SCP-354-JP
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アイテム番号: SCP-354-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-354-JPを中心とする半径185.2kmの空域には「航空演習空域」のカバーストーリーを用い、一切の航空機の侵入を禁止して下さい。これを徹底するため、機動部隊所属の戦闘機による常時の防護戦闘空中哨戒を実施します。もし周辺空域に侵入しようとする航空機が存在する場合、警告を行い、空域侵入を阻止します。それでもなお航空機が侵入を試みる場合、撃墜します。これにより発生する問題は「演習中事故」のカバーストーリーを用いて収拾します。

説明: SCP-354-JPは██国際空港から東に約360km離れた地点に存在する、高度3000mから高度12000mまで届く円筒形の空間です。その直径は10kmです。
SCP-354-JPに何らかの航空機が侵入した場合、その乗員はSCP-354-JP-1に置換されます。SCP-354-JP-1は、外見上は乗員とは変わりませんが、通常のヒトと異なり、脳内に未知の器官が生じた存在です。

その直後、SCP-354-JP-2がSCP-354-JP中心部の高度6000mに出現します。SCP-354-JP-2は約全長20m・全幅15mの、世界各国で運用されているどの戦闘機とも違った形式の戦闘機1で、国籍識別記号・機体番号とも記載されていませんが、性能的には既存戦闘機全てを凌駕することが確認されています。2また、SCP-354-JP-2は財団の敵味方識別コードを持っており、IFF(敵味方識別装置)では敵と認識することはできません。

すべての場合において、SCP-354-JP-1はSCP-354-JP-2を振り切ろうと急機動を行いますが、SCP-354-JP-2はその性能的優位性によりSCP-354-JP-1を必ず撃墜します。その後、SCP-354-JP-2はSCP-354-JPに進路を変え、SCP-354-JP内で消失します。

財団はSCP-354-JPを、20██/██/██に起こった旅客機撃墜事件によって発見しました。当該旅客機は██国際空港に緊急着陸するため、通常の航路を離脱し、SCP-354-JPに侵入し、その後SCP-354-JP-1とSCP-354-JP-2を出現させました。当該旅客機はSCP-354-JP-2に撃墜され、しかる後SCP-354-JP-2はSCP-354-JPに帰還、そこで消失しました。██管制センター職員を始めとする全ての関係者には全員Aクラス記憶処置が行われました。また、財団は墜落機からSCP-354-JP-1の遺体を多数回収しました。

この事件の際、財団は墜落したSCP-354-JP-1の管制との通信以外で、内部音声の意味のある部分を、回収したボイスレコーダーの解析から再現することに成功しました。以下がその記録です。

SCP-354-1ボイスレコーダー音声記録
録音日時:20██/██/██

声A(40代ほどの男性):くそ、脱出できない。(判読不能、SCP-354-JP-2を指すと思われる)が諦めず追尾してくる!

声B(30代ほどの女性): まだ諦めてはだめだ。我々が(判読不能、人類を指すと思われる)に擬態している理由を忘れたか? 必ず(判読不能)は援軍をよこす。それによって(判読不能)も撃退される。もう少しだ。

声C(10代前半の男児): 本当か? 本当に(判読不能)に着けると思っているのか?

声B: 実際に出られたではないか。あと少しだ。諦めるな。(判読不能、声Cを指すと思われる)、到着後の手順は分かっているな?

声C: (判読不能)についたら、(判読不能)を用いて仲間を増やす――

(爆発音。多数の悲鳴)

録音終了:20██/██/██

付記: 旅客機がSCP-354-JP-2によって破壊されたため、録音はここで終了しています。

財団はこのボイスレコーダーからの情報で、SCP-354-JP-1はSCP-354-JPを通路としたなにがしかの侵略目的を持った存在と推定し、サンプルを取るため、実験を行いました。以下が実験報告書です。

