クレジット
本記事は、CC BY-SA 4.0ライセンスの下で提供されます。これに加えて、本記事の作成者、著者、翻訳者、または編集者が著作権を有するコンテンツは、別段の定めがない限りCC BY-SA 3.0ライセンスが付与されており、同ライセンスの下で利用することができます。
「コンテンツ」とは、文章、画像、音声、音楽、動画、ソフトウェア、コードその他の情報のことをいいます。
監督評議会命令
本ファイル内数箇所の閲覧はレベル4以上の職員に限定
アイテム番号: SCP-3480
オブジェクトクラス: Keter
脅威レベル: 黒
特別収容プロトコル: 一般市民によるオリンポス山への接近は、重要文化遺産の保護というカバーストーリーの下、ギリシア政府によって禁止されます。ギリシア内務省職員に扮した財団職員は当該エリアへの非公認の立ち入りを妨害しなければなりません。
SCP-3480-2を収容するべく、SCP-3480のおよそ400メートル下方のオリンポス山中に、エリア-13が建設されました。エリア-13はその設備の周囲に18基の巨大スクラントン現実錨(MSRAs)が円形に配備されます。全ての錨は常時起動状態を維持し、損傷あるいは機能不全に陥ったあらゆるユニットは可及的速やかに修理のうえ再配置されます。加えて、1つのシャンク/アナスタサコス恒常時間溝(XACTS)がプロトコル・クロノス実行のためにサイト内に常備されるとともに、バックアップ用に予備のXACTSがサイト倉庫に保管されます。
機動部隊オメガ-12(“アキレウスの踵”)は、現実改変能力を保持する存在の捕獲及び終了に特化した部隊であり、プロトコル・クロノス発令中はSCP-3480-2実体を収容するためにエリア-13に恒久的に駐屯しなければなりません。
ホワイト・イベント発生時に、プロトコル・クロノスが発令されます。プロトコル完遂後、クラスⅢ以下の現実改変存在に指定されるSCP-3480-2実体はエリア-13内部の標準ヒト型収容室に収監されなければなりません。クラスⅣ以上に指定された実体は、パーマー・プロトコルに基づき、昏睡状態に置かれた上でサイトに留置されなければなりません。
- ホワイト・イベントの開始に際し、エリア-13のXACTSがオリンポス山を周囲の現実性から時間的に隔離し、CK-クラス:現実性再構築シナリオの蓋然性を低減します。
- オメガ-12部隊員のうち1/3はエリア-13から出動し、SCP-3480-1から周囲100メートルの円形範囲を確保します。
- 機動部隊オメガ-12はホワイト・イベントの持続時間中、円陣を維持しつつ4時間交代制で監視に当たります。
- ホワイト・イベント収束時、機動部隊オメガ-12は長距離鎮静弾を用いて、発生したSCP-3480-2実体の意識を奪います。非番の職員も迅速に参集してSCP-3480へ出向き、必要に応じてサポートを行わなければなりません。
- 当該実体の拿捕ないし終了後、機動部隊オメガ-12はSCP-3480-2実体をエリア-13へと連行し、収容下に置きます。
- 収容達成後、XACTSは停止されます。
説明: SCP-3480はギリシア共和国のオリンポス山山頂です。当エリアのヒューム値は財団の記録上の最低値であり、コウルドマン-ジェフスキーヒューム計によると、およそ1.2×10-██Hmと計測されました。ヒューム値が絶対零度に達することは、理論上自然には発生し得ません。財団による小型次元空間内におけるSRAを用いた実験ですら、0.15Hm以下のヒューム水準を発生させることは不可能でした。ヒューム値をそれ以下に低下させることは理論上可能ですが、そのためには何百基ものSRAを要します。これほどの数は財団サイトの中でもただ1ヶ所のみしか保有していません。このヒューム値ならば、現実性が非異常性の人間によって改変されうるほどに脆弱になり、局所的現実性の視覚的歪曲を示すはずであるにもかかわらず、SCP-3480は通常その異常環境の兆候を表出しません。当アノマリーは発生してから████年経過していると推測され、財団の管理下に置かれるのに先立って様々な要注意団体によって収容あるいは運用されてきました。
