SCP-4713
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収容違反時のSCP-4713実体。「アストロモール」であると推定される。これ以降実体は収容されている。

アイテム番号: SCP-4713

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-4713の出現可能性を低規模とするべく、財団は対モグラ用駆散装置をポーランド共和国プワヴィの市中に配備します。これらの装置は15〜30メートルの間隔で設置され、民間人への露見を可能な限り防ぐよう、叢林や樹木といった自然物に偽装されます。SCP-4713の出現を容認可能な管制区が、民間人のアクセス域の外部に23ヶ所設けられています。前述の管制区の付近15メートル以内の全ての公道には迂回工事がなされましたが、なおも当該公道を介して諸所にアクセス可能なルートが機能を維持しています。

管制区は週例点検により異変の有無を確認されなければなりません。管制区は現在私有地に偽装されています。SCP-4713が収容を突破した場合、その全実体を捕獲し、SCP-4713地下トンネルシステムへと繋がる坑道に送り返さなければなりません。収容違反が発生した場合、機動部隊エータ-30("特殊防除隊")が現場に急派されます。検疫中、機動部隊の周囲のエリアは民間人の視認と立ち入りが禁止されなければなりません。

非認可の人物がSCP-4713の収容手順を目撃した場合は例外なくクラスB記憶処理が施されます。

説明: SCP-4713は、ポーランド東部のルブリン県プワヴィ市内にのみ生息が記録されている、およそ5000匹のTalpa Europaea1に与えられた呼称です。SCP-4713実体はポーランド語で会話する異常能力を有しています。SCP-4713の地下トンネルシステムは市の境界を越えて拡散しているにもかかわらず、実体がプワヴィ以外の都市で確認された記録はありません。

SCP-4713の異常能力は実体が地表に到達した際に顕在化します。地表に現れると、1〜2匹のSCP-4713実体はワイヤー、廃棄物、その他の素材を用いて建造物を組み立てようと試みます。地表に基地を作り終えると、SCP-4713実体達は基地の落成について祝辞を述べ、喜びと充足感を露わにします。SCP-4713とコミュニケーションを取る試みは円滑に行われ、以下に記録されています。

ファイル: インタビュー-4713の抄録


エージェント・ズビグニェフとSCP-4713との会話。この会話はSCP-4713標本達が基地の建設の自由を認められた場所において記録された。SCP-4713実体は当該エリアから1匹も輸送されていない。インタビュー対象のSCP-4713標本は会話に応じたが、会話の時点では地表に出ておらず、丘の片隅の土や壕の中に居る。インタビュー対象のSCP-4713実体はSCP-4713-Aに指定された。元の会話はポーランド語でなされたが、のちに財団翻訳家によって各国語に翻訳された。

{インタビュー開始}


エージェント・ズビグニェフ: あのう。

SCP-4713-A: (3秒の間を置いてから返答する) ようこそ天界へ!ぼくらの持つ宇宙についての知識を認めるために、ここまで楽しい旅をしてきたのかい?

エージェント・ズビグニェフ: えっ、うーんと、いえ。あ、いやその初め…まして。何とお呼びすれば?

SCP-4713-A: ぼくのことはアンドリューと。それか、モグラと呼びたければそれで。そのどっちかがいいな。

エージェント・ズビグニェフ: では、ええと…とりあえずは、アンドリューと呼ばせていただきます。貴方がたの基地のことなどについて、いくつかお聞かせくださいますでしょうか?

SCP-4713-A: 勿論。キミみたいなお伽の巨人と話すのは随分久しぶりだ。いつ以来か思い出せないや!あの時はぼくとエドワードを見るなり仰天して逃げていっちゃってさ。ぼくらは基地を放棄せざるを得なかったよ。

エージェント・ズビグニェフ: 我々は貴方がたを怖がらせに来たのではありませんので、お気になさらず。ところで、最初の質問ですが、貴方はどのようにしてポーランド語を習得されたのですか?

SCP-4713-A: へえ、ぼくらのことをスラスラ話せる賢いモグラだって認めてくれるんだね。ぼくらは時々、お伽の巨人たちの会話を聞いて学ぶために小さな穴を掘るんだ。ぼくらの住処の周りに居る巨人たちはよく散歩するからさ。彼らを不安にさせたくはないんだけど、ぼくらが話をするのって、彼らにとっては気味の悪いことなんだって今まで見てきて学んだんだ。巨人は沢山叫ぶから、ぼくらの耳はだいぶ痛んだよ。ぼくらは彼らを恐れて、巨人たちは恐ろしい奴らだっていう噂を流したのさ。それでぼくらは彼らの話し方を覚えるだけにして、モグラなりに頭を使って、彼らの言葉と声の大きさ、抑揚や手振りを理解したってわけ。ぼくらが住処から穴を掘るのは、陸上宇宙の澄んだ空気に浴するためだけじゃなくって、巨人の話し方を聞くためでもあるのさ。これ以上は、いくらぼくらが賢いからって、ぼくにはもっと良い答えを用意できないな。

エージェント・ズビグニェフ: 成程。「陸上宇宙」とは何ですか?

