SCP-415-JP
評価: +71+x

アイテム番号: SCP-415-JP

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-415-JPが存在した洞穴は内部に存在する物品と共に監視された上で立ち入りを禁止されています。侵入にはクリアランスレベル3以上の研究スタッフから許可を受けた上で侵入してください。SCP-415-JP-1は現在、異常性が発生しない処理を施され、存続しています。

説明: SCP-415-JPは、島根県██市の山間部に存在する、日本伝承における龍と類似した特徴を持った全長約40mのヘビ型生物です。SCP-415-JPは鋭利な牙と爪を持ち、主に攻撃の際に使用します。また、SCP-415-JPの外皮を覆う鱗は非常に強固であり、財団標準装備に指定されている銃火器を用いた場合、損傷を与えることは不可能です。

SCP-415-JPは小規模な現実改変能力を有していると考えられ、局地的に豪雨を発生させることが可能です。SCP-415-JPの生息する地形の関係上、この能力により発生する鉄砲水等において、下流地域に深刻な二次災害をもたらします。██村は該当地域に指定されていません。

SCP-415-JPは通常時、生息する洞窟から移動することはなく、常に洞窟内部で生息しています。その為、洞窟内には生存可能な環境が維持されていると推測されています。洞窟内部への侵入は、生物、無生物を問わずSCP-415-JP-1の妨害により失敗に終わっています。SCP-415-JPは言語を解し、該当する発声器官が確認されないにも拘らず、人間との会話が可能です。しかし、SCP-415-JPは財団を含む人間全般に非常に敵対的であり、現在まで行われた接触、洞窟内への侵入の試みは全て対象人員の殺害という形で失敗に終わっています。

以下は、該当地域において語られているSCP-415-JPを記したと推測される伝説の抜粋を現代語訳したものです。

SCP-415-JP関連文書-01

この地には龍神がいた。龍神は雨を降らし、人間の田畑が腐るのを見て喜んでいた
雨を降らせないためには、毎年二人の娘を食事として生贄にしなければならなかった

ある年、娘を生贄に捧げる家に、一人の女が現れた
女は泣く娘とその家の者を不憫に思ったのか、龍神を退治しようと娘の代わりに生贄として身代わりになった
女はその手に剣と珠を持ち、身を清め、生贄となるため山に向かった

女は娘のフリをして龍神の洞へ向かった。そして龍神が食べようとしたところを斬りつけた

そしてその日から三日三晩嵐が吹き荒れ、四日目の朝、ぱったりと止んだ
人々が山に向かうと夥しい血と光る鱗が、何枚も散らばっていた

その後、探しても女は見つからなかったが、それから龍神は現れず
人々は女と龍神は相討ちになったのだろうと噂し合った

だが、今でも祟りを恐れ、龍神の住んでいた洞に近づく者はいない

今でも、女を祀るための祭りは執り行われている
踊りが踊られるとき、雨が降ることはないという

SCP-415-JP-1は、島根県██市の██村で伝承されている踊りです。内容としては当地に伝わる伝承を元にしたものであり、いくつかのパターンを繰り返し踊り続けるといったものです。踊りそのものに異常性は存在しませんが、██村の住人はSCP-415-JP-1の手順、実施にのみ強い記憶処理耐性を持ちます。

以下は、██村を記述した紀行文に見られるSCP-415-JP-1を抜粋した文章です。

SCP-415-JP関連文書-02

其の踊りは酷く物悲しいものであった。人々はゆるり、ゆるりと葬列のように踊り続け、永遠に続くかと思われた。
踊りは有史以前の巫女に向けられたものであるとは言うが、私には別の目的の為に踊られるように思われる。
此れは孤独を慰撫する踊りではないだろうか。山野に囲まれ生涯を此処で終える人々の、或いは此の山野其の物に対する慰撫ではないだろうか。

老若男女は永遠にも続く此の慰撫の踊りを踊り続ける。私には其れがどうにも受け入れがたかった。

村民は皆、此の踊りを踊り続けると言う。だが、その表情には何処か諦めが在る様に思われた。
此れが将来、千年も二千年も続く物では無いとでも言いたげな目で静に笑う。
私にとっては其れも又不愉快であった。

SCP-415-JPはSCP-415-JP-1が██村の年に一回行われる祭りにおいて完全に踊られた場合のみ、その異常性を発生させます。これにより、定期的な豪雨が該当地方では確認されていましたが、現在は情報部の検閲により削除されています。

