クレジット
タイトル: SCP-4175 - Friends Made, and the Void
リビジョン: 65
著者: Nagiros
作成年: 2019
邦題: ともだちできたよ。そして虚。
説明: SCP-4175はレベルⅠ霊的人型実体であり、バスルームの化粧鏡の鏡像の中に見ることが可能です。SCP-4175は2014/8/30に彼の両親に計画的に殺された13歳のアレックス・コンラッドの霊的遺留物であると理論上想定されています。
SCP-4175は部屋の中の以下の様々な物体に作用する能力を発揮して、その場にいるのならどのような人物であろうともコミュニケーションを取ろうとします。
- バスルームシャワーのカーテン操作
- 化粧鏡の照明のオンオフ
- 床のタイル上の血糊出現による単純な文
シャワーヘッドから出た水蒸気を部屋に入れ、鏡面に言葉をなぞることにより、より直接的なコミュニケーションが可能となります。この時、SCP-4175も同様にして返答するでしょう。
補遺4175.1: 霊への初期インタビュー
SCP-4175の確保に引き続き、機動部隊プサイ-8はSCP-4175に対して低優先度インテーク面接を行うよう連絡を受けました。ψ-8 マリア・ヘイズはψ-8司令ソジュン・コルテスによりサイト-17に派遣されました。
付記: 添付されたインテーク面接の1年前にψ-8 マリア・ヘイズは性別違和の緩和を目的としてSCP-113へのアクセスを要求しました。アイテムの移送費用のため要求は却下されました。
<ログ開始>
(ψ-8 ヘイズは化粧テーブル上に数本の火のついたろうそくを設置し、化粧鏡の照明を消してカムの祭式(機動部隊プサイ-8の上級職員に供与される儀式書)から一節を暗唱する。準備と実行は全体として10分間続いた。)
(暗唱後、SCP-4175に類似した霊体が同じ部屋の中のψ-8 ヘイズの隣に顕現する。SCP-4175は鏡面上にはもう観察されない。)
ψ-8 ヘイズ: こんにちは。気分はどうかしら?
SCP-4175: ジーザス、痛いよ。僕に何をしたの?
ψ-8 ヘイズ: ちょっと鏡から引っ張り出したの。少し君に質問する必要があってね。そしたら帰るからさ。向かい合ってこう会話する方が簡単だと思ったんだ。
SCP-4175: 質問?僕からも質問できる?
ψ-8 ヘイズ: インタビューの後なら、もちろんいいわよ。よし、始めましょう。君の名前はアレックス・コンラッド?
SCP-4175: うん。
ψ-8 ヘイズ: 君の以前の人生で最後に覚えていることは何?
SCP-4175は少し悩みだし、その声のピッチが上昇する。
SCP-4175: 「以前の人生」?僕は死んでる?
ψ-8 ヘイズ: 残念ながら、そう、君はそうだよ。でも、大丈夫!どんな理由であっても君の意識は鏡の中にしっかりといることにしたんだし。だから――
SCP-4175: ぼ、僕が言いたいのは、僕が鏡の中で目覚めた時に僕は考えたんだ。僕は多分死んでいて、でも本当に逝っちゃうんなら…… 僕の家族は僕がまだここに居るって知ってるの?
ψ-8 ヘイズ: いいえ、私たちは彼らには知らせていないわ。聞いて、大丈夫になるから。私は何年も霊障に対処してきたから、私は死について多少知っているよ。
SCP-4175: それじゃあ。はい。ただ…… あそこから僕を出す方法を見つけて。あの鏡にこれ以上もう居られないよ。ひどいんだ。
ψ-8 ヘイズ: それはどのような感じなのか説明できる?もし休憩が必要なら少ししてからインタビューを再開できるけど。
SCP-4175: いや、ごめんなさい。大丈夫。
SCP-4175は数秒間沈黙する。
SCP-4175: あそこは暗いんだ。狭くもあって、全ての方向から潰されているような感じ。あそこには僕を除いてほとんど何にもないって言える。おかしく感じるんだ。僕がただあそこにいるべきでないって感じみたいだ。
ψ-8 ヘイズ: 君の側から鏡の向こうが見える?
SCP-4175: ちょっとね。実際鏡は見えるよ。ただ…… ううん。鏡だね。
ψ-8 ヘイズ: 何かおかしいことでもあるの?