SCP-4713-A: 陸上宇宙?あれっ、キミたちは聡明な巨人だっていうのに、知らないんだね。地表を超えると、そこは澄み切った大気!綺麗なもんだよ。それを讃えるために、ぼくらは基地を作るのさ。ぼくらは地表を探索させるために、勇敢なアストロモールを送り込む。そう、ぼくみたいなね。ぼくらは一生の殆どを地下で過ごすんだ。ぼくらモグラが巨人たちにひどく恐れられているのは承知してるよ。だけどね、土竜法人陸上宇宙探査研究所、M.I.T.S.Eと呼ばれているけど、そこに所属する勇気と知性溢れるモグラたるぼくらは、未知なる巨人たちの大地を探索できるほどに勇敢なのさ。巨人たち、大いなる叡智、そしてぼくらの基地にはほんの少しも見られない種類の巨大な材木の数々!ぼくらは地下で、巨人や危険から離れ住む暮らしに慣れ切っちゃって。そこでの暮らしは楽しいし揉め事もないけどさ、好奇心がその生活を変えたんだよ。だからね、ぼくらは巨人たちと絆を結ぼうと挑み続けているんだよ。どんなに危険な任務だろうと、ぼくらは全力で学ぶことに尽くし、成長できる機会を掴んでいく。そして、冒険の大地に立てる立派なアストロモールになることに憧れ続けるのさ!

エージェント・ズビグニェフ: お答えいただきありがとうございます。地上に基地を作りたいという興味はどこから来たのですか?

SCP-4713-A: 決まってるよ。陸上宇宙を讃え、お伽の巨人たちに耳を傾けるためさ。そして澄んだ空気を取り込み、かつてない幸福に浴する。誰の脳にも成長する力があるんだよ。素晴らしいことだよ…そうするとぼくはバラバラに崩れていくんだ。どれだけ沢山のものを失ってきたのか知るためにね。ただの外気にはあれほど大きな抱擁力もありはしないし、キミの様な巨人にも会わせてくれない。だからぼくらが今持てている勇気を学びとることもできない。ぼくらモグラがM.I.T.S.Eを作ってから、ぼくらは自分たちの盲目さに順応するよう教わってきたんだ。ぼくらは心で見る。声色や理性で見る。ぼくらは考える。そして、未開の地を踏査し、自分たちの知をもっともっと発達させるのさ。

エージェント・ズビグニェフ: 「アストロモール」といった造語はどのようにして作ったのですか?

SCP-4713-A: おおっ、面白い質問だね。それについては長い歴史があるんだけど、手短に言えば、ある時巨人たちが宇宙について話してくれたのさ。ぼくは眠れなかったよ。ぼくが居眠りしそうになっても、無口な仲間のロレクがぼくの鼻をずっと蹴ってたからさ。それで、ぼくは友達と地上へ行ってみたんだ。小型の堡塁に入って、アストロモールたちがするように、大気を賛美した。その後で、すごいものが聞こえたんだ。口数は少なかったけど、巨人たちが軽い会話を交わしていること、そしてその巨人たちは地上(surface)を探査したいと思っているらしいことが聞き取れたのさ。ぼくはアストロノーツなんて聞いたこともなかったし、キミたち偉大なる巨人のことを「アストロ人」と呼ぶのが相応しいのかもわからなかった。だからね、アストロモールの呼び方に替えさせてもらったのさ。ぼくらにも、未知を開拓したいという野心がある。キミたちもそうでしょ。周知の通り、地上は繁栄の楽園になりうる。それでもぼくらは、それをもっと享受したいんだ。

エージェント・ズビグニェフ: 貴方がたには、支配者、もしくはある種のリーダーが存在しますか?

SCP-4713-A: 勿論!厳密に言うなら、男王様と女王様だね。男王様は華美なお方で、巨人たちに恐れられているけど、アストロモールではないんだ。男王様はぼくに岩の欠片でできた勲章を授けてくださってね。ぼくはそれに大きな価値を感じているし、陸上宇宙での勇気ある任務に対するトロフィーのように大事に取ってあるよ。女王様は対照的に、引っ込み思案なモグラなんだ。彼女は地上や、ぼくらが呼ぶところの陸上宇宙について、その場の皆に一度にお話になるのがお好きなんだ。ちょっと変な癖がおありだけど、ぼくらは皆両王様が大好きだよ。お二方は特別な存在で、ぼくらの国を成功へと導いてくださるのさ。

エージェント・ズビグニェフ: 最終的に、貴方がたはどのようにして… (SCP-4713-Aが遮る)

SCP-4713-A: 話の途中で本当にご免ね、神秘の巨人さん。もう行かなくちゃ。ぼくのアストロモールとしての仕事には、辛抱強さと時間が沢山必要なんだ。暫くの間さよならだね。多分1モグ日くらいかな。キミたち巨人が、ぼくらの素敵な知の探査基地を滅茶苦茶にしなければ、またお話しするのはやぶさかじゃないよ。キミがぼくらを、巨人たちの偉大な物言いで言葉を話すこんなぼくらを怖がらないでいてくれて、嬉しいんだ。でも、時間だ。満足のいく答えができたのなら幸いだよ。良かったら、キミたちには王様が居るのか、うたた寝しそうになる度に鼻を蹴ってくる仲間は居るのか、知りたいな。

エージェント・ズビグニェフ: (笑いそうになるのを堪えつつ) この度はありがとうございました。

SCP-4713-A: どういたしまして!(穴から出てエージェント・ズビグニェフの方へ腹這い、前足と後足を使ってエージェントの脚にハグをし、10秒間ひしと密着する。その後離れて思わず尻餅をつく。SCP-4713-Aは穴に潜り戻って行くが、途中途中で誤って小石にぶつかる。エージェント・ズビグニェフが笑いを噛み殺す声が聞こえる。)

{インタビュー終了}

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