SCP-334-JP内で撮影された街並。SCP-334-JP-1から距離を取ると、撮影画像の鮮明さは極端に落ちる。
アイテム番号: SCP-334-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-334-JPは隠蔽のため、民間工業施設に偽装されたサイト-81██がその周囲に建設されました。収容ゾーンはサイト中央部に構築されており、SCP-334-JPは内壁に設置された8基のCCTVカメラによって常時監視されています。SCP-334-JPの推定容積が現在の収容ゾーンを超過する可能性が生じた場合、プロトコル[霧隠れ]に基づいて直ちに施設の増改築を行い、ゾーン外への収容違反を防止してください。職員による進入実験を行う場合、SCP-334-JP-1との対話行為は原則的に禁止されています。
説明: SCP-334-JPは、██道近くの林道に位置する霧の内部に広がる巨大な街です。外部から観察した場合、SCP-334-JPは███mの範囲に発生した霧のように見えます。全体の面積は未だ拡大していると推測されていますが、同SCP-334-JP内に出現する人型をした霧状の存在、SCP-334-JP-1を随伴せずにSCP-334-JP内を探索することは不可能と見られているため、その全容を把握することは現在でも出来ていません。
SCP-334-JPは幾つかの民間廃棄物処理業者により利用されていたと見られ、その過剰な処理ペースの由来を調査した財団フロント企業により発見されました。
SCP-334-JPに進入した物体、及び存在は、その殆ど全てが数分内~10分ほどの間に、SCP-334-JP-1と遭遇します。外部からの進入物をどのような手段で認識しているかは不明ですが、SCP-334-JP-1に遭遇した意思を持たない物体は、全てSCP-334-JP-1により回収され消失します。消失後、それらはSCP-334-JP内部の建材等に利用されると見られていますが、SCP-334-JP-1が気に入った物体及び物品は、SCP-334-JP-1の「部屋」に配置される場合もあるようです。
また、意思ある存在がSCP-334-JPに進入した場合、その全てにおいてSCP-334-JP-1の「案内」を受けます。この「案内」を拒否することは可能ですが、拒否した場合、SCP-334-JP内は外部から見た面積と変わらない霧の満ちた空間に変わります。これらの霧の発生源は不明ですが、特異性は見られません。
加えて、「案内」対象以外に何らかの存在がSCP-334-JP-1を伴わずSCP-334-JP内を探索しようとした場合、「案内」を拒否した場合と同様の現象が発生します。これは小型UAV等で高高度からの追跡を行おうとした場合にも発生し、SCP-334-JP-1から5m以上の距離を取るとSCP-334-JPから抜け出してしまうことが確認されています。
このSCP-334-JP-1の「案内」を受けた対象は、SCP-334-JPからの脱出を拒否する傾向にあり、帰還したDクラス職員によれば「後ろ髪を引かれるような気分」になると報告しています。この効果を振り切ることが出来なかった者は消失することが判明していますが、探査機等の機器越しでは影響を受けません。
SCP-334-JP進入記録1
概要: カメラと音声出力機器が搭載された無人探査機を用い、SCP-334-JPへ進入。
経過: 進入後、7分を過ぎた時点でSCP-334-JP-1と遭遇。
結果: 下記を参照。
█研究員: 映像は途切れないようだが……GPSの反応は完全に消失しているな。
(進入後、探査機のカメラには霧とアスファルトの路面だけが延々と映し出されていたが、進入から7分後、唐突にカメラが濃い霧によって覆われる)
█研究員: うわ、なんだ。
SCP-334-JP-1: なにこれ。また変なのが来た。
█研究員: あー、すまないが、離れてもらってもいいかな?
SCP-334-JP-1: わ、喋った。あなた、なに?
(霧が離れ、周囲の霧と対比しても一際濃い人型の霧が探査機の目前に存在するのが確認できる)
█研究員: こんにちは。あー、君は何者かな?
SCP-334-JP-1: 私? 私は[編集済]って言うの。あなたのお名前は?
