SCP-320-JP
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アイテム番号: SCP-320-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-320-JPはサイト-8123内の低危険性物体保管ユニットに収容されています。SCP-320-JPのミーム汚染に暴露した職員は、クラスD記憶処置を実施してください。

説明: SCP-320-JPは████社から製造及び販売された、長さ90cm・重量270g、一般的な外見をした1本の杖です。素材はブナ(Fagus crenata Blume)の木で製作されており、異常性を持つオブジェクトはSCP-320-JPのみで、製造者の同商品に同様の異常を持つ物品は発見されませんでした。

SCP-320-JPは201█年、栃木県██市に営業している福祉老人施設██で発見されました。SCP-320-JPの所持者は当時90歳の男性入居者で、凡そ6年前から老人ホームに入居していました。しかし異常が確認される1年前から男性の評価が著しく変化し、他入居者の心理変化が認められるようになりました。
主に、男性を「仙人の生まれ変わり」と評する・貴重品を譲渡するといった行動が施設ホームで頻繁に確認されています。施設に2年前から偽装潜入していたエージェント・ヨコシマがオブジェクトの異常性を看破した後、押収しました。エージェントの調査では男性の杖の購入理由は加齢からくる筋肉の衰えで、主に歩行目的で使用していました。杖を購入したのは男性の親族で、異変が確認され始めた1年前にプレゼントされたことが判明しています。エージェントはSCP-320-JPを回収し、男性及び施設関係者に記憶処置を実施した後、同品の歩行杖を男性に提供しました。

SCP-320-JPはミーム汚染を持ち人間が所持した場合のみ活性化します。SCP-320-JPを所持した状態を目撃した第三者は、所持者に好意的な気持ちを抱き、積極的に「所持者の助けになりたい」と考えます。杖を所有した状態であれば写真や映像でも効果があり、異常性が進行します。

初期症状では親切な態度を取る、所持者が歩行時にトラブルかないか注視する程度ですが、所有者を目撃する回数・共有時間が増加するにつれて指数関数的に心理状態が重度化します。症状が進行すると所有者をほとんど崇拝に近い形で賛美します。
末期状態になると、感染者は自身の肉体の一部を提供する、所有者の反応を顧みない一方的な好意を行います。Dクラス職員による実験では、ミーム汚染を受けた職員は所有者が重犯罪者であるにも関わらず、好意的に受け止め賛美しました。
汚染影響で最も特徴的なのは、本来の性格や犯罪の事実の無視・所有者を庇護下に置き自身が出来うる限りの親切を行う・所有者に身体的障害がないにも関わらず不自由があるように認識し始める点です。前提として感染者は所有者を身障者や怪我人のように捉えており、40時間以上所有者と接すると治癒不可能なほど病状が進行します。
重症化する以前に感染者に記憶処置を施すことでオブジェクトの影響から脱することが可能ですが、SCP-320-JPを所持した状態の所有者をもう一度目撃した場合、急激に深刻な末期症状となり[削除済]。

尚、本所持者である男性周囲で末期症状が確認されなかったのは、福祉施設における環境ゆえであると想定されています。当時男性が入居していた施設では運動と外出の機会が少なく転倒防止を防ぐため、施設内でも車椅子による移動の推奨と、他施設と比較してバリアフリーの徹底が成されていました。実際施設では安全面を売りにし、良質な生活環境を整えており、上記の点から元所持者であった男性はオブジェクトを使用する機会が少なかったと推定されています。

実験記録ログ- SCP-320-JP-1: 当実験はSCP-320-JPの効果を調査するため実施されたものです。SCP-320-JPの所持者としてD-735、感染者D-87として実験に参加させました。オブジェクトの効果を確認するため、同室に72時間待機。およそ41時間経過したところで、D-87に異変が確認されました。

<ログ開始>

D-87: なあ、博士、博士、聞いてくれよ。

████博士: ……何でしょうか?

D-87: 博士、その、Dクラスってのは……要は使い捨てみたいなもんなんだろう……?

