これらのログは文書化されており、所々にSCP-2758の過程そのもの――既に存在しない――に関して言及する場合が有ります。
以下に続くのは、SCP-2758の起動後にD-8239の録音装備が記録した会話の転写です。SCP-2758過程の最初の3分33秒はどの反復に於いても同様なため、このログは文書化された全てのSCP-2758-A出現以前におけるSCP-2758過程の正確な転写となります。
ログ開始: 12:01:25
D-8239が収容室G14に入るよう指示される。
12:01:30 | 未知の人物1: 良し。できるぞ。やろう。
12:01:33 | 未知の人物2: USBは?
12:01:35 | 未知の人物3: ポケットの中だ。
12:01:38 | 未知の人物2: うん。やるときは手で握っとかないと。
12:01:40 | D-8239: おーい、聞こえるか?
12:01:44 | 監督者: そうしろとは言ってないですが。
12:01:45 | 未知の人物3: おう。チョークは有るか?
12:01:49 | 未知の人物1: ああ。始めるか。[不明瞭]はもう片方から始めろ。同時にやる。
12:01:51 | D-8239: そっちは何が起きるか知ってるわけだな、俺とは違って。
チョークがコンクリートを引っ掻く音が聞こえる。
12:02:03 | 未知の人物1: 違う、違う、気をつけろ。それはまだ描くな。
12:02:10 | 未知の人物3: この間に喋っても大丈夫か?
12:02:12 | 未知の人物1: 駄目だ。前を見て何も考えるな。
12:02:17 | 未知の人物3: ちぇっ、分かったよ。
33秒間、会話は無い。
12:02:50 | 未知の人物1: (小さい声、未知の人物3からいくらから離れているようである。) これは奇跡論的シンボル・ラムダ、[不明瞭]が第四元素を変換させる。そっちが描いたのはオミクロン-8(?)、そして[不明瞭]が最初の二つを導いてくれる。
12:04:00 | 未知の人物2: で、後ろの二つが肉体と思考を運び、前の二つが精神と霊魂を運ぶ。合ってる?
12:04:09 | 未知の人物1: いや、後ろが肉体と精神、前が思考と霊魂だ。彼をX字に交差してるんだ、覚えたか?
12:04:16 | 未知の人物2: あー、うん。
12:04:18 | 未知の人物1: ちゃんとそう描いたな?
12:04:23 | 未知の人物2: もちろん。
12:04:26 | 未知の人物1: これ以上見ることができないからな、つまり――
12:04:28 | 未知の人物2: 分かってる。間違ってないよ。
12:04:30 | 未知の人物1: 了解。
12:04:32 | 未知の人物2: 本当にこうして良かったと思う? たった今トリップしてきた(?)。
12:04:36 | 未知の人物1: 落ち着け。心配すんな。適切な方法で現実を見るための手助けだ。何をしてるか分かるくらいには、俺たち、読み込んだろ。
23秒後、SCP-2758-Aが収容室の中央に出現する。それは混乱しており、 D-8239によろよろと向かうが、直後崩れ落ちて消失した。更なる異常現象は確認されない。
ログ終了: 12:05:05
18/07/22に、SCP-2758-AのSCP-2758過程からの隔離に初めて成功しました。D-8239はSCP-2758の出現後即座に収容室を退出するように指示され、ヒューム・レベルの変動が止むとともにDr. ウィッカーフォードが収容室に入りました。SCP-2758-Aはそれまでの試験と異なり、急速に消失しませんでした。このため、現在の研究員たちは、SCP-2758-Aの存在の安定性が局所現実の不安定化が発生する前後での観測に直接左右されると考えています。
ログ開始: 14:13:00
研究員ウィッカーフォードが収容室G14に入る。ヒューム・レベルは基底状態。
14:13:03 | Dr. ウィッカーフォード: こんにちは、SCP-2758-A。私はDr.ウィッカーフォードと言います。英語で良いですよね?
SCP-2758-Aは驚きを表している。
14:13:10 | SCP-2758-A: ああ、えーと、服は有りますか?
14:13:14 | Dr. ウィッカーフォード: ええ、もちろん。
研究員ウィッカーフォードはSCP-2758-Aに標準人間型アノマリー用衣服を手渡し、机に着席してそれが着衣するのを待つ。
14:13:38 | SCP-2758-A: うん、ありがとうございます。本当はさっきまで服を着てたはずなんですが。部屋も少し変わってるな。
14:13:45 | Dr. ウィッカーフォード: ここに現れた方法について情報提供できますか?
