SCP-4662
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ウィリアム・ポーター氏、5歳の頃の写真。全SCP-4662実体と遺伝的に完全一致である。

アイテム番号: SCP-4662

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-4662-11を除く全てのSCP-4662生存個体は、倫理委員会により合理的な収容のコンセンサスが得られるまで長期冷凍保存状態で維持されます。SCP-4662-11は補遺4662-11の記載に従って収容されます。アーサーおよびマウリーン・ポーター氏はサイト-77の標準人型収容セルに収容され、あらゆるSCP-4662実体は即座に報告、収容されます。

説明: SCP-4662はミシガン州ディアーボーン在住のアーサーおよびマウリーン・ポーター夫妻に発生する異常現象です。事象発現時、ポーター夫妻の息子のウィリアム(以下、SCP-4662実体と記述)の複製がアーサー氏もしくはマウリーン氏の6キロメートル以内にランダムに出現します。各SCP-4662実体はおよそ5歳であり、ウィリアム・ポーター氏と遺伝子的に一致し、おそらく過去の記憶を保有しています。ポーター夫妻はインタビューにて、これらの記憶は本物のウィリアム・ポーター氏のものと一致すると証言しています。発現の際、実体は強い帰宅の願望を示し、自身の両親の居場所を本能的に理解します。いずれの特性も、およそ10時間後に消失します。

SCP-4662の現象は明確な二次的効果と強い相関性を持ち、実体1つの出現は6キロメートル圏内の児童1名の失踪を伴い、事実上瞬間的に置換します。これらの児童は一様に4〜7歳であり、他の明確な選択の基準は判明していません。対象となる児童がSCP-4662出現圏内に存在しない場合、実体は完全にランダムな地点に出現します。倫理的な懸念のため、この性質に関する完全な実験は行われていません。

補遺 4662-a: 収容経歴

最初のSCP-4662発現は2003年1月22日、ディアーボーンにて発生しました。この時、SCP-4662は█████と███████・シャアー夫妻の4歳の娘の失踪間も無く、夫妻の自宅からの脱出を試みているところを捕獲されました。この事案が財団の注意を引き、その結果発見実体とアーサー、マウリーン、そして12歳のウィリアム・ポーター氏を保護しました。インタビューの結果、3名ともこの事象に対して一貫して混乱を示しました。

SCP-4662実体が他異常性を示さないと確認された後、当該実体は収容下に置かれ1、ポーター一家は記憶処理後に解放されましたが、他の異常現象の有無の観察の為に継続的に追跡が実施されました。

2度目に記録されたSCP-4662発現は2007年7月3日で、別のディアーボーン住民の児童の失踪の後に当該自宅から確保されました。前例通り、ポーター氏3名と実体は財団の保護下に置かれましたが、この時にアーサー氏とマウリーン氏の証言の一字一句が前回と同一であったことが確認されました。

ポーター氏の住宅の追加調査を実施したところ、裏庭に多数の人間の遺体が発見されました。発掘では6体の遺体が発見され、全て5歳前後で、ウィリアム・ポーター氏と遺伝的に一致する明らかに他殺体であり、死亡推定時期が地元児童の失踪時期とそれぞれ一致しました。うち2つは2003年〜2007年ごろに殺害されたものですが、最も古い1996年に殺害された遺体は唯一ウィリアム・ポーター氏の誕生した1991年からの年齢と一致していました。またこの遺体は死亡要因も特徴的であり、他遺体が比較的効率的な首への負傷2による死亡である一方で、最古の遺体は複数回に渡る乱雑な鈍器外傷による死亡でした。

補遺 4662-b: インタビュー記録, 07/05/2007

対象: アーサー・ポーター氏、マウリーン・ポーター氏
対話者: マンガラ・シャストリー博士

シャストリー博士: 記録開始してください。ポーターさん、ポーター夫人。これよりあなた達一家の身の回りで起こる出来事について詳しく伺いたいと思います。

アーサー氏: もう十分やっただろ。あの子供が何であって、どうしてウチのビリーにそっくりなのか見当もつかない。あと何回同じ質問を繰り返すつもりだ?

シャストリー博士: ふむ。それではこれらの写真に目を通していただけますか?昨日、あなた達のご自宅の庭で撮影したものです。

マウリーン氏: クソッ。

アーサー氏: 何も言うなよマウリーン。何一つ言うな。

対象が写真を観察し15秒間の沈黙。対象の反応はぞんざいで非常に無感動的である。

シャストリー博士: これらの新たな証拠に目を通して、これまでのあなた達の証言を変更するつもりはありますか?

アーサー氏: ない、これからどんな展開になるか知ってるぞ、弁護士を呼べ。俺たちには権利がある、わかってんだろ。適正手続も全部、自分の権利は知ってる。

シャストリー博士: 「適正手続」ですか?これまで、少しでも自身の状況を確認しなかったのですか?ここが警察署にでも見えますか?ポーターさん、我々がそうしようと思えば、一生ここで過ごしていただいてもいいんですよ。これまでの事案に対するあなた達の協力こそが、今後それが不要な対応かの判断を助けてくれますよ。

10秒間の沈黙が続く。

シャストリー博士: さて、最も基本的な質問から始めましょう……あなた達は、これらの、そうですね、息子さんのクローンの存在と関係はありますか?あなた達は意図して近所の子供達をビリーの複製に変えましたか?

