アイテム番号: SCP-3061
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3061実例群はサイト-81の高セキュリティ資料保管庫に保管されます。
一般社会や宗教団体の所有下に現存するSCP-3061実例の調査は進行中です。オンラインサイトにおけるSCP-3061への言及の監視態勢が、財団ウェブクローラによって確立されています。SCP-3061の所持が確認された人物は拘束され、実例は収容されます。対象が一般人であった場合、記憶処理後の解放が認められる場合があります。
インタビューや試験でSCP-3061-1と会話する際、財団職員は標準的なミルトン・プロトコルを順守するものとします。
更新: 複数の団体がSCP-3061実例を所持していることが確認されました。これらの団体やその所在地に関する詳細は文書3061-5Cに記載されています。このような組織が発見され次第、機動部隊が派遣されます。
説明: SCP-3061はある異常実体 (SCP-3061-1) の召喚に用いられる一連の儀式を指します。SCP-3061-1は関連資料において一般的に“フェンズムル”Fendsmulと呼称されます。
SCP-3061についての資料や情報は極端に希少です。SCP-3061-1は歴史的文書や宗教的文献でほとんど言及されておらず、アイルランド神話や小規模宗教において、曖昧かつ知名度の低い悪魔的存在であると時折述べられている程度です。調査の結果、過去には非常に大量のSCP-3061文献が存在したことが示されていますが、SCP-3061の大多数は既に失われているか、儀式を適切に執り行っても機能しません。儀式の失敗事例はSCP-3061-1自身が原因であることが確認されています。
SCP-3061-1は儀式の執行者に何らかの富または抽象的な力を — 多くの場合、執行者の子孫の魂と引き換えに — 授けるとされています。
以下は、全ての機能するSCP-3061実例で言及されている詳細事項のリストです。
召喚円: SCP-3061-1を呼び出す目的で使用される典型的な召喚円。若い雄のニワトリ1羽、ネコ科またはイヌ科の任意の種、最低2名の人間の乳児、及び“30年にわたって主の導きの下に仕えてきた”人間の司祭1名の血液の混合物を用いて、少なくとも直径4フィートの円を描く必要があります。血液の具体的な分量は示されておらず、円を描くのに十分な量さえあれば機能します。
短期間にSCP-3061-1を繰り返し召喚する試みは成功しません。SCP-3061は時折、儀式の過剰な行使に対して巨大な動物の糞の山を出現させます。
人間の遺灰: 遺灰は召喚円の中心に配置されます。これもまた指示書に具体的な量は明記されておらず、代わりに“暴虐の[編集済]に対する3人の冒涜者”のものでなければならないと述べられています。
合意と対価: 儀式の執行者は指示書の末尾に詳述されている11分間の祈祷文を唱えなければいけません (書き起こしは文書SCP-3061-3Bで閲覧可能) 。その後、SCP-3061-1が灰の山から出現するとされています。召喚者は続けて、自らがSCP-3061-1に何を望んでいるかを詳細に述べる必要があり、SCP-3061-1は引き換えに何を要求するかを述べます。合意が成立するとSCP-3061-1は消失します。対価としてSCP-3061-1に提示されたあらゆる人物は契約締結時に即死し、召喚者は後日何らかの形で要求したものを得ることになります。
SCP-3061-1は財団職員の前では概ね人間らしい姿を取り、40代半ば、身長約6フィートの男性ヒト型実体として出現します。SCP-3061-1は時折、様々な動物の身体的特徴を帯びて現れることもあります — 最も一般的な例としては、Lepus timidus (ユキウサギ) のそれと置換された脚や、Daubentonia madagascariensis (アイアイ) のように延伸した指が挙げられます。
SCP-3061-1は画一的なアイルランド訛りで話し、英語やその他多くの言語に堪能です。
SCP-3061-1は非常に緻密かつ現実的な幻像を作り出し、あたかも本物であるかのようにそれと相互作用できます。SCP-3061-1は召喚に使用された儀式円の範囲外にはこのような幻像を生成できません。SCP-3061-1は召喚者と交流する際、これらの幻像を“プレゼンテーション目的”で使用していると述べています。
SCP-3061-1は財団職員に対して概ね協力的かつ寛容ですが、しばしば極度に激昂した態度を示します。SCP-3061-1とのインタビューは、SCP-3061-1が召喚者への不満を表明する“感情発散”セッションになることが頻繁にあります。これらの感情には些細な苛立ちから純粋な軽蔑に至るまでの幅があります。
発見ログ: SCP-3061は200█/05/14、アメリカ合衆国マサチューセッツ州███████で回収されました。現地の財団職員が近隣住宅での異常活動を検出した後、SCP-3061は発見されました。家主のポール・████は、SCP-3061が記録された書籍を取得し、儀式のために数名を殺害したことが判明しました。捜査によって、容疑者と親しい知人数名が殺人を補助し、私的利益のためにSCP-3061の利用を計画していたことも明らかになりました。SCP-3061は収容され、全ての容疑者が財団に拘留されました。
以下は、ポール・████の自宅地下室で撮影された映像記録の書き起こしです。容疑者は後日、将来再びSCP-3061を執行する必要が生じた場合に備えて撮影したことを認めました。
部分的書き起こし
後ほどポール・████の自宅と特定された地下室が映っている。ポール・████は描かれた円の前に立ち、大きなハードカバー本を読んでいるようである。
SCP-3061-1: 貴様は私をここに招くためだけに数多の危険を冒した、それは分かっているな? 見たところ、貴様は多忙らしい。何を求めて私を召喚した? 私に何を願おうというのだ?
