SCP-4220
評価: +15+x

警告: 以下のファイルはレベル4/4220機密情報です


このファイルにレベル4/4220承認無しで行われるアクセス試行は記録され即時懲戒処分の対象となります。


アイテム番号: SCP-4220 Level 4/4220
オブジェクトクラス: Euclid 機密

moon.jpg

SCP-4220 (1991年頃)。


特別収容プロトコル: 財団職員は、UNOOSA1やその他SCP-4220の観測、探索、掘削に取り組んでいる政府、企業、学術機関と連絡を取り合う必要があります。プロトコルEYES WIDE SHUTの下に、以下の規定が設けられます。

  • SCP-4220地表面の商業的採掘・探索、植民地化を規制する国際法が拡大され、厳格に施行します。
  • SCP-4220内部の地震学的な研究は抑制もしくは改竄されます。溶岩洞に関する研究は可能な限り阻止されます。
  • 財団が関与しないSCP-4220での任務は、厳密にレゴリスのサンプル採集のみに制限されます。財団職員は関連団体と連携して、深さ10mを越える掘削やSCP-4220-2へのアクセスを防止します。
  • SCP-4220の裏側を通過する可能性がある全ての任務は、財団資産によって監視されます。SCP-4220-2に関するデータ(写真、放射分析、熱画像を含むがそれらだけに限られない)は抑制もしくは改竄されます。SCP-4220-2と接触するリスクを回避するために、人間が行う任務は全て方向転換されます。
  • SCP-4220の内部構成に関する科学的コンセンサスが維持され、支持されます。

SCP-4220の内部に関する全ての情報は別途通知があるまで機密扱いに保たれます。SCP-4220-1に通じる掘削孔は崩落しています。アクセスは固く禁止されます。

説明: SCP-4220は地球の月です。現在の科学的コンセンサスにおいて、月は明確な地殻、マントル、中核を特徴とする太陽系で2番目に密度の高い衛星とされています。これは不正確です — 19██年に月面で実施された財団出資の調査任務で、月の内部は空洞であると断定されました。これにも拘らず、SCP-4220はその推定質量に予想されるものより遥かに強い重力を発揮しています。

月のレゴリスは平均して約6kmの深さであり、起源不明の内部構造によって下から支えられています。この構造は六角格子状に配置されたコンクリート、玄武岩、鉄で構成されています。内部へのアクセスは南極エイトケン盆地(月面にある既知の最も深い衝突クレーター)にある直径1m、深さ約50mの人工掘削孔を介して可能となっています。このシャフトの底には跳ね上げ戸があり、“怪奇部門”という文言が刻まれた金属製プラカードがボルト留めされています。

跳ね上げ戸は機械式のエアロックに通じており、その下部にSCP-4220-1と指定される地下複合施設が続いています。SCP-4220-1は全体がベリリウム銅から建造されている準工業サイロです。直径およそ半km、深さ半kmで、全100階層から成ります(サイロ中央の螺旋階段で区切られている)。各階層には連続的に並んだキューブ状の独房があり、階段部分から延伸する螺旋状のパターンで配列されています。階段は最上層の天井から下方に延びている巨大な気送管(直径1m)に巻き付いています。

それぞれの独房には、機械仕掛けの真鍮製タイプライターを乗せた机があります。タイプライターのリボンは気送管に置換されています。これらの管は天井に接続されて螺旋のパターンを形作り、中央階段のパイプに繋がる形式で収束しています。機械仕掛けの真鍮の両手が追加の気送管を通して各タイプライターに設置され、真鍮の靴が各机の下の床に置かれています。手は持続的にタイピングしており、靴が両方とも独房を離れて位置を換えた時のみ停止します。各階層にあるタイプライターの一部は破損しているか、機能していません — それらに対応する手や靴は動かないままです。

サイロの幅は階段の一番下にある、中央パイプを囲む円形のバルコニーで急激に狭まっています。パイプは月のレゴリスとセメントの混合物で密封された直径約1m、深さ不明のシャフトへと続いています。“汚染”と記された機械式のダイヤルが、バルコニー階層のパイプに取り付けられています。SCP-4220-1の収容開始以来、ダイヤルの数値は75から85に上昇しています(表示上の最大値は100)。このダイヤルが測定している単位の種類は不明のままです。

