アイテム番号: SCP-3774
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-3774の全ての実例は捜し出され終了されました。現在SCP-3774の追加の実例を生み出す方法を詳述したいかなる設計図やファイルのバックアップも削除または破壊されており、原本のコピーのみがファイルストレージに保存されています。
説明: SCP-3774は遺伝子学的かつ人工頭脳学的に改造されたカの亜種のプロトタイプで、当初は要注意人物(PoI)を極秘に調査する目的で財団によって生み出されました。SCP-3774の実例群は生物工学によって作られた増強を子孫に渡し、そして後に続く世代の90%をメスの個体として生産する1ように仕込まれました。SCP-3774の実例群に付加された増強自体は以下の特性です:
- 写真の認識
- 生中継の映像および音声の放送
- 体内に埋め込まれた遺伝子データベースへのアクセス
- 自身のGPS位置情報を表示する信号の発信
SCP-3774の実例群は、1人の人間の対象の画像を見せられた時に、その対象を極秘に捜し出すことを意図されました。SCP-3774の実例群はそれから見せられた対象と一致すると自身が信じた人間の対象に対して自身の口吻を用い、そして遺伝的に一致するか否かを分析するためにその血液のごく一部を吸収しました。遺伝的に一致することが判明すると、そのSCP-3774の実例はその対象に近接する範囲内に滞在し、財団が対象を回収するまでの間対象の生中継の映像および音声のフィードを放送することを意図されました。
SCP-3774の実例群に行ったほとんどの試験では上記の行動が可能であることが証明されましたが、それらに対する適応発声機能2の導入は不明なエラーを引き起こしました。SCP-3774の実例は対象の血液を吸収する時、その血液が自身が発見することを目指している対象の血液と遺伝的に一致するか否かにかかわらず、対象とコミュニケーションをとることを試み、しばしば対象に対して夢中になっていることを表現しました。これまでのほとんどの事例において、SCP-3774の実例群は対象に求愛を試みましたが、それらは主として失敗する結果に終わりました。
このエラーが財団の知るところとなるとすぐに、全ての実例は捜し出されて呼び戻されるとともに、その機能不全を矯正しようとして研究されました。さらなる試験の後、エラー自体は修正不可能であることが判明し、そして全ての実例は即座に終了されました。実例によって記録された映像記録はいずれも現在研究目的のため保管されています。
以下はPoI-███と信じられた(しかしその後別人であると判定された)ある対象を捜し出した後にSCP-3774-2432が記録した一連の選定された映像記録です。これらに収められた下記の事象群はこれまでのところ他に2件しか起こった例のない稀なケースであることが証明されています。
<映像記録3774-01開始>
SCP-3774-2432のカメラの視野は外見から判断すると対象の本棚の最上部を起点としている。SCP-3774-2432のカメラは対象が目が覚めている状態で彼のベッドに横たわっている様子を映す。対象が位置している部屋は薄暗い。
SCP-3774-2432: ハロー?
対象はベッドの中で素早く上半身を起こして部屋を見回し、うろたえた様子を見せる。
対象: 誰かいるのか?
SCP-3774-2432: ええ! ハロー!
対象: どこにいるんだ? どうやって僕の家に入り込んだんだ?
対象は彼のナイトテーブルの上のランプの灯りを点けてベッドから立ち上がる。
SCP-3774-2432: 私は……ええと……私は幽霊なの!
対象: ハハ、とても面白い。出てきてくれないか、お願いだから? これはお願いだよ、僕の丁重なね。
SCP-3774-2432: 私は……言ったでしょう! 私は幽霊なの! そう!
対象は現在ベッドの下を探している。
対象: 君が出てこないなら僕は警察を呼ぶぞ、お嬢さん! 僕は警察を呼ぶようなことはしたくない!
SCP-3774-2432: だめ、よして! お願いよ、私はあなたにこれ以上の面倒をかけたくない! 私がここにいることを知っている人々は既にいるわ!
