SCP-420-JP
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SCP-420-JP-1に対して撮影を行ったときに撮影された写真。電磁波の影響により画質が乱れている点に注意

アイテム番号: SCP-420-JP
 
オブジェクトクラス: Euclid
 
特別収容プロトコル: SCP-420-JP-1の出現に備え、現在特別海洋監視網が太平洋上全領域に対して適用されています。6基の監視衛星によるシフト制の常時監視、または79基の電磁ブイによってSCP-420-JP-1の出現が確認された場合には、周辺海域の封鎖を実行してください。
周辺海域の封鎖は韓国支部、ロシア支部、フランス支部、アメリカ本部との規定の協調約定によって行われ、日本支部からは封鎖執行用の諜報用偽装船舶18艇と情報収集艦「はかぜ」が供出されています。
尚、SCP-420-JPに関する情報は上記の各支部と日本支部とで共有されます。
 
SCP-420-JPに関する実体的な存在は、日本支部のサイト-8187が管理することになっています。もしもSCP-420-JP-2群の確保に成功した場合、別途異常性の研究の後、適切な特別収容プロトコルを制定してください。
それらのオブジェクトに、もしSCP-420-JPとは関連性のない異常性が発見された場合、独自のSCPナンバー割り振りのための提案書をサイト-8187管理官へと提出してください。
 
SCP-420-JP-1が財団の管理外へと影響を波及させる徴候が確認された場合、即座にSCP-420-JP-2に対して財団所属の船舶を接近させてください。その際、可能であればSCP-420-JP-2の拿捕・収容が推奨されますが、あくまでSCP-420-JP-1の消失を優先してください。
 
説明: SCP-420-JP-1はSCP-420-JP-2群が発する6種の特定の電磁波が太平洋上で交差する点にて出現する、電磁波によって構成された高速輸送艦モデルと思われる半実体的艦艇です。
SCP-420-JP-1を構成する電磁波はおおよそが電波として分類される低周波のものですが、周波数は常に不定です。しかし、高波動性であるため視認が困難という点と、空間上に常に輪郭を保ち運動的性質を見せるという点は、どのような状態であっても基本的な構造として維持されます。
SCP-420-JP-1は常時不安定量の光子放出を行っており、その干渉によって半径40m圏内の空間を経由する、いかなる無線通信にも影響を及ぼします。それは主として通信の混濁という形で現れますが、この光子が意図的に放出されているものであるならば、理論上は通信の傍受または電子機器へのハッキングも可能であると思われます。
 
SCP-420-JP-1に対する物理的接触は、接触物がSCP-420-JP-1を構成する同電磁波へと置換され、喪失するという現象を即座に引き起こします。後の実験結果によって、この性質によって電磁波へと置換された物質は電磁波の状態でSCP-420-JP-1内部へと貯蔵され、還元も可能であると判明しています。
しかしながら、SCP-420-JP-1が海上を問題無く航行しているかのような素振りを見せている点から、海水のみはこの性質によって電磁波へと置換されないと推察されました。この推察は実験によって実証されており、海水の噴霧によってSCP-420-JP-1の詳細な輪郭線の炙り出しにも成功しています。
 
SCP-420-JP-1は、6艘/隻の不明船舶であるSCP-420-JP-2が海洋上の複数点から発信する電波によって構成されていると思われ、これらの電波のいずれかが喪失された場合、消失します。
SCP-420-JP-2は地球上のどの海洋上からでも電波が発信可能であり、電波の発信源の追跡もしくは肉眼での視認以外ではいかなる探知方法でも発見することが出来ません。そのため、SCP-420-JP-2は電波の発信を中断して逃走を開始することで、財団による追跡から逃れています。
しかしSCP-420-JP-2に対する追跡は、電波発信の中断によるSCP-420-JP-1消失の誘引が可能であるため、SCP-420-JP-1が財団の管理外へと影響を及ぼす可能性がある場合の対処法として策定されています。
 
SCP-420-JP-1は通常であれば、海洋上を8.3〜11.5ノットで1時間ほど航行した後、自然的に消失します。これはSCP-420-JP-2が電波の発信を自ら中断することによる消失であると思われ、出現可能または航行可能な時間の限界は現在でも不明です。
 