SCP-4220-2は、月の裏側です。

[編集済 - レベル5クリアランス制限]

補遺4220.1: 歴史的概要

1960年までに、アメリカとソビエト連邦は双方ともに、SCP-4220に関する知識が各々の文化の正常性を脅かすものであることを認識していました。しかしながら、宇宙開発競争の性質上、両国はどちらも顕著な社会文化的/政治的損失を伴わなければ有人月面着陸計画を中止できない状態でした。表向き、両国はこの目標を達成するために非異常な技術を競っていました。

しかしその裏で、アメリカとロシアの科学者たちは、第二の秘匿された宇宙開発競争を行っていました — 異常資産と超常技術を動力とするものです。この競争は秘密裏に月へと到達し、その真の性質を暴き、兵器化可能か否かを断定するために実施されました。

ソ連の計画は意図せずしてSCP-4220-2の構成要素を月に持ち込み、またアメリカの計画も意図せずSCP-4220-2の形成に触媒作用を及ぼす材質を提供することになった可能性が高いと思われます。

補遺4220.2: ヘリオス

ソ連の亡命者からルナ計画について伝え聞いた当時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディは — それ以前は宇宙開発競争における異常物の使用に反対していたにも拘らず — “ヘリオス”のコードネームで呼称される極秘プロジェクトを不本意ながらも承認しました2。ヘリオス計画の目的は、月に存在する人工構造物の性質を見定め、ソ連よりも早く制御下に置くことでした。ロシアが宇宙開発競争で先んじていたため、ケネディはペンタグラム3が故 ジョン・ホワイトサイド・“ジャック”・パーソンズ4の指揮の下に当該プロジェクトの実権を握ることを許可しました。


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関係者たち: 左から右に、アレイスター・クロウリー、ジャック・パーソンズ、L・ロン・ハバード (GOCアーカイブファイル; 1947年頃)


プロジェクト・ヘリオスは19██年、核パルス推進ロケット ヘリオス1号の建造と打ち上げでピークを迎えました。ヘリオス1号は打ち上げから数時間以内にSCP-4220へと到達し、月面に墜落しました(全ての乗務員が死亡し、パーソンズは帰還不可能になった)。ロケットの設計における幾つかの重要な要素について、パーソンズは自らの洞察を共有しようとしなかったため、ペンタグラムはヘリオス1号の仕組みを複製できず、アポロ計画(18-20)まではロケットの残骸を回収することも不可能でした。これらのミッションはヘリオス1号のノーズコーン回収に失敗しました。

月面エリア-100の建造中、財団職員はヘリオス1号乗組員の墓とノーズコーン(後にパーソンズが憑依していると判明)を発見しました。ノーズコーンはサイト-42へと移送され、機動部隊ラムダ-10(“死者を目覚めさせよ”)によって、パーソンズをDクラス職員の肉体に固定するための交霊会が実施されました。ラッセル・デルヴォン博士がD-15636経由でパーソンズにインタビューしました。

注記: これらのインタビューはプロジェクト・ヘリオスに関する財団の理解を 包含するものです。ペンタグラムはパーソンズの証言の肯定/否定を拒絶しているため、インタビューの内容は検証できません。

パーソンズについて

デルヴォン: パーソンズさん、我々の交霊会に加わっていただき感謝します。まず初めに、何故あなたが月にいたかについての詳細を明かしてはもらえないでしょうか?

パーソンズ: あのさ、俺のことはジャックと呼んでくれないか。さもなきゃ、ベラリオン・アルミルス・アル・ダジャルだ — 反キリスト、野獣666の掟を遂行するべくして来たる者 — だがジャックでも別にいい。それはともかく! あのお役人どもはまさしくアンタらが予想してる理由であそこにいた。アカだよ — 宇宙に! 神無き共産主義を拡散しようってのさ。ところが連中さえ月に降りた最初の奴じゃなかった — 奴らは南極クレーターの地下に何やら胡散臭い人工サイロを発見した。すっかり放棄されている。そして当然、そんな物は放っておけねぇ。だからペンタグラムは全速力で月に向かうためのロケットを俺に作らせた。ヘリオス1号を。

