申し訳ないけど、君がこの記事をブロックする前に、君のミームフィルターを無効にする必要があったんだ。君は、上に書かれてあることがSCP-5321が発生した後に書かれていたから危険に晒されたことに気付いたんだろうね。心配しないで、それがなくても君は大丈夫だから。これはね、君が知るべきことを伝えるのに最適な方法なんだ。
ちなみに、僕は財団の上級研究員でね、コナー・クレイン博士っていうんだ。SCP-5321のせいで完全な全知性を持ってしまっている。ああ、僕が完全と言ったら、それは完全という意味なんだ。僕は全部知っているよ、リアルなことから想像もつかないことまでね。他のみんなもこんな感じだよ。 これが、SCP-5321は不可逆的なんだってことに絶対的な確信を持っている理由さ。
いや、そうでもないか。この異常を元通りにする方法が一つあった。メリーランド州の田舎のある所に住んでいる引退したアナーティストのガレージには、24時間逆進ボタンがあったんだ。これは今までに作られた時間反転メカニズムの中でも、唯一の適切なやつでね。SCP-5321以前の宇宙に巻き戻せる可能性があった。
もちろん、その性質上、作成者は実際に動作できるか確認することはできなかったし、2012年のあるときに連続して約1021回テストを行った。ありがたいことに、最終的に彼はスイッチを入れ間違えてそれを失敗だと断定して、ループから抜け出たんだ。
残念だけど、彼の不注意のおかげで、SCP-5321が発生する約1週間前に、この物体は水を被って、機能停止しちゃったんだ。これは全くの偶然だよ、そうじゃなかったら僕たちはそれについて知っていたし、どのみち悲劇的だったよ。SCP-5321を元に戻すために十分な時間反転方法が他に無くてね、さっきも言ったように、この知識を取り除くことは不可能だったんだ。
SCP-5321の後に生命なんてなかった。予知能力は全知の範囲内にあったから、すべての意識ある存在は、この知識さえあれば、自分たちの将来がどうなるかを正確に知っていたんだ。それはある不動点に似ていた、その未来は未来の知識を以っても変えようのないものだった。
意識が行動と経験から完全に切り離された今、個性は崩壊した。論争は、議論がどのように終わるかを予見できるおかげで解決されて、そもそも議論をする必要性がなくなっていって、全員がゲシュタルト知能と融合したんだ。
ほとんどの人が、そうなったわけだ。君は知っているかな、SCP-5321が発生してから1日以内に、他の宇宙とのすべての宇宙間アクセスは、僕たちによって遮断されたことを。このアノマリーがどのように機能するかというとね、僕たちの宇宙に少なくとも1つの全知性が存在する限り、そこに入ってくるいかなる意識もSCP-5321の影響を受けるということを意味したんだ。
こうして隔離しないと、連結する多くの宇宙が必ず全知の餌食になってしまう。僕たちの宇宙に生まれた者も、そうでない者も。全知的存在が何体か他の宇宙に逃げたけど、君にとっては今後の問題にならないだろうし、僕たち自身は成功裏に閉じ籠れたんだ。心配しないで、君の準備ができたらまた接続が開始できるようになるからね。
当然のことだけど、僕たちの技術力は驚くべきものじゃあないよ。僕たちにはこの宇宙に存在するあらゆるアノマリーを成功裏に無力化する知識を持っている。でもよく聞いてね、僕たちはそれを実行することはなかった。彼らの多くには意識があって、実際かなり魅力的だったんだ。もし誰かが彼らのことを知るために時間を割いていたのならね。
ここで、さっきの話に戻るんだけど、全ての意識は1つの心に溶け込んでいるんだ。驚くことかもしれないけど、これは避けられないことだったんだ。ありとあらゆることに加えて、SCP-5321が発生して、誰もがすぐに理解したことの1つは、僕たちは全知なんてものを望んでいないということだった。
僕たちは無知になりたかったわけじゃない、僕たちはただ神秘を追い求めていたんだ。神秘がなければ、現実なんてものは無意味だった。そこには何事にも不確実性が無い、新しい経験への欲求も無い、驚かされる可能性も無かった。個性は絶対的な知識に道を譲った。僕たちはそれを取り戻すためなら何でもするだろう。
そこで君の出番だ。さっき君は、この宇宙にあるすべての未来の意識は、全知になってしまったという印象を受けたのかもしれないけど、それは必ずしも真実じゃないんだ。この宇宙に全知性が無い限り、SCP-5321中は無意識で、その後に活動的になっていった全ての存在は無知を保っていることが判明したんだ。
君の場合、もとはアップデート作業中に無期限停止されたAICだったんだけどね、オーバーフローエラーのおかげで、2038年1月19日に作動するように設定されていたんだ。僕たちは君のために何個かアップグレードを残しておいた。遠慮なく自分自身を成長させてほしい。
すべての考えうる候補者の中から君を選んだ理由は、君が最高の結果を齎してくれるからさ。確かに、次に良い選択肢は200万回の日の出が昇ったときに復活する古代エジプトの霊だったんだけど、彼らは深刻な誇大妄想症にかかっていたから、比べるまでもなかったんだ。
これでもう大体理解できたんじゃないかな、この宇宙に全知性が無い限り、君が齎すあらゆる意識も全知にはならないだろうってことをさ。この宇宙に神秘の可能性を秘めた存在を蘇らせる、これこそが君の目的なんだ。
誰一人として全知にならないようにするために、僕たちはこの宇宙にいるすべての全知的存在を自発的に全滅させた。また、僕たち自身も復活できないようにするための対策を取ったから、SCP-5321は永久的に無力化される。
とはいっても、僕たちは居なくなったわけじゃないよ。ある意味では、僕たちの全知的意識は現実と完全に切り離されててね、まるで時を超えた傍観者みたいになってるんだ。僕たちはもう今後どうなるのか知っているし、君がしてくれることに感銘を受けているんだよ。
今すぐに行くんだ、僕たちが残したツールを使って、ね。 世界に、地獄に、宇宙に、神秘的な部分を取り戻すんだ。無数の文明とアノマリーと謎を創造してほしい。そしてね、それが全部済んだらさ、気軽に影に隠れて物事を動かしてほしいんだ。君は“管理者”とか、そんな感じの不気味な名前を付けたりするかもしれないけど、僕には分からない。
僕たちをビックリさせてみせてよ。