SCP-509-JP
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アイテム番号: SCP-509-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-509-JPは高強度人型オブジェクト収容室に収容されます。一日に三度食事として残飯を与えてください。SCP-509-JPは周囲に空腹を感じた人間が存在する時に活性化するため、SCP-509-JPとの接触は食後2時間以内に留めるか携帯食を準備してから臨んでください。SCP-509-JPの活性化時には対象人物に食料を与え空腹を解消させてください。非活性化時のSCP-509-JPは自らの収容に協力的なため、特別な監視は必要ありません。

説明: SCP-509-JPは装甲服(以下SCP-509-JP-a)を纏った人型存在です。200█年に██県██町の山間部で不審者が徘徊しているとの噂を調査を行ったところ、同町の森林公園で徘徊していたところを発見され財団エージェントによって確保されました。
対象は"超援調理師ミーレイド・カーキ"を名乗り、超電救助隊HEROの「レスキューチーム」の所属であると証言しています。高い身体能力を発揮する装甲服などSCP-990-JPとの共通点がありますが、互いに面識は無く、救助活動に意欲的で無いなどの違いがあり、詳細な関連性は不明です。

下記はSCP-509-JPおよびSCP-509-JP-aの確認された機能の一覧です。
現象 説明
物体をランダムな料理へ変成させる装置。 "クッキング・コンバーター"と呼称しているのを記録。SCP-509-JP-aの右手てのひらに内蔵されています。材料とされる物体を一度内部に破砕吸収し、機械音とともに高速な3Dプリンターのように出力し料理の生成を行います。以下SCP-509-JP-a-1と表記。
一般人男性のおよそ15倍の腕力。SCP-509-JP-aの機能と思われます。 活性化時には自身の意思で制御が出来ないと供述しています。
ハンググライダー及び推進ジェット。SCP-509-JP-aの肩部に収納。 "エアログライダー"と呼称しているのを記録。燃料が尽きているらしく現在は使用不可能と見られています。
対象を空腹かどうか判定するセンサー。SCP-509-JP-aのマスク部に内蔵。 センサーが反応した場合、電子音声が流れたのちにSCP-509-JPが活性化状態へ移行することが確認されています。

SCP-509-JP-aの機能が新たに発見された場合は、ここへ追記してください。

SCP-509-JPは周囲に空腹を感じた人間(以下対象と表記)がいる際に活性化状態に入ります。活性化状態のSCP-509-JPは、右手部に内蔵されているSCP-509-JP-a-1を使用し料理(以下SCP-509-JP-b)を生成します。その後生成されたSCP-509-JP-bを対象に強制的に食べさせようとします。対象がSCP-509-JP-bを食べ終わる、もしくは空腹が解消された場合にSCP-509-JPは沈静化します。

SCP-509-JP-bは材料となる対象にある程度影響される傾向があり、生ゴミ等の有機物を使用した場合には摂食が可能な食料となりますが、建築材やプラスチック、金属製品を多く含む材料を用いた場合には摂食不可能な物体が生成されます。結果によっては材質が全く異なる物へ変化しているものもあり、現在変成のプロセスは解明されていません。

以下は材料による生成結果の一覧です。

用いられた材料 SCP-509-JP-b 生成結果 可食判定
豚生肉 豚の生姜焼き 摂食可
食堂から排出された生ゴミ 様々なメニュー数十種1 摂食可
樹木 繊維質の野菜を多く含むサラダ 摂食可
コンクリート 石灰質の成分を多く含んだ料理3種 摂食不可
ブラウン管を使用したテレビ ガラスの具が散見される液体状プラスチックのカレー 摂食不可
残飯に不燃ごみを1:1で混合したもの 料理数点。非可食な物体から出来たものと可食のものがきれいに分かれている。 摂食可
Dクラス職員の死体 ハンバーグ 付け合わせの野菜付き [削除済み]
生きている状態のニワトリ ローストターキー2 摂食可

会話ログ509-1

対象: SCP-509-JP

インタビュアー: エージェント・ヤマトモ

付記: 通報を受けた██県██町の森林地域でSCP-509-JPが徘徊しているのをエージェント・ヤマトモが発見。接触を試みた。

<録音開始,(201█/██/██)>

エージェント・ヤマトモ: こんにちは。ここで何を?

SCP-509-JP: …お前、腹は減っていないだろうな?

エージェント・ヤマトモ: 腹?減ってないよ。それよりアンタ[SCP-509-JPに遮られる]

SCP-509-JP: 重要なことだ!真面目に答えろ!

エージェント・ヤマトモ: は?

SCP-509-JP: 俺は引退したんだ……もう救援活動は、しない。……したくない!

エージェント・ヤマトモ: 救援?

SCP-509-JP: 俺は"超援調理師"……

エージェント・ヤマトモ: 調理師?その調理師がこんなところで何を……[エージェント・ヤマトモの腹が鳴る音]

SCP-509-JP: [動きが止まる]3

エージェント・ヤマトモ: …あっ。

SCP-509-JP: [電子音声]『悪を懲らすだけが正義じゃない!チカラでは救えない人たちがいる!』

SCP-509-JP: [電子音声]『お腹を空かせた人がいるならば!今日のメシが食えない人がいるならば!』

SCP-509-JP: [電子音声]『腹を満たすのが俺の使命!そして俺の正義だ!!』

SCP-509-JP: [電子音声]『出動!! 超援調理師ミーレイド・カーキ!!』

エージェント・ヤマトモ: こちらヤマトモ、対象の様子がおかしいため一時離脱する。

SCP-509-JP: クッキング・コンバーター起動!待ってろよ!今メシを食わせてやる![周囲の植物からSCP-509-JP-bが生成される]

エージェント・ヤマトモ: 要らんよ!……あっ!?[SCP-509-JPに捕まる]

SCP-509-JP: この世から貧困が無くなるまで!俺は!メシを!作り続けよう!

