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活性化状態のSCP-286-JP |
アイテム番号: SCP-286-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-286-JPの出現区域内を常時財団の静止衛星、ネットワーク監視システム、東京都内の各種行政機関との連携によって監視します。SCP-286-JPの出現が確認された場合、機動部隊-ひ6”夢を継ぐ者”がヘリによって5分以内に現場に急行し、オブジェクトを無力化する為に適切な処置を行います。これには紫外線照射による一時的な破壊が含まれます。繁華街や駅前通等の一部地区においては、設置された大型UV照射装置が起動されます。既に被害者や目撃者が出ている場合、全員を保護しクラスA記憶処理を施した上で解放します。外傷を負っている場合は財団の医療施設にて治療します。その後、東京都との連携によりカバーストーリーの流布とマスメディアの封じ込めが行われます。
実験のためにDクラスを送り込む場合は、事前にセキュリティクリアランスレベル4以上の職員2名の許可を取り、機動部隊にDクラスを同行させて下さい。尚、既に民間人の被害が出ている場合、実験は無条件で中止されます。以前の収容手順は添付資料を参照してください。
現在、SCP-286-JPの封じ込めは不可能です。SCP-286-JPの出現区域内を常時財団の静止衛星、ネットワーク監視システム、東京都内の各種行政機関との連携によって監視し、SCP-286-JPの出現が確認された場合、機動部隊-ひ6”ドリームバスター”が現場周囲100㎡を封鎖、SCP-286-JPの効果範囲から出来る限り民間人を遠ざけます。SCP-286-JPの効果範囲が拡大する場合、機動部隊は徐々にSCP-286-JPから距離を取り、封鎖の範囲を拡大して下さい。SCP-286-JPの消失後、東京都との連携により目撃者の記憶処理とカバーストーリーの流布、マスメディアの封じ込めが行われます。翌朝発見された犠牲者の遺体は、千葉県沖に配置したSCPSによって速やかに回収し、研究のためサイト-815█へ輸送します。
説明: SCP-286-JPは、異常な効果を持ったミラーボール状の実体です。
SCP-286-JPは東京都██区内の█km2で規定される区域の屋外にランダムで出現します。出現場所に法則性は見られませんが、高度は地上から3m、出現時間は午後21:00~23:00の間であり、週末から日曜日にかけての出現が多く、頻度は1週間~2ヶ月の間隔となっています。SCP-286-JPは外見上、通常のミラーボールと変わりませんが、未知の手段で空中に浮揚しているように見え、また紫外線照射以外のどんな方法でも破壊することは出来ません。
SCP-286-JPは20██の1月██日に突如として██区に出現しました。その実体を探ろうとするあらゆる努力にもかかわらず、起源及び正体は全くの不明です。
SCP-286-JPが出現すると、半径30m以内の人間はSCP-286-JPに対し徐々に引きつけられます。人間がSCP-286-JPの半径10m以内(以下SCP-286-JP-A)に入った場合、段階毎に様々な幻覚や超常的体験を感受し、重度の精神錯乱を呈して最終的に死亡します。SCP-286-JP-Aから被害者が自力で脱出する方法は存在しません。SCP-286-JP-A内に50人以上が集まるか、出現から1時間が経過することでSCP-286-JPは外見上消滅し、第二段階へと移行します。出現中にSCP-286-JP-A内の人数が50人以下である場合、SCP-286-JPは徐々に人間を引きつける効果範囲を拡大します。現在観測されている最大効果範囲は半径300m程度です。
段階 |
引き起こされる現象 |
補足 |
第一段階 |
SCP-286-JPの効果範囲内に入った人間は、SCP-286-JP-Aに入ることで「自分の夢を叶えることができる」という確信を抱き、SCP-286-JPに近づかなければならないという観念を得ます。この効果は時間経過により徐々に強くなっていきます。SCP-286-JP-Aに入ると、曝露者は夢を叶えた自分の幻覚を見ます。幻覚は第一段階の終了まで続きますが、外部から見た場合、曝露者はSCP-286-JPの発する光の下で踊っているように見えます。 |
出現時、SCP-286-JPはナイトクラブ風の極彩色の発光をします。発光のメカニズムは不明です |
第二段階 |
