アイテム番号: SCP-447-JP
オブジェクトクラス: Extranormal Keter Euclid Safe Thaumiel Neutralized Euclid-pending
特別収容プロトコル: SCP-447-JPは現在未収容です。SCP-447-JPの影響と考えられる事件が発生した場合、関係者の近辺での過去3ヶ月間における不審電話の有無を調査し、その会話の内容を詳細に記録して下さい。
説明: SCP-447-JPは電話通信回線に発生する特殊な共通点を持った一連の異常現象の総称です。
SCP-447-JPは以下の要素を含むプロセスとして進行します。
- 発信者不明の着信が無作為に選別されたと思しき受信者にかかってくる。
- 受信者が着信に応答した場合、発信者は[SCP-447-JP語句]を質問する。
- 通話終了後、受信者の周辺コミュニティ内で[SCP-447-JP語句]に関連した流言飛語が発生する。
SCP-447-JPの影響は最長で2ヶ月半継続します。
補遺: SCP-447-JP発生例
SCP-447-JPの財団による最初の確認例は1901年に発生したものです。
SCP-447-JP記録-1(1901/11/27)
[発信者不明の着信]
受信者: もしもし。
発信者: もしもし、松平賴平よりひら子爵のおうちですか。
受信者: 左様ですが。どなた様でいらっしゃいますか?
発信者: [SCP-447-JP語句: いま何年ですか?]
受信者: ええと、明治34年。
発信者: ありがとうございました。
後記: 後日、宮内省内で「明治天皇が濃尾地震を理由として一世一元の制を取りやめ、新元号を制定する」という噂が広がった。このことが宮内省内の財団エージェントの耳に留まり、SCP-447-JPの発見契機となった。また、電話局には当該電話番号に対する交換依頼は1901/11/27当日には無かったとの回答が得られた。
SCP-447-JP記録-3(1903/1/25)
[発信者不明の着信]
受信者: もしもし。
発信者: もしもし、伊藤博文さんのおうちですか。
受信者: 申し訳ありません。主人は今出ております。どうした御用でしょうか?
発信者: [SCP-447-JP語句: いまの総理大臣は誰ですか?]
受信者: はあ? ええと・・・・・・。
発信者: ありがとうございました。
後記: 1903/03/01に行われる「第8回衆議院議員総選挙において第1次桂内閣による選挙干渉が発生するのではないか」という噂が立憲政友会内で広まった。
電話番号を持つ人物の割合に占める高社会的地位人物の高さを鑑みて、私はSCP-447-JPのオブジェクトクラスをKeterに分類すべきかと思います。
1903/5/28に提言は認可され、SCP-447-JPのオブジェクトクラスはKeterに指定されました。
以下はSCP-447-JP記録の略記されたリストです。
SCP-447-JP記録-7(1905/8/15)
SCP-447-JP語句: 戦争は勝てましたか?
受信者: 政治結社███代表████
概要: 政治結社███内で、「日露戦争の賠償にイルクーツク地方以東のロシア帝国領土割譲が含まれる」という噂が流れた。政治結社███に所属する政治活動家の一部は同様の扇動を大衆に対して行ったが、実際のポーツマス条約の内容とのギャップから日比谷焼打事件の発生要因となった。
SCP-447-JP記録-49(1912/12/09)
SCP-447-JP語句: 憲法第1条はなんですか?
受信者: 実業家社交クラブ交詢社代表███
概要: 「軍閥の代表としての桂太郎による政治干渉が産業に対しても及ぶ」という噂が交詢社内で流れ、有志によって憲政擁護会が開かれた。憲政擁護会は第一次憲政擁護運動の中心的組織となり、第3次桂太郎内閣の総辞職を招く大正政変が発生した。
SCP-447-JP記録-58(1915/4/29)
SCP-447-JP語句: 投機とはなんですか?
受信者: 東京株式取引所内電
概要: 東京市内の投資家コミュニティ内で「複数の株式の値上がり」についての噂が流れ、東京株式取引所における株式取引が活発化。過去最高の出来高を記録した。この影響による日本経済の活発化は日本の第一次世界大戦期における好景気の引き金となった。
SCP-447-JP記録-136(1926/12/25)
SCP-447-JP語句: 次の元号はなんですか?