SCP-420-JP-2の確保・収容は現在まで成功していませんが、複数回に渡る追跡によって収集された情報から、以下の6艘/隻がSCP-420-JP-2実体であると思われます。
分類名 外観 出現傾向 備考
SCP-420-JP-2a 船体に計31本の銛が突き刺さったトロール船 インド洋、特に赤道以南東経45度以東に頻出 一部装甲の腐食痕から、掃海艇として徴用された元トロール漁船と思われる。船籍記録無し。逃走時、高速で自己の腐食を進行させ自己分解するとの異常性を発露させるが、特徴の一致から、全SCP-420-JP-2aは同一の船舶であると思われる
SCP-420-JP-2b 鉄道車両用と思われるディーゼルエンジンを後部に搭載したプレジャーボート 北極海全域に頻出 静止状態から1.3秒で推定170ノットまで加速した例が報告されている。損傷や凍結が見られない事から、物理的影響を部分的に遮断している可能性有
SCP-420-JP-2c PLH-01「そうや」に類似した巡視船。艦橋が完全に取り払われ、代わりに巨大なアンテナが甲板の一部を突き破って立っているが、常時傾いている 傾向無し 一時的な拿捕に成功した唯一の船舶。直後、船籍不明艦2隻の出現と攻撃により喪失された。それ以降、肉眼で視認された報告例無し
SCP-420-JP-2d 一人乗り用と思われる無人のスワンボート 南大西洋全域から南極海の一部に頻出 高度な潜行能力を有する。魚雷発射、機雷撒布によって財団所属船舶に対し積極的に危害を加える唯一のSCP-420-JP-2個体。武装の格納方法は不明
SCP-420-JP-2e 構造不明の小型潜水艦 北大西洋全域から西経90度線以東に頻出 非常に高い水準の水中速力と潜行能力を継続的に発揮し続ける。SCP-568-JPの放送内容との合致から、関連性が指摘されているが、同時出現が確認されたことで、同一の異常存在では無いと結論付けられた
SCP-420-JP-2f 不明 チャレンジャー海淵最深部 追跡によっても電波の発信を中断しない唯一の個体。発信中、発信源地点への到達には3度成功しているが、関連性のある異常物の発見はされておらず、存在の確定には至っていない

 
付記: SCP-420-JP関連実験記録
SCP-420-JP-1の性質について、複数の実験が実行されています。以下はその一部記録です。
 
実験記録420-03 - 日付████/██/██

対象: SCP-420-JP-1

実施方法: 実験用ラットによる接触

結果: 実験用ラットは即座に電磁波に置換され消失

分析: 生体であっても電磁波へと置換される例として記録

実験記録420-05 - 日付████/██/██

対象: SCP-420-JP-1

実施方法: D-420-01による接触

結果: D-420-01は即座に電磁波に置換され消失

分析: 携帯させた特定周波数の電磁波発生装置も置換されたが、SCP-420-JP-1を構成する電磁波に影響は無し。しかし置換後、特定電磁波がSCP-420-JP-1内部から検出された。

追記: 実験より78日後、SCP-420-JP-1の再度出現時にD-420-01の生還を確認。D-420-01は救命ボートに乗った状態でSCP-420-JP-1内部より突如出現した。救命ボートにはD-420-01の他に、籠に入った実験用ラット一匹と一枚のメモ用紙が積載されていた。D-420-01は行方不明になっていた期間の記憶を喪失していた。

メモ用紙に書かれていた文章: キヲ ツケタマエ

実験記録420-11 - 日付████/██/██

対象: SCP-420-JP-1

実施方法: SCP-420-JP-1に対する海水の噴霧

結果: SCP-420-JP-1全体へ大規模な海水の噴霧を行うことで、SCP-420-JP-1の輪郭の把握に成功。また、海水はSCP-420-JP-1によって電磁波へと置換されない物質である点が立証された。

分析: SCP-420-JP-1は明確に"船"であると思われる。また、海水は接触によって電磁波へと置換されない事から、光子半態化リキッド・スーツを用いた内部探査が実現する可能性が考えられる。

 
補遺: SCP-420-JP-1探査記録
特定異常存在の収容目的に開発された光子半態化リキッド・スーツによって、着用者の体表に40cm厚の弾性海水を定着させることでSCP-420-JP-1の内部探査が可能であるとの知見に基づき、Dクラス職員を用いた実験が実行されました。