█研究員: ああ……そうだな、[探査機の固有番号]だ。
SCP-334-JP-1: ふーん。変な名前。
█研究員: 君は一体ここで何をしてるんだい?
SCP-334-JP-1: 街を作ってるの。ねえ、良ければ見て行って。悪いようにはしないから。
█研究員: では、お願いしよう。
この後、SCP-334-JP-1との歓談を交えながら探査機はSCP-334-JPへと進入した。SCP-334-JP-1は、「最近喋る相手が来なくてつまらなかった」「どこから来たのか」等の質問を行いコミュニケーションを図ってくる様子が観察出来た。SCP-334-JPが30分ほど「案内」を行い、最終的に「部屋」へと探査機を導いた。
(ビルを模したと思われる建造物に誘導され、様々な物品の配置された一般的なマンションの一室に似た部屋へ案内される)
SCP-334-JP-1: ようこそ、私の部屋へ。
█研究員: これは、君の部屋かい?
SCP-334-JP-1: そう。色んな所に落ちてる、色んな物を集めた場所なの。
(イミテーションの装飾品、破損した洋風のランプ、全身鏡、マスコットのぬいぐるみ等が確認できる)
█研究員: 色んな所?
SCP-334-JP-1: うん。濃い霧の中とか、急に飛んできたりとか、川に流れ着いたりとか。色んな物が来て楽しいの。臭かったり、汚かったりもするんだけど、そういうのはぜーんぶ建物とか地面にしちゃう。そしたら臭いも汚れも見えなくなって、気にならなくなるんだ。
█研究員: それは、ゴミってことなんじゃないだろうか。
SCP-334-JP-1: わかんない。でもゴミなんか無いよ? 全部使えるものだもの。
█研究員: 君は、ずっと一人でこれを?
SCP-334-JP-1: うん。楽しいよ。最初は小さなお家しか作れなかったんだけど、たまに空に映る街を真似してみたりしてたら、割と何でも出来るってわかって。そうしてる内に、こんな風になっちゃったんだ。
█研究員: 空に映る街?
SCP-334-JP-1: うん。時々霧の隙間から見えるの。代わり映えはしないけどね。皆似たり寄ったりで、見てる内に私の街も同じような街にしちゃったけど。
█研究員: その最初と言うのは、いつくらいの話なんだい? いつからこんなところに?
SCP-334-JP-1: (5秒間の沈黙)覚えてない。ねぇ、そろそろ満足したでしょ? 気が済んだら帰った方が良いよ。
この後、SCP-334-JP-1に案内され、特に問題なく探査機は帰還した。
SCP-334-JP進入記録2
概要: Dクラス職員に通信機器を持たせ、SCP-334-JPへ進入。
経過: 進入後、4分を過ぎた時点でSCP-334-JP-1と遭遇。
結果: 下記を参照。
D-334-JP-1: 霧が深くて何も見えん。ホントにこんな所に何かあるのかよ。
█研究員: 黙って進め。
D-334-JP-1: (舌打ち)わかっ、わぁっ!?
SCP-334-JP-1: こんにちは。あなたは誰?
D-334-JP-1: いっ、霧が、霧が喋っ、
█研究員: 落ち着け。それと会話してみてくれ。
SCP-334-JP-1: 人の顔見て驚くことないんじゃない?
D-334-JP-1: な、あ、わ、わかったよ。あー、えー、お、お前は俺に何かして来たりしないよな?
SCP-334-JP-1: しない。そんなことしても仕方ないでしょ。そんなことより、せっかく来たなら私の街を見ていってよ。悪いようにはしないから。
D-334-JP-1: はぁ……だそうだが。
█研究員: よし、付いて行ってみてくれ。
D-334-JP-1: りょ、了解。
(以後、SCP-334-JP-1は探査機に対して話した内容とおおよそ変わらない内容をD-334-JP-1に対し話し続ける。その後、前記録と同様に「部屋」へとD-334-JP-1を導いた)
SCP-334-JP-1: 私のお部屋へご案内。ようこそ。
D-334-JP-1: ここは君の部屋なのか?
