SCP-3298
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SCP-3298-crowd.jpg

インシデント3298-1にて収集された監視映像。手前の丸で囲んであるのがSCP-3298だと推察される。

アイテム番号: SCP-3298

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 自動ウェブクローラーbot CROSS-29803が、SCP-3298の目撃情報についてオンラインの個人広告や "missed connection1" Webサイトを監視し、必要であれば投稿を削除する業務に割り当てられています。SCP-3298のターゲットと思しき民間人は拘束し、研究のために尋問します。SCP-3298の性質上、正常性に影響する漏洩の危険性は低いものの、解放前にはクラスB記憶処理を実施するよう推奨されます。

SCP-3298の影響を受けた人物は、その動向と交流を監視する必要があります。SCP-3298を拘束する試みは非生産的であると示されており、保留となっています。代替方法の提案書はディ・ヴィータ管理官に提出してください。

説明: SCP-3298は出現するたびに外見が変化する人型実体です2。特定の人物をターゲットとし、そのターゲットが魅力を感じる外見・癖・振る舞いを示します。これまでのターゲットは全員、SCP-3298にロマンチックもしくはプラトニックな魅力を強く感じると述べています。ターゲット間の傾向 (例: 人口動態、社会経済的地位、身体的外見、心理的プロファイル) は観測されていません。SCP-3298の出現は1977年以降、世界中で████回記録されています。SCP-3298は公衆の場にのみ出現し、概ね以下の場所で目撃されます。

  • 公共交通機関
  • 空港
  • 都市広場や公共スペース
  • 公園や景勝地
  • 博物館や美術館
  • スポーツイベントや音楽イベント、文化イベント

SCP-3298はターゲットから20 m〜8 km離れた地点に出現します。この範囲の最大距離では、SCP-3298は拡大可能な機器を通して観測されており、人間の可視範囲を超えているにもかかわらず、ターゲットの行動を異常な手段で認識し、ジェスチャーや表情で応対していました。

SCP-3298は反ミーム特性を有しています。ありふれた方法で他者と交流を取る様子 (店で商品を購入するなど) も見られていますが、出現場所において他者が気付くことは稀です。目撃者はSCP-3298と交流した記憶を保持しておらず、視覚資料を見せて促した場合でさえも説明に苦心します。SCP-3298のターゲットもまた、微力ながらもこの特性に影響されます。ターゲットはSCP-3298を目撃したという確かな記憶をしばしば保持しますが、時間が経過するにつれて、SCP-3298の詳細な説明が次第に難しくなっていきます。SCP-3298の特徴として一貫して報告されるのは、青い衣服を着用している点のみです。SCP-3298は動画や写真形式の記録に残る一方で、反ミーム特性はこれらの記録にも適用されます。

出現するたびに外見が変化する点を除けば、SCP-3298は非異常な人間と何ら変わらない挙動を見せます。SCP-3298に挨拶すると肯定的な感情反応 (笑顔になる、手を振るなど) が得られる一方で、敵意や怒り、苛立ちを向けるとSCP-3298は苦悩し、その場を離れます。挨拶に好意的な反応を返すにもかかわらず、SCP-3298はターゲットとの関わりを避け、SCP-3298に接近を試みることもまた離脱を招きます。SCP-3298が局所的な確率改変場を展開し、それによって他者との接触を避けているという仮説が立てられています (補遺3298-2参照)。

SCP-3298を好意的に認識した場合、SCP-3298は大抵1週間から1ヶ月の間隔を空けて長期にわたってターゲットのもとに出現し、ターゲットは1日から██年までの間SCP-3298を目撃し続けます。その際のSCP-3298の挙動は最初の出現時と同一です。SCP-3298を認識しなかった場合、もしくはSCP-3298に嫌悪的な行動を取った場合は出現しなくなります。SCP-3298の影響を受けたターゲットはしばしば憂鬱感や孤独感を露わにしますが、異常でない同等の状況における対照被験者とこの状態との間に大きな差はなく、SCP-3298が認識災害特性を示した証拠もありません。

ターゲットのもとにSCP-3298が出現する期間は、SCP-3298からメッセージを受け取った際に終結します。この受け取りは、ターゲットに視認されている文章が関連するメッセージに変化するという幻覚として現れます。このメッセージは文脈が曖昧だったとしてもSCP-3298に関連するものとして認識されます。時間が経過しても、メッセージはターゲットの記憶から失われませんが、他者からは観測できません。影響を受けた文章の原料を分析した結果、この効果は単なる幻覚であると確認されています。メッセージの内容は多岐にわたりますが、ターゲットは一貫して好意的かつ肯定的なものと説明し、結果としてSCP-3298に関わる負の感情の解消に繋がることが多々あります。

補遺3298-1: SCP-3298の影響を受けた人物が述べたメッセージの例

対象: PoI-3298-1393
日付: 00/06/11
状況: 出現から3週間後、朝食のシリアルボックス
文章: あなたの犬は、飼い主のことが大好きなようですね。あなたは間違いなく良い人です。