デルヴォン: はい、えー、ジャック。ありがとう。では —

パーソンズ: 月面に“民主主義を広める”奴らの“天与の権利”とやらにはこれっぱかりも関心が湧かなかったがね。いいか、40年代にはな、俺はダチのロン5と一緒に“ババロンの役”って呼び名を付けた秘伝の性儀式をやってたもんだ。俺たちは元素の精霊を呼び出して、そいつとの間に子供を設けようとした。成功したのは半ばまでだ — とうとう子供は授からなかったし、あのアバズレはロンと高飛びしやがった6。でもな、ヘリオス1号の件でペンタグラムの顧問を始めた後に、その件で閃いた。あいつはただの小娘に過ぎなかったんじゃねぇか? アリー7は俺たちが産もうとしてた存在を“ムーン・チャイルド”なんて大層な名前で呼んでた。もしあの時本物の精霊が月面で召喚されていたとしたらどうなる? これは是非とも行かなきゃならねぇだろ!

デルヴォン: [急いで書き留めながら] 待っ、待って — 待ってください — あの、つまり、あなたがプロジェクトに同行したのは、自分が月面に… セックスの精霊を召喚したと思ったからなんですか?

パーソンズ: 俺なら“同行”とは言わねぇなぁ… うん、“密航”だろ、そっちのが正確だ。ペンタグラムは主任技術者をロケットに乗り込ませたりしねぇよ — もし吹っ飛んだらどうなる? 幸い、俺はクロウリーの一番最近のスケに憑り付いて連絡を取ることができた。クロウリーは俺にまとわりつくペンタグラムの束縛を改造する手助けをしてくれた。そんなこんなで、クロウリーの指示通り、俺は処女航宙に繰り出すヘリオス1号のノーズコーンに憑依したってわけさ! 事は完璧に運んだよ… 月面に墜落するまでは。だがロケット科学ってのはそんなもんだ! ミスは起こる。重要な事物はそうやって学ぶのさ。

ヘリオス1号について

デルヴォン: ヘリオス1号の設計について教えていただけませんか? どのように考案され、どのように推進力を得ていたのか、といった諸々の事をです。

パーソンズ: ヘリオス1号は神核パルスエンジンロケットだ — 神核テオニュークリアってのは俺たちが59年に作った造語だよ、特許も取ってある — 推進力として繰り返し神核パルスを生成するテラー-ウラム式デザインをベースにした。俺の傑作の1つさ、マジで。ヘリオスは神核とオルゴン8のエネルギーを利用した — オルゴンは船のシステムに動力を供給し、魂を圧縮し、それを更なる起爆のために再補充する! あれについちゃかなり誇りに思ってるよ — 俺はロケットの骨組みに特殊なバイ-チャネリング・システムを導入して、特殊な性魔術を利用するような構造に設計した。お望みなら絵で説明できるぜ。

パーソンズは紙とペンを提供され、ヘリオス1号を図解し始める。

デルヴォン: あの、それは — 陰茎ペニスではないですか。

パーソンズ: いや、実はな、これがヘリオス1号なんだ! だが設計の要点に気付いてくれて嬉しいよ — こいつはオカルト研究とオルゴンのチャネリングに向けた何年もの研究の集大成だ。見てみな、ロケットの構造は先端からシャフトを下って基部へオルゴンを送り込む仕組みになってんだ。神核燃料はここのタンクに貯蔵され[図面の基部にある円を指差す]、そこから基部に吸い上げられてオルゴンに圧縮される。そしてここのプッシャープレートに対して起爆し[図面のメインシャフト中央部を指差す]、ロケットを上昇させる。余剰オルゴンは燃料タンクの断熱壁に注ぎ込まれ、再捕獲とリサイクルのために燃料をタンク内へ引き戻す。一切何も放射しない、100%のクリーンエネルギー — いやまぁ、エネルギー的な観点ではの話だが。 見事なまでに成功したよ!

デルヴォン: ええ、月面に墜落するまでは。何故あのような事故が起きたか心当たりはありますか? 破壊工作とか?

