SCP-453-JP
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アイテム番号: SCP-453-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-453-JPは低危険度物品収容室に保管して下さい。SCP-453-JPの摂食者は標準人型収容房に収容されます。摂食者には給餌の代わりに点滴を投与して下さい。SCP-453-JPの摂食者の精神に錯乱がみられた時、カウンセリングを行って下さい。SCP-453-JPの摂食者が死亡した時、SCP-453-JPの焼却処分を行って下さい。

説明: SCP-453-JPは直径3cmの一口饅頭のような12個の物体です。SCP-453-JPは箱に収容されており、その表面には「満足!満腹!饅頭!」と記載されています。成分表および製造会社などの起源を特定できる情報は記載されていませんでした。SCP-453-JPは摂食もしくは物理的損傷によって消失した時、箱の中に12個になるように再出現します。SCP-453-JPの組成には異常がなく、一般的に流通している一口饅頭と同様の成分が検出されました。

SCP-453-JPを摂食した人間は満腹感と身体の充足感を主張します。検査の結果、摂食者の胃の中でSCP-453-JPが増殖して、隙間なく詰まっていることが判明しました。さらに、SCP-453-JPは摂食者の胃の中で消失と再出現を繰り返します。摂食者によってSCP-453-JPは消化および吸収されることはありません。

摂食者は食物の摂食時に苦痛を感じます。苦痛は食物が固体に近いほど大きくなります。これは食物がSCP-453-JPを押しのけ、胃を圧迫することから生じていると推測されます。そのため、摂食者の多くは数値上飢餓状態に陥っていました。しかし、摂食者の容貌は飢餓状態にも関わらず変化しません。摂食者が食物を摂取せずにいると通常の人間通り死亡します。摂食者が死亡した場合、SCP-453-JPの増殖と消失のサイクルが止まり、SCP-453-JPは異常性を失います。

SCP-453-JPを体内から摘出した時、同量のSCP-453-JPが摂食者の胃の中に発生します。そのため、SCP-453-JPの影響を取り去ることはできません。摘出されたSCP-453-JPは異常性を失います。胃を摘出しても、胃の位置していた場所にSCP-453-JPが発生し、消失と再出現を繰り返し続けます。摂食者はこの状態でも満腹感を主張します。さらに、摂食者はSCP-453-JPを非常に美味と評価するためSCP-453-JPを他人に勧める傾向があります。この傾向には異常性が見られず、記憶処理によって取り去ることが可能です。詳細は追記より確認してください。

SCP-453-JPは██県██市██町の病院に搬送される栄養失調患者が急増していたためにその特異性が発覚しました。収容部隊は摂食者をすべて保護し、██氏の家屋からSCP-453-JPを回収しました。その後、██町の全域にAクラス記憶処理を行い、カバーストーリー「新型感染病の蔓延」が流布されました。摂食者の一人である██氏はSCP-453-JPを██市██町の夜店の屋台で買ったと主張しました。その証言に基づき、財団によって屋台の店主が確保されました。屋台の店主もSCP-453-JPを摂食し、SCP-453-JPの影響を受けています。SCP-453-JPの来歴を知るために、店主へのインタビューが行われました。詳細はインタビューログ2より確認してください。

追記: ██氏は包丁による自殺を図った直後を財団に保護されました。財団職員による治療により██氏は蘇生しましたが、精神の錯乱がみられ、何らかの異常性が予測されたため██氏にインタビューが行われました。インタビューにあたり██氏の精神に配慮するためにカウンセリングの方式を用いています。

インタビューログ1

聴取者: █████博士 対象者: ██氏

█████博士: それでは、インタビューを始めます。あなたの好きなところからお話し下さい。

██氏: 私は、私は食べることが、食べることが大好きだったんです。大好きだったんです。なのに、あれを、あれを食べてから、あのとってもおいしかった饅頭を食べてから……。(泣き始める)

█████博士: 落ち着くまで待ちましょう。

10分経過し、██氏は話すことができる状態になりました。

██氏: と、取り乱しました……。すみません。

█████博士: ゆっくりと話して下さい。時間はまだまだあります。

██氏: あ、ありがとうございます。でも、話したいんです。とにかく、話して楽になりたい……。話しても、楽にはならないけど、楽になりたい……。

█████博士: どうぞ、あなたの言葉はすべて記録されています。

██氏: は、はい。まず、あの饅頭を食べた時、とにかく、今まで食べてきた饅頭が、饅頭がアレに思えるほどおいしいって思ったんです。それに、お腹もいっぱいになった。たった、一個でですよ?それで、それで、皆に勧めたいと思いました。独り占めは、絶対だめだって、思ったんです。それで、皆を呼んで、饅頭をふるまって。そのとき、饅頭の中身が減っていないことに、減っていなかったんです。私、私は愚かにも、愚かにも、バカらしいです。饅頭をたくさんひとに勧められると思ったんです。皆も不思議で美味しい、魔法の饅頭だって、だから……。(涙をこらえている)

