SCP-4646
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アイテム番号: SCP-4646

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル 2059/12/30: 現在進行中のXK-クラス世界終焉シナリオのため、SCP-4646の収容は低優先度です。エージェント カートライトは過去に時間異常を扱った経験があり、現在の身体的状態ゆえにプロトコル・フォールンスターの支援が不可能であるため、SCP-4646の収容に割り当てられています。彼の唯一の任務は、SCP-4646の公共知識を抑制して民間人口におけるパニックの発生を防止することです。

その効果の性質上、1981/12/31より前に誕生した職員はSCP-4646に入場することができません。

説明: SCP-4646はモンタナ州ブルーフォックスの町にある廃屋です。SCP-4646は1950年代半ばの何処かで建造されましたが、2042年の“緋色の夜”スカーレット・ナイツに記録が失われたため、正確な日付は不明です。ブルーフォックスには212名の町民がおり、その大半がSCP-4646の異常効果についてある程度の知識を持っています。

毎年、12月31日の17:00から翌1月1日の6:00までの間にSCP-4646に入ると、全ての対象者は時間を遡り、1999年12月31日~2000年1月1日時点で対応する時刻の当該家屋の中へ移動します。どの時点であれSCP-4646を退出するか、活性期間の終了まで留まった場合、対象者は自身が属する時代の対応時刻へと帰還します。

SCP-4646内の光景は通常、新たな千年紀到来の祝福を意図した大規模な新年記念パーティーとして描写されます。SCP-4646にいる間、全ての対象者は自身の体調や服装が1999年12月31日の状態と似通ったものに改変されたことに気付きます。これはSCP-4646に持ち込まれた他のアイテムには影響しません。過去60年間に数多くの人物が活性期間中のSCP-4646に入場しているにも拘らず、過密状態は一度も報告・経験されていません。

SCP-4646の創造を取り巻く状況は不明でしたが、2059/12/27、ブルーフォックス町民である消滅した要注意団体“Are We Cool Yet?”の元構成員、ステイシー・マッキントッシュが自身の関与をエージェント カートライトに告白しました。更なる行動の必要性は認められていません。

補遺1: 以下は、エージェント カートライトとステイシー・マッキントッシュの間で行われたインタビューの記録です。

日付: 2059/12/30

場所: モンタナ州ブルーフォックス、エージェント カートライトの住居

回答者: ステイシー・マッキントッシュ女史

質問者: エージェント フランク・カートライト

<記録開始>

エージェント カートライト: やぁ、ステイシー。

マッキントッシュ女史: どうも、フランク。足の調子はどう?

エージェント カートライト: はいはい、実に面白いね。わざわざ有難う。

マッキントッシュ女史: ええ、だって他に何も予定が無いのだもの。でも何故あなたが未だにこれをやってるのか分からないわ。

エージェント カートライト: 正直に言わせてもらうと、俺にも分からん。最初の質問だ。

マッキントッシュ女史: どうぞ。

エージェント カートライト: お前が最初に、あー、あの家を今みたいにしたのはいつだ?

マッキントッシュ女史: あぁ、まさにあの夜よ。1999年。私は当時18で、AWCYアーシィともほとんど付き合いが無かったけど、その年に小さなプロジェクトを幾つか手掛けてた。姉さんと私とで、きっと愉快な事になると思ったのよ。それ自体は“芸術”アートと呼べるか分からないけど、フローを利用して頭に付く“異常”アンの部分を動かす方法は知ってた。

エージェント カートライト: “愉快だと思った”だと? それで全部か?

マッキントッシュ女史: ええ。だって、フローに手を付けるのはそう難しくなかったし、実際とてもシンプルなのよ。ちょっぴり時間を改変するだけ。何かを深く考えなくても済む仕事だったの。もう楽しい事ずくめだった — 私たちがあそこに入るまで。

エージェント カートライト: 良いパーティーじゃなかったと?

マッキントッシュ女史: ふふ、あなたはそう言うでしょうね。タバコ吸っていいかしら?

エージェント カートライト: そんなクソみたいなもんを吸引し続けてよく今まで生きてこられたな、感心するよ。好きにしろ。煙で痛めつけられるほど長居する気は無い。

マッキントッシュ女史: もう、そんな風に言わなくても、フランク。

マッキントッシュ女史はタバコに火を灯し、喫煙し始める。

マッキントッシュ女史: パーティーは素敵だった。見事と言ってもいいかしら。沢山の人がいたけど、私の設定通り、そこにいる誰にとってもいつでも完璧な人数みたいに見えた。素晴らしかった。あの人たちは明らかにパーティーの話を聞きつけてて、過去の私たちにありとあらゆるお楽しみを持ち込んできた。未来の音楽、おかしなアルコール、変な物体になってしまう何年も前の電話。私は12人の顔見知りがそれぞれ別の年から12人ずつ参加してるのを見たのよ。イカしてたわ。最初はね。

エージェント カートライト: 何が起きた?

