SCP-378-JP
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映画感

SCP-378-JP。複製物であるため異常性は示しません。

アイテム番号: SCP-378-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-378-JPは封筒に入れた状態でサイト-8181内の低危険物収容ロッカーにて保管されます。現在SCP-378-JPに関する実験は禁止されています。

説明: SCP-378-JPは、映画館内にて映画を鑑賞している一人の男性が写された一枚のモノクロの写真で、裏面には右下にかすれた日本語で"娘のために"と書かれています。撮影場所、男性の素性、撮影者、上映されている映画の特定には至っていません。また、SCP-378-JPを複製したものは異常性を示さないことが判明しています。

SCP-378-JPを視認した人間(以降SCP-378-JP-1と呼称)の視界は瞬時に一般的に"シネマスコープ"と呼称されるアスペクト比12.35:1の長方形となり、上下に黒い帯が発生します。そして同時にSCP-378-JP-1は遠近感と色彩感覚を喪失します。以降声や文字2をSCP-378-JP-1が耳にしたり目にした場合、SCP-378-JP-1の母語で下の黒帯内に字幕3が付与されるようになります。

また、SCP-378-JP-1となった人間は恒常的に"映写機のような"と形容される音を聞くようになります。音それ自体に異常性はありませんが、しばしばSCP-378-JP-1に睡眠障害や精神異常をもたらします。なお、SCP-378-JP-1となった人間を正常な状態に戻す試みは全て失敗に終わっています。

実験記録378-JP-001 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: SCP-378-JPを目視させる。

結果: 問題なく異常性が発揮された。

実験記録378-JP-002 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: 日本語で話しかける。対象の母語は日本語である。

結果: 対象は簡単な漢字と平仮名を交えた日本語で字幕が現れたと報告。

分析: 音声は字幕の対象のようだ。 -██博士

実験記録378-JP-003 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: 常用漢字でない漢字を含む日本語の文章を読ませる。

結果: 対象は与えられた文章そのままに字幕が現れたと報告。また、読めない漢字にはふりがなが振ってあったとも報告。

分析: 難しい漢字にはふりがなを振ってくれるようだ。 -██博士

実験記録378-JP-004 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: 劣化の激しい音声記録を聞かせる。音声記録には日本語による会話が収録されていることは分かっているが、事前の試験では実験関係者は全員聞き取ることが出来なかった。

結果: 対象は字幕が現れなかったと報告。

分析: 聞き取れないものは字幕の対象にならないのだろう。 -██博士

付記: 実験後対象の心的疲労を鑑みて新たなDクラス職員を用いた実験が提案されましたが、D-4806の強い要請により継続して実験が行われることになりました。

実験記録378-JP-006 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: 英語の音声を聞かせる。対象は英語に関する技能を持ち合わせていません。

結果: 対象は日本語で字幕が現れたと報告。

分析: もしかしたら翻訳に役立つかもしれない。しかし対象はどうして続投を名乗り出たのだろうか。未知の異常性の存在も視野に入れて更なる調査を行わなければならないだろう。 -██博士

実験記録378-JP-007 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: 中国語、スペイン語、ロシア語、フランス語、イタリア語でそれぞれ同じ内容が書かれた文章を読ませる。対象はこれらの言語に関する技能を持ち合わせていません。

結果: 対象は日本語で字幕が現れたと報告。

分析: 翻訳は様々な言語に対応しているようだ。対象が理解できなくても、意味を持った文章であるなら何でも翻訳してくれるのかもしれない。 -██博士

実験記録378-JP-008 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: ヒエログリフ4で書かれた文章を読ませる。

結果: 対象は日本語で字幕が現れたと報告。

分析: 古代文字も大丈夫なようだ。もしかすると解読されていないものもいけるのだろうか。 -██博士

実験記録378-JP-009 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: キュプロ・ミノア文字5が記された粘土板のコピーを読ませる。また、筆記具で字幕を書き取るよう指示。

結果: 対象は日本語で完全な字幕が現れたと報告。翻訳された日本語の文章を書き取る。その内容は[編集済]。

分析: 翻訳どころか解読器に相当する機能を発揮している。SCP-378-JPの有用性を計る実験をもう少し重ねたい。 -██博士

実験記録378-JP-010 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: ポリュビオスの暗号表6に基づいて暗号化された数字列を読ませる。筆記具で字幕を書き取るよう指示。

結果: 対象は字幕が現れなかったと報告し、"数学は苦手だ。あの子も眠そうだ"という趣旨の発言を行う。

分析: 何らかの言語であると認識できなければ駄目なのだろう。それより対象の言った"あの子"とは誰だろうか。調査の必要がありそうだ。 -██博士

実験記録378-JP-011 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: インダス文字7が書かれた印象の写真を読ませる。筆記具で字幕を書き取るよう指示。

