SCP-490-JP
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アイテム番号: SCP-490-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-490-JPはUSBメモリ内に保管し、セクター42の収容ロッカー内に保管して下さい。アクセスにはセクター42のセクター管理者による許可が必要です。

POI-490-JPはセクター-63の標準人型オブジェクト収容室に拘束服を付けた状態で収容します。POI-490-JPには通常の食事を日に3度与え、POI-490-JPの治療プログラムであるプロトコル-8064の手順に従い薬物を投与して下さい。SCP-490-JP-Bが罹患している精神障害の治療のために、プロトコル-8064で指定された担当職員は毎日カウンセリングを行って下さい。担当職員は対象の自殺を防ぐために非致死性の催眠ガス銃を携帯して下さい。

説明: SCP-490-JPは過去改変能力を持った325MBのアプリケーションで、WindowsOSで作動します。SCP-490-JPのインターフェースは単純なものであり、起動すると対象の情報を入力する項目及び後述する「ベクソン語」で「消去」と書かれたボタンのみがウィンドウ内に存在します。ボタンを押すことによって一時的に大きなヒューム値の変化及び時空連続体に対する干渉が観測されますが、「エラー:対象が存在しません」というウィンドウがポップアップし、ヒューム及び時空連続体への干渉は停止し、改変はなされずに終わります。SCP-490-JPは研究による推測では後述する国家「ベクソン」の内側でしか効果を発揮せず、また特定の何かを消滅させ、「ベクソン」の国民や「ベクソン」以外からその存在についての記憶や記録を消去するという形で作動したと考えられています。SCP-490-JPには1度だけ作動した履歴が残っており、履歴の日付である[編集済]年には大規模なヒューム値の変動がインド洋沖で観測されています。

POI-490-JPはモンゴロイドの男性で、「ベクソン」という未知の国家の国民を主張しています。POI-490-JPはインタビューで、「ベクソン」は「インド洋に存在する細長い島国であり、四季があり、精神的な文化を重んじる長い伝統と王朝を持つ国家」であると主張していますが、インド洋にそのような島や国家は存在しません。POI-490-JPはオブジェクトが「ベクソン語」と称する、語順が日本語に似たSOV順の、恐らくアルタイ諸語に属する言語を話します。POI-490-JPの発見時の所持品は以下の通りでした。

  • SCP-490-JPのアプリケーションが導入された、「PelT-EP」というロゴが印字されたノートパソコン。「PelT-EP」なる企業は存在しないことが確認されている。OSはWindows7であり、言語設定は「ベクソン語」になっている。インストールされているWebブラウザのブックマーク・履歴にはドメイン「.bc」のアドレスが大量に記録されているが、「.bc」ドメインは現在存在しない。浸水の結果故障したものの、財団によってデータを復旧された。
  • [編集済]型番のiPhone。言語設定は「ベクソン語」となっており、「███-」で始まる電話番号の桁番は現在存在しないものである。320枚写真が保存されており、被写体は未知の都市や風景(恐らく「ベクソン」のものと思われる)、POI-490-JP及び家族と思われる初老の男女2名である。浸水の結果故障したものの、財団によってデータを復旧された。
  • 禁煙用のニコチンガム「クロカシン」。「ベクソン語」によってロゴや成分表示が印刷されている。メーカーとして「ケルツェラ社」という名前、及び電話番号・メールアドレスが記載されているが、いずれも存在しない番号・アドレスである。
  • 合成皮革の財布。中にはローマ数字及び「ベクソン語」で印刷された紙幣(1000アロと書かれた紙幣が2枚、500アロと書かれた紙幣が1枚、100アロと書かれた紙幣が3枚)と硬貨(50アロと書かれた硬貨が1枚、10アロと書かれた硬貨が6枚、1アロと書かれた硬貨が8枚)が存在する。1000アロの表側にはアジア系の未知の文明の民族衣装を来た初老の男性が、500アロの表側には木造建築の寺院と思われる場所が、100アロの表側には同じくアジア系の未知の文明の民族衣装を着た若い女性が印刷されている。すかし・レーザーによる印字など、偽造防止のために精巧に印刷されている。
  • 携帯用のティッシュペーパー。スーツ姿の初老の女性の顔と、「ベクソン語」の「移民に仕事を与える前にベクソン人に仕事を」という言葉が印刷されている。POI-490-JPの証言によれば、反移民を呼びかける政治運動のデモが配っていたもの。

POI-490-JPはインド洋の沖合を漂流しているところをヒューム値の変動の調査のため派遣された財団の探査船に発見され、保護されました。POI-490-JPが所持していた物品が偽造されたものにしてはあまりにも凝ったものであること、そしてヒューム値の大規模な変動によって、SCP-490-JP及びPOI-490-JPは収容の対象となりました。年齢は自称36歳であり、肉体年齢は主張と同程度の加齢が見られます。過去に2度自殺未遂を行ったため、現在の特別収容プロトコルが認定されました。POI-490-JP-Bは現在重篤な抑うつ状態にあります。

補遺: POI-490-JP-Bへのインタビュー記録

担当者: 諸知博士

備考: 会話はPOI-490-JPの母語であるベクソン語による会話ではなく、POI-490-JPが後天的に習得した日本語で行われました。

<録音開始>

諸知博士: はい、ということで、インタビューを行いますので。

POI-490-JP: (貧乏揺すりを続ける。映像記録716-B421-CA874にある通り、POI-490-JPはこの録音記録を開始する前から貧乏揺すりを繰り返していた)