SCP-4175: 全部おかしいんだよ。鏡の中の僕の顔には穴が開いているし、しかも腐っていくんだ。
SCP-4175は急激な苦痛の徴候を示し始め、その声はヒステリックに尖る。
SCP-4175: あれが僕だって?僕の本当の身体がどこかでただただ分解されているんだって?彼らは僕の身体を見つけたの?
ψ-8 ヘイズ: おい、待て!大丈夫だから!
ψ-8 ヘイズは床に座るよう示し、両者は化粧鏡のキャビネットの横に座る。
ψ-8 ヘイズ: 何もかも上手くいくようになるさ。彼らが君のことをもうちょっと研究したら、彼らは多分私を呼んで君を祓わせるだろう。間違えた、君が来世に行くための手助けのためだね。
SCP-4175: お姉さんは科学者の人じゃないの?
ψ-8 ヘイズ: いいえ、私は世界中を旅して幽霊や魂とお話しているんだ。地球で最もクールな仕事だよ。
SCP-4175: そうみたいだね。ほとんどの幽霊は僕みたいな感じなの?
ψ-8 ヘイズ: どういう意味?
SCP-4175: わかるでしょ…… 囚われている感じ。
ψ-8 ヘイズは聞こえるほどため息をつく。
ψ-8 ヘイズ: 彼らのほとんどは、そうね、可能なら来世に向かえるように私が手助けしている訳だからね。現場では私が彼らを無力化したいかどうかを選ぶんだ。でも収容されているアノマリーに対してそうできる権限を私は持っていないよ。
SCP-4175: ひどいね。
ψ-8 ヘイズ: うん、そうね。
両者は数秒間沈黙する。
SCP-4175: お姉さんが羨ましいな。
ψ-8 ヘイズ: 私?それとも仕事?
SCP-4175: どっちもだと思う。お姉さんは生きてて、そして素晴らしい仕事をして人を助けてる。あの鏡の中に閉じ込められてて最悪なのは、鏡の外にいる皆が自分の人生を当たり前のように生きているって解っちゃうことだと思う。皆のようにすごくなりたい。
ψ-8 ヘイズ: だけど君は自分自身に囚われているんだ。見るのも嫌な自分に?
SCP-4175: うん、実際そうだね。
ψ-8 ヘイズ: なるほど、私は激しい不安を止める呪文を少し知っているの。聞きたい?
SCP-4175: うん!あの、今これって録音されてるの?
ψ-8 ヘイズ: そうね、何か問題?
SCP-4175: いや、あの…… はい、ちょっと嫌な感じ。
ψ-8 ヘイズ: 気にしないで、わかったわ。あると――
この時点よりψ-8 ヘイズは録音機器を残りのインタビュー中停止する。
<ログ終了>
後書き: ψ-8 ヘイズは収容ユニットから退出するまでSCP-4175と48分間以上会話した。インテーク面接の全ての質問について適切な回答が得られたことを勘案し、プロトコル違反は深刻ではないと考えられた。ψ-8 ヘイズはψ-8司令コルテスにより譴責され服従義務違反により2週間の謹慎を命じられた。
ψ-8 ヘイズはSCP-4175に対する継続的試験のために特別クリアランスレベル2/4175を要求した。要求はナタリー・リームス次席研究員により承認されました。
補遺4175.2: 終了
2015年9月8日にSCP-4175の解体が宣告されました。アノマリーは散体されましたが、ψ-8 ヘイズの独断により手順中の音声ログのアーカイブは放棄されています。音声ログの回復は必要ではないと考えられています。しかしながら手順のビデオログは得られました。
ビデオログ:
<ログ開始>
ψ-8 ヘイズがカムの祭式に記述されている散体儀式に必要な幾つかのオカルトアイテムを運びながら収容チャンバーに入室する。彼女はSCP-4175に挨拶し、それの前のカウンターに道具を設置する。
SCP-4175とψ-8 ヘイズは儀式の準備が整うまでの数分間言葉を交わす。会話の内容は未だ不明であるが、両者とも苦しんでいるようには見られない。
ψ-8 ヘイズはSCP-4175との会話を続けながら散体儀式を開始する。SCP-4175は15分掛けて徐々に鏡から消え失せる。
SCP-4175とψ-8 ヘイズはSCP-4175がほとんど見えなくなった時に会話を辞める。SCP-4175は最後に発言し、ψ-8 ヘイズが返答する。そしてSCP-4175は完全に消失する。
ψ-8 ヘイズは散体儀式に使用されたアイテムを片付け、収容チャンバーを去る前に見てわかるほどの笑みを浮かべる。
<ログ終了>