結果: 対象は日本語で完全な字幕が現れたと報告。翻訳された日本語の文章を書き取る。その内容は[編集済]。

分析: 十分に解読器の機能を果たしていると見える。 -██博士

実験記録378-JP-013 - 20██/██/██

対象: D-4806

実施方法: [データ削除]のコピーを読ませる。対象には事前に文章が記されていると伝える。筆記具で字幕を書き取るよう指示。

結果: 対象は問題なくコピーを読み進めたが、2分経過した時点で突如昏睡状態に陥った。実験は中止され、対象は収容房へと戻された。医療班による検査では対象に異常は見当たらなかった。なお書き留められた翻訳文に異常性は見られなかった。

分析: 対象の精神疲労がピークに到達したのかもしれない。新しいDクラス職員の使用を再検討すべきだろう。 -██博士

インタビュー記録378-JP-004 - 20██/██/██

対象: D-4806

インタビュアー: ██博士

付記: 実験記録378-JP-010の翌日に行われました。

<録音開始>

██博士: おはよう、D-4806。

D-4806: 博士、俺は静かなところでしか眠れない体質なんだよ。

██博士: 我々も何とか治す方法を探しているのだ。今少し実験に付き合ってはくれないか。

D-4806: [6秒間沈黙]別に治してくれなくたって構わないさ。

██博士: どうして?

D-4806: そりゃあ四六時中耳ん中はガラガラうるさいし、世界は白黒で1枚になってしまったさ。

D-4806: だけど……"あの子"の為と思ったら何だか悪い気はしないんだよ。

██博士: "あの子"とは?

D-4806: ああ、すまんな。実際に見てもいないのにな。ただ俺の"映画"を見ている子が居るような気がするんだ。

██博士: 詳しく説明出来るか。

D-4806: 詳しくって言っても今言ったまんまだ。俺のこの"映画"を見てくれている子の存在を感じるんだ……

D-4806: 俺が面白いものを見たとき、その子は笑っていたし、俺があの暗号表を見たときはとても眠そうにしていた……いや、そんな気がしたんだ。

D-4806: 俺が寝るときだって、"今日のは面白かった~"とか、"良く分かんなかった"とか。たまに拍手もしてくれるぜ。いや、気がするぜ。

██博士: だが見たことはない。だね?

D-4806: でも確かな気がする。あ、ほら、今あんたに手を振ってる。"私はここに居るよ~"って。そんな気がする。

██博士: 分かった。一応記録には入れておくことにする。

D-4806: ああ、そうだ。

██博士: 何だ?

D-4806: この前、この子が"青い空が見たい"って、呟いてたんだ。

██博士: [3秒間沈黙]

D-4806: 治すのは構わないが、その前に、色を付ける方法を考えてくれないか。

██博士: 分かった。検討しよう。

D-4806: ありがとよ。この子も"ありがとう"って言ってるぜ。礼儀正しい奴だ。

<録音終了>

終了報告書: 擬似色覚補正レンズの支給を要請する。 -██博士
許可する。異常性の解明に役立てること。 -サイト-8181管理責任者

付記: 後日、擬似色覚補正レンズがD-4806に支給されましたが、色彩の回復は報告されませんでした。以降D-4806に鬱病の徴候が見られ始めました。

事件記録378-JP: 実験記録378-JP-013の2日後、D-4806が収容房から消失しました。監視カメラの映像には、突如覚醒したD-4806が擬似色覚補正レンズを用いて収容房の壁面に何かを書くような素振りを見せ、その後瞬時に消失する姿が捉えられていました。壁面には以下の文章が書き記されていました。

あの子が よんでる
あの子のえがおを 見たい
でもおれだけじゃ 足りないそうだ
だからつれていく すまない

D-4806の消失後には一枚の写真(この写真をSCP-378-JP-2と呼称)が残されており、駆けつけたエージェント・██がSCP-378-JPの視認時と同様の異常を発現しました。SCP-378-JP-2には、全面白色の窓の無い部屋の中で映画を鑑賞する1人の少女と5人の男性、3人の女性が写されていました。またSCP-378-JP-2の裏面には黒の文字で以下の文章が書かれていました。

おとうさん えいがおもしろかったです
いまはおにいさんやおねえさんたちといっしょです
またあたらしいえいががはじまるみたい

SCP-378-JP-2はSCP-378-JPと同様の手順で収容されました。

補遺-1: 事件後、██博士がD-4806と同様に消失し、またD-4806の両親の行方が分からなくなっていることが判明しました。SCP-378-JP-2に写されている人物が██博士とD-4806、D-4806の両親に酷似しているという報告がなされましたが、被写体の特定には至っていません。以降SCP-378-JPに関する実験は中止されました。

SCP-378-JPが全てのオリジナルではないという可能性もある。慎重に調査を進めなければ。 -███博士

補遺-2: 20██/██/██、SCP-378-JP-2の裏面に新たな文章が出現していることが明らかになりました。出現した文章は以下の通りです。

えいが まだ?

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