第一段階が終了すると、SCP-286-JPと曝露者は基底現実世界から消失し、当初地点より東に向かってゆっくりと上昇を始めます。この時、曝露者は一時的に正気に戻りますが、あらゆる脱出の試みは失敗に終わります。またこの時点より、曝露者達は一時的な不死性を獲得します。高度が約1██mに達するとSCP-286-JPは上昇を停止し、再び曝露者へ幻覚を見せながら東に向かってゆっくりと移動しますが、幻覚の内容はより即物的なものとなり、直接的な暴力や性行為へと直結します。またこの時、ガス状の人型実体(以下SCP-286-JP-B)がSCP-286-JPの周囲に出現し、人間に似た声を発します。 |
SCP-286-JP-A内からは現実世界の外の景色が見え、徐々に高度が上昇していく様がはっきりと解ります。尚、外部へのあらゆる通信はこの段階から不可能になります。 |
第三段階 |
多数のSCP-286-JP-B実体が出現し、曝露者達と共にあらゆる形態の異常性交、暴力と殺人、カニバリズム、異端的宗教儀式等を行いながら激しく踊ります。この段階から、曝露者達は徐々に疲れを見せ始め、身体的に老化していきます。夜明けが近づいてくると、SCP-286-JP-Bはしきりに東の方角を気にするようになります。日の出により太陽光が照射されると、SCP-286-JP-B達は消失し、同時にSCP-286-JPも崩壊します。曝露者達はSCP-286-JPの消失に伴って落下を始め、多くの場合千葉県沖東10~██km付近の地点に着水します。傷害と老衰、また落下時の衝撃により曝露者の全員が死亡します。 |
第三段階まで曝露した被害者が生き残ったケースはこれまでありません。 |
SCP-286-JPの効果範囲の広さと収容の難しさ、出現する██区が人口密集地であり民間人の被害が大きく、また効果的なカバーストーリーの流布も難しいことから、SCP-286-JPの発見から現在に至るまで、無力化に向けた積極的な研究が進められています。
事件記録286-JP-01 - 日付20██/04/██
20██/04/██、被害者の救助に向かった機動部隊-ひ6”ドリームバスター”の██隊員がSCP-286-JPの効果範囲に巻き込まれ死亡する事故が起きました。遺体の付近から隊員専用のボイスレコーダーが発見されており、第二段階までの状況が断片的に記録されていました。以下はその内容です。
<再生開始>
██隊員: ……こちらは██、状況を報告します。現在、私はSCP-286-JPが周囲に作り出している異常な空間にいます。空中に見えない壁があり、脱出は不可能なようです。隊との通信も出来ません。これは私の遺言となるかも知れませんが、せめて出来る限りのことを記録しておきます。……先ほどまでは武道館で優勝する幻覚を見ていました。現在は曝露者全員が幻覚から醒めているようです。今はSCiPと同様に空中へ浮き上がっています。東に向かって……ちょっと、あなた! 落ち着いて下さい――
[自殺を図った民間人を止めに行った模様。以下、無関係な内容のため省略]
[30分が経過]
██隊員: ……先ほどの続きを報告します。私が止めた人物とは違う、若い女性がナイフで自分の首を切りました。致死量の出血でしたが、徐々に傷が塞がって何事もなかったかのようになっています。今は放心状態です。他にはパニックになっている人、脱出方法を探ってる人……曝露者の行動は様々ですが、SCiPの上昇は止まりません。さっきから全員で何度も破壊しようと試みていますが、全てムダだったようです。私も協力してみます。状況が変わった時にまた録音します
[録音が一旦中断。再開時、人々の悲鳴が聞こえる]
██隊員: 録音されていますか? ……さっきからもう30分経過しました。SCiPは破壊できません。また、また幻覚が見え始めました。さっきのより強烈な……ああ、さっき助けた男が女をメチャメチャに殴っている。俺も殴りたい。殴りたい。誰かを殴りたい。いや違う、違う。 ……俺の技を見せてやるんだ。俺はあいつを殴る。殴るんだ。[連続した衝撃音]正拳突きだ、もろに入った。ざまあみろ。ざまあみやがれ
[10分間、衝撃音と悲鳴、絶叫が続く]
[このあたりから、由来不明の笑い声が記録されている。発生源はSCP-286-JP-Bと思われる]
██隊員: やってやった。皆が俺の技を見ている。俺は勝った、ここの全員に勝ったんだ。俺が一番強い。俺が……何だよ。何かがいる。ガスの……何だ。何だよお前ら。何で笑うんだよ。何で俺を笑うんだよ……笑うな! 俺を笑うな!
