SCP-459-JP
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アイテム番号: SCP-459-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-459-JPはサイト-8181低脅威度物品保管ロッカーに保管されています。全ての取り扱いは、精神鑑定の結果当オブジェクトを扱うに相応しいとされたDクラス職員に行わせてください。また、手袋や布越しに把持した場合や、足の指、肘などの手以外の部位で持ち上げた場合、体の上に意図せず乗せてしまう場合でも特異性は発揮されることに留意し、必ずピンセット等を用いて間接的に持ち上げさせて下さい。

説明: SCP-459-JPは一本のアイスキャンディー用の棒です。このオブジェクトは[データ編集済]社から発売されている商品「[データ編集済]」の中から発見されたもので、中国産のシラカンバの木から出来ており、長さ93mm:幅10mm:厚さ2mmです。この材質と大きさは普通同商品に使用されている規格品と同一のものですが、同商品ならば通常施される社名ロゴや当り外れくじの焼印がなく、代わりに不明な方法で、片面の端に乱れた字体で「はずれ」という言葉だけが焼印されています。同様の外観を持つものは現在まで如何なる場所からも見つかっていません。

SCP-459-JPの特異性は、これを保持した人間(以下、被験者)がその時所有しているもので最も「冷たい」ものを瞬時に消失させる、というものであると結論付けられています。消失の際のプロセスは未解明ですが、被験者が置いてあるオブジェクトを一度保持する(掴む/摘まむ/体の上に乗せる、といった動作を含む)度にそれをトリガーとして特異性が発動し、その瞬間に一つの効果対象が完全に消失してしまうものと考えられています。消失したのち対象がどこへ行くのかについては現在まで不明なままです。

消失現象は単に物理的に低温な物質の他、冷感が比喩として用いられている抽象概念もその「冷たさ」の評価対象となります。このことから、当オブジェクトには「冷たい」という評価に対して何らかの固有の判断基準があるようです。しかしそれがどのような判断基準であるのかについては、研究班の間でも諸説あり、未だ結論には至っていません。また、当オブジェクトが如何にして被験者の所有物の全てを把握するのかや、オブジェクトにとっての「所有」という概念の基準については現状有効な説がありません。

実験記録 459-JP-██ - 日付20██/08/██

対象: D-76549

実施方法: 被験者に氷(水)を持たせた状態でSCP-459-JPを手に取らせる。

結果: オブジェクトを持ち上げると同時に氷が消失。

実験記録 459-JP-██ - 日付20██/08/██

対象: D-76549

実施方法: 被験者に氷(水)と紙の箱に入ったドライアイスを持たせた状態でSCP-459-JPを手に取らせる。

結果: オブジェクトを持ち上げると同時に箱の中のドライアイスが消失。

実験記録 459-JP-8 - 日付20██/08/11

対象: D-35436 所有物と言えるものは無く、通常のDクラス職員用制服を着用している

実施方法: 被験者にテーブルに配置したSCP-459-JPを手に取らせる。

結果: 制服の右足ポケットの金属製ボタンが消失。オブジェクトから一度手を離させて再び手に取らせると、左足ポケットの同様のボタンが消失。
分析: ボタンは実験室の冷房で十分冷えていただろう。概ね仮説通りの結果である。但し厳密には支給制服はDクラスの所有物とは言い難いが。「所有」についての基準を量ることが出来るか要検討。

実験記録 459-JP-9 - 日付20██/08/11

対象: D-35436 (事後追記: 同被験者は比較的激昂しやすい性格であったことが判明しています。)

実施方法: 被験者に全裸の状態でSCP-459-JPを手に取らせる。

結果: D-35436はオブジェクトを持ち上げると同時に消失。オブジェクトはテーブルに即座に落下。オブジェクトの損傷はなし。
分析: 実験459-JP-8同様、仮説通りの結果。肉体は被験者の所有物と見做され、部位毎に消失するわけでもない。なお実験459-JP-10において別のDクラスを用いて足を十分に冷やしてオブジェクトを手に取らせる実験を行ったが結果は同様であったため割愛。

実験記録 459-JP-12 - 日付20██/08/18

対象: D-11045

実施方法: タオルを巻いた保冷剤を被験者のポケットに入れ、それに被験者が気づかない内にSCP-459-JPを手に取らせる。

結果: 一度目では変化を一切確認できなかった。再度オブジェクトを手に取らせると保冷剤は消失。
分析: 被験者自身の意識はあまり関係がないのか? 要追加実験。しかし問題はむしろ一度目、暴露初回から変化が全く見られなかった初めての例である。我々の確認できていない何らかが消失したものとして、被験者に関する入念な調査を行う。

08/20追記: 事後調査したところ、どうやらD-11045は実験以来ジョークを言えなくなったようである。無理やり言わせようとすると著しいどもりを起こし、結局成功しなかった。記憶処理を施したが変化なし。出来れば[データ編集済]後にも調査したい。
分析: 実験459-JP-4の時点から唱えられていたが、やはり「冷えきった関係」「寒いジョークセンス」などの抽象概念も消失現象の対象となる仮説は正しいらしい。しかし、保冷剤より「寒いジョーク」が優先されたのは何故か? もしジョークが保冷剤より寒いと見なされたのだとして、それはどのような基準によるものなのか? 大きく謎が増えた形である。続く実験が必要。

なお些事ではあるが、この実験以降研究員の士気が下がっており、真剣に取り組む姿勢が失われているように感じられることをここに報告しておく。あまりこのような状況が続くならば大幅な人事調整も考えなければならない。我々はコミカルなものを収容しているのではない。財団に所属する研究者たるもの、全ての特異なオブジェクトに対してはくれぐれも冷淡にあっていただきたいものである。

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