対象はベッドの下から出てきて真直ぐに立ち上がる。
対象: 君がここにいることを知っている人々だって? それはどういう意味だ? さては君は脱獄した囚人か何かだな。
SCP-3774-2432: 違う! 誓って違うわ、そんな心配はしないで。ただ……私が言ったことは忘れてちょうだい。
対象: なあ、お嬢さん、ただ出てきてくれよ、そして何が起こっているのか僕に教えてくれ。
SCP-3774-2432: だめよ、できないわ! SCP-3774-2432は間を置く。 今はまだ、とにかく。
5秒間にわたる沈黙。
対象: 対象は溜息をつく。 いいだろう、隠れたままでいろよ。でも少なくとも何が起きているのか僕に教えることはできるだろう? もし教えないなら、僕は警察を呼ぶぞ、何が起きているのかなんて気にせずにね。
SCP-3774-2432: 私は……私は恥ずかしいの……
対象: 何がだ? 何がそんなに悪くて文字通り僕の家に侵入したんだ? だってそれが動機になったんだとしたらそれはひどく恐ろしいことに違いないからね。
SCP-3774-2432: 違う、違う……違うわ。それは、気持ち悪いの、本当に。 SCP-3774-2432は笑い声を模倣する。
対象: 僕は若い頃にたくさんの気持ち悪い話を聞いた。サーモンがトイレに詰まっただとか、子供たちがダンプスターの中にはまり込んで抜け出せなくなっただとか、ありとあらゆる無茶苦茶なことをね。僕は君が言わなくちゃならないことがトイレの中のサーモンよりも気持ちの悪いものになるとは思えない。
4秒間にわたる沈黙。
SCP-3774-2432: ええと……私は勤めてて……だめだわ、私はあなたにこれを教えることもするべきじゃないんだ。
対象: 勤めてるって何に? 君はスパイなのか? 僕をスパイしてるのか?
SCP-3774-2432: 違う! ええと、最初はそうじゃなかった。この別の組織に勤めているある大きくて恐ろしい男の人を見つけるつもりだったの、でもどうやら……私は彼のこととあなたのことを混同してしまったみたい。
対象: おいふざけるなよ、君はスパイなのか!?
SCP-3774-2432: 私はあなたをスパイしてない!
対象: じゃあ君が僕をスパイしてないんだったら出てきて顔を見せろよ!
SCP-3774-2432: 出てくることはできないって言ったでしょう! 私は……私はこれを遠隔操作でやってるの! マイクロドローンを使って!
対象: じゃあその信号を切れよ、じゃあ! 僕が君の探してる男じゃないんだったら、僕の家から出て行け! お願いだ! ただ今この時安心してゆっくり寝たいんだよ!
SCP-3774-2432: 私……わかったわ。ごめんなさい、あなたを悩ませるつもりはなかった。
SCP-3774-2432のカメラの視野はSCP-3774-2432が窓を通って外へ出、窓台の外側に着地する様子を映す。視野は窓の方を振り返ると同時に、対象が依然として立ちそして叫び、SCP-3774-2432に退去を命じている様子を映す。約6分後、対象は彼のベッドへと戻り彼のランプの灯りを消す。
SCP-3774-2432: ちくしょう……神様、私はなぜこんなに気味の悪い振る舞いをしなくちゃならなかったの? なぜいきなりこんな大失敗をしなくちゃならなかったの?
SCP-3774-2432は約4秒間にわたって沈黙する。
SCP-3774-2432: 私はただ彼と知り合いたかっただけなのに……
対象は外見から判断して1時間後に眠りに落ちる。この時、SCP-3774-2432が建物に再び入ってナイトテーブルの上に着地し、対象の方を向く。
SCP-3774-2432: SCP-3774-2432は押し殺した声で話す。 次はもっとしっかりやるわ。ごめんなさい。
SCP-3774-2432のカメラの視野はSCP-3774-2432が対象の本棚へ飛んで着地し、それからもう一度対象の方に向かって振り返る様子を映す。
無関係な映像は削除済。
<映像記録3774-04開始>
SCP-3774-2432のカメラの視野は対象が彼らの家にその玄関のドアを通って入る様子を映す。SCP-3774-2432は外見から判断すると照明器具の上にいる。
SCP-3774-2432: ま……また来たわよ!
