SCP-513-JP
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展開範囲付近の様子

アイテム番号: SCP-513-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-513-JPの展開範囲は、センサー付きのフェンスで覆われています。センサーの感知範囲に部外者が侵入した場合、カバーストーリー「ダム建設工事」を用いて退去させて下さい。

観測拠点では常に空間分析システムによる観測を行い、展開範囲の拡大などの不測の事態に備えて下さい。内部から敵対的な実体が現れた場合は、常駐している機動部隊こ‐2(“獄卒”)第2分隊が対応します。

実験許可の可否は、研究主任に一任されます。内部への潜入は、現在Dクラス職員にのみ許可されています。他クラスの職員は、展開範囲には極力近付かないで下さい。

説明: SCP-513-JPは青森県██群██山地に存在する開放/選別型の異常空間です。外見上の広さは約███m2で、██川の支流の一部、及びその岸辺に当たり、展開範囲は常に原因不明の濃霧に包まれています。休暇中に近郊を訪れ、消息を絶ったエージェント・██の捜索時に発見されました。エージェント・██の行方は未だ判明しておらず、内部に迷い込んだ可能性が高いと推測されます。

内部へは人間のみが潜入可能です。潜入した人間(以下、潜入者)の精神に応じて構造が変化すると考えられ、その報告内容は毎回異なるものの、いくつかの共通点も判明しています。

1. 外部との通信障害〈GPS/位置エラー、映像/激しいノイズにより判別困難、音声/受信機を境界線付近に置けば可能〉。
 
2. 外見よりも遥かに広い。
 
3. 通常空間と同程度の濃霧、時間経過で突如晴れる。
 
4. 何らかの形態の”川”が出現する。
 
5. 発生する事象は、おおむね死後の世界の伝承に則っている。
 
6. 知性を持つ実体が複数存在すると推測、外部に現れたケースはなし。

現時点までの潜入者は全て、調査中に通信が途絶え、以後は消息不明という結果に終わっています。

調査記録SCP-513-JP抜粋: 全文は中央資料室██-████区画に保管
 
第1次調査: 日付:201█/10/█

目的: 予備調査。
手段: ドローン、各種の実験用動物を潜入させる。
結果: 空間分析システムより算出した境界線を越えても変化なし。
研究主任の分析: 人間にしか反応しない可能性が高い。

第2次調査: 日付:201█/10/█

目的: 潜入条件の解明。
手段: Dクラス職員(D-2912)を潜入させる。
結果: D-2912、推定境界線を越えた瞬間に消失、上記の通信障害発生。
 
《音声ログ抜粋》
 
██博士(当SCP事案研究主任): 周囲の様子はどうかね?
 
D-2912: 霧が深くてよく見えねえが、別に変わりは……あれ、変だな。あの川、あんなに真っ直ぐじゃなかったような……ん? 向こう岸に誰かいるぞ。
 
██博士: ほう、容姿は分かるかい?
 
D-2912: 小柄で、腰の曲がった、多分年寄り……え?
 
██博士: どうした?
 
D-2912: [愕然とした様子で]ば、婆ちゃん、どうして……。
 
██博士: (端末でD-2912の人事ファイルを参照、彼の祖母は██年前に死亡していることを確認)
 
D-2912: [泣き出しそうな声で]ば、婆ちゃん、本当に婆ちゃんなのか……。※水音、川を徒歩で渡っているものと推測。
 
██博士: D-2912、状況を……。
 
D-2912: うるせえ、もう知ったことか! 婆ちゃん、俺もそっちへ……。ん? 霧が晴れてきた……。
 
〈中略〉
 
D-2912: ど、どこだよ、ここは!? 何でこんなに広く……。
 
〈中略〉
 
D-2912: か、川が、真っ赤に……[呻き声]この匂い……血!?
 
〈中略〉
 
D-2912: は、針が、針がびっしり生えた山が……人が、串刺しに……。※周囲で大勢の人間の呻きらしき音声
 
〈中略〉
 
D-2912: 溶岩の池が……つ、角の生えた鬼が……。 ※周囲で液体が沸き立つ音声
 
〈中略〉
 
D-2912: ば、婆ちゃん、助け……。[絶叫]ち、違う、お前は……。は、離せ! 嫌だ、俺はあんな所……。 ※至近距離で何者かの笑い声らしき音声
 
《通信中断》
 
研究主任の分析: 人間のみが潜入できる可能性が濃厚。内部を異常空間と判断。本件をSCP事案と確認。報告内容は仏教圏の地獄伝承に酷似、危険な環境と推測される……まさか、あの世へ歩いて行けるとはな。

第3次調査: 日付:201█/10/█

目的: 内部構造の調査。
手段: Dクラス職員(D-7610)を潜入させる。
結果: 潜入時の現象は第2次調査時と同様。
 
《音声ログ抜粋》
 
██博士: 周囲の様子はどうかね?
 