探査記録420-01

概要: D-420-01に光子半態化リキッド・スーツを着用させた上で、展開された弾性海水層より内側の空気層内に空気を供給させるためのボンベを背負わせた状態で行動させる。光子により半液状となっている弾性海水は、D-420-01の確実な保護のため40cmの厚さで展開されるよう設定。
そのため、精密な動作は困難であると考えられていたが、探査スーツ用の改良の結果、部分的に弾性海水層の形状を、予め設定していたプログラム通りに変形・操作することが可能となる機能が追加された。これによって、弾性海水によって両腕を形成し操作することが可能となり、D-420-01には専用の訓練を施した上で、これを装着しての探査の実行が決定された。
無線によるリアルタイムでの相互連絡はSCP-420-JP-1による電磁波の影響から困難であるため、光子半態化リキッド・スーツに取り付けられた録音装置とカメラを用いてD-420-01に逐一状況を録音・録画させ、回収することが探査任務の概略であるとされた。そのため、D-420-01の「確実な生還」が第一目標であると、D-420-01本人に強く認識させた上での任務であることに留意。
記録は、ドローンによるD-420-01のSCP-420-JP-01への到達から開始。

<記録開始>

[水音]

D-420-01: ホントに変な感じだ、このスーツ。ゼリーを着てるみたいだ。衝撃も殆ど感じない。すごいもんだ。この船ほどじゃないが。

SCP-420-JP-1による電磁波の影響領域外から監視を行っている情報収集艦「はかぜ」によると、D-420-01はこのとき甲板前部に確かに"立っていた"とのこと

D-420-01: 本当に透明な船に立っているみたいだ。これに直に触れば、俺は消えちまうらしい。さっさと始めることにする。

D-420-01に取り付けられたカメラは、弾性海水層越しに状況を撮影しているため映像が不鮮明であるが、D-420-01が下を向いてゆっくりと探るようにして歩を進め始めた様子をかろうじて映している

D-420-01: 終始手探り足探りで進むのはキツいな。海が船の形に凹んでるのは見えても、やっぱり透明なものの上を歩くのは──

D-420-01の移動が停止する

D-420-01: 今なにかにぶつかった。壁、みたいなものだ。腕で探ってみる。

弾性海水層の一部で右腕部を形成し、それを右前方へと伸ばす。形成された右腕部は壁に押し付けられたかのように直ぐさま変形し、D-420-01は潰れたままの右腕部で、不可視の壁をなでるように探り始める。そして約38秒後、壁をなぞっていた右腕部の先端が、腰程度の高さの所でこれまでと異なる形状に変形する

D-420-01: 何かあるようだ。ドアノブ、みたいな感じだ。試しに回してみる。

[軽い金属音]

[金属が微かに軋むような音]

D-420-01: どうやら、開いたらしい。電磁波なのに、なんで普通のドアを開けたみたいな音がするのか訳が分からないが、さて、どうしようか。

[雑音]

D-420-01: [11秒沈黙] 聞こえたか? 俺もよくは聞こえなかったが、何か、言葉みたいなのが聞こえた。この先からだ。

[雑音]

D-420-01: これ、やばいんじゃないのか? 無線機越しの声とかじゃない、生の人間の声だ。誰か中にいるんじゃないのか?

[二重の雑音]
この時点から、雑音が徐々にD-420-01へと接近し始める

D-420-01: いや、これ、やばい、逃げる。

D-420-01が慌てて逃げ始める。カメラが大きく揺れ、不鮮明ながらノイズを画面に表し始める

[轟音]

D-420-01: やばい、なんかマジでやばい。やばい。

[轟音]

D-420-01: うわっ!

大きく揺れ続ける映像の中で僅かに2フレームのみ、人間の形をしたノイズがD-420-01の腕を正面から掴んでいるかのような映像が映る。この時のことをD-420-01は後に「何か見えた訳ではないが、誰かに腕を掴まれたような感触がした」と証言した

[轟音]

[閃光]

[汽笛の音]

[雑音]

SCP-420-JP-1が消失。D-420-01は凹んでいた海面が元に戻ろうとする噴き上がりに巻き込まれるも、弾性海水層による緩衝効果で無事だった。27秒後には、探査の終了が宣言されD-420-01は回収された

<記録終了>

終了報告書: 今回記録された雑音、轟音、閃光、汽笛のような音は全て外部からは観察も記録もされませんでした。光子半態化リキッド・スーツの実用性は証明されたと考えられるため、次回は機動部隊による探査を実行し、より詳細なデータを収集する必要があります。また、回収されたD-420-01の左腕部には、以下のメッセージがタイプされたメモ用紙が括り付けられていました。

メモ用紙の内容:
ただの実験 だ
正否 祈る べし

デンジ

 
光子半態化リキッド・スーツ装備の訓練を受けた機動部隊が、次回のSCP-420-JP-1の出現時に備えて待機中です。

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