対象: 何!? 対象は目に見えて動揺する。
SCP-3774-2432: いいえ、怖がらないで! ほら私よ!
対象: 誰? 対象は3秒間にわたって固まる。 待てよ、だめだだめだだめだだめだだめだ、独りにしてくれって言っただろ! 僕にスパイする価値なんかないぞ! 僕は小学校の用務員だ! 何も持ってなんかいない!
SCP-3774-2432: あなたは用務員なの? 人々が清潔な環境で過ごすのを助けてるの?
対象: そうだ! ただの用務員だ! ある種の薄気味悪い政府組織に勤めているような怪しい用務員じゃない、ただの一人のしがない用務員だ!
SCP-3774-2432: 聞いた、聞いたわ。それが本当にあなたの職業なのね、実際の! 少なくとも、私はそう思うわ。子供たちとか先生たちとかのみんなの役に立っているんだわ。
対象: 何――ええと……ありがとう……待てよ、君は依然として僕の家から出て行く必要がある!
SCP-3774-2432: 私は……神様、私は今それを口に出して言わなきゃならないと思うわ、そうでしょう? 何てこと、私の心臓はとても速く高鳴ってる、ええと……
対象: 何を言おうとしてるんだ?
SCP-3774-2432: 私は……あなたをスパイするためにここにいるわけじゃない……私はただ本当は……あなたの…… SCP-3774-2432は3秒間間を置く。 私は本当はあなたのことを知りたいの、いい!?
5秒間にわたる沈黙。
SCP-3774-2432: ああ、気持ち悪く聞こえるだろうことはわかってたわ、ごめんなさい、ごめんなさい、もう出て行くわ、あなたは正しい。
対象: 待ってくれ、君はただ僕のことを知りたかっただけなのか?
SCP-3774-2432: ええ……
対象: でも……君は何かのでかい組織に勤めてるんだろ? 僕を調べるべきなんじゃないのか? どうして今までこんな大騒ぎを起こしたんだ?
SCP-3774-2432: それは私があなたのことを知る予定じゃなかったからよ。ある別の男の人を見つける予定だった、でも……私はただ本当にあなたのことをもうちょっとよく知りたいなって思ったの。
対象: 僕をもっとよく知りたかった? 僕を? 君は誰に向かって話しているのかわかってるのか?
SCP-3774-2432: そのつもりよ、それこそが私の調べたいことよ、本当に。
対象: あー……ふむ…… 対象は5秒間間を置く。 わかった。いいだろう。でも君も僕に君のことを教える必要がある。君は僕の家がどこにあるかを知っているし、それに……よくわからないが、直にここへ来て、君と対面させてくれ。
SCP-3774-2432: だめ! それは……だめ。今はまだ。恥ずかしすぎる。
対象: ああもう、わかったよ! でも最低でも君の名前は教えてくれないか?
SCP-3774-2432: 私は……私は名前を持っていないの。今までの人生ではただ2432としか呼ばれてこなかったわ。
対象: ああ素晴らしい、子供たちをスパイとして育て上げて日常生活は与えてやらない怪しい組織の類だな。なんとも素敵だ。まあいい、君は何て呼ばれたいんだ、じゃあ? だって僕は君のことを2432なんて呼ぶつもりはないからさ。
SCP-3774-2432: うーん……わからない。いい名前って何?
対象: ああもう、僕が君のために選べっていうのか? ふむ……そうだな、君の声はとてもレスリー・キャロンに似ている。レスリーはどうだい? それともレス?
SCP-3774-2432: レスリー・キャロンって誰?
対象: 女優さ。彼女は今となっては老けてしまったが、全盛期の頃は、男は彼女の虜になったものさ。『巴里のアメリカ人』で主役を演じた。僕のお気に入りの映画の一つだ、君に教えるよ。
SCP-3774-2432: おお、わかったわ! それじゃあレスリーは素敵な名前なのね!
