SCP-295-JP
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カメラに偽装されたメトカーフ非実体反射力場発生装置。

アイテム番号: SCP-295-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-295-JPはメトカーフ非実体反射力場発生装置を常に作動させ、またGOCとの協力の下ハイズビル幽体固定法による処置が行われることにより収容されています。年に一度、GOCにより派遣されたメンバーとともに担当となった収容プロフェッショナルはⅤ類(暴力的霊体)対処法講義を受け、その上で財団は以下の物品を準備し、手順に従って更新作業を行って下さい。

  • 黒い羽毛を持つニワトリ(Gallus gallus domesticus)2羽
  • 16歳以下の児童1名。性別や過去に関してはハイズビル幽体固定法においては無条件であるため、倫理委員会により許可を得た対象を使用すること。
  • 標準儀式手順に使用する純銀製のナイフ。
  • 1週間以内に終了済みのDクラスを焼却した灰2kg。

ハイズビル幽体固定法のその特性ゆえに、GOC及び財団の担当職員は必ず記憶処理を受けることになっています。これは機密を守るためだけでなく、ハイズビル幽体固定法の手順上必要な行為によって担当者が過度の自責の念を抱かないようにするための処置です。

説明: SCP-295-JPはアメリカ合衆国ネバダ州に存在する████・███空軍基地として偽装されたGOCの施設であり、199█年まではGOCの研究施設として特に[検閲済。要求クリアランスレベル5]といったKクラスシナリオに対抗するための数多くの成果を挙げていました1。199█年に事故2及びその後のSCP-295-JPの活性化が起こったため、現在では使用されていません。事案295-JP後にGOCから要請があったため、財団はこの事案に対して介入を行っています。

財団が介入を行う以前、SCP-295-JP内部には大量のレベルⅤ人型霊的存在(敵対的・積極攻撃)が存在していました。これらの霊体の多くは事故により死亡したGOC職員であることが判明しています。このため、GOCの改革神殿騎士団排撃班メンバーによる浄化部隊が、これらの霊体に対して対処を行っていました。しかし、200█年█月██日に事案295-JPが発生したことによってこの部隊は解散され、事件の関係者はCクラス記憶処理により事案295-JPの記憶を処理されました。これはGOCから財団に対して要請があったためです。SCP-295-JP内に現在存在する霊体を運び出す試みはこれまで成功しておらず、また危険性のため、現在は財団とGOCの協力によるメトカーフ非実体反射力場発生装置の常時作動及びハイズビル幽体固定法の定期的更新により、霊的存在の封じ込めを行っています。

補遺1: 事案295-JP後、浄化部隊のメンバー、J████司祭へのインタビュー記録です。

対象: J████司祭
インタビュアー: H█████上級研究員。インタビュー対象に無用な心理的負担をかけさせないよう、インタビュー時においてはカウンセラーとして自己紹介を行っている。

<録音開始、200█/█/██>

H█████上級研究員: こんな早朝から呼び出してしまってすまないね。J████さん。包帯がとれたばかりだというのに。

J████司祭: いえ、昨晩からほとんど眠れなかったもので、却って早いほうがありがたいのです。処方された薬の力を借りないと眠れないものですから。

H█████上級研究員: そうか。なら、早速だが。あの事件の経緯を聞かせてくれないかい?

J████司祭: はい、カウンセラーの先生。その前に一応、私達がそこで何をしていたか、ということはお知りですよね?

H█████上級研究員: ああ、霊体を鎮圧するためにあなた方は派遣された、とは聞いている。

J████司祭: (少し口ごもる)鎮圧……いえ、それは正確じゃないんです。我々は対霊体訓練を積んだとはいえ、あくまでも聖職者として、彼等の魂を鎮めて、天の国へ導きに行く、そういう手法を取っていました……つまり、古典的な再葬儀式手順を使用したんです。同じ人の魂に対して、強引ないくつかの手順を取るよりは、赦しと、祝福と、そして導きによって魂を天へ送る方が、効果的だと。

H█████上級研究員: それは失礼。つまり、あなた方は霊魂を昇天させていたんだね。

J████司祭: ええ。そして、かつて同じ組織にいた人々がその……えーっと。

H█████上級研究員: あなた方の呼び名で構わないよ、J████さん。

J████司祭: わかりました。私達はそれら、暴れ狂う死者の霊魂を悪霊と呼んでいました。かつての悪しき行いを、悪しき行いとも思っていなかった死者たちの霊魂が、事故の何かしらが原因であのように変質したのだ、というふうに、改革神殿騎士団の天地部門のメンバーは考えていました。

H█████上級研究員: 悪霊……悪しき行い? その、霊体たちが生前に何を行っていたか、というのは知らなかったんだね?

(約3秒間の沈黙)

J████司祭: ええ……ですが、このような仕事を行っている以上、私達が悪からは逃れられないし、だからこそ最善を尽くさないといけないと思っていました……話がそれてしまいましたね。私達はそれらの霊魂の攻撃に対して対処して、そして1つずつ浄化していきました。骨が折れる作業でしたし、負傷者も出ました。しかし、幸いにして誰も死にませんでした。

H█████上級研究員: それは良かった……が、君たちの部隊の40%が死亡したのではなかったのかい?

J████司祭: いえ。その時点では誰も死んでいませんでした。細菌やウィルス等伝染するものではないが、医学的な実験が行われていたと上から聞かされていたので、一応化学防護服なども準備はしていましたが、その必要もありませんでした。仲間たちが死んだのはもうすこし後のことでした。

H█████上級研究員: では、その時のことを教えてくれるかい?