パーソンズ: ああアレな、ホントにツイてなかった。いや、俺はこいつに従来型の逆噴射装置を搭載したくなかったんだよ。減速と軟着陸に負のエネルギーを使い過ぎる。その代わり、このロケットは推進装置の極性逆転にオルゴン・エネルギーを向けるよう設計された — なのに乗組員どもは、性的な流れを適切に確保するだけの律動を得られなかった!

デルヴォン: [書き留めながら] 待ってください、一体その“性的な流れ”がどう推進力に影響を —

パーソンズ: で、月面着陸のために半回転して減速する代わり、俺たちは墜落した。爆発的な減圧 — 乗組員は皆、宇宙服を着てなかった。あのクソ忌々しい着ぐるみは、チャクラを通じた性的なクンダリニーの流れに山ほど問題を起こしただろうからな!

神核動力について

パーソンズ: ちょっと質問させてくれ。人間の魂の最も輝かしい特性とは何だと思う?

デルヴォン: うーん… 分かりませんね。精神力とか?

パーソンズ: 全てさ! 不屈の意思! 知識への渇望! 忍耐 — 勇気 — 自身を駆り立てる能力 — 限界を目指し、神のあらゆる被造物を征服する能力! 飽くなき好奇心、飽くなき欲望… 人間の魂の最も輝かしい特性、それは決して止まらねぇってことだ。そして、等エネルギーの超流動体として抽出し、永久機関の動力として利用できるという事実だ。

デルヴォン: さ — 最後のほうを繰り返していただけますか? どうも私の聞き間違えのようですので。

パーソンズ: アンタの魂は実のところ、動的、電気的、熱的エネルギーの無限の源なんだよ。問題は、エネルギー自体が無制限な反面、実際の出力となると… 最小限だという点だ。だが俺たちはそれを克服した。魂に放射能抜きの核分裂を起こさせ、おまけに爆発した魂を爆発してない超流動体に戻す手段を見つけ出した。言っただろ、忍耐が肝心だって! あとこれも言ったと思うが、59年にアレクシス・サンタナ嬢とオールズモビルの後部座席で性的な交わりをヤッてた時、その忍耐は魂を核パルスエンジンにとって完璧な燃料源に変えたんだ。全く、残る問題は1つだけだった。

デルヴォン: 待ってください — 性的な交わり云々は脇に置くとして、その当時あなたは既に死亡していたのでは? 失礼 — いや、それよりも、問題というのは —

パーソンズ: 俺は死んでたが、サンタナ嬢は死んでなかったよ。いや、当面の問題に戻るか。唯一の問題ってのはな、大量の魂が必要になる点さ。それも生きの良い魂だ。そんじょそこらの古い墓地に出かけて死体を掘り出したってどうにもならねぇ。魂はそう長く死体に留まったりしねぇんだ — 少なくとも、幸せにくたばった奴らはな。

魂の取得手段について:

パーソンズ: 事が軌道に乗り始めた頃、俺たちはニュー・エコタの端っこにいた。

デルヴォン: ニュー・エコタ… ジョージア州ですか。涙の道が始まる所ですね? そこで何を…

パーソンズ: デルヴォン博士、やっぱりアンタの精神は俗っぽいな。この合衆国でやり掛けの仕事を抱え込んだ霊、苦痛の中で死に至った霊、親族のために復讐を求める霊を見つけたかったら、アンタはどんな奴らを探す?

デルヴォン: …アメリカ先住民です。

パーソンズ: ビンゴ! あいつらの抑圧された怒りと憎悪からは猛烈な加速が得られる。俺と研究室の何人かは59年、自動車で合衆国南部横断旅行に繰り出した。涙の道に沿って移動しながらの幽霊狩りさ — いやもう、あれが俺の死後生の最盛期だよ! 如何にも歴史ありって感じの小さい町に立ち寄り、庭一つ分もハッパをふかし、地元のレディをナンパして、近所のインディアン埋葬地に誘い込んでは思う存分神聖冒涜に耽り — 裏の意味は分かってるよな? — そして化けて出た霊を吸引する。もうサイコーだったね!