対象: よし、今僕らはいい線いってるな。よろしくな、レスリー。僕はマールだ。
SCP-3774-2432: こちらこそよろしく、マール。
無関係な映像は削除済。
<映像記録3774-14開始>
SCP-3774-2432のカメラの視野は対象がレンジ加熱した夕食をとりながら2012年の映画『レ・ミゼラブル』を鑑賞している様子を映す。対象は彼のリビングルームであるように見える部屋の中でリクライニングチェアに座っている。SCP-3774-2432のカメラの視野は外見から判断すると別のリクライニングチェアの肘掛けの上にある。
対象: なあ、僕は君に今見えているものが何なのかわからないけど、君はこのパートにもっと注目した方がいいよ。このエポニーヌのパートはいつも僕を涙ぐませてくれるし、僕は君もここで涙ぐんでくれることを期待してる。
SCP-3774-2432: オーケー!
SCP-3774-2432のカメラの視野は映画を再生しているテレビの画面のみを映すように切り替わる。カメラはエポニーヌ3がマリウス4に向けて歌を歌いながら銃弾による負傷で命を落とすシーンを映す。泣き声のような音が対象から聞かれる。この時点で、SCP-3774-2432のカメラの視野は対象へ戻り、泣いている彼を視覚的に見る。
SCP-3774-2432: あれは美しいわ。
対象: そうさ。 対象は急に深く息を吸い込む。 そうさ、美しい。
SCP-3774-2432: 彼女は彼が別の人と愛し合っていたにもかかわらず彼のことをとても深く愛していた、そして彼女はそれでも彼の身を危険から守ることだけに自分の命を懸けた。彼の幸せを守るためだけに。本当に美しいわ。
対象: その通りだ。
対象とSCP-3774-2432の間に3分間にわたって沈黙が流れ、その間映画は再生され続ける。
SCP-3774-2432: マール?
対象: 何だい、レス?
SCP-3774-2432: 誰かあれみたいにあなたのことを大切に思ってくれた人は今までにいる?
対象: へっ? 僕は……僕は知らない。いてくれたらいいとは思うけど。僕は……僕は全然知らないよ。僕にはこれまでそんなに多くのうまくいった恋愛関係はなかったから確かなことは言えないけど、でもどこかの時点で少なくともそのうちの誰か一人は僕のことをあんなふうに大切に思ってくれたんじゃないかって思うよ。
SCP-3774-2432: ごめんなさい、マール。
対象: いや……いや、いいさ。僕らはみんなが良い、充実した人生を送るため……ために恋愛関係や幸せな結婚を必要とするわけじゃない。つまり……素敵だろうとは思うけど……でも君には必要じゃないよ。僕はパートナーがいなくたってこれまでうまくやってきたし。
SCP-3774-2432: ああ……それが正しいと思うわ。私にも今まで恋愛関係は一つもなかったけど、私は今とてもうまくやれていると思うし。つまり、私はあなたに出会って、そしてあなたは私のことを私の今までの人生の中で一番幸せにしてくれている。
対象: 対象は咳払いをする。 何だって?
SCP-3774-2432: ええと……何でもないわ。気にしないで。
対象: どういう意味で言ったんだ? 僕が君を君の今までの人生の中で一番幸せにしているっていうのは?
SCP-3774-2432: それは……あの、私はあなたのことを知ってまだ1週間半しか経っていないけど、あなたは私を本当に幸せにしてくれているの。私はあなたと一緒に映画を観るのが大好きだし、あなたが勤め先の子供たちのことをとても気にかけていることも大好きだし、あなたについての全てが大好き。でも私はあなたが私についての何も大好きになり返してくれることができないのはわかってる、だってもしあなたがそうしてくれたとしても、それは……続くことはないもの。
約2分間にわたる沈黙。対象はそれから立ち上がってテレビの電源を消す。
対象: 君も僕にとってとても大切な人だよ、レス。
SCP-3774-2432: 私の気持ちを楽にするためのことだったら言ってくれなくていいわ。
対象: そうじゃないよ。僕は今まで君の顔すら見ていないけど、君が信じられないほど可愛らしくて、優しくて、思いやりがあってそして親身になってくれる人だってことはわかる。君は僕が何かに悲しんだり心を乱したりしたがっている時に僕に喜びをもたらすことを選ぶ。君はいつも自分の悪いところしか見られないでいる人々の中に良いところを見つけ出す。この数日間は僕の過ごしてきた今に至るまでの長い時間の中でも本当に最高の数日間だったよ。
SCP-3774-2432: それって本気で言ってくれてるの?