D-7610: 霧が晴れてきた……ええ? こ、この川、こんなに大きかったっけ? 向こう岸が見えないくらい……。
 
〈中略〉
 
D-7610: あちこちに、石が積み上げられてるわ。賽の河原みたいに……。
 
〈中略〉
 
D-7610: 何かある。船着場かしら? 1艘だけ、古びたボートが……誰か乗ってる、三途の川の渡し守みたいのが……き、気味が悪いわね。
 
██博士: 君は、死後の世界には詳しいのかね?
 
D-7610: まあね、実家が寺だったから……話しかけてみる?
 
██博士: ああ、頼むよ。
 
D-7610: ねえ、あんた、ちょっと聞きたいんだけど……。
 
ボート上の実体?: [低い声で]船代は六文1……。
 
D-7610: 文? 何時代の話よ? いえ、別に、船に乗りたい訳じゃないのよ。ここはどういう……。
 
ボート上の実体?: [同じ調子で]船代は六文……。
 
D-7610: あー、話通じそうにないわ、こいつ……。[悲鳴]な、何よ、あんたら!?
 
██博士: どうした?
 
D-7610: ぼろぼろの服着た、ババアみたいな奴らが……ま、まさか、こいつら!?
 
ボート上の実体?: [同じ調子で]船代無いなら……。
 
新たに出現した実体?: [けたたましく笑いながら]ぬしの着物をよこしおれぇ!
 
《通信中断》
 
研究主任の分析: 内部の構造が潜入毎に変化する可能性、潜入者の精神が反映されているものか。老婆のような人型実体というのは、おそらく奪衣婆2だろうな。今頃は……閻魔大王にでも会っているんじゃないだろうか。

第4次調査: 日付:201█/10/██

目的: 潜入者の精神に呼応して、内部構造が変化する仮説の検証。
手段: Dクラス職員(D-9016)を潜入させる。選抜条件・裁判時より一貫して無罪を主張しているため。
結果: 潜入時の現象は第2次、第3次調査時と同様。
 
《音声ログ抜粋》
 
██博士: 周囲の様子はどうかね?
 
D-9016: 川辺のようですが、霧が深くてよく見え……あ、晴れてきました。お、おおお……!
 
〈中略〉
 
D-9016: お釈迦様が、お迎えに……。
 
〈中略〉
 
D-9016: ええ、雲に乗って、川を渡っています。一面に蓮の花が咲き誇って……。※周囲で風を切る音らしき音声
 
〈中略〉
 
D-9016: 羽衣をまとった天女が舞い踊って……。※周囲で女性の歌声と弦楽器の演奏らしき音声
 
〈中略〉
 
D-9016: 美しい建物が……東照宮を、何十倍にも大きくしたような……。※周囲で多数の人間による念仏(おそらく般若心経)らしき音声
 
〈中略〉
 
D-9016: 冤罪を被せられた時は、世を恨んだが……ここに来るための、試練だったのかもしれない。ああ、光が……体が、魂が、浄化され……。
 
《通信中断》
 
研究主任の分析: 一般的な極楽のイメージに近いと言える。D-9016が本当に冤罪かどうかは分からないが、仮説は実証されたと考えていいだろう。今のところ、全ての報告で共通しているのは死後の世界、そして“川”の存在だ。おそらく、潜入者が日本人であり、三途の川のイメージが反映されている為だろう。では、三途の川を知らない潜入者の場合はどうなるのか?

第5次調査: 日付:201█/10/██

目的: 三途の川伝承を知らない人間が潜入した場合の確認。
手段: Dクラス職員(D-4421)を潜入させる。選抜理由・姉崎/フレイザー式信仰分析テストの結果、三途の川伝承に関して無知と判明。加えて、偏向度レベル4のキリスト教原理主義者であり、死後の世界へは門を潜って入るというイメージを強固に有しているため。
結果: インシデントSCP-513-JPを受け実施延期。

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