SCP-493-JP
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SCP-493-JPの雄花

アイテム番号: SCP-493-JP

オブジェクトクラス: KeterEuclid

特別収容プロトコル: SCP-493-JPの原種個体はサイト-8132の異常動植物保管施設内に収容します。SCP-493-JPの周囲は十分な高さを持つ気密性の高い隔離壁で密閉します。施設内への入退出の管理は致死性の空気感染性伝染病に準ずるレベルで実施します。特にSCP-493-JPの開花時期においてはDクラス職員による実験を除き、原則として隔離壁内への立ち入りを禁止します。

説明: SCP-493-JPは特異な生殖体系を持つ、スギ(学名:Cryptomeria japonica)の変種です。通常のスギと同一の外観を持ちますが、DNA中に人間由来と考えられるコードが含まれています。SCP-493-JPは通常のスギと同様に雄花より風媒性の花粉(SCP-493-JP-1)を放出することで生殖を行いますが、雌花には生殖能力がありません。人間がSCP-493-JP-1を鼻孔より吸引した場合、SCP-493-JP-1は鼻腔内の嗅覚細胞周囲に定着します。嗅覚細胞に定着したSCP-493-JP-1は嗅覚細胞の胚に作用し、幹細胞化させた後に卵細胞へ変異させます。生成した卵細胞に対して種族、染色体の数が異なるにも関わらずSCP-493-JP-1が受精することで受精卵が生成され、鼻腔内に着床します。受精卵は数日で成長し、SCP-493-JPの種子(以下SCP-493-JP-2)となります。

SCP-493-JP-2が生成すると、罹患した人間(以下SCP-493-JP-3)は鼻のむず痒さ及びくしゃみといったアレルギー性鼻炎に類似した症状を呈します。ただし、通常のアレルギー性鼻炎と異なり、鼻水や涙などの体液を排出しようとする症状は生じません。くしゃみにより鼻腔内のSCP-493-JP-2の一部は周囲に拡散し、土壌へ到達した場合通常のスギと同様に発芽、生長します。鼻腔内に留まったSCP-493-JP-2はさらに数日の潜伏期間が経過した後鼻腔内で発芽します。SCP-493-JP-2が発芽すると副鼻腔を通じて頭蓋内へ急速に根を伸ばします。SCP-493-JP-2が発芽し、根が生長するにつれて、SCP-493-JP-3は嗅覚の喪失、頭痛、眩暈、吐き気、せん妄といった症状を呈し、根が脳幹に達すると中枢神経の麻痺による昏睡を引き起こした後、死亡します。鼻腔内でSCP-493-JP-2が生成すると特別な外科的処置を行わない限り致死率は95%です。SCP-493-JP-3の遺体を栄養源としてSCP-493-JP-2は生長を続けます。

SCP-493-JPの原種個体は192█年█月サイト-8132の研究施設とみられる廃墟跡で発見されました。周囲に研究員とみられる遺体と遺体頭部から生長したSCP-493-JPの苗木も多数発見されました。研究施設の看板には

日本生類創研 [編集済]支部 ヒトキメラ研究所

という表示がされており、放棄された培養施設や生物の死体からヒトと他の生物とのキメラを試作、研究する施設であることが判明しました。
廃墟跡捜索後、調査したエージェント█名のうち1名を除いた全員がSCP-493-JP-3となり、死亡しました。死亡を免れた1名は捜索当時軽い風邪を罹患しており、鼻炎の症状を呈していたことから、風邪、あるいは鼻炎を罹患しているとSCP-493-JPによる被害が免れることが分かりました。エージェントの遺体をさらに分析することで、SCP-493-JPの性質が明らかになりました。
現在財団が収容しているSCP-493-JPはこの原種個体です。

SCP-493-JPの発見と同時期に全国各地で林業従事者及び遭難者の変死が相次いだため、全国的にSCP-493-JPの生息範囲が広がっていることが判明しました。直ちに日本各地の山中にてスギ花粉が分析されましたが、分析の結果既に全国のスギの0.█%がSCP-493-JPであることが判明しました。SCP-493-JPの存在が発覚した時点でその生息範囲が広い範囲に渡っていたこと、また通常のスギと同一の外観を持ち、当時未発達であったDNA解析を行わなければSCP-493-JPの同定を行えなかったことから個別に収容することは当時の技術では不可能でした。財団はSCP-493-JPをKeterとして認定し、SCP-493-JPによる被害の拡大を抑えるため、SCP-493-JP個体の終了を含めた封じ込め手順の検討を行いました。

まず、カバーストーリー「木材需要の高まり」を流布し建材として使用するスギの需要を高めることで既存の成熟したスギの伐採を進め、通常のスギごとSCP-493-JP群の終了を行いました。また、スギを大量に伐採することによる環境の変化の緩和、及びSCP-493-JPによる人的被害を抑制するために、特殊なスギの植林を進めました。SCP-493-JP-1が嗅覚細胞に定着する際、ヒトの体液などの液体を流すと容易に流出するため感染を防ぐことが可能です。この性質を利用し、財団は、ヒトの免疫機構に作用しアレルギー症状を強く発現するような花粉(SCP-493-JP-1-a)を生成するよう品種改良されたスギを開発しました。SCP-493-JP-1自体はヒトの免疫系に拒否反応を示しませんが、SCP-493-JP-1-aに曝露されることでSCP-493-JP-1を含むスギ花粉全てにアレルギー症状を呈するようになります。アレルギー症状により生じる鼻水や涙により、SCP-493-JP-1は体外へと排出され、無力化されます。

これらの封じ込め処置を実施することでSCP-493-JPによる犠牲者はピーク時である195█年の年███人から199█年時には年█人へと減少しました。被害者の減少と、封じ込め処置により感染の爆発的な拡大の可能性が低くなったことを受けてSCP-493-JPのオブジェクトクラスはEuclidへ変更されました。

メモ:花粉症は死ぬほど辛いが、木の苗床となって死ぬよりはよっぽどマシだ。 -██博士

補遺: Euclid指定を受けてSCP-493-JP対策のための予算は削減され、カバーストーリー「木材需要の高まり」は解除されました。201█年現在、SCP-493-JPによる犠牲者は█年に1人程度であることを確認しています。しかし、SCP-493-JP-1-aによる健康被害が問題となり、抗アレルギー薬の投与が流行したことで、日本人のSCP-493-JP-1への耐性は低下しつつあります。また、カバーストーリーの解除に伴いスギの伐採と植林のスピードも低下しており、SCP-493-JPが増殖する可能性が指摘されています。さらに、近年都市部在住の登山愛好者が増加しており、SCP-493-JP-1への耐性が低い人間が、今だ伐採されていないSCP-493-JPによってSCP-493-JP-1に罹患し、都市部で発症する可能性は高くなっています。SCP-493-JPによる被害について、継続的な調査が必要です。

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