自然発生した場合、機動部隊き-20("羽振りの良い鷹")が出動し、SCP-2719-JP-Aと関連人物の特定および・記憶処理・カバーストーリーの流布、生成物とSCP-2719-JP-Bの回収を行います。基本的に、通常隠蔽マニュアルに沿って情報操作を行いますが、緊急時は機動部隊長の判断で迅速な対応を取る事が許可されています。日本国内で大規模な災害等が発生した場合、大規模な記憶処理チームと隠蔽チームが増員され、対応に当たります。

SCP-2719-JPに関する情報はあらゆる発行物およびインターネット上の情報媒体において監視対象となっています。特にSCP-2719-JPに関するインターネット上の情報は、財団のWebクローラ“Macaw”を用いて発見・即時削除されます。大規模な拡散を助長する情報だった場合は拡散者の身元を特定し、機動部隊員を派遣し記憶処理を行ってください。また、財団が保有している銀行資金監視ネットワークと連携し、SCP-2719-JPの出現による資金の不自然な流れが確認された場合は、機動部隊員に連絡し隠蔽処理を行ってください。

説明: SCP-2719-JPは、特定の条件下で日本国内に出現する鳥類です。SCP-2719-JPを認識した人物が鳥類の市場における価値を理解しているかどうかに関わらず、日本円で約100万円~1000万円の価値があると認識されます。また、未知の手段で発声することで日本語を用いた意思の疎通が可能です。

SCP-2719-JPは複数の実体が同時多発的に日本国内で何らかの危機に陥っている人物(以下、SCP-2719-JP-Aと呼称)の下に出現します。1SCP-2719-JP-Aと日本語を用いたコミュニケーションを取り状況を把握すると、自らの持つ価値を減少させると同時に同価値の物品を出現させ、SCP-2719-JP-Aに贈与します。贈与が完了すると、SCP-2719-JPはその場から消失します。贈与される物品は非異常性であり、SCP-2719-JP消失後も残存します。

SCP-2719-JP-Aは、自らが所有する任意の金額の資産を、等価値を内包する1片の羽毛(以下、SCP-2719-JP-Bと呼称)に置き換える事が可能です。この異常性をSCP-2719-JP-Aは無意識のうちに自覚しており、ほとんどの実例において異常性を使用します。

SCP-2719-JP-Bは、SCP-2719-JPと同様に一定の価値があると認識されます。そして、SCP-2719-JP-AがSCP-2719-JP-Bを身に付けた状態で、自身もしくは周囲の人物が何らかの危機に陥った場合、SCP-2719-JP-Bが内包している価値を減少させ、同価値の物品を瞬時に出現させる事が可能です。2

SCP-2719-JPの発生が最初に確認されたのは、第2次世界大戦後の昭和22年です。戦後復興の際に、多くの人命を救助していた事が判明しており、1万回以上の出現が確認されています。出現時期などから、市民主体の民間運動「国民たすけあい運動」から発展した「赤い羽根共同募金」等のイメージから出現した、形而上に存在する知性を持つ「動物の概念」が具現化した「Imaginanimal」の一種であると結論付けられています。現在まで、出現範囲と規模は拡大し続けています。出現を抑制する試みは全て失敗しているため、期間中は広域に大規模な記憶処理チームと隠蔽チームが組織されます。

以下は、SCP-2719-JPの出現時の記録の一部です。

以下はSCP-2719-JPとの間で行われたインタビュー記録です。

インタビュアー: ██研究員

対象: SCP-2719-JP。意図的に██研究員を危機的状況にし、出現を誘導した。

付記: 実体の声質は██研究員の父親に酷似していた。


[記録開始]

SCP-2719-JP: 大丈夫か![██研究員の本名]くん!今、助けるぞ!

██研究員: お待ちください。確かに私は飲まず食わずで5日間を過ごし、衰弱しています。しかし、これは全てあなた達と話をするためです。私を助けると思って、いくつか質問に答えてもらえませんか?