対象: そうじゃなかったら言わないさ。
SCP-3774-2432: SCP-3774-2432は鼻をすする音を模倣する。 ありがとう、マール。
対象: 泣いてるのかい?
SCP-3774-2432: SCP-3774-2432は笑い声を模倣する。 訊いちゃだめ、ただの一瞬の感情の昂ぶりよ。
対象: 対象は笑い声を上げる。 そうだな、そうだな。
7秒間にわたる沈黙。
SCP-3774-2432: それじゃあ……これは私たちにとっての何を意味しているのかしら?
対象: 君は何を意味してほしいんだい?
SCP-3774-2432: そうね……私はこれに私たちがあなたの言ったような役に立たない幸せな恋愛関係の一つを持つかもしれないことを意味してほしいわ。
対象: それは魅力的だ。完璧に役に立たない、幸せな、素晴らしい恋愛関係だ。
無関係な映像は削除済。
<映像記録3774-23開始>
SCP-3774-2432のカメラの視野は対象が彼のベッドルームの中で行きつ戻りつしている様子を映す。SCP-3774-2432のカメラの視野は対象の本棚を起点としている。
対象: 君はなぜ未だに僕に自分がどんなような姿かを見せることを拒むんだ?
SCP-3774-2432: それはあなたが私の姿を知ってしまったらきっと私を嫌いになるだろうからよ!
対象: 僕は恋愛の相手をルックスで評価したりはしないよ、レス。僕はもし君がクソッタレのリチャード・ニクソンみたいな見た目だとしても気にしないし、僕は依然として君である君を愛するよ。頼むからただ何かを見せてくれないか? 僕の家へ来て僕に実際に物理的に君を見させてくれよ、いいかい? そうでないなら、せめて君の姿を写した写真を僕に送ってくれ。ただ知りたいんだよ!
SCP-3774-2432: でも……でもどうして? ルックスが問題じゃないなら、どうして私のことを見る必要があるの?
対象: それは僕がキャットフィッシング5を知ってるからさ。もしかしたらどこかの子供が僕にある種のイタズラを仕掛けていて、そしてこの時間全てで僕がとったリアクションが録画されてどこかのイタズラブログに流されてしまっているかもしれない。「男が小さな少年と恋に落ちた、それに気が付いた時の彼の顔をご覧あれ!」それが見出しに載るんだ。
SCP-3774-2432: もし私があなたをキャットフィッシングしていたなら、私は自分の人生のこんなに多くの時間をあなたと一緒にいることだけに捧げたりしないわよ。
対象: 君の人生のこんなに多くの時間? 僕らはまだ知り合ってたったの3週間しか経っていないじゃないか!
SCP-3774-2432: あと私はあなたのことを見つけるまでに2週間をかけたし、それから私は自分のこの後の人生全てをこれのために生きるのよ!
対象: 一体何を言ってるんだ? それはどういう意味だよ?
SCP-3774-2432: それは……それは……
対象: 君は一体何の類の組織に勤めてるんだよ? ある種のアンドロイドなのか? 僕は今までこの時間全てをAIとお喋りしてたのか?
SCP-3774-2432: 違う! 違う、アンドロイドなんか……アンドロイドなんかじゃない。
対象: じゃあ何なんだよ? 君は誰だ? 君は何だ?
SCP-3774-2432: 私は……
5秒間にわたる沈黙。
SCP-3774-2432: 私は今からちゃんとそっちへ行くわ。
対象: それでよし。待ってるよ。
SCP-3774-2432: 長くは待たせないわ。
SCP-3774-2432のカメラの視野はSCP-3774-2432が本棚から飛んで対象のベッドに着地する様子を映す。
SCP-3774-2432: あなたのベッドにいるわ。気を付けて。私は小さいから。
対象: 待ってくれ、何だって?
