SCP-393-JP
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兎のぬいぐるみに変化したSCP-393-JP

アイテム番号: SCP-393-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-393-JPは現在の形態に適したサイズの、緩衝材が詰められた不透明なケースに収納した上で、サイト-8181の低脅威度物品保管ロッカーに収容してください。

SCP-393-JPの異常性の発現並びに転移を防止する為、SCP-393-JPを肉眼で直接視認しないでください。もしもSCP-393-JPを直接視認した人物がSCP-393-JPの破壊を試みた場合、直ちに拘束し、クラスA記憶処理によって影響を取り除いてください。

説明: SCP-393-JPは様々な動物を模ったぬいぐるみです。SCP-393-JPは後述する特性によりそのモチーフやサイズを変化させますが、どのような形態に於いても材質や構造に一般的なぬいぐるみとの差異は認められません。しかしながら、SCP-393-JPは一貫してそれに見合う強度を持ち合わせておらず、通常のぬいぐるみに比べて容易に破損します。

SCP-393-JPを肉眼で直接視認した人間は、SCP-393-JPを破壊したいという衝動に駆られます。この衝動の強さには個人差があり1、より多くの精神的ストレスを抱えた人物ほどより強い衝動を覚える傾向にあることが判明しています。この衝動はSCP-393-JPが後述する要因によって転移するまで継続しますが、それ以前でもクラスA記憶処理によって除去することが可能です。SCP-393-JPが一定以上の損傷2を受けた場合、SCP-393-JPに何らかの損傷を与えた3人物(以下、加害者と呼称)の精神的ストレスが大幅に軽減されます。

SCP-393-JPは自身が一定以上の損傷を受けてから24時間以内に、その地点から半径20km圏内の人間一人の眼前に転移します。転移後のSCP-393-JPは別の形態に変化しており、以前受けた損傷は完全に修復されています。そして、転移と同時に、加害者一人につき特定の人物一人が、SCP-393-JPが前回受けたものと同様の損傷を受けます。なお、加害者各々の身近な人物がこの異常効果の対象として選ばれ易いことが判明しています。

SCP-393-JPは、██県で連続して発生した██件の暴行/変死事件の調査中にその存在が発覚し、回収されました。その後、一連の事件の関係者全員には記憶処理が施され、事件の隠蔽にあたって「強盗」や「猟奇殺人」等の、それぞれ適切なカバーストーリーが適用されました。

インタビューログ393-03 - 201█/██/██

対象: 芳田 ██

インタビュアー: ██博士

付記: 対象はSCP-393-JPが関与した変死事件の関係者です。

<録音開始>

██博士: 事件の前に何か変わった事はありませんでしたか?

芳田氏: はい。あれは残業で帰りが遅くなった日の事でした。あの日は仕事がうまくいかなくて苛立っていたのを覚えています。それでへとへとになりながら家に帰っている途中……象のぬいぐるみでした。信じられないかもしれませんが、笑顔の象のぬいぐるみが目の前にいきなり現れたんです。

██博士: 別に疑いはしませんよ。続けてください。

芳田氏: ええ……そのぬいぐるみを見た時、何故か驚くより先に、なんで俺はこんなに疲れているのにこいつはへらへらしているんだと、無性に腹が立ったんです。その後は夢中になってぬいぐるみをボコボコにして……引きちぎって……真っ二つにした後、持っていたライターで燃やしたんです。なんで私はあんなことを[呻き声]

██博士: 芳田さん? 大丈夫ですか?

芳田氏: ……ああ、いえ、何でもありません。それで、あのぬいぐるみを壊した後は妙に気分がすっきりして、それまでイライラしていた自分が何だか馬鹿らしく思えてきまして。ぬいぐるみの事は気になりましたが、そのまま家に帰りました。

██博士: なるほど。

芳田氏: 玄関を開けて家に入ったら、もう遅かったのに、娘が起きて出迎えてくれたんです。一人娘でした。もう寝なさいとつい言ってしまったんですが、内心嬉しかったんです。この子の為にも頑張らなきゃな、なんて思ったりもしました。あの笑顔は

██博士: [遮って]次の日はどうされました?

