SCP-296-JP
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アイテム番号: SCP-296-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-296-JPのオリジナルは不透明のファイルに束ねて調湿紙とともに中性紙保存箱に納め、低脅威度保管ロッカーに収容してください。SCP-296-JPで実験を行う場合は、SCP-296-JPのコピーを作成して使用し、被験者に被曝させた後に確実に破棄してください。実験中の被験者との直接的な接触は実験目的以外では行わず、会話は無線など音声機器を通して行なってください。実験を終了する場合は、被験者に記憶処理を施しSCP-296-JPの影響を取り除いてください。実験の過程で被験者以外がSCP-296-JPの影響を受けることは確実に回避し、万が一そのようなことが起きた場合には、二次被害抑止のため速やかに記憶処理を申請しSCP-296-JPによる影響を取り除いてください。

説明: SCP-296-JPは宝石について日本語で書かれた39枚の手書きの書類です。SCP-296-JPの特異性は文章内容や媒体の紙ではなく書面そのものに生じており、印刷機を用いた複製やデジタル画面による表示でも同様の影響を受けます。これには文章の読解や日本語の知識を必要としていません。

SCP-296-JPの書面を視認した対象(以下SCP-296-JP-a)は、視認するもの全てを「美しい」と形容されるもので出来ていると確信し、そのように振る舞います。多くの場合、それらは加工された宝石や鉱物、貴金属などであり、同一の物体であっても被験者によって異なるものを認識します。通常では悪臭と認識される匂いを感知しなくなり、騒音や雑音と認識される音を「音楽的」と評します。SCP-296-JP-aはそれらの認識に高揚感や感動、好奇心など非常にポジティブな反応を示し、周囲の状況について比喩や形容を用いて表現します。これらの認識はSCP-296-JP-aにとって無価値であったり嫌悪感や恐怖などネガティブな感情を持つものほど好意的に認識される傾向があります。それらは多くの場合SCP-296-JP-aに共通して汚物や排泄物などが該当します。

またSCP-296-JP-aは認識した物品への破壊や損傷を嫌悪するようになります。それには摂食も含まれており、SCP-296-JP-aはSCP-296-JPの影響下においても食物を摂食可能なものと認識しているにも関わらず、生命が危険なレベルにおいても摂食を拒否し最終的には餓死を選択します。少数ながら摂食により外部の「美しいもの」を取り込むことに幸福観を得るSCP-296-JP-aも確認されています。

SCP-296-JPの影響はSCP-296-JPの影響を受けてからの記憶とSCP-296-JPによる認識を全て消去することで解消されます。しかし記憶消去を行ったSCP-296-JP-aは記憶消去によって生じた記憶の欠落以外で違和感や自身の認識に不信感を訴え、軽度の鬱を発症します。

SCP-296-JP-aが認識したものを語る内容を直接聴いた対象にも影響は及びます。しかしこの影響は語った事象だけのごく限定的なものであり、SCP-296-JP-aと同様に解消されます。また音声記録や記憶処理を施されたSCP-296-JP-aには影響力はありませんでした。

SCP-296-JPには、宝石の名前や写真の他に、主な産地や構成成分などの詳細で正確なデータから、宝石が象徴するものや宝石言葉、その宝石にまつわる逸話や伝承が書かれています。SCP-296-JPには12種類の宝石について書かれており、それらは部分的には誕生石に対応していると判明しています。

来歴: SCP-296-JPは██県██市内の新興宗教団体██████が所有する施設で発見されました。この施設内で大量の餓死者および衰弱者が発見されたことにより財団の注目を受けて捜査が入り、SCP-296-JPを発見、収容に至りました。生存者にはSCP-296-JPの影響とそれに伴う自発的な摂食拒否が確認され、二次被害抑止のため、財団傘下の病院へ移送されました。生存者への聴取でSCP-296-JPは施設に出入りしていた宝石商が持ち込んだものと判明しましたが、その人物の詳細は不明であり現在も調査中です。また件の施設では他のSCPオブジェクトは発見されず、宗教団体に既存の要注意団体との関係はありませんでした。宗教施設での事件は「過激な宗教的な修行の結果起きた事件」として処理されました。

補遺-1: 実験による被験者への聴取記録。

補遺-2: 実験中にSCP-296-JP-aから「水」の認識に影響を受けた███研究員のメモ

この光景を記憶から消し去らなければならないとは、本当に嘆かわしい。水道から流れる水が、シャワールームが、人の目が口が、自分から排泄される液体が。こんなにも輝いているものだとは知らなかった。液化した水晶の内を外を光が踊り、透ける溜まりに景色が映る。何百の鈴を振る音がこだまする。このような言葉でしか言い表せない自分の語彙がもどかしく、忘れ去った後に思い出す手掛かりにもならないだろう。今あの湖へ出かける事が叶うならば、たとえ命を要求されたとしても。願わくば雨の一粒でも見てみたかった。

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