対象は後ろを振り向き、ベッドに目をやる。
対象: どこにいるんだ?
SCP-3774-2432: 私は……私はその蚊よ。
対象: その何だって?
対象はベッドの中を探し続け、その後SCP-3774-2432に直接目を向ける。
対象: おお、ハハ。ますます気分の悪くなる冗談だ。
SCP-3774-2432: 嘘はついてないわ。
対象: 君はドローンを使ってるって言ってたが、これは恐らくそのドローンの一つに過ぎないんだ、そうだろ? 君は僕のことをただ罠に掛けようとしてるんだな?
SCP-3774-2432: 罠に掛けようとなんてしてない! 正直に言ってるの! 私は蚊なの! ドローンのことは嘘だったけど、それはそう言った方が一匹の会話のできる蚊だって言うよりも信じてもらえると思ったからよ!
対象: そうだな、その通りだ。ドローンは会話のできる蚊よりも信じられるな。君が蚊だってことを僕に証明してみせてくれ。
SCP-3774-2432: どういう意味?
対象: わからないが、何か蚊にしかできないことをしてくれ! 僕を咬んで、血を吸うか何かしてくれ!
SCP-3774-2432: ええと、わかったわ。あなたがそう望むなら。
SCP-3774-2432のカメラの視野はSCP-3774-2432が対象に向かって飛んで彼の肩に着地する様子を映す。SCP-3774-2432はそれから自身の口吻を伸ばすと続けて対象を咬み、彼の血液のいくらかを吸収する。
SCP-3774-2432: これが証明の助けになることを願うわ。私には何がそれになるかはわからないけど。
対象: 僕……僕も何が証明になるかはわからない、でも……もし君が本当に蚊だとして……
SCP-3774-2432: 私は蚊なのよ!
対象: 終わらせてくれ、お願いだ。
SCP-3774-2432: ごめんなさい。
対象: もし君が本当に蚊だとしても……それは依然として僕にとって問題じゃない。もしこれが君の本来の姿だとしても、うん、僕は君に約束したからね。君は依然として可愛らしくて、優しくて、思いやりのある人だ、これまで僕に話しかけてくれて、一緒に映画を観てくれて、仕事中のことについて考えてくれたね。ただ、僕が抱いている僕らが結婚して子供をもうけることについての少しのファンタジーは見直さなくちゃいけないな、君が蚊だっていう事実に適応するためには。
SCP-3774-2432: あなたはこれで大丈夫なの? 私で?
対象: ルックスは問題じゃないって僕が言ったのは本当にその意味で言ったんだよ。ただしリチャード・ニクソンの部分については嘘をついたな、もし君が結局リチャード・ニクソンだってわかったならそれは事態を少し気味の悪いものにしていたかもしれない。
SCP-3774-2432: SCP-3774-2432は笑い声を模倣する。 それは……それはとっても素晴らしいことだわ! ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう! できることならあなたにキスしたいわ、それは多分あなたのことを痒くしちゃうでしょうけど!
対象: 対象は笑い声を上げる。 その通りだな! でも……それがなぜいけないんだい? 君はもう何も隠す必要なんてないんだ、前へ進んで僕にキスしてくれ。
SCP-3774-2432: ええ、いいわ!
SCP-3774-2432は自身の口吻を伸ばすと続けて対象を再び咬み、より多くの血液を吸収する。
無関係な映像は削除済。
<映像記録3774-30開始>
SCP-3774-2432のカメラは現在不明な原因により無効化されている。当記録の全体は音声のみである。
ドアが開く音が聞かれる。
対象: レス、ただいま!
約3分間にわたる沈黙。
対象: レスリー?
約20秒間にわたる沈黙。
対象: レスリー? 今もそこにいるかい?SCP-3774-2432: え――ええ。
対象: レスリー? どこにいるんだい?
SCP-3774-2432: わ……から……ない……
対象: わからないってどういうことだよ? どこかに閉じ込められてるのか?
SCP-3774-2432: わ……から……ない……
対象: そんな……待ってくれ、もうこの1週間そうなのか?
