SCP-3662
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当記事のリビジョン番号105は以下の部門によって作成されました。:

財団 鳥類部門

プルートプロトコルに準拠

付記: BEクラス「渡り鳥」シナリオを考慮し、フレデリック・ホイガル博士の指示により当記事をアクセスするためのクリアランスレベルは標準3から標準1に変更されました。

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SCP-3662の画像 (1950年ごろ)

アイテム番号: SCP-3662

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-3662は標準Safeクラス収容ロッカーに保管されます。SCP-3662の移動が必要な場合、いかなる人員も移動中のSCP-3662との接触は禁止されます。現在のSCP-3662-2実体は、長期間のノウアスフィア1への曝露を避けるために毎週変更される必要があります。

説明: SCP-3662は円柱状の小型装置です。広く平らな台の上に置かれ、台と一体のガラスケースの中に収められています。リバースエンジニアリングによる仕組みの解析は未達成ながら、装置は機械式であることが判明しています。SCP-3662とSCP-1008の間の類似性については調査中です。

SCP-3662と物理的に接触した対象(以後SCP-3662-1と呼称)は、突然激しい倦怠感に見舞われます。SCP-3662-1の脳活動は鈍化し、1分以内には全ての神経活動は停止します。完全な脳死に伴い、SCP-3662はクリック、ハム、振動などの音を発し始めます。SCP-3662-1の神経経路は大幅に変化して神経活動は再開します。この大規模な再構築はSCP-3662-1が、自身を以前のSCP-3662利用者であったと認識させます。

SCP-3662は神経マッピング技術とミーム共振イメージング2を使用しており、SCP-3662-1のミーム的構造を構築、データセンターに保管し、そのプロセス中に対象の神経経路を破壊しているものと推測されます。その後にSCP-3661-1の肉体には最近追加された非自ミーム的構造(以下SCP-3662-2)を注入しているとされます。

分析により、SCP-3662-2の情報はデジタルもしくは物理的な形で保存されるのではなく、一次元的に現実と接する抽象的なミーム集合3の形でSCP-3662内部に保存されることが判明しています。この形式で圧縮された情報は可逆的ですが、ミーム構造をノウアスフィア内の他ミームに晒し、復元される情報の品質に影響を与えます。この状態のヒトの精神は極めて繊細であり4、短いスパンでこの状態でいることですら復元時に深刻なダメージを残す恐れがあります。また、SCP-3662内の対象の意識は正常であることから、長期間の隔離がSCP-3662-1の心理にさらなるダメージを与える可能性があります。

補遺-A:

インタビュー記録


インタビュアー: Dr █████

対象: ローラ・ゲレーロ (D-90832の肉体を使用)

付記: ゲレーロ氏は数十年間、SCP-3662内に閉じ込められており、その知能は著しく低下しています。彼女は会話を理解する能力と特定の形式に則った筆記が可能ですが、長期の異常ミームへの曝露により全ての人格機能や、食事、睡眠、視覚、発声、そして右腕以外の身体部位を動かす機能を破壊されています。

<記録開始>

█████: こんにちはローラ、私の声が聞こえる?

ゲレーロ: [書き込む]: "わたしの日記さんへ5, [改行] こんにちは!はい、聞こえます。"

█████: よしよし。いくつかの質問に答えてくれるかしら?

ゲレーロ氏は紙の上でペンを泳がせる。

█████: イエスと解釈するわね。ねえ、どうしてあのオブジェクトの中にいたの?

ゲレーロ: "日記さん、ときどきあなたの言うことがわからないの。オブジェクトってなあに?あの時計のこと?あの悲しそうな男のひとがわたしのおでこにつけた、あれ?"

█████: そう、それのこと。その悲しそうな男の人のことを教えて。

ゲレーロ: "わたしあの人を知ってるの。町中で見かけたことある。いつも目に元気なくて、悲しそうで、いつも泣きそうにしてたの。しゃべらなきゃいけない時以外はひとこともしゃべらなかった。パパはあの人の娘がとってもとっても病気で、きっとずっと良くならないって言われるくらいだったそうなの。"

█████: そしてその人は何をしたの?

ゲレーロ: "ある日、男のひとは本当に泣いてたの。わたしが娘に似てて、きっと仲良くなれるって言ってた。それから、男のひとはわたしのおでこに時計を当てた。"

█████: それから?

ゲレーロ: "とても疲れたの、でも今にも眠りそうな時に目が覚めた。最初に感じたのは、さらわれるような感じ。肌がバラバラにされて、そのカケラが風に吹かれて飛んでっちゃうみたいな感じ。"

█████: あそこは、時計の中はどんな感じだった?

ゲレーロ: [わずかに躊躇する] "さみしかった。だれもいなくて、暗かったから。ずっと自分のなにかをなくしちゃっていくような気分だった。あそこはぜんぜん知らない世界だったのよ、日記さん。いつも真っ黒で、でもそこに…ちっちゃなクラゲ人がいた。クラゲ人たちはいつもは光ってぷよぷよ浮いてるだけで、近づくとうでや足のカケラを取っちゃおうとするの。[右腕で残りの四肢を指す]わたしは2回くらい近づいちゃったの。"

ゲレーロ: "わたし、ずっと逃げ回ってた。出口や、大人の人たちを探し回ってて。結局あきらめたの。あそこに大人は一人もいなかったし、出口もなかったの。わたしはただ[静止]クラゲたちが来るまでうずくまって泣いてた。ほかにどうすればいいかわからなったの。"

ゲレーロ: "ときどき、空を見上げることができた。ヒトデ、大きな鳥、怪物なんかがいた。わたしとパパが昔、車庫から望遠鏡を持ち出して小さな丘に言って、せ……せい……お星さまを見たことを思い出した。[躊躇]また、パパに会えるかな?"

█████: [静かに他の職員に耳打ちをする]伝えますか?[静止]ええと、でも彼らにとってローラはほんの数週間いなくなっただけで、だから我々が…[静止]わかりました。

█████: えっと、ローラ?あなたの家族は元気よ。ただ…ただ、今すぐには会えないの。あなたに家族が会いに来られるように私たちもすごく努力してる。

ゲレーロ: "会いたいの。"

█████: わかってるわ、ローラ。

<記録終了>

補遺-B: 以下はゲレーロ氏失踪事に発行された新聞です。


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