[██隊員がどこかへ走る音がする。短い衝撃音。録音機器が捨てられたと思われる]
[以下、██隊員を含む多数の笑い声、絶叫と悲鳴、支離滅裂な言葉が3時間続く。録音は唐突に終了する。バッテリーが切れたと思われる]
<再生終了>
付記286-01: 回収された██隊員の遺体には無数の打撲痕があり、また両方の拳が骨折していました。これは██隊員がSCP-286-JPの効果終了まで、幻覚による暴力衝動に突き動かされていたためと考えられています。
このオブジェクトの持つ効果は極めて興味深いものです。人間心理の深層にある欲望、”夢”そのものをエネルギー源としているのかも知れません。更なる調査を実施するため、機動部隊へのDクラスの同行を強く進言致します。―████研究員
却下します。現在SCP-286-JPが齎している民間人への被害は、あらゆる実験を凍結するに十分なものです。貴女の知的好奇心は結構ですが、機動部隊員を悪戯に消耗することは出来ないということを理解して下さい。―崔博士
事件記録286-JP-02 - 日付20██/05/██
20██/05/██、SCP-286-JPの研究を行っていた██区内のサイト-815█に突如としてSCP-286-JP実体が出現、██博士を含む財団職員51名が犠牲になりました。事件発生時、当時SCP-286-JPの研究担当者であった████研究員が、崔博士らの制止を振り切りSCP-286-JP-A内に進入しました。10時間後、千葉県沖18kmの地点にて████研究員の遺体が発見されましたが、口内に小型の録音装置が残されており、記録を再生したところ、SCP-286-JPの各段階における異常性の具体的な内容が極めて詳細に口述されていました。記録を元に特別収容プロトコルの大幅な改訂が実施され、現在に至っています。SCP-286-JPの効果にもかかわらず、████研究員が最低限の理性を維持できた理由は不明です。
補遺286-01: 事件記録286-JP-02から一年が経過し、SCP-286-JPは計2█回再出現しましたが、その全てが第一段階で無力化されました。また、出現頻度も当初の20%まで低下しています。以下は関係者に送信された、現在の研究責任者である崔博士のメールの一部です。
確かにSCP-286-JPの犠牲者はゼロとなった。しかし、ヤツの収容の難しさ、我々の活動に対する脅威はいささかも減じられてはいない。我々の行為が着実にヤツを無力化していると素直に信じられるほど、私は楽観的ではない。実験のためにDクラスを送り込む試みは全て失敗してきた。結局、ヤツの”本質”を見極めることが出来たのは、今に至っても████研究員ただ一人なのだろう。
だが、諸君らの命をむざむざ捨てさせたいと私は思わない。勇気ある機動部隊員達からの申し出を断り続けているのはそれが理由だ。このメールを見ている皆が、人類のために命を捧げる覚悟であることを私は疑っていない。しかし、今後も継続するであろうSCP-286-JPとの戦いにおいては、無意味な犠牲は一人とて出すわけにはいかないのだ。
これからも我々は、SCP-286-JPの全容を解明するまで、この人類へ向けられた悪意との戦いを勝ち抜いていく他に道はないだろう。
彼女の見た夢は、今や我々全員の夢なのだから。
―崔博士
ページリビジョン: 14, 最終更新日時: 28 Apr 2017 12:27