SCP-415-JP関連レポート(抜粋): 19██/██/██、SCP-415-JPの封じ込めに際し、SCP-415-JPと密接に関係していると推測されたSCP-415-JP-1の実施を停止するという提案が出され承認されました。この封じ込め計画は██村に財団職員を派遣し、世代交代を行うことでSCP-415-JP-1の実行を停止するという計画の元実行されました。

SCP-415-JP関連レポート415-JP-01 - 日付 19██/██/██

概要: ██村に財団職員を数名移住させる。カバーストーリーとして「戦後の混乱」を使用。地元住民との接触を図る。報告時、村内人口542名

結果: 移住は成功。しかし、踊りの中止には非常に強固な反対かつ、前述の記憶耐性が判明。その為、当初の中止案から踊りの一部を僅かに変更することによるSCP-415-JPへの影響を調査する方針に変更

エージェント・柳田の記録文書

先の戦争が終わって数年。初めての印象はとても静かな村だという印象。山田氏の遠縁の親戚だと偽って潜り込んだが、人々は優しいながらも少々排他的な印象がある。あまりいい印象は抱かない。何処にでもある田舎の山村といったところだろう。

祭りにも無論参加したが、やはり踊りの中止に関しては古老らから否定的な意見が出る。全体的に反対意見も何処か形式的なものに感じるも、相手は田舎の人間だ。そういうこともあるのだろう。その為、仲間と相談し、踊りの中止ではなく、一部変更した踊りを膾炙させる案を進言することを決定。

踊りの印象としては非常に緩やかでどこかもの悲しさを感じる。謡曲に近い印象で、確認した関連文書の紀行文にも頷ける。おそらく財団が介入せずともいずれこの踊りはこの村と共に自然消滅するのではないか。それが全体的な所感である。

SCP-415-JP関連レポート415-JP-09 - 日付 19██/██/██

概要: エージェント・柳田が██村において山田 伊津子氏と婚姻関係となる1。前述の変更された踊りは、財団職員のみによって踊られている。集団就職により若者の流出が目立つ。報告時、村内人口531名

エージェント・柳田の記録文書

山田氏と縁戚関係になり、今後の工作が行いやすくなった。妻の伊津子には少々悪い思いはあるが、封じ込めの為だ。踊りに関しては微細な足運び、手ぶりを変更することで、古老らに気づかれることなく実行の継続が可能。現在は同時に移住した職員等で行っているのみだが、今後増大することで効果が出ることを期待する。もっとも、この踊り自体が原因となっているのか、踊りを踊る人数が原因なのかは不明の為、本部と連絡を密にし、警戒に当たる必要があるだろう。この踊りが何らかの封印であった場合、これは逆に収容を違反することになってしまうのだから。

村の状況としては集団就職により若者が少なくなった、しかし、そのおかげで少なくなった私達若者世代に発言権が強くなった印象はある。潜入任務とはいえ慣れ親しんだ古老らもどんどんと老いていく。虫の声が今日も五月蠅いくらいに聞こえる。都会の灯が少し懐かしい。

SCP-415-JP関連レポート415-JP-32 - 日付 19██/██/██

概要: ██村内において、約半数が財団関係者となる。報告時、村内人口486名

結果: 踊りを実行した際、SCP-415-JPの起こす雨量が低下。プロトコルが効果を発揮していると推測されるため、計画は続行される

エージェント・柳田の記録文書

諜報部からの報告を受ける。封じ込めが十分作用しているようで我々も歓び、つい深酒をしてしまった。これまでの記録を確認したところ、どうやら手ぶりではなく、足踏みが重要な要素のようだ。

一方で村は高度経済成長期ということもあるのだろうが、徐々に活気がなくなっていく。私たちが潜入した段階で衰えていた火がさらに弱まっていくような、そんな印象を受けた。

