SCP-4833
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ホールには幾列もの空席が連なっている。今夜ここにいるのが自分一人なのは確認済み — 他の皆は所用で出払っているか、業務に掛かり切りだ。君はマガルフでの仕事を終えた後に、しっかり1週間の休暇を確保した — この途方もない疲れを解消しなければいけない。

昇進してから数ヶ月間、あまり自分の時間は持てなかった。しかし、長年興味を抱いてきた事、今までの権限では窺い知れなかった事が幾つもある。君は1冊のファイルを請求した。サイト-01でも特段に胡散臭い一角のファイルキャビネットに押し込まれていた記録。大抵の者なら忘れてしまいたい何かであるのは明白だった。

リールが再生を開始する — 勿論、全自動だ。粒が画面上でちらつき、やがて唐突に映像になる。高校の運動場。1975年か、76年に違いない。音声は無く、映像は大事な時に限ってちらついたり歪んだりするが、形は全て明瞭である。彼らがやっているのは — ラグビー? アメリカンフットボール? 何かそれらしいスポーツだ。何となく正しくないような気がする。

カメラはあちらへこちらへと動き回る。笑顔の群衆、観客たちが全員カメラに向かって手を振っている。彼らの動きは統制されていない、協調していない、正確でもない — 乱雑であやふやな、けらけらと笑う若者たち。人々。君の目の前に座っているのは現実の人々だ。そうじゃないか?

君は文書に目を下ろすが、いまいち集中できない。学校を覚えているだろう? 君の経験は違うものだ — 違う場所、違う時間 — それでも覚えてはいる。厳格に定められた時間、在りし日の心痛、君の前にあるあらゆる夢への約束。君の名前で象られた、限りない若さ。それは全て君の前に広がっていた。地平線に弧を描くあの夕陽。

覚えているだろう?

忘れてしまったのかい?


O5評議会指令

以下のファイルはレベル5/4833機密情報です。

無許可のアクセスは即時終了の対象となります。

アイテム番号: SCP-4833 Level 5/4833
オブジェクトクラス: Keter 機密

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事案4833-8Cの現場。


特別収容プロトコル: SCP-4833の活動は現在、機動部隊イータ-11“獰猛な獣たち”によって監視されています。イータ-11は報告された全ての事案に速やかに対応し、状況を確認し、潜在的な異常の収容を試みます。

記憶処理部門による最近の発見から、SCP-4833の性質は根本的に変化したものと見做されています。エージェント ホーソーンの報告が完了次第、SCP-4833は再分類され、ファイルは更新される予定です。

説明: SCP-4833は、通常“失神交響楽”の名称で活動している、現実改変能力者の組織化された集団です。SCP-4833は10~29名の人物で構成されており、その全員が類似の能力や特性を示すと考えられています。

1940年代後半に始まった当該組織の主な活動は、15~18歳の青少年を対象とする、未知の目的のための異常な改変を意図した実験です。SCP-4833はかつて異常事態の重大な発生要因であり、1940年代後半以降に多数の人物を誘拐、強制改造したことから、超常コミュニティではその存在が強く危惧されていました。しかしながら、近年、彼らの影響力は著しく減退しています。

上記以外の点で、SCP-4833の目的、手口、基本的性質は殆ど知られていません。SCP-4833は自ら画策した事件を通して間接的にしか財団エージェントと遭遇していません。数名の生存者から得られた証言は、SCP-4833の最終目標が“調和の状態”state of harmonyの確立であることを示していますが、それが何を意味するかは不明です。

SCP-4833の異常特性は記憶と音楽を中心に展開されるようです。財団が遭遇した事例の大部分において、彼らは管弦楽団または楽器店のどちらかの形式で現れています。SCP-4833構成員の目撃者は例外無く彼らが“仮面を付けて”いると述べます。しかしながら、このような目撃者は全員が忘却効果に曝されているため、更なる詳細は不明確です。

SCP-4833は1970年代半ばに初めて財団の注目を集めました。間もなく、SCP-4833の調査と追跡を明確な目標に掲げた専門機動部隊が設立されました。この機動部隊は今日までSCP-4833構成員の追跡には成功していないものの、SCP-4833のより広範な活動を収容するのに役立つ情報を数多く提供しています。

SCP-4833のタイムライン

1947年: SCP-4833の活動が始まったと考えられる。青少年が世界各地で誘拐され始めるが、とりわけイエローストーン国立公園の近傍に被害が集中している。

1964年: 最初の集団実験がアイダホ州ボイシで行われる。世界オカルト連合をはじめとする様々な組織からの圧力により、SCP-4833は███████州████████郡に主要活動拠点を移転したと考えられる。

1969年: SCP-4833は[編集済]の町に“失神交響楽”という名の楽器店を開く。当初、異常な活動は発生しなかった。

1975年、秋: 集団認識災害事件が███████████湖で発生。この事件をSCP-4833と関連付ける決定的な証拠は発見されていないが、異常存在の性質はSCP-4833の手口と一致している。

1976年: SCP-4833による一連の実験がカーク・ロンウッド高校および███████高校で行われる。問題の高校と町には速やかに避難措置が取られ、財団の制御下に置かれる。“失神交響楽”楽器店は財団が襲撃した時点で既に放棄されていた。

1977年: SCP-4833に誘拐された人物の数は1976年と比較して急激に減少し、今日に至るまでその傾向が続いている。超常コミュニティにおいて、これはSCP-4833が1976年の何処かの時点で目標を達成したためであり、その後の誘拐は単なる“微調律”の一種に過ぎないと推測されている。

1988年: 財団職員とSCP-4833に改造された人物の、2019年以前の最後の既知の遭遇。

2019年: 事案4833-8C(下記参照)。

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