デルヴォン: パーソンズさん — ジャック、敢えて言いますが、私にはそれらの行動はかなり非難されて然るべきものと思えます。

パーソンズ: 何だよ、墓地でヤるのが? 心配すんな、俺は霊だけど全然構わねぇから。それともアメリカ先住民の聖なる埋葬地を体系的に穢して、そいつらとその文化を搾取したことを言ってるんなら… アンタは一体俺に何を言わせたい?

パーソンズは立ち上がり、交霊テーブルに両手を置く。

パーソンズ: “共産主義の容赦ない歩み”を止めるためなら何でもやれと、お偉いさんたちはそう言った。俺はもっとマシなやり方があると言ったよ。ネズミか何かを数十万匹殺せば事足りる、インディアンはもう十分苦しんだんじゃねぇかとな。だがアンタも軍がどんなもんかを知ってるはずだ。軍は欲しいと思った物を必ず手に入れる。俺は楽しんだもん勝ちだと考えた、分かったか? 俺が奴らに太刀打ちできるとでも思ったか? 俺だってインディアンと同レベルの被害者だ!

デルヴォン: 申し訳ありません、ジャック。あなたのせいだと当てつける気は無かったのです。エヘン、それでですね、どのように霊を“吸引”したのですか?

パーソンズ: 企業秘密だ。あのゲスどもが俺に押し付けたギアスは古びてるが、未だにあっちこっちで機能してやがる。掃除機を使ってはいなかったが、オルゴンが関与したってことは言えるよ。なんでわざわざ墓地でヤッたことに触れたと思う? クロウリーと俺はそういうやり方で実行できるあらゆる類の素敵なモンを考え出した。月の女神を創造したり、地下から人間の魂を抽出したり。でもってペンタグラムが俺を掘り起こした時… 奴らには口を割らせる手段があったのさ。

孤立について

デルヴォン: ヘリオス1号の墜落から我々に発見されるまでの間、月で過ごした時間のことを教えていただけますか?

パーソンズ: 最初はかなりムカついた — 乗組員が性欲を維持できなかったせいで全ての努力が台無しだ! だがそれには慣れた。正直な話、オルゴンは俺の予想よりも急速に残骸から漏れていたんだが、俺は実り豊かな死後生を送ってたからな。本当の敵は退屈だった。暫くは劇を書いたり、乗組員を使ってそれを演じたりしながら過ごしてたね。俺はきっと… 10年? 20年? ぐらいイカレてた。脳みそがカッコーの巣の上でぶっ飛んでる時は時間なんて分からん — だが飽きてまた正気に戻った。

デルヴォン: つまり、本来のミッションを放棄したのですね。

パーソンズ: それは侮辱と受け取るぞ — 正気に戻った後でまた再開したさ! あの後ずっとノーズコーンに憑きっ放しだったとでも思うか? 時々俺は自分の底力に感心するよ。そんなわけで、俺は遠出をした — そして実際、南極エイトケン盆地で、元々探してた構造を再発見できた。

パーソンズは言葉を切り、遠くを見つめる。デルヴォン博士はその後1分間、彼の注意を引き戻そうとする。

デルヴォン: ジャック? どうしました?

パーソンズ: 俺はあそこに降りた。

デルヴォン: 何処に降りたんです?

パーソンズ: 何故自分がアンタの前に姿を見せたか、俺には分かってる。

パーソンズはデルヴォン博士の肩を掴む。

パーソンズ: あれは墓だった。あの下には誰かがいる — 存在、亡霊、幻影、何だか分からねぇが — あるがあの下にいて、そいつは沢山の小さな欠片に引き裂かれていて、その欠片の一つ一つが檻に閉じ込められている。だが俺はその欠片を見た — そして欠片どもは俺を見た

保安部隊が踏み出し、パーソンズを麻酔銃で撃つ。D-15の身体に固定されているにも拘らず、パーソンズに対する麻酔の効果は遅延している。

パーソンズ: 何が起きたのかは分からん — あれは無理矢理に上昇したか、或いは月の女神があれを拒絶したんだろう。だがあれは見ちゃいけねぇもんだった。俺たちは月に降りた最初の奴らじゃなかった — そして最後であるべきだ。