芳田氏: ……少し話が逸れましたね。次の日も仕事だったので普通に出勤しました。その日はなんだか気分が良くて、仕事も捗ったお陰で前の日よりも早く帰れたんです。家では久しぶりに家族で食卓を囲んだりもしました。娘は幼稚園の事を楽しそうに話してくれました。今度のお遊戯会に行く約束もしたんです。その後、明日菜4を先に寝かしつけたんです……それで……。

██博士: それで、どうしたんです?

芳田氏: それで……妻とリビングに居たんですが、暫くしたら……明日菜が、明日菜が、声がして……[沈黙]。

██博士: 芳田さん?

芳田氏: ああぁ……[嗚咽]部屋に行ったら……明日菜が、叫んでた、それから、叩き付けられたみたいに、飛び出て、弾けて、鼻が、耳が、それで、明日菜が、頭から、割れて、燃えた、もっと赤く、燃えたんだ……[呻き声]ぬいぐるみと同じ、違う、そんな訳ない……でも……俺を見てやめてって言ってた……[泣き声]そんな、いやだ、俺じゃない……俺が……俺がやったんじゃ……。

██博士: ……インタビューを終了します。ご協力感謝します。

<録音終了>

インタビューログ393-06 - 201█/██/██

対象: 浜野 ██

インタビュアー: ██博士

付記: 対象はSCP-393-JPが関与した暴行事件の被害者です。なお、インタビューは対象が会話が可能な程度まで回復した後に、対象が入院している財団の医療施設で実施されました。

<録音開始>

██博士: こんにちは、浜野さん。調子はいかがですか?

浜野氏: ええ、お陰様で大分落ち着いてきました。手足の無い生活には、まだ慣れませんけどもね。

██博士: そうですか。ところで、本日は浜野さんにお聞きしたい事がありまして。

浜野氏: 何でしょうか?

██博士: 浜野さん、何故貴女は事件以来息子さんとの面会を拒んでいらっしゃるのですか?

浜野氏: それは……。

██博士: 事件と何か関係があるのでしょうか。もし宜しければお聞かせ願えませんか?

浜野氏: ……あの日、息子の部屋に夜食を届けに行った時のことです。当時、息子は受験勉強で殆ど部屋に籠りきりで……。気がかりで、顔を見たかったんです。たった一人の家族ですもの。でも、部屋に行ったら……。

██博士: 浜野さん?

浜野氏: 部屋に行ったら……息子が……息子が突然殴りかかってきて……それで、手足と目を、こんな……[泣き声]

██博士: なるほど。では浜野さん、貴女はあの日、息子さんから暴行を受けたと、そう仰るのですね?

浜野氏: ……ええ、そうです。

██博士: しかしですね、浜野さん。息子さんは今に至るまで、そのような事実を証言してはいませんよ。

浜野氏: ……何ですって?

██博士: いいですか、浜野さん。考えてもみてください。当時ほとんど部屋に籠りきりだった息子さんが、浜野さんの手足を素手で引きちぎる事ができると思いますか? 息子さんでなくとも人間にそんなことができるはずはありません。それに、現時点では息子さんの犯行を裏付けるような証拠も見つかっていないのですよ。

浜野氏: そんな……。

██博士: もう一度よく思い出してみてください。何かの間違いということは?

浜野氏: そんなはずは……確かに息子にやられたんです! 本当です! 信じてください!

██博士: 浜野さん、落ち着いてください。お身体に響きます。どうか安静に。

浜野氏: 本当なんです……本当に息子が……[嗚咽]優しい子だったのに、何であんな……。

██博士: ……インタビューを終了します。[控えていた助手に]彼女に鎮静剤を。

浜野氏: 何で……何で……[泣き声]

<録音終了>

終了報告書: インタビュー後、対象を含めた家族全員に記憶処理を施しました。しかしながら、対象にのみ記憶処理の効果が現れず、引き続き「息子から暴行を受けた」と主張しました。対象は現在も息子との面会を拒絶し続けています。

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