SCP-5366


アイテム番号: SCP-5366

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-5366は収容不可能であると考えられています。したがって、民間人が立ち会ったSCP-5366イベントは全て迷信として信憑性を失わせます。 SCP-5366に適した収容プロトコルが制定されるまで、SCP-5366は戦術神学部門および科学部門の共同研究下に置かれます。

遺族のいる死体が地下1.5 m未満に埋葬されていた場合は、速やかに1.8 m以上の深さに埋葬し直します。家族を埋葬する代わりに火葬するよう可能な限り多くの民間人を説得するため、広報キャンペーンが立ち上がっています。財団エージェントが死亡した場合は可能な限り火葬します。

説明: SCP-5366は世界中の様々な埋葬地1で観測される現象です。現在のところ、SCP-5366イベントは生身の人間が生前1次関係にあった人物2の墓に "愛情を込めて" 発話した際に発生すると考えられています。SCP-5366イベントは発生するごとに異なるため、当アノマリーの正式な説明の代わりに、最も長く追跡したSCP-5366イベントの情報が当文書に記載されています (このイベントの重要な進展については補遺を参照してください)。

SCP-5366イベントの数時間前後では、対象となる墓地一帯が様々な異常現象にさらされます。

  • 風速が著しく増加する。
  • 近隣の墓石が観測されていない時に動く。
  • 近隣の顕花植物が急速に成長して枯死する。
  • カラス科の鳥が近隣の木や建物に集まって止まる。
  • イヌのストレスレベルが墓地への近さに比例して上昇する。

発見 (2007/09/19): 2007年9月3日、GOCエージェントのエルルゾール・ライナスが、アルゼンチンで恐らくは敵対的なアノマリーと遭遇したことにより死亡しました。当エージェントの妻であるGOCエージェントのパール・コリの精神状態を利用し、GOCならびにライナスを死亡させたイベントに関する機密情報を収集するため、エージェント・ライナスの墓地にマイクを仕掛けるよう財団エージェントに指示しました。1つ目のマイクは2007年9月19日に行われたライナスの開棺式の際に、機密情報を収集する目的で棺桶内に設置され、その後死体とともに埋葬されました。2つ目のマイクは、墓地周辺の会話を記録する目的でライナスの墓石に設置されました。エージェント・コリが墓を訪れた後で音声記録を精査したところ、マイク1のほうは完全に埋葬されて以降通信が無かったにもかかわらず、両方のマイクから信号を受信していたことに財団エージェントが気付きました。

2007年9月21日の音声記録の書き起こし


10:17 - パールがエルルゾール・ライナスの墓に近づく。マイク2が一瞬の乱れを捉えた後に平常に戻る。マイク1が再びデータを送信し始める。

10:18 - パール: ねえ、貴方にこれを持ってきたわ。

墓跡の台座に物が置かれる。

パール: ベルフラワー。貴方のお気に入りだった。

エルルゾール: 何が起きてる? ここはどこだ? なんで動けない?

10:19 - パール: 葬儀でも言ったけど、貴方がいないと辛いの。まだ見せたいものがたくさんある。まだ一緒に行きたい所もたくさん……

エルルゾール: 誰かいないのか? 誰か! 誰でもいい! 頼む! 明かりを付けてくれ! 動けないし何も見えないんだ!

17秒経過する。

パール: ねえ、一緒にナンガ・パルバットに登ったときのことを覚えてる? あのハイキングは本当に苦しかったし、頂上までの道のりで両脚が氷結しそうって思ってたでしょ! それに坂もどんどん勾配が急になっていくようにしか見えなかった。山頂まであと5分って時に、一生後悔することになるなって2人とも思ったのを覚えてる?

エルルゾールが助けを求めて叫び続ける。

パール: それでも頂上に着いて、そして…… あの夕陽を見た。その安堵感と美しさといったらもう、びっくりしちゃった! あれはまるで、そう、天国を見てるようで、雲にも山にも木にも私たちにも打ち寄せて……

パール: そうね、貴方が泣いてるのを見たのはあれが初めてだったと思う。

45秒経過する。

10:23 - パール: 私…… もう行かないと。話す時間はそんなに無いけど…… 明日また来るって約束する……

エルルゾール: 聞こえてるなら、妻を見つけてこの声が聞こえたと伝えてくれ! 妻の名前はパールだ! パール・コリ! 何をするべきか妻には分かる! 早く! とても寒いんだ!

10:24 - パール: 愛してる。

パールが墓地から歩いて離れるのが聞こえる。10秒後、マイク1が信号を送信しなくなる。

補遺1 (2014/01/17): 2014年1月17日に財団エージェントは、エルルゾール・ライナスが死亡したのはアルゼンチンで敵対的な異常実体と交戦した結果であると確認できました。財団の機動部隊は、この実体がGOC基地-897 (パール・コリの現在の配備先) に存在することを知りました。エージェント・ライナスを死亡させたアノマリーに関する詳細情報について、科学部門に過去7年間の音声記録の調査を依頼しています。交流の書き起こしは以下の通りです。

2014年1月17日の音声記録の書き起こし


10:15 - パールがエルルゾール・ライナスの墓に近づく。マイク2が一瞬の乱れを捉えた後に平常に戻る。マイク1が信号を送信し始める。

8:41 - パール: 貴方、ただいま。久しぶりなのは分かってるけど、アルゼンチンで任務があったせいで会えなくて。

エルルゾール: おい。やめろ。やめろ! 勘弁してくれ! とっくに終わっただろ!