この時点で麻酔が効果を発揮する。パーソンズは意識を喪失する。交霊会は終了する。

補遺4220.3: ルナ

アメリカが別個の宇宙計画を確立したのとは対照的に、ソビエト連邦は[編集済 - 要レベル5クリアランス]の助力を得て、既存のルナ計画を超常技術で単純に拡張させていました。これにより、ソ連はSCP-4220-1への有人潜入ミッションを複数回実行することができました。しかしながら、ルナ計画は公式な説明無しに突然打ち切られました — SCP-4220-1の収容を成立させるためだった可能性が濃厚です。

以下の書簡は、クリストフ・アレクセイエフ教授の同僚、ダミアン・クラフチュク教授の自宅から回収されたものです。アレクセイエフ教授は1958年から1965年までルナ計画のプロジェクト主任を務めていました。全ての文書は原語のロシア語から翻訳されています。

不運ではあったが、小さなミチター9の喪失はちょっとした停滞に過ぎない、そこは保証しよう。今から伝える事は、私以外にはごく少数の者たちしか知らない。君はこの成り行きの重要性を理解しているものと信じている。

アメリカ人が自分たちのささやかな“ラスプーチン”10に目を眩まされている一方で、我々はより実践的なアプローチを信頼してきた。有人宇宙飛行の最大の壁は常に乗務員の安全な帰還だ。システムに次ぐシステムが乗務員の保護と健康に専念し、しかもそれらシステムの一つ一つがミッションの複雑性を桁違いに増大させる。

しかし、もし乗務員の健康が全く問題にならないとしたら?

ドロフェエフ将軍11が我々に最初の操縦者を提供してくれた。将軍は彼女のことを“82号”としか呼ばない。14歳の肥満した少女だ — 口調は舌足らずだし、不快な匂いがするし、頭髪は無い。

被検体は死刑囚だ。我々は彼に致死量のプロポフォールを注入した。安楽な死を確実にするためのあらゆる手順を踏んだとはいえ、手順は依然として我々の多くに吐き気を催させた。ルキアンは密かに、まるで偽医者にでもなった気分だと告白してきた。ジャコウウシの腹を裂いて、まだ暖かい腸から未来予知ができるかのように装っていた古代の腸卜僧も同然だと。だが私は、我々の“魔術”に何ら空想的な要素は無いと彼に保証した。

死亡から20分後、死体は身を起こした。我々はそれを検査した — 脈拍も呼吸も無い。触れてみると冷たい。酔っ払いのような動きではあったが、82号は成功裏に死体を歩かせ、室内の様々な物体と相互作用させた。

状態に依らず、死体は死後数時間で利用不可能になる。これは残念なことだ — 利用可能な窓口を大幅に狭めている。従って、アンテナ・アレイは非常に注意深く外科的に挿入しなければならない。重度の麻痺患者であれば酸素を殆ど消費しないし、移動中に機内で混乱を起こすこともないはずだ。月面への衝突が — そしてその後の減圧が — 残りの部分を手掛けてくれる。

ドロフェエフ将軍は昨日被検体を届けた。私は自ら被検体をミチターの妹12に載せたが、その前にもう一度彼の体重を測った。以前より1ポンド近く軽くなっていた。私の手はまだチョークで汚れている — 質量の減少を考慮に入れて計算を修正する夜を送る羽目になったよ。

月面に第一歩を踏み出すのはロシア人になるだろう。歴史は彼の生き死にまでは気にするまい。

我々は構造物を発見した。しかし、全く道理が通らない。

それはオフィスビルだ。月の中にオフィスビルがあるんだ、ダミアン。

屋内は加圧されている。内部では、真鍮の手が真鍮の机に固定され、真鍮のタイプライターを叩いている。誰も履いていない真鍮の靴が辺りを歩き回っている。その全てが、真鍮の吹き抜け階段を中心に、真鍮のパイプで動かされている。

構造内に複数の探査体を派遣したが、これ以上先を探査する前に通信が途絶えてしまう。生きた人間を派遣するか — これは単純に実現不可能だ — あるいは死体を長持ちさせる手段を発見しなければならない。