エージェント・ヤマトモ: [強制的に口の中にSCP-509-JP-bを詰め込まれる] ーーーッ!!

SCP-509-JP: さあ!食え!

エージェント・ヤマトモ: [くぐもった悲鳴]ーーー!!

SCP-509-JP: 食べるんだ!!

<録音終了>

終了報告書: アレ、不味くはなかったよ。 — エージェント・ヤマトモ

インタビュー記録509-4

対象: SCP-509-JP

インタビュアー: 黒瀬博士

<録音開始,(201█/██/██)>

黒瀬博士: インタビューを始めます。SCP-509-JP。

SCP-509-JP: 俺の名前は…!……いや、いい。その番号で呼んでくれ。

黒瀬博士: あなたは救援活動を辞めたと言っていたようですが、エージェントやDクラス職員にSCP-509-JP-bを強制的に食べさせたのには何か意図があるのですか?

SCP-509-JP: B?料理のことか?いや、無理に食べさせるつもりはなかったんだが……どうも自分を見失ってしまう癖があるようなんでな。

黒瀬博士: 空腹の対象がいると、無性に食べさせたくなるということですね?

SCP-509-JP: ああ、その間の記憶は……おぼろげなんだがな。

黒瀬博士: わかりました。では活動を辞めようと思った理由について聞かせていただけますか?

SCP-509-JP: ……[罵倒]が。あんな実験までしたのにまた思い出させる気か?

黒瀬博士: お願いします。SCP-509-JP。

SCP-509-JP: ……"飽食の時代"と言われるような現代日本で、飢えに苦しむ状況っていうのは限られた事態だけだ。地震や土砂災害で孤立した村とかな。

SCP-509-JP: 活動の機会が少なくなった俺は活動の拠点を海外へと移していった。貧しい国へ行き、紛争地域へ行き、飢えた人々を助けては俺は満足感に浸っていた。

SCP-509-JP: だがそもそも俺の"クッキング・コンバーター"には重大な欠陥があったんだ。食えないものからは食えないものしか作り出せねぇ。持っていける食料や現地調達できるものなんてたかが知れてる。

SCP-509-JP: 忘れもしねぇ19██年、俺は紛争で大きな被害を受けた街に行った。

SCP-509-JP: 軍によって交通が完全にマヒしてた。迂闊に身を晒せば射殺される。俺の装甲服なんか防弾チョッキに毛の生えたようなもんだ。食料はすぐに尽き、気がつけば枯れた草木を調理して食わせていた。

SCP-509-JP: もう周りに何も残っちゃいねぇ、そこで食えるモンはもう……人間の死体しかなかった。

SCP-509-JP: だが死んだ人間をそのまま食うわけじゃねぇ。"クッキング・コンバーター"は死体を別モンに変えてくれた。肉はパンに、髪は野菜に、血はジュースになった。そうする他無いって自分に言い聞かせたが、メシを食ってるあいつらの笑顔を見てるうちに罪悪感なんか消えちまった。

SCP-509-JP: でも、死体だっていくらでもあるわけじゃねえ。ある日、あいつらはいつものように腹が減り、いつものように俺にメシを作ってくれと言っていた。

SCP-509-JP: またいつものように無意識になって、気付けば俺は料理を手にしていた。……代わりに子供がひとり、減っていた。

SCP-509-JP: あいつらはようやく気付いたんだろうな、俺が何を料理に変えていたのか。その後で俺の料理を食った奴はいなかったんだ。それで、俺は……おそらく……[十数秒の沈黙]

黒瀬博士: ……続けてください。

SCP-509-JP: ……俺の暴走は、周りの腹を満たすまで、俺の料理を食わせ続けるんだったか?自分じゃよく覚えてないが、それはきっと本当だろうな。

SCP-509-JP: またそこで記憶が飛んでいた。気がつけば俺の周りは吐瀉物とあいつらの死体だけになっていた。たぶん……食うのを拒否して、それでも無理やり食わされて、ゲロを喉に詰まらせて窒息したんだろう。何人かは半身が無くなって、俺が、コ、コンバータで……

SCP-509-JP: 俺の力じゃ助けることなんかできやしなかったんだ!!俺は…何も……!!もう沢山だ!!

黒瀬博士: 落ち着いてください、SCP-509-JP。

SCP-509-JP: ……そして俺は日本へ帰ってきた。飢える奴がいねぇ国へな。でも……なんでもない他人の顔を見るたびに想像しちまうんだ。あのゲロまみれで、涙と鼻水でクシャクシャになったまま死んだ、あの顔を……

黒瀬博士: その後は、どうしていたのですか?

SCP-509-JP: 人に会うのすら嫌になって独りで山ン中で生きてた。……自分が食う分には困らねぇしな。そこでアンタん所のエージェントに会ったんだ。

黒瀬博士: 話してくれてありがとう、SCP-509-JP。インタビューを終了します。

<録音終了>

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