マウリーン氏: 違うわ!当然よ、一度もお願いなんて──

アーサー氏: ちくしょう、マウリーン、黙ってろって。

シャストリー博士: ご心配なく。我々は別に自動機械やパートの給仕さんが地下でクローン施設でも運営してるなどという想定はしていません。同じく、最初の複製の出現の前後で、何か異常な出来事に思い当たりませんか?

アーサー氏: 俺たちがどこぞのジプシーの女をキレさせたりインディアンの墓場でも荒らしたり、そんなことしなかったかって聞いてるのか?ハッ残念だったなハカセさんよ。

シャストリー博士: では、なんの前兆もなくいきなり現れだしたということですね?それで、どういう風にして、彼らを殺そうだなんて思ったのでしょうか?

30秒間の沈黙。

シャストリー博士: では、私の推理に基づく時系列をお話ししましょうか。あなた達のお子さん、ウィリアム・ポーターくんは、1991年1月3日に誕生しました。出生記録は本物のようでしたからね。5年後、いくつかの事故による鈍器外傷と意図的な怠慢により、あなた達は息子さんを死なせました。しばらくして──おそらく24時間後に、まるで誰も彼の失踪に気づかなかったように──あなた達の最初の息子さんの複製が現れました。ここ10年ほど、あなた達が育てていた子ですね。最初は奇跡と思われたことでしょう。またやり直す機会であると……次の複製が現れるまでは。これを説明する最もらしい答えなんて出てこない、本物の息子に起こった出来事に目を向けない限りは、だから今度はソレを排──

アーサー氏: チクショウ、わかってんなら──じゃなくて、もう確信してるっていうのなら、何で俺たちを閉じ込めるんだよ?何が目的だ?

シャストリー博士: 正直に申しましょうか?この時点でほとんどは明白なものですよ。ただ1つ疑問があります。どうしてこのようなことを?ウィリアムくん…ビリーくんは、度重なる身体的および精神的な虐待の痕跡を示しています。これまで行われた彼の人生に関するインタビューで得られた話はあらゆる愛から突き放された内容ばかりです。愛することも忘れ、そもそもあの子を好きですらないように見受けられます。なのでもう一度言います。どうしてですか?

マウリーン氏: ねえ、私たちに物を忘れさせることできるでしょ?

シャストリー博士: 何ですって?

マウリーン氏: あのトミー・リー・ジョーンズの映画みたいに。あのピカッと光るやつを向けて、全部忘れさせられるんでしょ?ずっとあの2年前にいなくなったシャアー一家の子のことばかり考えてる、うちのビリーが関わってるんじゃないかって考えたことを覚えてるそれで…結局、そういうことだったんでしょ、ねえ?ほら、私たちはあなたが思うほどバカじゃないのよ。

シャストリー博士: 何を言いたいのかがわかりませんね。

マウリーン氏: だから、もうさ……このことを忘れさせてくれない?全部。まるっきり。

シャストリー博士: 11年分の記憶を?

マウリーン氏: そうよ。

アーサー氏: 妻の言う通りだ、きっとそれがいい。

マウリーン氏: どうせ大事な思い出なんて何もないし。

シャストリー博士: インタビューを終了します。

インタビューの後、収容済みの実体はSCP-4662-5とSCP-4662-8と分類、「ウィリアム・ポーター氏」はSCP-4662-1に再分類され収容されました。アーサーおよびマウリーン・ポーター氏は無期の収容下に置かれました。記憶処理の実施は認可されませんでした。

補遺 4662-c: 長期実験結果

2009年9月21日時点で、さらに2体のSCP-4662が実体化、SCP-4662の効果に伴う長期的な収容について、主に財団の発生実体の管理責任に関する深刻な倫理的問題が浮上しました。この問題の解決に向けて複数回の試みの失敗の後、アラン・コヴィントン研究助手により提出された研究提案がSCP-4662無力化案として受領されました。

この提案の結果、次に出現したSCP-4662実体は即座に収容、隔離され、長期収容を可能にするためアーサーとマウリーン・ポーター氏が事故で死亡し当該実体が──自身を本物のウィリアム・ポーター氏であると信じ込むことを許可された上で──隔離措置の必要な伝染病に感染しているというカバーストーリーの下で養育されました。それら以外のあらゆる面で実体はコヴィントン研究助手の監督下で幅広く使用される育児心理学に基づき、さらに一般学業やレクリエーション活動も含めて養育されました。これらの手法により、当該実体は心理テストにおいて他SCP-4662実体の基準と比較して大幅な改善が確認されました。

実験の適用以降、新規のSCP-4662実体の追加出現は確認されていません。SCP-4662をNeutralizedに再分類する提案は現在保留中です。

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