SCP-334-JP-1: そうだよ。今まで見た街もこのお部屋もぜーんぶ私が作ったんだ。凄いでしょ。
D-334-JP-1: 凄いな……君はずっとここに一人で?
SCP-334-JP-1: うん、でも毎日色々見つかるから、退屈はしないよ。
D-334-JP-1: そうか……でもどうして街なんて作ってるんだ?
SCP-334-JP-1: 物で溢れちゃうから。放っておいたこともあるんだけど、気にしないでいると、どんどん色んなものが溜まってくの。誰が送ってくるのかわかんないけど、たくさんありすぎても困っちゃうよね。
(幾らかの取りとめのない会話が行われる。)
█研究員: もう充分だろう。よし、D-334-JP-1。帰還しろ。その霧に言えば帰してくれるはずだ。
D-334-JP-1: (3秒間の沈黙)嫌だ。
█研究員: D-334-JP-1。何を言っている。命令に従わないなら処分されることになるぞ。
D-334-JP-1: 嫌だ。この子をここで一人きりにすることなんて出来ない。
SCP-334-JP-1: ここに居続けるのはやめた方が良いと思う。
D-334-JP-1: どうして。君だってこんな所に一人きりで――
█研究員: おい、D-334-JP-1。応答しろ。おい。聴こえているのか。
(機材を投げ出したと見られる。これ以降、D-334-JP-1が返答を行うことは無かった)
SCP-334-JP進入記録3
概要: Dクラス職員に出現する事象について事前に説明を行い、記録2と同様の装備でSCP-334-JPへ進入。
経過: 進入後、5分を過ぎた時点でSCP-334-JP-1と遭遇。
結果: 下記を参照。
(5分間、沈黙が続く)
SCP-334-JP-1: やあ、こんにちは。
D-334-JP-2: うわっ、本当に霧が喋ってる。
SCP-334-JP-1: 最近来るお客さんは失礼な人ばっかりね。
█研究員: D-334-JP-2。以前ここに進入した者がどうなったか聞いてみてくれ。
D-334-JP-2: 了解。この間、ここに誰か来てたと思うんだが、そいつってどうなったんだ?
SCP-334-JP-1: (10秒間の沈黙)
D-334-JP-2: どうした?
SCP-334-JP-1: 知らない。皆、消えちゃうんだもの。
█研究員: 消えるとは? どこに消えてしまうのか聞いてみてくれ。
D-334-JP-2: そいつらは、その消えたって連中はどこへ行くんだ?
SCP-334-JP-1: 知らない! 私だって、消えちゃった人がどこに行くかなんて知らない! 帰って! 帰って! ここにいちゃダメ!
直後、SCP-334-JP-1は錯乱した様子で消失。今探索においてSCP-334-JPへの進入は出来なかった。
補遺1:D-334-JP-1消失後、SCP-334-JPの霧の範囲が██m拡大していることが判明しました。これによる危険性は今のところ確認されていませんが、SCP-334-JP内有人探査は許可を得た場合にのみ申請が受理される方針に変更されました。
補遺2:続けて行われた数度の探査の途上、突如SCP-334-JP内に大音量の音声放送が響き渡りました。SCP-334-JP-1は「時々ラジオ塔から流れるよくわからない音」と答えていますが、解析の結果、早回しにされたメッセージであると判明しました。メッセージは以下の通りです。
██がつ██にち[ノイズ]は[ノイズ]そうきょくですきりはひろがりつづけておりせかいかっこ[ノイズ]はのみこまれましたしんこうがあまりにもはやく[ノイズ]とめるてだてはわかっていませんしみんのみなさんはけしてそとにでず[ノイズ]りからみをまもってくださいくりかえします
(以降、メッセージ頭に戻り繰り返される)
このメッセージはおおよそ1ヶ月毎、██日前後に3分間だけ流れ続けることがわかっています。