SCP-497-JP
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アイテム番号: SCP-497-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-497-JPは生物収容サイト-8166の『497防音ユニット』に収容されます。SCP-497-JPの飼育法については、アブラゼミのそれに準じます。

SCP-497-JPの異常性に曝露し、その結果妊娠した女性は、医療サイト-8119に収容され出産まで保護されます。医療・看護スタッフは通常の妊娠・出産にまつわるケアの他、胎児の成長を阻害する要因を母体胴部の外科的拡張などによって排除しなければなりません。

倫理委員会より、SCP-497-JPの研究・収容に関わるCクラス以上の職員は、男性に限定することが勧告されています。これは財団の職員雇用にまつわる男女同権規定に優先します。

プロトコル『根絶』は、現在その実行を保留されています。

説明: SCP-497-JPは異常性を持ったオスのアブラゼミ(Graptopsaltria nigrofuscata)です。その異常性はこの蝉の持つ鳴き声に起因します。

  1. 性指向が男性である。
  2. 性自認が女性である。
  3. 肉体面で妊娠が可能である。
  4. この蝉の鳴き声を『蝉の鳴き声である』と正しく認識している。

以上の4条件を満たしたヒト(Homo sapiens)が、この鳴き声に聴覚を通じて曝露した際、未知の作用により性欲の異常な高進を覚えます。この作用は同時に鳴き声を発するSCP-497-JPの匹数によって累進的に強化されます。1匹のみが発する鳴き声を聞いた場合は体温のわずかな上昇など、微弱な影響のみがもたらされます。しかしながら、約3匹以上の鳴き声を同時に聞いた場合は理知的な行動をとることが困難となり、交尾を目的とすることを第一として直接的な行動をとり始めます。多くの場合、周囲の男性に対して性行為の強要が行われます。匹数の上昇に伴い影響はさらに強まり、約10匹以上、俗に『蝉時雨』と呼ばれる状態の鳴き声に曝露した場合は[編集済]となります。収容後に行われた実験と比定すると、後述のインシデント497-JP-O時には4匹のSCP-497-JPが鳴いていたとみられます。

SCP-497-JPの鳴き声に曝露中、性行為を行った場合、女性は100%の確率で妊娠します。この際、母子ともに医学的な異常は観察されませんが、通常の妊娠期間(約10か月間)を過ぎても陣痛が来ず、胎児は成長を続けます。財団の把握する最長の妊娠期間は2014年に鳴き声に曝露した女性1のもので、2018年現在においても妊娠は継続中です。帝王切開によって胎児を取り出した場合、医学的に問題がないにもかかわらず、取り出された新生児は24時間以内に突然死することが確認されています。この異常に長期に渡る妊娠期間について、アブラゼミとの関連からその幼虫期間と同じく、6~7年に及ぶのではないかとする仮説がSCP-497-JP主任研究員である██博士より提唱されました。この仮説の検証のため曝露女性は医療サイト-8119に収容され、経過を観察されます。上記の最長妊娠期間女性の胎児において、2018年現在の身長は約75 cm、体重は約38 kgです。

2015/7/4に発生したインシデント497-JP-Pにより、SCP-497-JPがオスのみによる単性生殖が可能であることが判明しました。詳しくはインシデント497-JP-Pの記録、および補遺を参照してください。

インシデント記録497-JP-O: 2014/8/25、東京都内の███公園の一角において、複数の女性が周囲にいた男性に突如襲いかかり、強引に性行為を行ったため周辺が騒然となりました。ただちに警察が出動しましたが、それによって現場周辺に野次馬が集まり、その中にいた女性たちも周囲の男性へ襲撃を始めたため、大きな混乱状態となりました。

警察内の協力者より状況を伝達された財団は、現場に複数のエージェントを派遣し初期収容を行いました。混乱の原因であると考えられた、男性を襲撃していた女性たち(計12名)は拘束の後に医療サイト-8119に連行、収容されました2。現場にいたその他の人員については簡易な尋問の後、記憶消去処理が施され解放されました。その後、初期収容に派遣された女性エージェント、および収容された女性の証言により、混乱の本来の原因は蝉の鳴き声であるとことが判明しました。ただちにカバーストーリー『デング熱』を流布し、███公園一帯を封鎖した後、異常性をもつ蝉を(総計52匹)確保し、生物収容サイト-8166に収容しました。

インシデント記録497-JP-P: 2015/7/4、財団エージェントの潜入する病院に「ペニスが蝉に羽化した」として来院した男性がいました(以下、『羽化1号被験者』と呼称します)。財団データベースとの照合により、『羽化1号被験者』はインシデント497-JP-O時に女性と性交していたことが判明し、超常性が疑われたため即座に財団に確保されました。