SCP-2719-JP: なんと……!そうだったのか。随分と仕事熱心なのだな。いいだろう、そういう事なら、何でも聞いてくれ。後は、早くなにか食べなさい。心配しなくても、話が終わるまで消えないようにする。

[██研究員の近くに、株式会社ローソンの商品・からあげクン、大塚製薬株式会社の商品・ポカリスエット250mlが出現する。約400円相当。]

██研究員: 助かります。まずは、あなた達は何故人助けをするのでしょうか。

SCP-2719-JP: 勇気を預けられたから、だな。

██研究員: 勇気ですか。…具体的には、どういう事でしょうか。

SCP-2719-JP: 人を助けるのは勇気が必要な行動だ。募金も、人を助ける行為に違いない。直接目の前の人を助けるか、間接的に誰かを助けるかの違いだけだ。我々が、羽共同募金から生まれた存在であることは、知っているだろう。つまり、私達に預けられたのはお金だけではない。勇気も預けられたのだ。その勇気を、困っている人々に分け与える事が出来たならどれだけ素晴らしいことだろう。

██研究員: なるほど。しかし、すこし的外れな方法で助けることもあるように感じます。その所は、どのようにお考えでしょうか。

SCP-2719-JP: ここは、考え方の違いだな。人を助けるというのは、ただその場をしのげれば良いという物ではない。次に同じような状況に陥った時に、1人で何とか出来るように自立の支援をしたいのだ。

██研究員: 自立ですか。しかし、少し前の天井から漏水した高齢者は、その自立という言葉は当てはまらないのでは?

SCP-2719-JP: そうとも限らない。自立とは、周りの力を上手に借りる術を知る事でもある。どこまで自分を高めても、どうしようもない状況には直面する。それを助け合いで、乗り越えれるようにしてほしいのだ。

██研究員: 確かに、筋は通っていますね。

SCP-2719-JP: 人生は何が起こるか分からない。思わぬ事態に自分一人の足では立てなくなってしまう事もあるだろう。私達は立てるようにするための応援をするだけだ。そして君には、いずれは羽を身に着け、人を助ける事が出来るほどに成長してほしい。たった一度の人生、気持ちよく羽ばたいてゆけ!

[SCP-2719-JPが消失したため、記録終了]

補遺1: 2011年の7月以降、SCP-2719-JPの月間出現数及び使用された金額の大幅な減少が確認されました。以下は、再度行われたSCP-2719-JPとの間で行われたインタビュー記録です。

インタビュアー: ██研究員

対象: SCP-2719-JP。前回と同様に、意図的に██研究員を危機的状況にし、出現を誘導した。

付記: 前回と同様に、実体の声質は██研究員の父親に酷似していた。また、SCP-2719-JPの羽毛は前回と比べて明度が低い赤色になっており、泥などの汚れが付着していた。


[記録開始]

SCP-2719-JP: 大丈夫か!って、[██研究員の本名]くんじゃないか。私は逃げないから、同僚の方々、彼に飲み物と食料を渡してほしい。

[██研究員に飲料水とブロックタイプの栄養食品が渡され、██研究員がいくらか摂取する。]

SCP-2719-JP: で、今日は何を聞きたいんだ?

██研究員: 単刀直入にお聞きします。最近、あなた達の出現頻度が落ちているのは何故ですか。

SCP-2719-JP: 前々から資金をやりくりしていたが、今回の震災で資金繰りが崩れてしまってね。君みたいに命の危機とかに晒されているとかでなければ、援助には行かないようにしている。

██研究員: 今回の地震は、前代未聞の災害でしたもんね。

SCP-2719-JP: あぁ、だがこの規模の災害が起こりえることは、ただでさえ日本は災害が起こりやすいんだし、予想できたはずだ。毎年、いくらかの貯蓄を行ってさえいれば、今、困っている人々を助けることができたのに!