SRAは、エリア-13内部のヒューム値を1Hmの基準ラインに維持することならば可能ですが、SCP-3480のヒューム値を基準ラインへと正すことは出来ません(運用能率の低下にもかかわらず)。したがって、SCP-3480は局所的現実性が流出していく穴隙として働くのだと仮説立てられています。この効果はSCP-3480に近接する生物や環境に負の影響を及ぼさないものと見られます。
ホワイト・イベント中のSCP-3480-1(アノマリーの右側にカント計数機が視認可能)
SCP-3480-1は、SCP-3480内にアトランダムとみられる間隔で出現する徴候に与えられた呼称です。 出現に先立つ5〜22分間、SCP-3480内のカント計数機が指し示すヒューム値は基準ラインへと回帰します。出現が発生すると、1体の無意識状態の人間が地表からおよそ3メートル上方に自然発生的に現れ、静止します。当実体はその後白光によって完全に包まれます。この後、SCP-3480内のヒューム値は再度限りなくゼロに漸近します。これらの出来事は総じてホワイト・イベントと呼称されます。
当該個体の出現と極小ヒューム値への再帰の後、SCP-3480-1は多様な長さの時間をかけて滞留します。SCP-3480-1実体との相互干渉はその特性のために不可能です。SCP-3480-1の周囲0.5メートル以内に存在するありとあらゆる物質は、急激な現実性の喪失を被り、瞬時に分子分解されるに至ります。最終的に白光が衰え、内部の個体は地表へ落下して意識を取り戻します。これらの個体はこの時点でSCP-3480-2実体とみなされます。
SCP-3480-2の全実体は種々の強さを有する現実改変存在であり、実体に関わったホワイト・イベントの継続時間が長いほど、当該実体の能力は強力になります。SCP-3480-2実体は概してソシオパシー、ナルシシズム、暴力的傾向の兆候を示しています。SCP-███、SCP-███やSCP-████は、SCP-3480の収容以前に出現したSCP-3480-2実体であるとみられています。SCP-3480-2実体のうちおよそ68%は肉体的・精神的な障害を見せています。それらの障害には通常、追加された心室、完全な多指の手足、頭蓋内体積と頭蓋高の増大、および2.4-3.6GHz帯域のラジオ波を放射および受信する不明な目的のための腹腔内臓器の存在、知的障害が含まれます。
実体 |
現実改変能力のクラス分類 |
ホワイト・イベント継続時間 |
説明 |
結果 |
SCP-3480-2-1 |
クラスⅠ |
94分間 |
左腕を欠損したコーカソイド男性。 |
収容以後初めてのSCP-3480-2実体との遭遇。ターゲットは混乱し、機動部隊オメガ-11“パリスの弓矢”によって収容は迅速に達成された。負傷者は報告されていない。初期収容プロトコルが当インシデントののちに策定された。 |
SCP-3480-2-4 |
クラスⅢ |
74時間31分間 |
身体異常を持たない黒人女性。IQテストで155を記録した健忘症患者。 |
ターゲットは財団職員を目の当たりにして恐怖を示し、無意識のうちに現実改変能力を発揮した。機動部隊オメガ-11の隊員のうち6名が捕獲の成功までに失血死した。ターゲットは鎮静剤に対して顕著な抵抗力を示し、注射後49秒間意識を喪失しなかった。付記:SCP-3480収容中最初に被った人的被害である。 |
SCP-3480-2-8 |
クラスⅣ |
192時間8分間 |
既知の肉体的・精神的障害を持たないアジア人男性。 |