████博士: 最低限の命は保証します。無意味に人員を削減しません。

D-87: 博士、俺はどうしようもねえクズだけどさ、こいつだけは…どうか助けてやってくんねえかなあ?

████博士: D-735のことでしょうか? 私にはそのような権限はありません。そうしてあなたが助けを乞うたところで無意味だと伝えておきます。

D-87: こいつはすっげぇ良い奴なんだよ、きっと犯罪犯してしまったのも何かの間違いに違いねぇ。ただ横にいるだけでもわかるんだ。きっとD-735は嵌められて……誰かを庇っているに違いないんだ。冤罪なんだよ、悪いことするわけないんだ。

████博士: D-735の罪科は連続婦女暴行殺人……証拠もきちんと揃っており、どれだけ肩をもっても言い逃れのできない状態でした。中には未成年者が……█歳から8█歳の女性を虐げてきたのです。不本意の妊娠もあります。あなたはどうして、そう思うのでしょうか?

D-87: 馬鹿だな、博士。良い人ってのは理屈じゃないんだよ。こいつは純粋なんだ。暴行が何だよ、どうせ、女側の被害妄想みたいなもんだろう。こいつの赤ちゃん産まなくちゃ! きっと良い子が生まれるんだろうな。こいつは……心が清らかで、きっと神様の生まれ変わりに違いないんだ。だからさあ!博士!

[D-87は駆け出し、収容室のドアを殴る。]

D-87: D-735は身体も悪いんだ、こんな可哀想なことがあるかよ!

████博士: D-735は至って健康的です。障害の有無は認められませんが……?

D-87: あいつは杖を持っているだろう!!

████博士: 杖を持っているだけです。

D-87: あぁ、うるせえ……見た目は普通の人と変わらねえが、見て分からない障害なんだよ。辛いよな、見た目は普通なのに理解してもらえないのは……痛いとも言わないし、不平も言っていないし偉いよ本当。……なあ、博士、なぁ博士! 博士、俺がこいつの身代わりになってやるよ! 任期終わったあとは俺の全財産をこいつにあげるんだ……! 根が良い奴だから社会復帰もできる! 博士、なあ、こいつは人間なんだよ! 純粋な! 神様みたいな奴なんだ! そんな奴を殺してしまうのは間違いだと思うだろう! なあ、なあ、なあってば! おい、博士ぇ、博士ー!

[D-87は数十分間ドアを殴り続けた。この時点で████博士は警備員を呼び寄せ、警戒態勢を敷く。ドアは破壊されなかったが、収容室から更なる異変が起きた。]

D-87: ……どうしたんだ、D-735。お腹すいたのか? すまねえが、昼飯さっき食べちゃったしなあ。何もねえな。そうだ、これなんてどうだ。食べてくれよ。

[D-735の悲鳴と物音。それに混じって湿っぽい音が響く。]

D-735: は、はかせえ! 博士、D-87が、あああ、こいつやべえ! うわぁ……誰かきてくれ !気持ち悪いんだよ!! こっちに、くるなあぁあ!

[この時点で警備員が収容室に突撃した。収容室ではSCP-320-JPを放り投げたD-735と、昼食時に使用したスプーンを使って自身の眼球を抉り、D-735の口に無理矢理詰め込むD-87の姿が目撃された。]

D-735:[嘔吐及び嗚咽。]

D-87: ああ、すまねえすまねえ。これやるから、さ、ね?

[D-87は自身の歯を抜き、押し付ける。D-735が錯乱し暴れる度に爪・舌・毛髪を提供し続けた。]

<ログ終了>

実験を中止し、D-735とD-87を個別の部屋に移動途中、D-87は自身の皮膚を剥がし、D-735の元へ駆け寄ろうとしました。[削除済]の為、D-87は警備員によって終了。D-87の暴走の理由は、D-735が自身の吐瀉物によりユニフォームが汚れおり、衣類を綺麗にするために自身の皮膚を剥いだものだと考えられます。D-87のユニフォームもD-735と同様に清潔な状態ではありませんでした。

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