特別収容プロトコル
SCP-5239は標準人型収容室に収容されており、室内にはベッド、机、ホラー関連以外の本が月ごとに入れ替えられる本棚が備え付けられています。SCP-5239-1実例はSCP-5239とは離されて鍵をかけて保管され、実験中にのみ返却されます。
いかなる状況においても、SCP-5239をアブラクサス、暗黒のドレッドマスター、地獄の上位ネクロマンサー、サタンの第七眷属、あるいは同様の主題に沿った名前で呼称すべきではありません。
説明
SCP-5239は、本名をブレイン・ヴィアーズというニュージャージー州トレントン出身の17歳の人間です。SCP-5239はタイプIII-制限付1現実改変能力者ですが、SCP-5239-1-AからDを装備した場合のみ異常能力を行使可能です。
SCP-5239-1は、H.P.ラブクラフトの作品に登場する架空の書物ネクロノミコンであると記されたハードカバー本です。2SCP-5239-1-Aの内容は、精霊を利用した予言から死者のゾンビとしての蘇生に至るまで、死霊術の多数の様相を示す呪文であると低質なラテン語訳で記された説明で占められています。SCP-5239が使用していない場合、本は一切の異常性を示しません。
SCP-5239-1-BからEは、それぞれ黒色のローブ、赤色のコンタクトレンズ、黒色の革製オープンフィンガーグローブ、黒色のアイライナーチューブです。SCP-5239は実験中にこれらのアイテムを使用すると異常能力が強化されると主張しています。しかしながら、実例は能力行使にほとんどまたは一切の影響を与えることなく類似する製品に交換可能です。
発見
SCP-5239は、地元の墓地での騒乱に関する警察への多数の通報を受け、2019/11/08に霊障部門の注目を引きました。目撃者は、幽霊の格好をした不法侵入者を目撃し、捕まえようとした際に消失したと報告しました。
潜入工作員は現場全体に隠しカメラを設置し、霊的実体の中にSCP-5239が紛れていることを認識しました。財団工作員はSCP-5239を地元の書店まで追跡し、財団の管理下に置きました。
インタビュー
実験記録
[記録開始]
SCP-5239-1を身に着けたSCP-5239が実験室に入室する。
ブリス: おはようございます、ブレイン。新しい本はどうですか?
SCP-5239: とても良いです、おそらく。シリーズの5作目ももらえる可能性はありますか? もう出たと思うんですけど。
ブリス: 何ができるか確かめておきます。しかし今は、実験に取り掛かる時間です。
SCP-5239は前に踏み出し、テーブル上のD-2343の死体を見る。
SCP-5239: あー…… この人を実験のためだけに殺したんじゃありませんよね?
ブリス: もちろんそのようなことはありません、そんなことは完全な無駄ですから。悪性の虫垂炎です。
SCP-5239: ……
ブリス: 何か問題でも、ブレイン?
SCP-5239: すみません、実は死体を見るのには全く慣れていないんです。例えば、自分は幽霊にこだわってましたし、ほとんどの骸骨は肉の部分は腐りきっていました。ちょっと見るのがきついです。
ブリス: 骸骨を扱うほうがよいなら取り換えることも-
SCP-5239: いや、大丈夫、大丈夫です。できます。
SCP-5239は深呼吸し、SCP-5239-1-Aの一節を唱え始める。
SCP-5239: Exurge a mortuis, ex carne homo. Exurge a mortuis, et ambules in sempiternum et egressus de loco spiritus mundi. Et tu iubes!4
ヒューム検出器は基底現実から20%の低下を記録する。
D-2343の体が跳ね起きる。
D-2343: あぁ……
ブリス: D-2343、聞こえますか?
D-2343は不明瞭な呻き声をあげ、テーブルから落ちる。
D-2343: 脳……
ブリス: D-2343、聞こえるのなら肯定の返事をしてください。
D-2343は両腕を上げステレオタイプな「ゾンビ」の姿勢をとりながら、室内を歩き回り始める。
SCP-5239: あの、待ってください、待ってください…… Da mihi absconditorum es cognitor, immortuorum augentes!5
D-2343: Secreta immortuos non vestrum est scire. Cessabunt sive perpetuo versatus est.6
ブリス: ふーむ。これまでに蘇生させた人と会話したことはありますか、ブレイン?
SCP-5239: まあ、見方によっては? つまり、何をしてほしいか伝えることはできます。あの本取って、あのドア開けて、あの子を怖がらせて…… つまり彼らと話すことについてそんなにちゃんと考えたことはありません、すみません確認しておくべきでした、本当にすみません-
ブリス: 何も問題ありませんよ。対抗呪文を唱えてもらえますか?
SCP-5239は対抗呪文を唱え、D-2343は地面に倒れる。ヒューム値は基準値に戻る。
ブリス: ありがとうございました、本日はこれで以上です。
SCP-5239: ……ごめんなさい。何かしくじったのでしょうか?
ブリス: 何ですか? いいえ、あなたはちゃんと指示に従ったように思います。17歳の子がラテン語を話せないことを責めたりはできません。マーシャル、この子を連れて行って- ありがとう。また明日会いましょう。
[記録終了]
我々はちょっとしたブラックルーム問題の解決策を探してきましたが、SCP-5239はその答えではないようです。SCP-5239は死者の意識を再生させるために現実を改変しているというより、肉体を操作して粗雑に生きているように見せているようです。それにより生み出されるものは、真の蘇生ではなく、肉質で実体のない自動装置です。
SRAを適切に維持するためのコストと、SCP-5239が異常と認識される状況さえ非常に限られていることを踏まえ、私はSCP-5239を記憶処理し、民間の世界に解放することを提案します。これ以上収容によって得られるものはありません。 -ブリス博士
提案を承認する。 -O5-6
最終インタビュー
インタビュアー: ブリス博士
インタビュー対象: SCP-5239
[記録開始]
ブリス: ええと、本日はいいニュースがあるようです。
SCP-5239: 何ですか、自分の部屋を黒く塗らせてくもらえるんですか?
ブリス: いえ、そうではありません。しかし私が上司に提案を出して、もうすぐあなたを解放できると思います。細かいところはまだ詰める必要がありますが-
SCP-5239: 自分を…… 自分を出すんですか?
ブリス: はい、ブレイン。今週末には家に帰れるでしょう。ですからこれが最後のインタビューになるようです。流れについて聞きたいことがあれば、今聞いてくれて構いません。
SCP-5239: ここに残れますか?
ブリス: ……何ですって? あなたはここに、財団に残りたいと?
SCP-5239は頷く。
SCP-5239: その、前の実験でミスしたことはわかってますが、他のことならできます。ゾンビか何かを作ってあなたたちに使ってもらったりとか。お役に立てます。残ってもいいですか?
ブリス: 少々お待ちを。