対象: PoI-3298-1822
日付: 02/10/20
状況: 出現から3日後、地方のスーパーマーケットのチラシ
文章: 挨拶してくださってありがとうございます。おかげでいい一日になりました。

対象: PoI-3298-2291
日付: 04/12/29
状況: 出現から10日後、小説『アンナ・カレーニナ』の26ページ目
文章: 私の行動は少し変で、ひょっとすると不適当であったかもしれません。不快な思いをされていなければ良いのですが。

対象: PoI-3298-5422
日付: 08/08/01
状況: 出現から8か月後、道路の掲示板広告
文章: 木曜日の夕方に訪れると、入場料が半額になりますよ。

対象: PoI-3298-5503
日付: 12/07/03
状況: 出現から1か月後、ニューヨークタイムズ発行の第1面記事中の文章
文章: あなたに会えてとても楽しかった。あなたも同じように思っていたなら幸いです。ですが、あなたに会うたびに、私の心は少しずつ傷ついていきました。ふとこう考えてしまったのです、もしあなたも同じように感じているのなら、私もあなたの心を傷つけているのではないか? と。それは私が恐れていることで、あなたにそんな思いは絶対にさせたくありません。だからこそ、ここでさよならを告げます。

対象: PoI-3298-6002
日付: 15/01/19
状況: 出現の翌日、携帯電話のメール
文章: すみません、人との正しい話し方を学んだことがないのです。

対象: PoI-3298-6111
日付: 18/02/07
状況: 出現から6日後、映画『ダンケルク』のフランス語字幕
文章: 新しくしたその髪型、とても似合っていますよ。

補遺3298-2: 20██/02/01、財団エージェントのジュネが、スペインのトルドである人物を目撃したことから、自身がSCP-3298の影響下にあるという疑念を報告しました。反ミーム部門職員による評価の結果、この人物はSCP-3298である可能性が高いと判断されました。この状況はSCP-3298を拘束する好機であると捉えられ、遠隔での監視中にエージェント・ジュネを2人の同僚が常時尾行するという作戦が立てられました。遭遇記録の書き起こしは以下に添付されています。

インシデント3298-1:

20██/02/23、15:39

エージェント・ジュネがアトーチャ駅の外でインファンタ・イザベル通りの反対側にいるSCP-3298を目撃する。のちのエージェント・ジュネや (記憶補強剤を服用させた) 一般の目撃者の証言によれば、SCP-3298は30代前半の身長170 cm前後のスペイン人女性で、茶髪が肩までかかり、紺色のジャケットとカーキ色のズボンを着用していたとされている (画像参照)。

エージェント・ジュネがSCP-3298に手を振り、ジェスチャーを返されたのち、SCP-3298のもとへ道路を横断しようと信号機を待つ。信号機の色は8分間変わらず、マドリード自治体警察の警官に扮したエージェント・アメナーバルとエージェント・エフロンが現場に到着し、エージェント・ジュネを横断させようと交通を止める。その際、SCP-3298が困惑した表情を見せ、駅の入り口に向かって歩き始める。

全エージェントが駅へとSCP-3298を追いかける。外の人混みはこの時間帯の平常時よりも多く、エージェント・ジュネは通り抜けるのに苦心している。一般人は財団エージェントにほとんど注意を向けず、道を開けるよう命じても、予測より反応が緩慢である。

駅構内でSCP-3298が改札機を通過したのが見られる。エージェント・ジュネが通過する際、交通カードを読み取った改札機がエラーメッセージを返す。エージェント・ジュネが改札機を乗り越えるが、自治体警察の警官が介入しようとする。この警官はエージェント・ジュネに警官身分証明書を提示されても反応せず、エージェントらに強制的に鎮圧される。

この時点で、SCP-3298は16:06発のC-7線電車に搭乗している。エージェントが搭乗する前にドアが閉まり、エージェントや作戦司令部が運転手に連絡して発車を止めようと尽力したものの、電車は予定よりも早い16:03に発車する。

電車が次の駅 (レコレトス) に停まり、対テロリスト作戦を口実に財団工作員がその場に留める。捜索に先んじて乗客が電車を降りた形跡は存在しないにもかかわらず、SCP-3298は発見されなかった。監視カメラの映像を精査したところ、SCP-3298がカメラの視野に入らないよう車両間を移動する様子が映っていたが、次の車両には現れていない。この映像では、SCP-3298は泣いている。

この作戦にリソースを多量に費やした一方でわずかな成果しか得られなかったため、これ以降SCP-3298を拘束する計画は立てられません。20██/02/28、SCP-3298とは無関係の財団ファイルの定期精査中に、エージェント・ジュネがSCP-3298からのメッセージを見たと報告しました。内容は以下に書き起こされています。エージェント・ジュネはその後、1週間の個人休暇を申請し、受理されました。

街中で誰かを見ると、時おり特別な縁があるように感じます。きちんとお会いしたいと私がどれほど思っているかは見当もつかないでしょうが、皆さんのことを思えば、会わないほうがいいのです。

差し支えなければ、1つだけお願いがあります。こんなことを頼める立場にないとは分かっていますが、もしそうできるのであれば、私としては非常にありがたく感じます。

私のことを忘れないでください。

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