受信者: 東京日日新聞政治部
概要: 大正天皇崩御に伴う新元号発表の際、東京日日新聞が報道した号外において「元號は『光文』 樞密院に御諮詢」との誤報が発生。これに追随して報知新聞・都新聞・讀賣新聞・萬朝報も相次いで「新元号が光文と決定した」旨の号外・朝刊を発行する事態となり、最終的に東京日日新聞編輯局主幹であった城戸元亮が辞任する事件にまで発展した。
(1934/12/25)追記: 波戸崎博士の提言
電話が庶民にも広がりつつある昨今、SCP-447-JPの受信者も重要人物とは限らなくなってきている。一般社会への影響力が低下したことを理由にSCP-447-JPをEuclid再分類することを提言する。
1934/12/28に提言は認可され、SCP-447-JPのオブジェクトクラスはEuclidに指定されました。
SCP-447-JP記録-141(1927/03/13)
SCP-447-JP語句: 銀行は倒れましたか?
受信者: 大蔵大臣片岡直温宅
概要: 1927年3月14日の衆議院予算委員会の最中に「東京渡辺銀行がとうとう破綻を致しました」と失言したことを切っ掛けとして戦後不況による金融不安が表面化し、昭和金融恐慌が発生した。
SCP-447-JP記録-163(1941/3/14)
SCP-447-JP語句: いまの陸軍の大将は誰ですか?
受信者: 大審院第二特別刑事部
概要: 「神兵隊には大日本帝国陸軍とのつながりがある」との噂が大審院内で流れた。当時大きな影響力を持っていた陸軍との衝突を恐れた第二特別刑事部によって神兵隊事件の首謀者である天野辰夫ほか43名に刑を免除する旨の判決が出された。
SCP-447-JP記録-167(1952/3/01)
SCP-447-JP語句: 軍隊は好きですか?
受信者: 元大日本帝国異常事例調査局(IJAMEA)構成員川上邦良くになが
概要: 「日米地位協定の締結によってGHQ/SCAPの占領が終わることを契機として、ラジオにて軍国主義者のクーデターを呼びかける放送が実行される」という旨の噂が元IJAMEA構成員のコミュニティに流れ、IJAMEA支持者と元軍関係者による一斉蜂起の計画がなされた。川上邦良氏の財団への協力によって計画が事前に発覚したため、財団の武力介入により事件は小規模の戦闘にとどまった。
SCP-447-JP記録-181(1970/3/13)
SCP-447-JP語句: 海外旅行にいったことはありますか?
受信者: 左翼共産主義団体共産主義者同盟赤軍派(赤軍派)政治局議長塩見孝也宅
概要: 赤軍派内で「警視庁公安部による大規模な活動取り締まりが行われる」との噂が流行し、国内での非合法闘争の継続には国外亡命基地としての海外のベースが必要であるとの考え(国際根拠地論)からよど号ハイジャック事件を実行する引き金となった。
SCP-447-JP記録-226(1980/3/27)
SCP-447-JP語句: 夜は眠れますか?
受信者: ████氏
概要: ████氏自宅近くの東京代々木公園近辺にて「路上ディスコグループ(通称竹の子族)による夜間の安眠妨害を指摘した家族が、逆上したグループに殺害された事件があったらしい」という旨の噂が広がった。これを切っ掛けとして、同様の事件が発生するのを危惧した住民が代々木公園を活動拠点とする竹の子族を、公園内の対立グループをけしかける形で襲撃させ、竹の子族の高校生3人が頭にけがをする事件が発生した。
SCP-447-JP記録-241(1986/12/13)
SCP-447-JP語句: 投機とはどういうものですか?
受信者: 投資家████氏
概要: 「国土庁の首都改造計画案において合計5000ヘクタールのオフィス供給が必要と指摘されたことで日本の土地担保価値が暴騰し、海外の投資が集中する」旨の噂が投資家のコミュニティ内に流れた。これは不動産会社・ゼネコンによる大規模な地上げ行為へとつながり、日本政府の金融緩和・国内需要の拡大・公共事業拡大、原油価格の下落による交易条件改善などの要因が重なった結果、バブル景気と呼ばれる好景気の遠因となった。
SCP-447-JP記録-255(1995/3/13)
SCP-447-JP語句: あなたは神を信じますか?