羽化1号被験者には記憶処理を施し、カバーストーリー『性病』を適応した後で解放しました。

このインタビューを受けて、インシデント497-JP-O時に女性と性交した残りの17人の男性が急きょ確保されました。調査の結果、そのうち6人のペニスがすでに羽化していました。これらを羽化2号~7号被験者と指定します。彼らにも羽化1号被験者と同じくインタビューを行いました。その内容は羽化1号被験者とほとんど変わらず、『不安感を伴う拡大しない勃起』、『安心感を伴うひびと羽化』、『蝉に対する親しみの感情』がみられました。その後、羽化1号被験者と同じく記憶処理とカバーストーリー『性病』を適応し、解放しました。

残りの11人の男性のペニスを調べたところ、そのすべての海綿体組織がヒト由来のものではなく、正体不明の擬海綿体様生物となっていることが判明しました。その後、『不安感を伴う拡大しない勃起』が発症したところでX線にて調査したところ、擬海綿体様生物が蝉へと急速に変態していることが判明しました。その後に羽化した11匹すべての蝉が、インシデント497-JP-O時の蝉と同じ異常性を持っているオスの蝉であることが確認されました。男性たちを羽化8号~18号被験者と指定し、羽化終了後、記憶処理とカバーストーリー『性病』を適応し、解放しました。

補遺1: SCP-497-JPの生活環について

実験と観察の結果、SCP-497-JPの生活環の一部が判明しました。

  1. SCP-497-JPは、その鳴き声によって性的衝動をヒト女性に引き起こし、ヒト男性と性交するよう操る5
  2. このヒト女性と性交することによって、ヒト男性のペニス内の海綿体が擬海綿体様生物へ置換される。
  3. 擬海綿体様生物は宿主ヒト男性の血液を摂取することで生育する。
  4. 約1年後、擬海綿体様生物は急速に成虫化し、ペニスを割って羽化する。(1へ戻る)

補遺2: SCP-497-JPの遺伝子の多様性について

1匹のみのSCP-497-JPの鳴き声を聞いたヒト女性との性交により生まれたSCP-497-JPは、元のSCP-497-JPとまったく同じ染色体構造をもっています。
 
複数匹のSCP-497-JPの鳴き声を聞いたヒト女性との性交により生まれたSCP-497-JPは、それらの蝉の染色体が混ざり合った構造をしていました。よって、SCP-497-JPはヒトを利用することで、遺伝子の多様性を確保しながらオスのみでの繁殖が可能となります。
 
また、遺伝子的には正常なアブラゼミとまったく違いがないため、正常なメスのアブラゼミとの交配、繁殖も可能です。収容された異常蝉と非異常性のメスのアブラゼミとを交尾、産卵、孵化させる実験は成功しています。現在は幼虫となっているこれらの第二世代が、成虫となった際に親世代と同じ異常性を持っているかは現在のところ不明です。

補遺3: SCP-497-JP主任研究員 ██博士からの提言と、それに対する返答

発: ██ █(SCP-497-JP主任研究員)
宛: ██ ██(生物収容サイト-8166 サイト管理者)


(前略)
このような超常的生活環を可能とした要因は不明です……ただし、推測は可能です。地面のコンクリート化が進み、緑が失われる都市環境は、蝉の幼虫にとっては大変生きにくい環境です。そこで減り続ける地面の代替として、この環境でも増え続けるヒトを選んだと考えられます。
 
そのうえ、ヒトの体内で生育することで、

  1. 幼虫時代の天敵であるモグラやアリなどに襲われることがない
  2. 栄養豊富な血液をエサとすることで、通常よりも大幅に速い生育速度を得られる
  3. 音波を利用することによって1対多の交尾を擬似的に再現できる
  4. ヒトが移動することによってセミ単独では不可能な遺伝子の超長距離移動を可能とする

など、その繁殖戦略は通常のアブラゼミと比べて圧倒的に高効率です。このまま放っておけば、通常のアブラゼミは駆逐され、すべてのオスアブラゼミが異常蝉となるでしょう。
 
また、そのような状況になった際は、人類の生殖においても多大な影響を受けることは必至です。今ならばまだ間に合います。予防的措置として、なるべく早い時点での関東圏におけるアブラゼミの根絶を提言いたします。

 

発: ██ ██(生物収容サイト-8166 サイト管理者)
宛: ██ █(SCP-497-JP主任研究員)


(前略)
提言については保留中です。アブラゼミを絶滅させることは、新たな生態系の異常を生み、それに伴ってさらなる異常種が発生する恐れがあると考えます。それに、なんだか可哀想ですしね。もう少し穏便な方法を探ることを指示します。

 
 

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