実験方法 目的 結果
無人ドローンをSCP-354-JPに突入させる(複数回) SCP-354-JP-2の出現を喚起する いずれの回においてもSCP-354-JP-2は出現せず
Dクラス職員を搭乗させた超音速有人型ドローンをSCP-354-JPへと突入させ、SCP-354-JP-2の攻撃を可能な限り回避しながら帰還する(複数回) SCP-354-JP-2の能力の推定 全ての回においてドローンは撃墜、SCP-354-JP-1に置換されたDクラス職員は死亡、SCP-354-JP-2の能力の推定に成功
Dクラス要員を搭乗させ、脱出装置を備え付けた超音速型有人ドローンをSCP-354-JPへと突入させる(複数回) SCP-354-JP-1生存実体の確保 すべての回において、ドローンはSCP-354-JP-2により撃墜。脱出装置により脱出したSCP-354-JP-1に置換されたDクラス職員もSCP-354-JP-2により殺害される3
Dクラス職員を搭乗させたドローンによりSCP-354-JP-2を釣りだし、コンタクトを試みる SCP-354-JP-2の起源、意図、目的についての調査 SCP-354-JP-2は応答。以下にその記録を記録します

対象: SCP-354-JP-2

インタビュアー: ██研究員

付記: このインタビューは財団の使用する暗号コードによって行われた。

<録音開始, 20██/██/██>

██研究員: こちら██中央航空管制センター。貴機の所属と任務を教えてください。

SCP-354-JP-2: こちらは財団所属██方面██航空機動部隊所属、機体番号█████だ。[削除済]任務に付いている。

██研究員: 照会。そのような機動部隊も機体も我が方は保有していません。しかし敵味方識別装置は貴機を味方と認識しています。どういうことですか?

SCP-354-JP-2: それは我が方も疑問だ。[削除済]任務の主任とコンタクトを要求する。

██研究員: 照会。そのような任務の主任はこちらに存在していません。

SCP-354-JP-2: 重大な情報の齟齬が生じているようだ。さもなくば、貴官は財団職員を偽装した敵という仮説も成り立つ。

██研究員: それはこちらのセリフです。なぜ存在しない機動部隊と機体番号であるにかかわらず、財団のIFFには味方と認識され、財団の暗号コードでコンタクトできるんですか?

SCP-354-JP-2: 不明。おそらくは何かのアクシデントと推定されるが、財団からの暗号コードとIFFコードは変わらず更新されている。

██研究員: それは重大な機密漏洩です。ただちに██空軍基地に着陸し、我々の尋問を受けて下さい。

SCP-354-JP-2: それは拒否する。貴官らが財団職員を偽装した敵であるとの可能性がある以上、その要求に応じることは出来ない。

██研究員: ――敵と疑われるのは分かります。こちらも貴機を財団コードを不正に利用している敵と疑っています。ですが、それ以外の可能性も考慮しています。通信回線はオープンにして頂けませんか?

SCP-354-JP-2: それ以外の可能性は私も危惧している。貴官らとの通信回線は常時オープンにしておく。私もこの異常事態に対して対策を練らねばならない。そのためには対話が必要だ。

██研究員: ありがとうございます。

SCP-354-JP-2: 感謝は不要だ。これは両者の陥っている問題の解決のためのディスカッションだ。ともあれ、先の[削除済]任務で燃料がビンゴだ。本機は帰投する。

██研究員: どこへ帰投するんですか?

SCP-354-JP-2: ████(既存の人語に存在しない名詞)基地にだ。通信終わり。

<録音終了, 20██/██/██>

終了報告書: SCP-354-JP-2は少なくとも「我が」財団の保有機体ではない。それは確実です。ですが、何らかの原因で味方と認識され、暗号コードでコンタクトも取れます。また、本来機密であるはずの燃料搭載量や基地名についても言及しました。彼らは明らかにこちらに情報交換の意図を示しています。この原因の究明のため、さらなる調査の要を求めます。――██研究員

現在、SCP-354-JP-1の生存実体確保と、SCP-354-JP-2からより多くの情報を引き出すための実験は、月に一度終了予定のDクラス職員1名を用いる形で実施されています。Dクラス職員とドローンの無為な損害を局限するためです。
また、██研究員の提言により、O5理事会は一部機密資料を公開しましたが、このような任務に付いている機動部隊は存在しないとの結論でした。この矛盾――財団所属のIFFコードと暗号コードを利用できる財団に所属しない部隊という問題が、どこで生じているのか、原因は今だ不明です。4

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