ポール・████: えぇと、その… 大金が必要なんです。もうこの辺に住むのが我慢ならなくなっちゃって、引っ越したいんですよ。でも多額の借金を抱えてるんで、全部綺麗に片付けられないかなって…
SCP-3061-1: ふむ、随分と単純な願いだ、貴様はどうも発想力豊かな人間ではなさそうだな? …しかし、可能ではある。その代わりに、あるものと交換だ。 (SCP-3061-1が片手を伸ばすと、幼い子供の静止画像を内包する青い火球が掌に出現する。)
ポール・████: ト- トニー!?
SCP-3061-1: そうとも… こんな契約になるとは思いもよらなかったか? 貴様が望むならば別な条件を出しても構わんぞ… だがそれは-
ポール・████: いえ! そ- それでお願いします! でももう1人子供がいるんです、もし欲しければクリスティーもあげます!
SCP-3061-1の掌の炎が消える。SCP-3061-1は目に見えて困惑している。
SCP-3061-1: …ちょっと待て… 今何て?
ポール・████: 起こした方が良いですか? それともそのまま持っていきますか?
SCP-3061-1は数秒間ポール・████を見つめた後、手を振って周囲の炎を消す。
SCP-3061-1: あぁ、このクソ- マジでこんな野郎の相手をしなきゃダメなのかよ!? お前本気で言ってんのか!?
ポール・████: …はい? お話がよく-
SCP-3061-1: そうとも、どうせこうなると思ってたんだ… 話が飲み込めてないふりすんじゃねぇ! お前自分が何をやってるか分かってんのか? 言ってみろ、わざわざこんな真似をするほどの借金ってのはどういうアレだ?
ポール・████: 主に私の車と… あと家の増築です。それがどうかしましたか?
SCP-3061-1: ローン!? (SCP-3061-1は遺灰の山を掌に掬い上げる。) ローンだと? お次は何だ、代わりに税金を納めてくれとでも抜かすのか!? やってられっか、もう帰る… せいぜい後始末を楽しめよ。
SCP-3061-1が消失する。
SCP-3061-1初期インタビューログ: 以下のインタビューはSCP-3061-1の初期収容から数日後に実施されました。
部分的書き起こし
SCP-3061-1: つまり、奴は俺が今までに会った最悪の人間じゃなかった、だからどうしたってんだ? あんな連中は全部ひとまとめにして、“クズ”とラベルが貼られたデカいバケツにぶち込んでやりゃいいのさ! 最悪じゃないとも、だが手始めはあいつからだ!
ロバートソン博士: あなたは契約について何か言及していましたが、あまりお話が明確ではありませんでしたね。その“契約”とはどういったものなのですか?
SCP-3061-1: あー、要するにだな。俺は普段、運に見放されてる連中の下に出向くんだ。俺たちは召喚されても相手構わず出張したりはしない。自分を大っぴらにさらけ出し過ぎるってのは、ビジネス慣習としちゃ悪手なんでね。特別なこっちゃない、簡単で単純明快だから何世紀もこんな風に商売してる。召喚に応じる前に、軽くあの男の素性を調べた。現ナマの持ち合わせはほとんど無くて、失業中で、恐らくこれから状況は悪化する一方。“こいつはチョロいぞ”と思ったよ。だから地面にデカい穴を空けて、頭蓋骨とねじれた腕の玉座やら何やらを揃えて参上した後、ガキをくれたら金持ちにしてやるぞと言ったんだ。
ロバートソン博士: 彼は具体的にどうあなたを怒らせたのですか?
SCP-3061-1: あん畜生は“はい”と答えた。
ロバートソン博士: …えっ?
SCP-3061-1: 後悔もためらいも全く無しだぞ! 妖魔界タルタロスだか何だか、お前ら定命種がこっち側の世界をどう呼ぼうと勝手だが、とにかくそこから恐怖の大悪魔が飛び出て来たってのに、奴は契約に応じた! 自分の子供を地獄そのものに放り込む契約に!