██研究員: しかし、貯蓄は難しいのではないのですか。あなた達が今まで使ってきた金額の中に、浪費といえるようなものは少なかったように思えますが。

SCP-2719-JP: 残念ながら、自立を支援するというのに、金がかかりすぎたのかもしれないと最近は考え始めている。資金的な面だけでなく、贈与した高額な物が売られるだけで何も解決しないというような、精神的に辛いこともあった。一時的な支援に留めることが現実的な線なのだろうな。

[SCP-2719-JPが消失したため、記録終了]

補遺2: 2011年8月13日、岩手県にボランティアで復興支援をしに来ていた██氏の下にSCP-2719-JPが出現しました。以下は、██氏に対して行われたインタビュー記録です。

インタビュアー: ██研究員

対象: ██氏

付記: ██研究員は自身を警察官であると自称してインタビューを行っている。


[記録開始]

██研究員: あなたの身に何が起きたのかを説明してください。

██氏: はい。私は震災後、そのままにしてあったお宅を掃除するボランティアをしていたのですが、作業に没入するあまり、水分補給を怠り、熱中症で動けなくなってしまいました。

██研究員: なるほど。その後、大事をとって病院に搬送されたという事ですね。ただ、搬送された時、赤い鳥を見たと言っていたそうですね。

██氏: はい。不思議な話なのですが、気を失いかけていた時、どこからともなく母の声で話す赤い鳥が現れ、ポカリスエットや冷たい氷の入った袋を使って、応急処置をしてくれたんです。

██研究員: 赤い鳥…ですか。

██氏: ええ、赤い鳥は助けが現れるまで、私を励まし続けてくれました。そのうちに、朦朧とする意識の中、私は10年前の事を思い出したんです。

██研究員: 10年前?

██氏: はい、自分がまだ小学生の頃、いじめを苦に自殺しようとした事があるんです。その時も、確かあの赤い鳥が救ってくれたんです。それも、ただ自殺を止めてくれただけじゃなく、大切な事を教えてくれたんです。障害があったら、乗り越えればいい。勉強して見返してやればいい、体を鍛えていじめられないようにすればいい、自分だけが、駄目だと思い込むことは無いって、言ってくれたんです。

██研究員: それは…不思議な話ですね。

██氏: 本当にそう思います。しかも、そのための勉強道具やトレーニングセット、世界の広さを知るための旅行券なんかもくれたんです。実家は貧乏だったので、本当に信じられない経験でした。その事があって、自分は心身ともに成長できて、今こうしてボランティアに来れるぐらいになれたんですが。あの助けられた体験が、今別の誰かを助けたいという気持ちに繋がってるんだと思うんです。

…この事を赤い鳥に伝えたんです。ありがとうって。あなたのおかげで、今の私がありますって。そうしたら、鳥は泣きながら、"こちらこそありがとう"って言ったんです。

██研究員: その後は、何かありましたか?

██氏: 赤い鳥は、"勇気を預かり、それを伝えるという使命を思い出した"と言っていました。赤い羽根が更に鮮やかな赤色になっているのを見た瞬間、異常に気づいた他のスタッフが助けに来て、もう一度見ると、鳥は消えていました。

[記録終了]

付記: インタビュー終了後、██氏がSCP-2719-JPの対象となっていたことが確認されました(出現記録No.860 を参照して下さい)。しかし、██氏はCクラス記憶処理を確実に受けていたのに関わらず、記憶を思い出せた理由は判明していません。

補遺3: 2011年9月4日、紀伊半島は台風12号の被害を大きく受けており、SCP-2719-JPも多数出現しましたが、その個体群の羽毛は発光していることが発見されました。また、多くのSCP-2719-JP-Aが発光するSCP-2719-JP-Bを作成し、SCP-2719-JP-Bを空中から飛ばしていることが監視カメラの映像から判明しました。SCP-2719-JP-Aはインタビューによるとテレビや新聞で台風のことを知ってから、無意識下においてその行動をとったことが分かっています。多くの目撃者の証言により、SCP-2719-JP-Bはその後未知の原理で紀伊半島に向かって高速で飛行し、被災地のSCP-2719-JPの羽毛の一部に組み込まれたことが判明しています。

補遺4: 2011年9月4日以降、SCP-2719-JPの月間出現数が増加しています。また、今後も災害時には補遺2の事象と同様の現象が起きる可能性が考えられるため、警戒を行ってください。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。