14:13:49 | SCP-2758-A: 目的が有ってここに来たんです。成功するとは思ってなかったんだけど、くそ。
14:13:55 | Dr. ウィッカーフォード: 『ここ』とは?
14:13:58 | SCP-2758-A: ああ、つまり――あなたは財団職員ですよね?
14:14:01 | Dr. ウィッカーフォード: ええ。意図的に財団の活動を探しに来たと?
SCP-2758-Aは数秒沈黙する。
14:14:22 | SCP-2758-A: すみません、今は本当に後悔してます。
14:14:28 | Dr. ウィッカーフォード: すぐに質問に答える必要は無いですよ。
14:14:32 | SCP-2758-A: ええ、分かりました。
SCP-2758-Aは倒れ込み、息を喘ぐ。
14:14:41 | SCP-2758-A: 気持ち悪い。くそ、大丈夫です。
14:14:44 | Dr. ウィッカーフォード: 焦らないで。それより医療班――
14:14:47 | SCP-2758-A: いえ、いいえ、俺はただ――興奮しているだけです。あれをやってるときは俺たち皆ハイだった。うまくいくなんて思わなかった。それとも? めちゃトリップしてるだけなのか今? 俺たちがうまくやったことは分かってるよ、誤解しないでくれ、でも――
SCP-2758-Aは壁にもたれ掛かり、揺れ動く。
14:15:00 | Dr. ウィッカーフォード: 分かりました、いずれにしろ、治療を優先して話は後にしましょう。あまり気分が優れないようですので。
研究員ウィッカーフォードはSCP-2758-Aを連れ出すため警備員二人を呼ぶ。SCP-2758-Aは同意したが、収容室を退出すると同時に消失する。頭部が収容室G14と外部の通路のそれぞれの空間の境界を通過する間は、身体の断面を通路側の職員・監視カメラが捉えており、その後収容室の外に崩れ落ちて衣服を除いて完全に消失した。
ログ終了: 14:15:30
18/07/22に、SCP-2758-AのSCP-2758過程からの隔離に再度成功しました。
ログ開始: 16:25:00
D-8239は収容室G14を退出する前にインタビュー・机の上に衣服を置いた。研究員ウィッカーフォードはSCP-2758に着衣のため、一分後入室した。ヒューム・レベルは基底。
16:26:03 | Dr. ウィッカーフォード: こんにちは、SCP-2758-A。
16:26:06 | SCP-2758-A: やあ。
16:26:08 | Dr. ウィッカーフォード: 以前の会話の記憶は有りますか?
16:26:12 | SCP-2758-A: えーっと、無いと思います
研究員ウィッカーフォードは机に着席する。
16:26:15 | Dr. ウィッカーフォード: 分かりました。では、他の方法を試してみましょうか。前回のインタビュー分析が正しいなら、あなたは意図的にここに来たようですね。あなたの出現は異常な過程の最終結果ですがこの収容室にのみ作用するようです。誰かが入室すると、おそらくあなたとその友人がある種の奇跡論的儀式の準備をしているのを耳にする。誰かが出現したあなたを数秒以上見続けると、あなたは消失する。あなたがこの収容室を出ると、あなたは消失する。これらの挙動全てがあなた方の意図ですか?
16:26:38 | SCP-2758-A: あー、違います。全部がそういうわけじゃない。
16:26:41 | Dr. ウィッカーフォード: あなたはSCP財団の存在を気づいており、確実に我々に接触しようとした、そうですね?
16:26:47 | SCP-2758-A: はい。誰も成功するとは思ってなかったけど。本音を言えば、今でもトリップしてるだけなんじゃないかと思います。
16:26:53 | Dr. ウィッカーフォード: 幻覚剤を使ったんですか? 前回もそう言っていましたが。
16:26:57 | SCP-2758-A: このふざけた儀式を始める前にそれぞれキメたんです。ああいうもんを使った方が自然かと思って。
16:27:02 | Dr. ウィッカーフォード: 分かりました。しかし、ここに現れた目的は何なんですか?
16:27:04 | SCP-2758-A: ああ、ええ。うー、空想科学部門の人とは親しいですか?
16:27:11 | Dr. ウィッカーフォード: そういうものは知らないですね。
16:27:13 | SCP-2758-A: 待ってください、クリアランス・レベルはいくつですか?
16:27:16 | Dr. ウィッカーフォード: 4です。何の関係が?
16:27:18 | SCP-2758-A: じゃあ、適切な臨時クリアランスを持ってないのかな。気にしないでください。説明の仕方が間違っていたのかも。でも俺の世界じゃ、SCP財団は単なる虚構小説の企画だったんだ。
16:27:24 | Dr. ウィッカーフォード: ふむ、ええ、一般的には、我々はあなたたちの世界に気づいています。超宇宙部門にとっては、他の世界と大差ない問題の一つです。
16:27:31 | SCP-2758-A: マジか? でも、自分たちが虚構だということについてはどう扱っているんですか?