ターゲットは機動部隊オメガ-11を一瞥して憤怒を露わにし、直ちに彼らに対して能力を行使した。ターゲットには鎮静剤が通用せず、弾薬も目に見えるダメージを与えなかった。オメガ-11隊員のうち10名が鈍い物理的外傷によって殉職した。4名が風化して死亡した。8名は重度の熱傷あるいは焼死に至った。3名は現実性の喪失により殉職した。全職員が死亡した後、対象はギリシアの都市██████████に侵入した。[データ削除済] 付記:終了されるまでにターゲットはCK-クラスシナリオを引き起こし、██████████とその近傍の████████島に関するあらゆる知識が人類の共通記憶から消去された。 |
SCP-3480-2-9 |
クラスⅡ |
20時間17分間 |
余分な心房と2.2メートルもの異常な身長を持つコーカソイド女性 |
新たに再結成された機動部隊オメガ-11の、当アノマリー収容に対する経験が未熟だったために、ターゲットは初期収容の試行から逃亡した。収容までに██名の市民が犠牲となった。 |
SCP-3480-2-19 |
クラスⅤ |
480時間3分間 |
[データ削除済] |
[データ削除済] その後の手順ラザルス-01は成功裏に実行された。付記:収容違反の激甚な性質と、その結果としてのCK-クラスシナリオは、収容プロトコルの抜本的改訂に帰着し、当該シナリオの結果はレベル5クリアランス下に分類された。機動部隊オメガ-11は当インシデント後に解隊され、収容責務は新設の機動部隊オメガ-12へと移譲された。 |
インタビュー対象: SCP-3480-2-5
インタビュアー: リアム・ディーツ博士(エリア-13管理者)
前書: 当実体は多数の手足を持つものの、精神的に、また記憶上の障害を持たないアジア人男性である。対象はクラスⅠの現実改変能力を示しており、問題なく捕獲された。
<記録開始>
ディーツ博士: SCP-3480-2-5、貴方の氏名と、貴方がSCP-3480内に出現する以前の所属先をお聞かせください。
SCP-3480-2-5: アーサー・シュウ博士と申します。財団のレベル3研究員でした。
ディーツ博士: 出現以前のことを覚えていますか?
SCP-3480-2-5: 複雑でして、最低限しかお話できません。まず私が思い出せるのは、我がサイトがガニメデ・プロトコルに関する警報を受信したことです。それからは…。
ディーツ博士: 続けてください。
SCP-3480-2-5: 地獄でした。そうとしか言い表せません。ある時には天地がひっくり返り、ある時私は壁の一部となっていて、またある時私の身体は幾何学を無視した形に捻じ曲げられ。そんな時間の中を、私はずっとずっと、消えては現れを繰り返していました。意味なんて何もなかった。ですが、一層酷かったのは、あの人々でした。
ディーツ博士: 詳しく。
SCP-3480-2-5: 膨大な人数でした。私が出会ってきた人々の数よりも多かった。大多数は死体でした。多くが殆ど人間だと呼ぶことのできないモノでした。彼らはただ…いや、私たちは皆ただただ、叫んでいました。死体ですら。そうしているうちに私たちは何処か他の場所に飛び、また再び同じことが始まっていくのです。
ディーツ博士: 貴方の居た場所や、貴方と共にそこに居た人々に見覚えはありましたか?
SCP-3480-2-5: ええ、実のところ。殆どは見知らぬ人でしたが、毎回毎回、私のサイトで見かけたことのある同僚やDクラスを視認しました。場所については、全域が地下だったように思われました。非常に高度な技術力でした。私には何ら調査はできませんでしたが、あそこにあったモノの1つに近づくほど、異様さは深まるのです。この場所にこうして出てくる直前、私はそのモノの付近に居りました。2度、地上に出たこともありました。言わずもがな、周囲の地形は異なっていました。見渡す限り動植物は見当たらず、空は血のような赤色でした。…いや、あの山々はどこかで見たことが…。
ディーツ博士: それで?結局貴方は何処に居たのですか?