█████博士: はい、存じ上げています。ゆっくりどうぞ。

██氏: また、別の友達にふるまった後、夜ごはんを食べようと思ったんです。その日は大好きな焼肉の日でした。焼肉なのに、お腹がいっぱいで全く食べられなかった。夫も子供もです。ずっと、お腹一杯なんです。それで、来る日も来る日も、お腹いっぱいで、お腹いっぱいで、全くご飯も、水すらも、食べられませんでした。それで、ある日、うちの子が倒れたんです。ああ、かわいそうな██!すぐに病院に連れて行きました。そして、検査を受けたら、栄養失調でした。栄養失調ですよ?そんなの、日本であり得るわけがありません。なのに、なのに!そして、夫も病院で倒れました。夫も、夫もでした。私は急にくらくらして、くらくらして……。

█████博士: 大変でしたね。とても、とても。しかし、なぜあなたは自殺を?

██氏: 違います。あれは自殺じゃない。自殺なんかじゃない。お腹をすかせるために必要だったんです。お腹をすかせるんです。胃薬もだめ、下剤もだめ。お腹がいっぱいで、夜、眠れなくなって、睡眠薬を飲んだ、飲んだのに、ずっと、元気。それで、かきだそうって。たくさん出てきました。いくらだしてもなくならない。なくならない。おなかがいっぱい。もっと、たくさんださなきゃ。掃除機でも、足りない、から、直接、出さなきゃ。とっても、たくさん。美味しそう。

█████博士: インタビューを終了します。██氏に即時、鎮静剤の投与を。

インタビューの結果、SCP-453-JPは満腹感の副産物として摂食者に精神の錯乱を起こすことが予測されます。認識汚染のような異常性は見られませんが、摂食者には定期的にカウンセリングを行うほうがいいようです。█████博士

インタビューログ2

聴取者: █████博士 対象: ███氏(夜店の店主)

█████博士: あなたはどのようにしてSCP-453-JPを手に入れたのですか?おっと、SCP-453-JPとは、あなたの作成した饅頭のことです。

███氏: ああ、あれですかい、「満足!満腹!饅頭!」のことですかい?

█████博士: その認識で正しいです。質問に答えてください。

███氏: おっと、こいつは失礼。あれは試行錯誤の結果生まれた究極の饅頭なんでさ!あっしの最高傑作!食べれば体は元気になって空腹も吹き飛ぶ!おまけにとびっきりうまい!これを究極の饅頭と言わずしてなんと呼びやしょうか!ええ!

█████博士: 落ち着いてください。SCP-453-JPはあなたが作り出したもの、ということでよろしいでしょうか?

███氏: おうよ!重たい腹抱えて研究した甲斐があったってもんだ!

█████博士: あなたはSCP-453-JPを摂食したものが栄養失調に陥っていることを知っていますか?

███氏: ……なんですって。そいつは、ああ、そんなことが……。いや……、ああ、そういうことか……。

█████博士: あなたはどのようにしてSCP-453-JPを作成しましたか?

███氏: 満足満腹饅頭は、丹精込めて、ええ、魂込めて作り上げて、ただ、特別な製法とか、材料使ったわけじゃなくて……。なんで、できたんだろうなあ……。

█████博士: 作成時に何か異常はありませんでしたか?

███氏: 異常なんて、ああ、もしかして、世界中の人間がみんな[削除済み]食えるようになりますようにって、祈りながら作ったから……。そんなわけあるはずが……。そんな馬鹿げたこと、ありえちゃいかんだろ……。

█████博士: なぜ、あなたはそのような念を込めて饅頭を作ったのですか?

███氏: それは……、ああ、そうだ、突然、頭の中に「お前は饅頭を選んだ。選んだからには、義務を果たさなければならない」って、浮かび上がってきたような……。それで、考えたんだ、俺が果たせる義務ってやつを。そうして……、あれが、できたんだ……。

█████博士: ありがとうございました。これでインタビューを終了します。

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