SCP-2996-JP-EX
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アイテム番号: SCP-2996-JP-EX

オブジェクトクラス: Explained

特別収容プロトコル: SCP-2996-JP-EXは現在時点で人類に膾炙しており、収容はされていません。SCP-2996-JP-EXは異常性が著しい特殊性を持たない限り、原則として初期調査及び専用ナンバリングのみ行われます。一部SCP-2996-JP-EXの研究、調査は、SCP-2996-JP-EXの行動領域に合わせて建設された収容サイトにおいて行われます。SCP-2996-JP-EXを認知できる職員は優先してSCP-2996-JP-EX研究チームに配属されます。SCP-2996-JP-EXとの接触は推奨されません。

説明: SCP-2996-JP-EXは霊的実体であると暫定的に定義されている一部実体群です。SCP-2996-JP-EXはパラテクノロジーにおける霊体によって構成されていると推測されますが、後述の異常性により結論は得られていません。

SCP-2996-JP-EXは浮遊、壁など障害物の透過、PSIエネルギーの放射による物体への干渉などが可能です。また、一部SCP-2996-JP-EXは一定の領域外への移動が不可能であるとされます。これはSCP-2996-JP-EXの主張のみならず、財団による誘導も失敗したことから事実性は高いと推測されます。

SCP-2996-JP-EXは認識する対象により認識の度合いが変化します。完全に人型実体として認識される確率は約30%程であり、全く認識できない場合や、五感の一部のみで認識される、影に近い形で認識される等の事例も存在します。これは人間のみならず、人間以外の生物及びカメラなどの観測機器においても同様です。この事案からSCP-2996-JP-EXは幻覚に近い存在であるとの主張も行われていましたが、物理的影響を与えた場合、その対象に起こった変化は認識可能であることから現在では少数派となっています。

以下はSCP-2996-JP-EXの一例であるSCP-2996-JP-EX-1についての概説です。SCP-2996-JP-EX-1はSCP-2996-JP-EXがExplained指定を受ける際の標準サンプルとして用いられました。

SCP-2996-JP-EX例(SCP-2996-JP-EX-1)

SCP-2996-JP-EX-1は20代前半のアジア人女性の容姿を持つ霊的実体であると暫定的に定義されています。

SCP-2996-JP-EX-1自身によると、約100年前、現在収容サイト-81XIが建造されている地点に存在した██ ██氏の邸宅に勤めていた使用人の███ ██氏であり、同邸宅において殺害されたと主張しています。調査の結果、戸籍上に該当する女性は存在しており、旧██邸において使用人の行方不明事件が発生していたことが判明しています。

SCP-2996-JP-EXは浮遊、壁など障害物の透過、PSIエネルギーの放射による物体への干渉などが可能です。PSIエネルギー放射による干渉は凡そ成人女性の筋力と一致します。旧██邸が存在していた領域外への移動は不可能であるとされ、この特性から現在旧██邸跡地に収容サイト-81XIがSCP-2996-JP-EX-1の行動領域と一致する形で建設されました。

以下はSCP-2996-JP-EX-1に対するインタビューです。

インタビュー記録2996-JP-EX-1-01 - 日付 19██/██/██

インタビュアー: 井上博士

対象: SCP-2996-JP-EX-1

«再生開始»

(前半部は事実確認の為省略)

井上博士: では、あなたは何故殺害されたか、等は

SCP-2996-JP-EX-1: はい、全く覚えてません。死んだ前後のことをどうも覚えてないみたいなんですよね。幽霊になる前の記憶も何だか曖昧になってきて、殺されたってことだけはちゃんと覚えてるんですけどね。むしろ幽霊になってから後のことの方がたくさん覚えてるくらいです

井上博士: 現在の状況になってから、何か変わったことはありますか?

SCP-2996-JP-EX-1: それはもちろん、色んなことができるようになりましたね。壁を抜けたり、空を飛んでみたり、といっても、お屋敷からは出られなかったんで、お屋敷が無くなってからは寂しいものでしたが、先生たちが来てからは中々刺激的な毎日です

井上博士: そうですか。他には

SCP-2996-JP-EX-1: ありませんねえ。ご飯食べなくてもよくなったくらいです。幽霊って言ってもたいしたことありませんよ。お岩さんみたいに呪い殺すとか、祟り殺すとかできませんし

井上博士: 確かに、現状であなたのPSI放射、力は成人女性ほどですが…、特別なことは何もないと

SCP-2996-JP-EX-1: ないですね。何回も言ってますけどただの幽霊なんですよ、私

井上博士: いえ、疑っているわけでは

SCP-2996-JP-EX-1: ああ、ごめんなさい、怒ってるんじゃないですよ。先生方もお仕事ですもんね。でもそんなに私がただの幽霊だと都合悪いんですか? いろんなところで幽霊の話ってのは聞きますけどね?

«再生終了»

SCP-2996-JP-EX群は現在財団が所有する霊的実体に対する技術等において一切の反応を示さず、影響を受けません。以下はそのリストです。

使用された装置・技術(抜粋) 結果
非物質変位無効装置(nPDN) 実体化は発生せず
メトカーフ非実体反射力場発生装置 発生させた力場においても、一切の影響を受けず通常の行動が可能だった
改良版カーデック計数機 使用前後で視認の可否に変化は見られず
ホフマン携帯型電気奇跡論ユニット 変化なし
ハルトマン霊体撮影機 機器により鮮明さに差異が発生。明確な法則は見られず
カント計数機 Hm値に変化は見られず




井上博士の提言


SCP-2996-JP-EXは何であるか、その議論は多く行われてきました。単純に霊的実体である、我々の幻覚である、現実改変の残滓である等。多くのアプローチも行われました。悪魔工学、奇跡論、神秘学、量子物理学、マクロカオシズム…、ありとあらゆる分野における権威が顔を突き合わせてSCP-2996-JP-EXの正体を探りました。その結果、分かったことは"分からない"という一点です。

もちろん、SCiPは原則として理解不能な、異常な物品です。分からないだけでは研究されないこともありますし、理解されればそれは異常ではありません。その点で言えば、SCP-2996-JP-EXはひどく単純で、純粋なアノマリーでしょう。

ですが、私はSCP-2996-JP-EXを収容し、さらに研究する必要があると考えます。SCP-2996-JP-EXは浮遊し、障害物を透過し、稀に物理的干渉を起こし、認識できる者と認識できない者が存在します。それを何と呼ぶべきか、私は、いえ、私たちはその答えを持ち合わせてしまっています。SCP-2996-JP-EXは世界中の文化に染みつき、一般化されてしまった"異常"の象徴的存在です。理由は分からないがその異常は存在する、するかもしれない。当たり前のように認識された"異常"です。

テレビやカメラ、その他の機器等を原理について理解できなくても使用できるのは、それが純然たる再現性の元にある法則の産物だからです。しかし、SCP-2996-JP-EXは我々の持つ法則で再現性を証明できない。"分からないのに存在している"のです。

それを踏まえ、私はSCP-2996-JP-EXを我々の理論で再現可能な"霊的実体"と呼称することに違和感を感じます。SCP-2996-JP-EXは再度定義されるべきではないでしょうか。

人類の知り得る最古にして最大の"異常"の1つ。

ただの"幽霊"として。


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