マッキントッシュ女史: ある人と会ったのよ。やっぱり顔見知り。食料品店を下った先に住んでるデイヴ。

エージェント カートライト: デイヴなら知ってる。良い奴だ。

マッキントッシュ女史: ええ。まぁね。あなたは若い頃ここにいなかったけど、昔のデイヴはどんなパーティーでも中心人物だったの。そういう感じに振る舞ってる何人もの彼と顔を合わせたものよ。でもその後で私が会ったのは、すごく静かで悲しげなデイヴだった。彼は — そう、今年から来たと言ったの。2059年から。

エージェント カートライト: そうかい、俺が体裁だけでもこいつを収容しようとしてた努力が無駄だって分かって幸いだね。

マッキントッシュ女史: 幸いかどうか分からないわ、フランク。デイヴは毎年来る度に未来の人々を探してたって話してくれた。未来の自分自身を。そして彼らは2059年を境に現れなかった。

長い沈黙が数分続く。

エージェント カートライト: お前、家族はいるのか — いやその、もし何なら俺の連絡先に頼んで —

マッキントッシュ女史: その連絡先にまだ通じるとは思わないわ。

エージェント カートライト: そうだな。

マッキントッシュ女史: 何が起きたの? つまり、世界でって意味。私たちがここで得られる情報なんてほんの僅か。一般市民であることが全て。

エージェント カートライト: 俺もお前以上の事は大して知らない。俺は緋色の夜に脚を失って、連中は俺をここに送った。情勢は… 悪くなる一方だ。時々事件が起こる。この世ならざる恐怖、財団がしでかした事、死のカルト教団、ただ人間らしく振る舞う人間たち。俺たちの息の根を止める要因が一つだけになるかは分からない。

マッキントッシュ女史: ええ。ただ…

エージェント カートライト: 分かってるさ。だが知ってもどうにもならん。

マッキントッシュ女史: ええ。

再び長時間の沈黙。

マッキントッシュ女史: 今夜は星が明るいわね。

エージェント カートライト: 一連の騒動が始まる前から、ここではそんなに光害もなかっただろう。だがそれで十分だったろうな… 俺は外を見ながら、昔に戻ったような思いに耽るのが好きだよ。ガキの頃、俺たちは天の川を見ることが一度もできなかった。でも、かつて空がどんな風に見えたか、両親が話してくれたのは覚えてる。

マッキントッシュ女史: あなたアイルランド人よね? アイルランドの空はもっと綺麗だろうなっていつも思ってたのよ。あそこの物は何でもいつでも素敵に思えた。

エージェント カートライト: ダブリンでは違うな。もっと西なら或いは。

マッキントッシュ女史: ドライブすればそこまで行けるのに、“かつてこう見えた”だなんて、変な話。

エージェント カートライト: 親世代と俺たちは距離の感じ方が違ったからな。それに、あの当時の人々はありとあらゆる下らない話をしてた。

マッキントッシュ女史: 彼らがどれだけミレニアル世代を嫌ってたか覚えてる?

エージェント カートライト: 勘弁してくれ。

マッキントッシュ女史: ふふふ。大変な日々だったわ。

エージェント カートライト: ああ。全くだ。

エージェント カートライトは長い溜息を吐く。

エージェント カートライト: もうじき、見える星はそう多くなくなるだろう。或いは星を見る人が残らなくなる。

マッキントッシュ女史: そうね、そのためにパーティーがあるのよ。

エージェント カートライト: どういう意味だ?

マッキントッシュ女史: 私をいつも悩ませたのは、フローがアートじゃないものにどれだけ簡単に流れてくるかってことだった。実行可能ではあるけれど、普通は何とかしてそれを正当化しなきゃいけない。動かせばアートみたいには感じる。けれど、パーティーではとても簡単だった。何年も前にその理由に気付いたの。

エージェント カートライト: それは遺言のつもりだな。

マッキントッシュ女史: ええ。全ての歳月。成長して引っ越したり、仕事を見つけて遠くで暮らしたり、故郷に留まったりしている全ての人々。彼らは1999年に戻って、自分が若かった頃を思い出す。千年紀の終わりに差し掛かったあの時、人生にはとても沢山の約束が満ちていたわ。窓から外を見て、そして — そうね、私は自分が空っぽの空に郷愁を感じるなんて考えたこともなかった。あれはそれ自体が芸術だった。死にゆく世界の、それがまだ若々しかった頃への追憶。

エージェント カートライト: お前は本当に持って回った言い方が好きだよな、ステイス。

マッキントッシュ女史: ああ、黙んなさい、フランク。明日は来るつもり、それとも私たちを止めようとする?

エージェント カートライト: そうだな… 顔を出してみるよ。良い事だろう — きっと。

<記録終了>

補遺2: 2059/12/31の17:04、ステイシー・マッキントッシュとエージェント カートライトはSCP-4646に入場しました。17:09、花が咲き始めました。

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