伊津子の腹も膨らんできた。この子が祭りに参加するようになれば変更後の踊りを教えなくては。この子も大きくなればこの村を出ていくのだろうか。

SCP-415-JP関連レポート415-JP-41 - 日付 19██/██/██

概要: ██村内において、約8割が修正後の踊りを実施する。SCP-415-JP-1の保存活動が提唱される。報告時、村内人口427名

結果: 踊りを実行した際、SCP-415-JPの起こす雨量がさらに低下。プロトコルが効果を発揮していると推測されるため、計画は続行される。

エージェント・柳田の記録文書

殆どの村民が変更後の踊りを踊るようになった。私たちの子供世代が成長したこともあるが、本来の踊りを知る老人らが亡くなっていくのも原因だろう。老人らは最後まで気づいていなかったのだろう。そもそも、この踊り自体がほとんど惰性のようなものになっていたのではないかと今になっては推測する。また、それを受けてか義父が踊りの保存を提唱し始めた。仲間で相談したが、変更後の踊りを保存することができれば封じ込めが強固なものになるだろうという意見となり、本部からの返答を待つことになった。

その一方で、資料収集の為、義父の蔵を掃除していたとき、SCP-415-JPに関連すると思われる文章を発見した。殆ど読めないうちに義父に回収されてしまったが、内容としてはこれまでの資料と変わりなかったように思える。機会があれば確認しよう。
村の近くに高速道路を造る予定があるようだ。人の流入が激しくなれば収容が困難になるが、どうだろうか。

SCP-415-JP関連レポート415-JP-60 - 日付 20██/██/██

概要: ██村内において、SCP-415-JP-1の保存活動が活発化。報告時、村内人口322名

結果: 踊りを実行した際、SCP-415-JPの起こす雨量がさらに低下。プロトコルが効果を発揮していると推測されるため、計画は続行される。

エージェント・柳田の記録文書

保存運動が予想以上に活発なものとなった。私もその一員だ。変更後の踊りを保存対象にするためには仕方のないことではある。もはや、本来の踊りを覚え、実行しているのは義父を含めて数人ではあるが、どれだけ衰えようとも踊りを止めようとはしない。その踊りは年を経ているためかより一層凄みが増し、だが、私は何処か哀しみと言うよりも美しさを感じた。消えゆく日の一瞬の煌めき。いや、違う。思い続けてきた誰かを失った日の虹のような。

村はめっきり人が減った。高速道路は都市部への流出を招いたようだ。息子もとうの昔に村の外へ出ていった。何処の村も似たようなものらしい。澄んだ虫の声が良く聞こえる。

SCP-415-JP関連レポート415-JP-69 - 日付 20██/██/██

概要: ██村内において、山田 ██氏が死亡。これにより、本来のSCP-415-JP-1は終了したと見なされる。報告時、村内人口323名

結果: 事案記録SCP-415-JPを参照

エージェント・柳田の記録文書

義父が亡くなった。

義父は最期だと悟ったのか、死の前日に私を枕元に呼んだ。そして、私達が踊りを変化させていたことに気づいたのを明かしてくれた。死の匂いがうっすらとする布団の中で、義父は笑いながらそれでも踊りを続けてくれたことを感謝してくれた。だが、その一方で私たちの踊りが広まるごとに何かが失われていくような感覚を受けたのだとも教えてくれた。だが義父はそれでいい、と笑っていた。

義父は翌朝穏やかな顔で亡くなった。義父が以前回収した資料を見つけた。あの踊りは龍見の舞と呼ばれていたそうだ。目新しいものは無かったが、最後にたった一つ、これは約束の踊りであると書かれていた。
あの踊りは誰かに何かを伝えていたのではないだろうか。忘れず生きていると。

そしてその踊りはもう無くなった。

義父の葬儀の際、久しぶりに村に活気が戻った。
息子が村に戻ることにしたらしい。孫は不服そうだが今はそれでいい。
私はもうしばらくこの村で収容を行うことを依頼した。

夕立が降り、虹が出た。この村の虹は美しい。

事案記録SCP-415-JP

山田氏の死亡とほぼ同時刻、 SCP-415-JPが洞窟内から突如出現し、そのまま上空へ移動、██村上空を飛行したのち、財団の監視圏内から消失しました。これ以降、 SCP-415-JPが確認されなくなったため、 SCP-415-JPはNeutralized申請され、受理されました。封じ込め手順に問題が無かったかの審議が現在行われ、エージェント・柳田を含む現地職員は結論が出るまで当地での収容任務継続が指名されています。

SCP-415-JP消失後、SCP-415-JPの生息していた洞窟内を調査したところ、約2000年以上前の人骨、鉄器などが発見され、これらは定期的に手入れされていたことが判明しました。これらの人骨、鉄器の調査は現在進行中です。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。