受信者: 警視庁公安部██巡査部長
概要: 「オウム真理教教祖麻原彰晃(松本智津夫)による1995年4月15日に大震災が起こるという予言成就を目的として、同年3月20日の地下鉄サリン事件に次いで新たなテロが実行される」との噂が警視庁公安部及び東京都内に広まった。同年1月17日に発生した阪神淡路大震災を背景に東京を脱出するオウム真理教の在家信者に加え、テロを警戒した警察が厳戒体制をとったことで、一般市民にも混乱が広まったものと考えられる。
(2000/12/21)追記: 波戸崎博士の提言
近年ナンバーディスプレイサービスや携帯電話・PHSの普及によって、非通知着信を拒否できる設定であったり、あるいは迷惑電話の対策としてそもそも非通知であれば電話に出ないといったSCP-447-JP受信者が増加している。
そう、SCP-447-JPは非通知拒否設定を突破できないのだ。
私は一般社会への影響力の低下を理由にSCP-447-JPをSafe再分類することを提言したい。
2001/1/07に提言は認可され、SCP-447-JPのオブジェクトクラスはSafeに指定されました。
2002年2月21日にSCP-447-JPの異常性を利用した「狂気の先触れ」計画が立案され、2003年1月17日に「狂気の先触れ」計画(修正12版)がO5議会の承認を得て実施されることになりました。これに伴い、SCP-447-JPのオブジェクトクラスはThaumielに指定されました。
「狂気の先触れ」計画
計画目的: 「狂気の先触れ」計画は財団の確保・収容活動を秘匿する目的で実施される。
概要: SCP-447-JPが発生した際、財団報道規制部門によって誤情報を流布したいコミュニティの固定電話もしくはそのコミュニティに属する人物の所持する携帯電話の非通知設定を解除し、SCP-447-JPを転送する。
利点:
- 人を中心として誤情報が広がるため、従来のマスメディアを利用したカバーストーリーの流布よりもコストが安価である。
- 記憶処理による”体験の欠落”現象が発生しない。
- インターネットの隆盛による財団の従来型情報規制の限界の打破。
欠点:
- 誤情報の内容を選択できない。
- 誤情報によって新たな混乱が発生する可能性がある。
- SCP-447-JPの発生タイミングが予測不可能であること。
理想的な計画成功例:
「狂気の先触れ」計画ログ-7(2005/05/26)
SCP-447-JP語句: 残留日本兵のことをご存じですか?
受信者: 産経新聞社・共同通信社・朝日新聞社・スポーツニッポン新聞社
目的: SCP-1367-JPの収容違反による2005年5月2日から同年5月24日までに発生した高強度空間歪曲インシデント群”糸遊”についての報道規制を目的として、「狂気の先触れ」計画を実行した。
概要: 受信者の4社内では「フィリピンのミンダナオ島に旧陸軍第30師団に所属しフィリピンの戦いで戦死したとされていた2人の日本兵及び、戦後2人の主治医として現地で活動していた旧陸軍軍医の計3名が生存していて、帰国を希望している」との噂が流れ、3人の具体的な氏名を含めて報道した結果、在フィリピン日本大使館員による現地調査が行われるなどの事態となった。
結果: 報道規制に成功。誤情報の流布によってインシデントについての報道が遅れたため、事後処理を速やかに行うことが可能となった。
現在までの「狂気の先触れ」計画の成功率は64%です。
(2014/4/21)追記: 2011年6月23日のSCP-447-JP記録-278を最後に、現在までSCP-447-JPの発生事例は確認されていません。計画の安定した継続性が担保できないことから、「狂気の先触れ」計画は無期限中止されます。
(2014/04/21)追記: 波戸崎博士の提言
SCP-447-JPの発生が途絶えている原因は最近の電話事情から考察できます。
公衆電話やPHSの衰退。スマートフォンの普及による家に電話線を引かないという家庭の増加。LINEを筆頭とする電話回線を使わないインターネット通話アプリケーションの流行。これらの要素が電話回線の利用の減衰につながっています。
つまり、単純にSCP-447-JPは時代遅れなのでしょう。
私は、一定期間オブジェクトが活性化していないことを理由にSCP-447-JPをNeutralized再分類することを提言したいと思います。
2014/04/23に提言は認可され、SCP-447-JPのオブジェクトクラスはNeutralizedに指定されました。
2019年9月23日、財団報道規制部門から、「SCP-447-JPの活動が確認されたため関連プロジェクトを再開したい」との要請がなされました。しかし、財団の把握するいずれの記録にもSCP-447-JPの活動再開を示すものが確認されなかったため、財団報道規制部門内の調査が開始されました。
その結果、報道規制部門に所属する上級研究員████の私有PC内からSCP-447-JP語句を含んだ送り主不明の電子メールが発見されました。以下はその文面です。
もしもし、聞こえていますか?
聞こえていますか?
聞こえていますか?
もしもし。
返事をして下さい。
もしもし。
[SCP-447-JP語句: だれかそこにいますか?]
これ以降SCP-447-JPの活動は確認されていませんが、未知の方法による収容違反のリスクを鑑みてSCP-447-JPのオブジェクトクラスはEuclid-pendingに仮指定されました。