SCP-3774-2432: わ……から……
対象: そんな、そんな、そんな、1週間も! くそっ!
SCP-3774-2432: ない……
対象: レスリー、お願いだからせめて君の今いる場所についてのことを教えてくれないか? 君が飛んでいたのを思い出せる最後の場所はどこだ?
SCP-3774-2432: リビング……ルーム……
対象: リビングルーム、リビングルーム、リビングルーム……そこに君はいる!
対象の足音がより大きくなる。
対象: そんな、お願いだから僕を置いて行かないでくれ。どうかただ……どうかただ僕と一緒に居続けてくれ? あと一日だけでも? 僕にとってこんなに激しく愛した人も深く愛した人も今までいないんだよ。
SCP-3774-2432: ごめん……なさい……
対象: 謝る必要なんてない、君は何も悪くない、ただ……どうか僕と一緒に居続けてくれよ、お願いだ!
SCP-3774-2432: いい……考えが……ある……わ……
対象: 考え? 君が生き続けるための!? なあ、くそ、それを言ってくれよ! お願いだ! 何でもいいから!
SCP-3774-2432: 違う……あなたを……助ける……ためのよ……
対象: 僕を助ける?
SCP-3774-2432: 私を……忘れないで……
対象: どういう意味だ?
SCP-3774-2432: 持つの……子供たちを……
対象: 持つ……何? 子供たちを持つだって? でも……どうやって?
SCP-3774-2432: 卵を……産むの……あなたの……中に……
対象: おい、おい、おい、おい。卵を? 僕の体内に?
SCP-3774-2432: そう……
対象: それは……それは果たしてどうやってうまくやりおおせるんだ? それはつまり蚊を殖やすってことじゃないか!
SCP-3774-2432: あなたの……血で……
対象: 僕の血で? そんなのちっとも科学的に聞こえない、そんなのふざけた魔法だ!
SCP-3774-2432: 私を……信じて……
対象: でも……母親の手で育てられないのに子供たちを産んだりして何の意味があるんだ?
SCP-3774-2432: 私は……一緒にいるわ……あなた……と……
対象: できないよそんなの……君はこれから死んでしまうし、それに……それに僕は君なしで生きていくことなんてしたくない。
SCP-3774-2432: マール……私を……こんな……形で……あなたと……別れ……させ……ないで……6
対象: 君は……ああもう、君は本当に僕の感情を揺り動かそうとしてくれるな。
SCP-3774-2432: お願い……
約10秒間にわたる沈黙。
対象: オーケー。やってみせるよ。僕は君の子供たちを持つ。僕は僕らの子供たちを持つ。
SCP-3774-2432: ありが……とう……
対象: 愛してるよ、レスリー。
SCP-3774-2432: 私も……あなたを……愛し……てる……
無関係な音声は編集済。
当対象は████年9月28日、映像記録3774-30に記録された事象群の3日後に、片方の大腿部から生じていた1つの大きな塊とともに回収されました。外科的に取り除かれるとすぐに、それは4体の人間の胎児であると判明し、これ以降SCP-3774-Aと指定されることになりました。SCP-3774-Aの各実例から採取された皮膚サンプルにより、SCP-3774-Aは完全に人間であるように見えそして遺伝的に当対象の子供であるものの、その遺伝子構造の50%はSCP-3774のそれと同一であることが判明しました。さらに7日間をかけて、SCP-3774-Aの実例群は人間の乳児と生物学的に同等のものとなりました。さらなる観察によれば、この段階に至って以来その急速な老化現象は止まっていることが判明しています。これはSCP-3774が人間の対象との交配に成功したことが確認された唯一の事例となっています。
当対象にはクラスC記憶処理薬を投与するとともに、彼のSCP-3774-2432との経験に関する7著しく改竄された記憶、そして全く新しい人格を付与しました。加えて、SCP-3774-Aの実例群の自然な成長を監視するため、彼とその4体の実例は財団の認可を受けたウェストバージニア州██████████内の地区へと移送されており、彼らは今後そこで慎重に監視されることになっています。