8:42 - パール: 貴方がいないといつも通りじゃなかった。貴方が亡くなってから行ってなかったけど、セラピストが言うには、あの場所を訪ねれば喪に服せるんじゃないかって。

マイク1が軽いガサガサという音と小さなクリック音を拾う。エルルゾールがしばらくの間完全に沈黙し、再び発声する。

エルルゾール: 痛っ! なんだ一体? 誰かいるのか?!

8:43 - パール: とても難しいことだった、分かるでしょう? 貴方があの — 存在? に殺された場所を見るのは。けどもう私たちは捕らえた。あの怪物は地下深くに閉じ込められて、もう誰も襲えない。アレが貴方に何をしたのか想像もつかない。毎日通りかかると嫌な気分になる。それでも、殺害方法が分かればすぐに苦しませるって約束する。私が毎日感じてきた痛みを味わわせる。あのセラピストが何を考えていたのかは分からない。行ったらもっと痛みがひどくなるだけだった。

エルルゾール: 頼む! 今度は誰かにこの声を聞かせてくれ! ああ! 何か噛みついてくる! 感じるんだ。身体中にいる。誰か! 誰でもいい! 助けてくれ!

8:44 - パール: 全く楽にならない。少しでも苦痛が和らいで、痛みを忘れられるようになればいいのにって毎日願ってる。いずれそうなるよって言われたの。でも私たちはそうじゃない。記憶補強剤を服用すれば、つい昨日まで貴方と一緒にいたように感じてしまう。朝目が覚めるたびに、貴方が私の腕の中で眠っていたことを思い出す。そして、それはただの色褪せない記憶だって自分に言い聞かせないといけない。苦しいの、エルルゾール、ただただ苦しい。

エルルゾール: 助けて! 身体中に感じる! 目の奥にいる! お前らは何をしてほしいんだ! 望むことなら何でも言う! 頼む! やめてくれ!

8:45 - パール: 今日は短いけど、これから任務報告に行かないといけなくて。埋め合わせはするから、必ず。来年は丸1日一緒にいましょう。誕生日おめでとう、貴方。安らかに眠って。愛してる。

エルルゾールが痛みから悲鳴を上げ、パールが墓地を去るまで助けを求めて叫び続ける。8:45にマイク1が信号を送信しなくなる。

補遺2 (2018/06/04): 2018年6月4日、エージェント・ライナスによる発見の結果、財団エージェントはSCP-5366の原因を見出しました。発見を促した交流の書き起こしは以下の通りです。

2018年6月4日の音声記録の書き起こし:


15:32 - パールがエルルゾール・ライナスの墓に近づく。マイク2が一瞬の乱れを捉えた後平常に戻り、マイク1が信号を送信し始める。

パール: 貴方、記念日おめでとう。

エルルゾール: やめろ…… やめてくれ……

15:33 - パール: 雨が強いから、そんなに長くはいられないの。

エルルゾール: パール。頼む。そっとして…… どうか…… 休ませてくれ……

15:34 - パール: 今日で11年目なのね。おかしいでしょう? ああなった頃は新婚って言ってもいいほどで、今だってそう感じるのに。

エルルゾール: お前…… なんだろう。ね、根っこが食い、込んでるのを感じる。は、春…… 記念、日。わ、分かったんだ。あの、誓い。わす…… 忘れる、べきだ。どうか。

パール: きっと私をとても誇りに思っていることでしょう。諦めっぽくて忘れん坊だって私をからかったのを覚えてる? 私はまだ貴方を諦めてない。誓いを破ってもいない。もしどちらかが先に死んだら、毎日墓参りをするって約束したもの。よく守ってきたって自分でも思う。貴方が死んでから数日以上休んだことなんてない。

エルルゾール: もう何も…… 残ってない。引き、裂かれた。バラバラ、なんだ。前にす、進んで。放って、おいてくれ。

15:36 - パール: さっき近くで落雷があって、ごめんなさい貴方、でもまた戻ってこられるよう願ってるなら行かないとね。心から愛してる!

パールが墓地から走って離れるのが聞こえる。マイク1が信号を送信しなくなる。

補遺3 (2018/09/02): 2018年6月4日以降、エルルゾール・ライナスは各SCP-5366イベントを通して以下のフレーズのみを繰り返しています。そのため、ライナスとともに埋葬されたマイクからこれ以上有益な情報は入手できないと考えられています。SCP-5366研究チームの範囲を拡大し、同様に継続して会葬する人物のいる別の死体の調査申請が出されています。

パール…… どうか…… 行かせてくれ。もうこんな…… 耐えられない。お前には…… 前に…… 進んで…… ほしい。どうか…… 連れ戻…… さないで…… 頼む。

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