私の施設には今や見覚えのない奇妙な連中が押し掛け、答えようのない質問を私に浴びせてくる。省は我々を支援する“秘儀の専門家”を送ってきた — ニンニクの臭いを漂わせ、片言のロシア語を話す不愉快極まりない男だ。ドロフェエフ将軍は彼の専門知識を保証している。彼はマントラ、自己催眠、そして手ずから調合した悪臭を放つ湿布の利用を介して、一時的な活動停滞状態に入る能力を実践した。私自らがあらゆる生命機能の停止を確認した。数時間後、彼は起き上がった — 生き生きとしていた。

見返りと引き換えに、その手法を教えてくれないかと頼んでみた。彼はただ、自分を月に派遣するように求めた。

あの男は、月で誰かが自分を待っていると信じている。

秘術師は我々に死の克服法を教えようとせず、何やら性的な悦楽を満たすための異様で不毛な“儀式”を実行してばかりいる。

しかし、彼の手法は成果を上げている。82号は生命停止状態の被検体を15時間以上も操作し、とうとう彼女の側から接続を遮断せざるを得なかった。被検体は蘇生され、比較的健康体であると確認された(アンテナに苦痛を感じてはいるが)。これ以上複雑な問題が起きないように更なる実験を予定しているが、月末には打ち上げまで持っていけるだろうと予想している。

我々の最初の生命停滞した被験体は、首尾良く構造物に入場し、階段の底へ到達した。そこで我々は巨大なシャフトを発見した。真鍮のパイプがそれを通って、月の更に地下深くへと延びている。メーターが最大のパイプに付いており、英単語が記されている — “汚染”と翻訳できる。表示は25だった。これが何を意味するかは誰にも分かっていない。

被検体を操縦している間、82号はメーターの数値が30に上昇したと報告した。ドロフェエフは構造物の探索を続けるように伝えてきた。運が良ければ、構造物の目的に関して何らかの手掛かりを得られるはずだ。

82号は下方へ続くシャフトを怖れているようだ。接続を遮断する前、彼女はシャフトから酷い臭いがすると訴えた。

ドロフェエフは私を秘術師の不快な儀式の監視に割り当てた。秘術師が我々からもっと多くの秘密を隠しているのではないかと疑っているのだ。あの狂人は仕事に取り組みながら私にニヤニヤと笑いかけてくる。

昨日、秘術師はチョークで床に女の輪郭線を描き、それを穢した。儀式を終えると、彼は自らの女神 — ババロン — との間にチャンネルが開かれたと主張した。1時間後、82号は探査体と再接続し、汚染ダイヤルが50になっているのを発見した。幾つかのパイプが破裂し、設置されていたタイプライターを壊していた。黒煙がサイロを満たし、探査体の皮膚を凝固させてタールに変えている。

偶然だと思いたいが、そうでないことは分かり切っている。

どういうわけか、パイプは自己修復している — あたかも破裂など一度もしていないように。煙は消えた。汚染ダイヤルは65を維持しており、サイロには活動音が響いている。タイプライターはカラシニコフのようにガタガタと物音を立てている — 真鍮の指はぼやけて見えるほどの勢いで打鍵している。靴は大変な速さで歩くので、探査体は何度かそれらに躓いている。

82号は怯えている。我々は彼女にサイロの探索続行を強制しなければならなかった。それでも、非常にゆっくりと移動するので、探査体は底に到達する前に倒れてしまった。

こんな状況の中でも、秘術師は卑しい儀式を続けている。床を汚していない時は六芒星の中で胡坐をかき、その場にいない何者かに向かって英語で叫んだりほくそ笑んだりしている。ドロフェエフは彼が何と言っているか教えようとしない。

さらに2体の探査体を使って、我々は遂にシャフトの中へと入った。82号はそこに筋骨隆々たる大男を送り込んだのだが — 彼がどれだけ長くパイプを滑り降りていたかは言い表せない。底に到達する頃には、彼の筋肉と皮膚はほぼ全て剥がれていた。

月の中には巨大なガラスのチャンバーが満ちている。どのチャンバーも完璧な正十二面体で、ぽっかりと口を開けた暗闇の中で交差する金属格子の中に吊るされている。どこまで続いているか誰にも分からない。

各チャンバーは隅にあるブロンズ色の金属の跳ね上げ戸で他4ヶ所のチャンバーに通じている。パイプは複数のより細いパイプに分かれ、うねりながらチャンバーを通過している。これらのパイプを検査するには探査体の壊死が深刻すぎた。下層の空気はサイロの中よりも酷い。接続遮断後、我々は82号の皮膚が脂ぎっているのに気付いた。何度もシャワーを浴びた後なのに、彼女からは今も悪臭がする。

月は中空だ、ダミアン。それどころじゃない、人工物だ。すっかり途方に暮れている。誰がこれを建造した? 何のために? パイプは何処に通じている? 省はこれを承知していたのか?