J████司祭: (口ごもる)はい、私達はひとつの部屋を除いて、悪霊たちを祓いました。そこにいたかつての研究者たちはみな、天へと昇っていったと思います……。

H█████上級研究員: ひとつの部屋を除いて?

J████司祭: ええ、そこには機密事項があるから、見てはならないのだ、と上層部からきつく命令されていました。なので、そこ以外の悪霊たちを全て浄化した後、私達はそのまま帰還する予定でした。けれど……恐らく全ての悪霊を浄化し終えた後に、それが現れました。

H█████上級研究員: それ?

J████司祭: はい。それとしか呼べないんです。なぜなら、私達が今まで分類していた霊体の中に、それは入っていなかったからです。なんと言えばいいのか……(約16秒間の沈黙)

H█████上級研究員: あなたの言い方でいいから、できるだけ近い形容をしてみてくれないか? 一体何だったんだい?

J████司祭: その……(口ごもる)それは、宇宙人の幽霊が数多く集まった、そういうものでした。

H█████上級研究員: 宇宙人の幽霊……? それは言葉通りの意味かい?

J████司祭: はい……そうとしかいえないものでした。数多くの、ばらばらに切り刻まれた、地球外からの訪問者たちの幽霊です。そして、それは恐ろしいほどに強力で、恐ろしいほどに怒りと悲しみをたたえていました。その時に、先ほど浄化した悪霊たちがなぜ死んだか、ということがはっきりと分かりました。彼等によって皆殺しにされたのだと。

H█████上級研究員: そして、その霊体に襲われた?

J████司祭: いいえ。その……異邦人たちの霊は、私達を吸い寄せました。霊体の持つ感化現象によって、行動を強制されました。それに対して十分な対策を行っていたにも関わらず、それすら無力化するほど、それは強力なものでした。我々は、無理やり、入るなと命じられていた場所に入らされたのです。そして、そこで、見るなと言われていたものを見ました。それは、標本にされた、生前の彼等のようでした。そして、記憶感応が……彼等の解剖される、その最期の記憶が、私達に流し込まれました。

H█████上級研究員: 彼ら……。

J████司祭: はい。彼らです。苦痛、ショック、絶望、悲しみ……我々が今まで浄化してきた、霊体と同じように、共感できる感情のある、人々……そうです、人々です。何よりも恐ろしかったことは、その中に子供や……それに妊婦が居たことです。一体何のために彼等は、異邦人に堕胎を施したのでしょう? 彼等は偶然地球に漂着したり、いろいろな目的があって、こちらに来ていたけれど、誰も悪いことをしたわけではありません。我々が彼等を攻撃して、地上に落として、それを解剖したのです。

(約12秒間の沈黙)

H█████上級研究員: それは、霊体が嘘をついた、とか、そういう可能性があるのではないかい?

J████司祭: いえ、あなたが心理学のプロフェッショナルであるくらい、私もプロフェッショナルなんです。幽霊というジャンルの……そして、この異邦人の幽霊は、悪霊共が行うねじ曲げた現実の投影でなくて、受けた罪に対する償いを求めて、ただ自分が受けた仕打ちに関する真実を語ったんです。けれど……どうやって異邦人たちが受けた仕打ちをあの悪霊共に償わせればいいのですか。私達が救ってしまったのに。あれらを天の国へと迎え入れたというのに。そしてどうやって異邦人を彼等の信じる天の国へと送ってやればいいのでしょう。私たちは彼女等の信じる神を一欠片も知らないのですから。

(約7秒間の沈黙)

J████司祭: そして、霊体による激しい攻撃が始まりました。彼等は人間に罪を償わせたかったのでしょう。そして、私達はそこから逃げるしかありませんでした。霊体を破壊する手段は、どちらにせよあれほど強力なものには通用しないことがわかっていました。それに、それを行った場合、不正義は永遠に主の目に留まり続けるでしょう。たとえ処刑されたとしてもそれだけはどうしてもやりたくありませんでした。私達は必死で逃げました。後ろで仲間たちが、霊体によって引き裂かれる音を聞きながら。その結果、私達の排撃部隊は壊滅的な被害を受けました。

J████司祭: GOCの目的は人類を怪異から守ることです。それは心しています。ですが、彼等がこうして人を殺す原因を作り出していたのは、人類以外の異邦人たちに対して……あってはならないことをしたからです。その結果、報いを受けているのです。……ですが、GOCが……私達がやって来た場所の研究は少なくとも人類を救うためであったことも経験からわかっているのです……私達のやっていることは……本当に……本当に正しいのですか……主よ……(J████司祭は啜り泣き始めた)

H█████上級研究員: わかった、J████さん。これでカウンセリングは終わりだ。別室で薬を渡すから。(J████司祭は泣きながら研究助手に付き添われて部屋から出て行く)

<録音終了>

備考: J████司祭は他の当該事件関係者と同様に、この後Cクラス記憶処理を施され、事件に関する記憶を消去した上でGOCのメンバーとして再配備されました。

補遺2: 当該施設により研究が行われていた[データ削除]の有用性が財団によっても証明されました。特に[検閲済。要求クリアランスレベル5]をはじめとした研究成果がKeterクラスオブジェクトによって発生しうるXKクラスシナリオへの対抗手段となりうることは、事案295-JPの再発の可能性という不利益以上に利益が大きいものであると考えられます。この手段が現状必須であることを鑑み、[データ削除]の研究の継続はO5-█、█、█、██及び財団倫理委員会の3分の2以上のメンバーの賛成により可決されました。以降の研究はGOC及び財団の双方により協力して行われることが決定しています。

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