しかも奴は分かってたんだぜ! 奴は俺が何者かを理解してた。匂いを嗅いだだけで、俺を見た途端にクソを漏らしたのがこっちに伝わってきた! でも俺が悪魔だとか、俺がどんなことをやってのけられるかとか、俺が奴の子供を求めてるとか、そんなのはどうでもよかったんだ! ずっと下り坂だよ。俺たちを恐れたり、多少なりとも動揺したりする定命種はどんどん減ってる! テイクアウトの店みたいなノリで召喚しやがって!
ロバートソン博士: 誰かが契約に応じたならそれで問題ないのではありませんか。結局のところ、あなたはそれを望んでいたはずです。
SCP-3061-1: 違う! お前は分かってないんだよ… 最終的に釣り上げるのよりも、餌を見せられた相手が足掻くのが重要なんだ! 俺たちは理由もなく大袈裟な態度で長話してるんじゃないぞ! 誘惑ってのはな、相手が実際に誘惑されて初めて満足できるもんなんだよ! ただ“はい”と言われちゃ誘惑は成立しない。
ロバートソン博士: …では、彼の子供はどうなったのですか?
SCP-3061-1: あぁ、連れていかなかったよ。正直、奴に返事したかどうかすら覚えてねぇな。あの時の状況は多分、俺たち両方にとって、苛立たしいってよりは気まずい感じになってたと言っても差し支えないと思うね。
補遺3061-1: 20██/05/14、███████ █████の名称で知られる小規模なカルト宗教団体への襲撃で、数点のSCP-3061文書が発見されました。当該団体はこれらの文書を使用してSCP-3061-1の召喚を計画していたと考えられます。捜査の結果、当該団体は必要材料を成功裏に集めて儀式を執行したものの、SCP-3061-1の召喚に失敗していたことが判明しました。当該団体は財団に拘留され、SCP-3061実例は全て回収・収容されました。事案の終息後、当該団体についての回答を得るため、SCP-3061を用いてSCP-3061-1が召喚されました。
SCP-3061-1: またお前らか。意外だろうが、俺は普段こっちの世界にはあまり頻繁に呼ばれないんだ。
ロバートソン博士: はい。███████ █████という宗教団体が関わった事件についてお話を伺いたいと思います。彼らをご存知ですか?
SCP-3061-1: おー、あいつらね。ああ、あのゲスどもとは何度か取引したよ。口を半開きにしたアホの集まりだ。欲しいものを授けてくれるなら、どんな神や高次存在にだってすがり付く。あいつらに会ったのか?
ロバートソン博士: 数日前、彼らの集会を襲撃した際に、あなたを召喚する時と全く同じ儀式の文書を入手しました。それについて何か知っていれば、教えていただけないかと思いましてね。
SCP-3061-1: 俺を召喚しようとしたけど、呼び出しに応じなかった。前に何度も召喚されたが、いつだって同じだ。奴らは俺を賛美するが、力を与えてくれればどんな相手だろうと崇拝するタイプさ。困窮してる連中は崇拝なんかしやしない、必死になって来るもんだ。だが、欲しいものを手に入れた後でさえ、奴らからはその悪臭がプンプンする。奴らは献身的なカルトでも、下層世界の長年の崇拝者でもない。犠牲を払っても満足感を得ない。血で描いた召喚円の中に赤ん坊を落として、そこから富と力が湧いて出るのを期待してるだけの怠け者だよ。
ロバートソン博士: 成程。では、もし可能ならばですが、儀式の執行手段を知っている他の団体や人々についてもお聞かせいただけますか。
SCP-3061-1: なぁ、もう███████ █████と取引しなくて済むのはそりゃありがたいぜ。だが企みはお見通しだ、それにお前らだって俺がそう簡単に話に乗らないのは分かってんだろ。勿論、俺を召喚した連中全員の打ち明け話をするつもりはない。ただし、俺を大いにコケにしやがった奴らの間引きになら手を貸してやる。
ロバートソン博士: もしお望みなら、少なくとも一部の組織が儀式を利用するのを阻止できますよ。しかし、我々にはあなたの協力が必要です。あなたを召喚した人々やその居場所の詳細な情報は極めて有用です。
SCP-3061-1: うーん、身元絡みじゃ俺は力になれないぞ。情報収集は俺の分野じゃない。何人かの大物の領域に大きく踏み込まない限り、そんなのは無理だ。だが、組織名みたいな簡潔な情報は提供できる、そういうのならどうってことない。場所に関しちゃ、“ノースカロライナ州の地下室”とか“トロントの何処か”みたいに短くなら説明できる。そこまでが限度だ。
ロバートソン博士: 結構です。その他の細かい手配はこちらで行います。あなたがご希望であれば、情報交換ができるように、適切な連絡のタイミングを決めることもできますよ。それで十分でしょうか?
SCP-3061-1: …悪魔に取引を持ち掛けようってか?
SCP-3061-1はその後間もなく、取り決められた条件に合意しました。