手紙は何処か安全な場所に隠してくれ。万一の場合でも、記録は残さねばならない。

更なる謎だ。我々は小柄な探査体にハザードスーツを装備させた。82号は彼にタイプライターの挙動を記録するためのカメラを準備させ、別の1台は汚染ダイヤルに向けた。数値は60。前回の探査体が引き起こした結果か? 恐らくそうだろう。彼らの死体の痕跡は、黒く泡立つヘドロしか残っていない。空気自体が腐食性を帯びている。

82号は探査体をガラスのチャンバーに向かわせた。一部のチャンバーには、人間の臓器のような形状のガラス製ケージがあり — 目、肺、肝臓、胃 — それらは黒煙で満たされていた。煙はパイプを通して月の中へ送り込まれる。82号は格子の中に単独で吊るされているチャンバーも存在することに気付いた。何処にも接続されておらず、例の黒煙が充満していた。幾つかは脈動していた。

皆不安を覚えている。竜の興味津々の目に気付かないまま、そいつの宝物庫をうろついているような感覚だ。

秘術師は構造の存在を知った。十中八九、82号から聞き出したのだろう。あの二人は今では不可分の仲だ。彼はあの構造こそ女神が眠る場所だと喚いている — 弟子がしくじった儀式のせいで引き裂かれているのだと。アメリカのラスプーチンには自分が知る全てを教え込んだと主張している。彼の儀式は日を追うごとに浅ましさを増している。幸いにも、ドロフェエフは私を軌道力学の職務に再割り当てした。

今日、秘術師が82号と一緒にいるのを見つけた。彼は82号に儀式への参加を強要していた。

仲間の一人はその場で彼を射殺したがっていたが、冷静な者たちが説得した。秘術師はもう用無しだ。我々は取引の内容を実行に移すだけのことだ。

外科医は必要部品を移植するにあたって彼を沈静させなかったと聞いた。私は後ほど、深い無感覚状態に陥った彼を検査した。今でもあの顔を思い出すと寒気が走る — 我々が彼をカプセル内に収めた時の、あの病的な、凍り付いた微笑み。

“女神”に会いたいならば、会わせてやろう。

神よ、我らを救い給え。

サイロで目覚めた瞬間、秘術師は頭皮からアンテナをむしり取った。出血は無かった — 煙を吹いた。黒煙が頭蓋から溢れ出た。82号はそれ以上彼を操縦できなくなり、卒倒した。タールが彼女の皮膚から沁みだしてきた。

ドロフェエフはこのような事態に備えていた。ダイヤルに向けたカメラに遠隔起爆装置を組み込んでいたのだ。彼が適切な承認を得るまで数分かかった。その間、我々は打つ手も無いまま、秘術師がシャフトへ降りてゆくのを見守っていた。秘術師が姿を消した直後、ドロフェエフはシークエンスを送信した — 通信は途絶えた。きっとシャフトは爆発で塞がっただろう。最後に映っていたのは75を指すダイヤルだった。数値はまだ上昇中だった。

ルナ計画は打ち切られた。我々は月に戻らない。

手紙は全て燃やせ。

補遺4220.4: 共同収容交渉

1963年の超常兵器利用停止条約の調印において、GRU "P"部局とペンタグラムは財団から公式に認知されることなく、SCP-4220の収容に関する秘密交渉を行った。以下の転写は財団の盗聴器によって秘密裏に記録されたものだが、官僚主義によるヒューマンエラーと内部政治的混乱のために、SCP-4220の発見まで重要性に気付かれることなくアーカイブされていた。

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