諸知博士: 聞いていますか? 回答が難しいのであれば本日はインタビューは取りやめますが。

POI-490-JP: いや、いや、言いたいことは山ほどある……けれど、どれから言えばいいんだ……。

諸知博士: 落ち着いてくださいね。時間はたっぷりと取ってありますから。まずは質問に答えてください。あなたはベクソンという国の出身者だったと聞いています。それはどういった国だったのか、教えてください。

POI-490-JP: ……いい国だった。四季おりおりの美しい自然、内面の充実を重んずる哲学、伝統のある王朝……いい国だったよ。けど、ずっと不景気で、だんだんとみんなギスギスがひどくなってた。毎日反政府デモと保守派のぶつかり合いなんかが起こってた。結局、その辺が原因だったんだろうな。

諸知博士: ふむ。なるほど。その国がなぜ消滅したのか、教えてくれませんか。

POI-490-JP: 最初は極右団体……『きんぽうげと偃月刀の会』って名前の団体の学者が作ったんだ。ベクソン国立大学の[編集済]っていう教授がマスコミに発表した。この装置は特定の思想を持つ人間を、ボタンを押してから30分以内に消し去ってしまうものだと。ベクソンの国民の記憶以外からは、痕跡すら残さず消してしまうものだと。外国はなにが起こったかもわからないから、逃げたり国際問題にしても無駄だと。これによって共産主義勢力や売国奴を国家から一掃し、国家の膿を出すのが目的だって宣言して……それに従わなかったらこの装置によって処刑すると。

諸知博士: その教授が国家を消してしまったのですか?

POI-490-JP: いや。教授が最初に消したのはマスコミだった。左派的な言動を中心にしてた新聞社が綺麗さっぱり消えてなくなった。その日の夜に教授が殺された。極左団体の『全ベクソンの平和を祈る会』が教授の家に忍び込んで、パソコンを奪って……次の日には『きんぽうげと偃月刀の会』のメンバーが全員消去されてた。

諸知博士: 報復ですか。

POI-490-JP: いや、どっちかといえば元々対立しあってたんだろう。問題は平和の会の襲撃の時に、教授がやったことにあった。教授は自分のシンパがいるネットの掲示板にアプリケーションを流したんだ。

諸知博士: え……あの、それはあまりにも危険では?

POI-490-JP: うん。でも教授はそうは思ってなかったみたいだ。セーフティーとしてベクソン人以外には使えないようになってるとか、教授の掲示板には教授のシンパしかいないから、みんな教授の遺志にしたがってやってくれるだろうとか。教授は多分ネットの拡散能力を舐めてたんだろうな。その上ダウンロードするだけで誰でも使えたから、多分パソコンを持ってる全国民が手に入れられたんじゃないかな。……ティッシュくれ。

諸知博士: (ティッシュペーパーの束をPOI-490-JPに渡す)

POI-490-JP: (鼻をかむ)……ありがとう。そこからはまぁ、ぎすぎすが更にひどくなった。一人残らず全員が核兵器を持ち歩いてるようなもんだから。表面的にはお互いに優しくしても、それは消されないためで……。で、結局、破綻が来た。最初にやったのはどっかの爺さんだったよ。酒の席でボタンを押して、近所の公園で騒いでた若者が100人くらい消えた。その爺さんもリンチされて殺されたけどね。そこから報復が始まってて…….。(啜り泣き始める)

諸知博士: 無理をしなくてもいいんですよ、POI-490-JP。

POI-490-JP: ……いや、最後まで言いたいんだ。もう、気づいたら、そこら中めちゃくちゃになってた。デタラメにそこら辺のものが消えてた。王室も誰かが消してた。ベクソンの少数民族も消されてた。寺も教会も消えてた。さっき喚き散らして報復を叫んでいたテレビが消えて、なかったことになってた。伝統的な建物もみんな消し去られてた。多分誰かがちょっと気に食わないとか、そういう理由で、どんどん消えてたんだろうな……。(しゃくりあげる)ははは、皮肉だ。お互いをみんな消しちまうくらい全員ベクソンが嫌いだったんだろうな。愛国団体が作ったのに。

POI-490-JP: (嗚咽)最後はもう、なんというか、アスファルトもなにもかもが消えてた。全部消えてるところで、たまたまおふくろが生き残ってた。俺は、無事だったか、って言って、近寄って行ったら、おふくろが俺を見て、あんたもあたしを消そうってんだろって、俺の名前を機械に打ち込もうとして。気づいたらおふくろを殴り殺してた。俺はパソコンに向かって打ち込んだ。全部消えろって。……そしたら俺の足の下の地面が揺れ始めて、消え去って、海に投げ出された……。(しゃくりあげる)

諸知博士: (黙って新しいティッシュペーパーの束を渡す)

POI-490-JP: (嗚咽)全部消えちまったんだ。みんな、親父もおふくろもみんな消しあって……なぁ、いい国なんだよ。本当に憶えてないのか……博士……ベクソンって……憶えてないのか?

諸知博士: 残念ながら。

<録音終了>

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