16:27:38 | Dr. ウィッカーフォード: 我々は虚構ではありません。万一我々が――我々に限らない話ですが――、異なる現実においてどう描写されているかで自己を定義するなら、我々は『存在』しないでしょう。つまり、『現実』はこの現実だと定義されています。あなたがこの収容室の外で存在できないことを考えるなら、あなたの方が私たちの状況よりもさらに非現実的だと説くことも可能でしょう。
SCP-2758-Aは苦悩を示す。
16:27:57 | SCP-2758-A: そうですね。
16:27:59 | Dr. ウィッカーフォード: ここに来た方法を詳しく説明できますか?
16:28:03 | SCP-2758-A: えー、すみません。俺たちが描いたものは現実的な科学分析や文書化をするには込み入り過ぎているんで、俺たちは――俺とジミーとジェーンのことだけど、俺の友達二人が一緒にやったんです――奇跡論的シンボルが俺たちの世界では作用できないはずがないって考え始めたんだ。つまり、誰もが試したことが有るでしょう? つっても、真剣にやってたわけじゃない、俺はそう思ってました。
16:28:28 | Dr. ウィッカーフォード: それで?
16:28:30 | SCP-2758-A: シンボルの創造や意味が重要だとは思うようになったけど、実際のやり方についてはテキトーでした。ジミーの個人的な哲学理論を基にしたんです。彼の意見だと、存在には四つの元素、即ち肉体・思考・精神・霊魂が関わっているんです。肉体は物理的な自己と五感と知覚。思考は人格で、肉体の存在とその使い方を理解する。精神は第六感で、生と死のエネルギーを感じ取り、行動の善悪を判別する。霊魂は自分そのもの、つまり肉体に宿る知性で、肉体を使って他の肉体に宿る霊魂と意思疎通をする。
16:28:59 | Dr. ウィッカーフォード: 興味深い考えです。この哲学にはあなたも同意しているんですか?
16:29:04 | SCP-2758-A: いえ、それほどは。理屈立てられてはいると思うけど、それで存在の説明が全部できているとは信じられなかったです。
16:29:10 | Dr. ウィッカーフォード: 分かりました。それで、ここに出現することであなたの目標は達成できましたか?
SCP-2758-Aは収容室を見渡す。
16:29:19 | SCP-2758-A: 俺のSCP文書は読めますか? 俺がこの部屋の外に出られないなら別に良いですよね?
16:29:25 | Dr. ウィッカーフォード: 読むのに問題は無いでしょう。問題は既に完了していて、あなたは、その身体的な制限状況を除けば物理的に非異常ですから。出現以前の直近の記憶は有りますか?
16:29:37 | SCP-2758-A: ジミーとジェーンがチョークで最後のシンボルを描いてたところかな。それで肌が熱くなり始めたから目を閉じて歯を食いしばったんです。そこからマジで何か起きるかと思い始めました。その直後にはもうここに居ました。その狭間の時間は一瞬にも長くも感じました。まるで気づかずに眠りについて一瞬で朝になっていたときみたいな。夢を見たかどうかも分からないで、時間が失われたと感じるだけで。
16:30:02 | Dr. ウィッカーフォード: 良いでしょう。情報提供に感謝します、SCP-2758-A。近いうちに他の職員がインタビューを行う予定になっています。
研究員ウィッカーフォードはクリップボードを閉じて立ち上がる。
16:30:05 | SCP-2758-A: 俺にもう一度出て欲しくはないんですか? この部屋の外も歩けないんじゃ、収容難度なんて無いでしょう。俺はただ――
16:30:10 | Dr. ウィッカーフォード: お望みなら、我々はあなたをここに留めておきます。どちらの選択肢も妥当な収容プロトコルです。
16:30:15 | SCP-2758-A: ありがとうございます。あの狭間の時間は怖い。ありえない程長くてなのに何も覚えてないんです。でも、それが有って、それを感じたことだけは分かるから恐ろしい。何年にも感じました。うまく言えませんけど。
16:30:24 | Dr. ウィッカーフォード: 記録しました。この収容室を生活可能にする予定ですが、他に質問は有りますか? できることは有りますか?
16:31:00 | SCP-2758-A: 無いと思います。ありがとうございます、それとすみませんでした。
16:31:04 | Dr. ウィッカーフォード: 謝罪は不要です。
ログ終了: 16:31:07