SCP-3480-2-5: 失礼。娘を…、休暇中に私の娘をあそこへ連れて行ったな…。 …イエローストーン。そうだ、イエローストーンだ。
<記録終了>
後書: 対象の弁明は別のSCP-3480-2実体によって裏付けられた。
補遺3480-1: 現行プロトコルの制定以降はSCP-3480による結果としてのK-クラスシナリオは発生しておらず、死傷者はたった██名に留まっています。
アイテム番号: SCP-3480-Ω
オブジェクトクラス: Thaumiel
脅威レベル: 白
特別収容プロトコル: 現実改変能力者の能力を抑制できる能力無しに当該実体たちを捕獲することの困難さ、ないしは収容違反の帰結として発生しうるK-クラスシナリオの蓋然性の高さを理由として、O5評議会は機動部隊オメガ-12(“アキレウスの踵”)の創設を可決しました。当機動部隊は外宇宙ALEPH出身の財団職員のクローンである、無害なSCP-3480-2実体から構成されます。隊員たちはクラス-Ⅲ以下に格付けされる現実改変能力を発揮します。新兵候補者は、彼らが捕獲されてから最低1年間、良好な振る舞いを見せるとともに財団の主義や理念に対する忠誠心を確認するための精神鑑定試験を通過しなければなりません。この後、新兵候補者は機動部隊オメガ-12への入隊を命じられます。
機動部隊オメガ-12は、プロトコル・クロノス発令中はSCP-3480-2実体を収容するためにエリア-13に恒久的に駐屯しなければなりません。加えて、オメガ-12は平時のプロトコル下において、SCP-3480との関連性を持たないにしろ収容するには危険すぎるとみなされた強力な現実改変能力者の捕獲あるいは終了のために運用されます。機動部隊オメガ-12の隊員は、エリア管理者の許可なしにエリア-13を退出することが禁止されています。そのような試みがなされた場合、終了措置が執られます。機動部隊オメガ-12の全隊員には頭蓋内部に遠隔式終了スイッチが外科的な手法で埋め込まれなければなりません。相互協力の意志を確たるものとするために、オメガ-12への入隊はいかなる状況下であろうと強制されてはなりません。プロトコル・クロノスおよびその他の正式な許可による作戦外での、現実改変能力の無許可行使は終了事由です。
プロトコル・クロノス
- ホワイト・イベントの開始に際し、エリア-13のXACTSがオリンポス山を周囲の現実性から時間的に隔離し、CK-クラス:現実性再構築シナリオの蓋然性を低減します。
- オメガ-12部隊員のうち1/3はエリア-13から出動し、SCP-3480-1から周囲100メートルの円形範囲を確保します。
- 機動部隊オメガ-12はホワイト・イベントの持続時間中、円陣を維持しつつ4時間交代制で監視に当たります。
- ホワイト・イベント収束時、機動部隊オメガ-12の現隊員は長距離鎮静弾を用いて、発生したSCP-3480-2実体の意識を奪います。非番の職員も空間転移によって迅速に参集してSCP-3480へ出向き、必要に応じてサポートを行わなければなりません。
- 鎮静弾がターゲットの無力化に失敗した場合、クラスⅠまたはⅡのオメガ-12隊員に、ターゲットのヒューム値を低減させ、通常兵器への耐性を弱めるための現実改変能力の行使が許可されます。
- SCP-3480-2実体による周辺現実改変の試みは、機動部隊オメガ-12隊員により抑止されます。
- 抵抗が続いたり、脱走の試みが現実性の視覚的不安定化を引き起こしたりする場合、クラスⅢのオメガ-12隊員に、ターゲットの現実改変能力を阻害するための自身の能力の行使が許可されます。この時点で実弾を使用したターゲットの終了措置が許可され、オメガ-12の裁量に委ねられます。
- 当該実体の拿捕ないし終了後、機動部隊オメガ-12はSCP-3480-2実体をエリア-13へと連行し、収容下に置きます。
- 収容達成後、XACTSは停止されます。
プロトコル補遺: 万一ホワイトイベントが500時間以上継続した場合、機動部隊オメガ-12の全隊員はその完遂までSCP-3480-1実体を監視します。SCP-3480-2実体の出現時、オメガ-12の全隊員はターゲットの現実改変能力を抑止するべく自身の能力を行使しなければなりません。可能性上のHK-クラス神的征服シナリオを防ぐべく、オメガ-12の全隊員はターゲットの即時終了を確実に遂行するために実弾を使用します。万一クラスⅥ実体が終了を免れた場合、Code NIGHTMARE JESTER GREENが全財団サイトに通達されます。
管理者付記: アノマリーの収容目的でのアノマリーの使用は常に困難が付き纏い、危険な賭けとなる。使用するアノマリーが、収容対象のアノマリーそのものから発生した人間であるならば、特にそうだ。アベルの幻影が我々皆に取り憑いているからこそ、オメガ-7が無くともアルファ-9なる部隊があるのだ。要するにだ。我々は現実錨が無ければ、通常の手段では強力なタイプ・グリーンを止められないのだ。次に復讐に燃える1人のDクラスがホメロスの叙事詩から飛び出してきたその時、オメガ-12が解散していた場合、我々が前回ほど幸運であるとはいえないだろう。
- リアム・ディーツ博士、エリア-13管理者