SCP-557-JP
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アイテム番号: SCP-557-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル:SCP-557-JPは液体・粉末用金属容器に密封し、サイト-8173の低危険度オブジェクト収容庫に格納してください。金属容器は収容庫の床に固定し、意図せぬ横転に伴う開封を防いでください。SCP-557-JP-1に対するインタビュー及び実験以外での、SCP-557-JPの持ち出し及び金属容器の開封は禁止されます。SCP-557-JP-1に対するインタビュー及び実験を行う際は、セキュリティクリアランスレベル2以上の職員の許可を得てください。SCP-557-JPに対する実験、成分分析は、事前にセキュリティクリアランスレベル4の職員2名以上の許可を得てください。

SCP-557-JPの金属容器を開封する際は、気密チャンバー内にてマニュピレータを使用してください。実験に必要なSCP-557-JPを採取した後は速やかに金属容器を密封の上、気密チャンバー内を蒸留水で洗浄してください。洗浄した水は加熱処理して蒸発させ、残留した固形物をSCP-557-JPとして回収してください。以上の操作により回収されたSCP-557-JPは金属製密封容器に封入の上、保管されます。

説明:SCP-557-JPは約320リットルの土砂です。微小な花崗岩や石英、石灰岩、コンクリート、人骨、酸化鉄などの破片から構成されており、異常な物質は含まれていません。SCP-557-JPの特異性は、1立方メートル当たり6ミリグラム以上のSCP-557-JPが存在する空間に、SCP-557-JP-1と指定される人型の存在が出現する点にあります。SCP-557-JP-1は成分不明のエアロゾルで構成されており、人間に対し日本語でコミュニケーションを取ることができます。また、SCP-557-JP-1はSCP-557-JPの量に関わらず連続した同一の記憶を維持しており、SCP-557-JPを複数に分割すると共通した意識を有するSCP-557-JP-1が発生します。SCP-557-JP-1はまごころ夢工房の従業員を自称しており、財団が回収しているanomalousアイテムの内いくつかの開発に携わっていると主張しています。SCP-557-JP-1の発言は技術の再現を含む複数の検証により、事実であることが判明しています。なお、SCP-557-JPを1立方メートルあたり6mg未満になるよう分割することでSCP-557-JP-1の出現を防ぐことが可能ですが、収容に膨大な空間を要する点と、約30万にも及ぶ分割されたSCP-557-JPの管理コストを考慮し、一カ所にSCP-557-JPを集積して常時SCP-557-JPを出現させておく方法で収容されています。

SCP-557-JPが発見されたのは、玩具に似た特徴を持つ複数のanomalousアイテムの由来を調査したことによるものです。anomalousアイテムの部品や材料を調査した結果、████県内に所在する小規模玩具メーカーまごころ夢工房がそれらを購入していたことが判明しました。しかし財団のエージェントがまごころ夢工房を訪問したところ、既に倒産しており敷地内には建屋の他に何も残っていませんでした。近隣住民への聞き込みを行ったところ、まごころ夢工房は1985年に倒産したという事実と、幽霊が現れるという噂が確認されました。財団所有の不動産会社がまごころ夢工房跡地を購入して調査を行ったところ、SCP-557-JP-1の発見に至りました。当初はSCP-557-JP-1の出現するまごころ夢工房跡地全体をSCP-557-JPとして指定していましたが、その後の研究とSCP-557-JP-1の発言により、敷地内の一部の土砂が異常性を有していることが判明しました。その結果、財団は異常性を有する土砂をSCP-557-JPとして回収し、まごころ夢工房跡地の指定を解除と特別収容プロトコルの更新を行いました。現在、まごころ夢工房跡地は財団所有の不動産会社にて管理されています。

SCP-557-JPが回収されたまごころ夢工房についてですが、複数種類のanomalousアイテムの生産に携わっており、現在廃業している点以外はほぼ不明です。まごころ夢工房の当時の経営者及び従業員についても、SCP-557-JP-1以外の消息は不明で、SCP-557-JP-1についても身元は明らかになっていません。現在、SCP-557-JPに対する研究は縮小されていますが、まごころ夢工房及びワンダーメント社に対する調査は継続されています。

補遺:
インタビュー記録557-JP-48556

対象:SCP-557-JP-1

インタビュワー:████博士

付記:SCP-557-JP-1の生前の記憶のうち、まごころ夢工房の倒産に関する繰り返しインタビュー第4回目

付記2:本インタビューはまごころ夢工房跡地をSCP-557-JPと指定していた時期に行われた物である。

<録音開始>

████博士:こんにちは、SCP-557-JP-1。本日もインタビューに協力いただき、ありがとうございます。

SCP-557-JP-1:ああ…自分は、これくらいしかできないからな…

████博士:それでは、今回もいくつか昔の事を聞かせていただけますか?

SCP-557-JP-1:今度は…いつのころのことだ?

████博士:まずはあなたの勤務先だったSCP-557-JPについてです。

SCP-557-JP-1:わかった。自分が勤めていたまごころ夢工房は、おもちゃ工場だった。

████博士:どのような玩具を生産していたのですか?

SCP-557-JP-1:色々だ。社長や工場長が図面を引いて、自分たち工員が分担して部品を作り、組み立てる。あのころは電池を使うおもちゃもかなり出てきたが、まごころ夢工房のおもちゃは全部ゼンマイ仕掛けか、バネ仕掛けだった。

████博士:あなたが覚えている製品で、印象に残っている物はありますか?

SCP-557-JP-1:「一人キャッチボールセット」だ。

████博士:それは、どのような玩具ですか?

SCP-557-JP-1:グラヴを嵌めてボールを投げると、ボールが必ずグラヴに戻ってくるんだ。

████博士:なるほど。では、その玩具の原理は覚えていますか?

SCP-557-JP-1:いいや。原理は全くわからない。

████博士:なぜ?

SCP-557-JP-1:自分は細かい部品を作ったりするばかりで、組み立てや基本的な設計には全く関わってなかった。キャッチボールセットの時も、親指の爪ほどの大きさの歯車を作るばかりだった。

████博士:それでは、玩具の開発や生産において、最も深く関わっていた人物は誰でしたか?

SCP-557-JP-1:社長と工場長に、副工場長だ。社長か工場長が引いた図面から、自分たちが部品を作ってあらかた組み立て、副工場長がデカい機械を使って仕上げるんだ。

████博士:デカい機械、というのは何のことですか?

SCP-557-JP-1:自分もよくわからない。4トントラックぐらいの大きさで、レバーやハンドルがいくつも付いていた。

████博士:その機械がどのように動作していたか、説明してください。

SCP-557-JP-1:自分は作業の合間にちょっと見ていただけだが、機械の横の穴に八割組上がったおもちゃと残りの部品を入れ、ハンドルを何度か回すんだ。そしてレバーを上げて、下ろして、ボタンを押す。すると機械の側面の穴に付けられたベルトコンベアから完成したおもちゃが出てきた。

████博士:その機械を操作、あるいは修理や整備など詳しく見たことはありますか?

SCP-557-JP-1:いや、ない。機械の整備は工場長と副工場長が交代でやってて、自分たち工員は触らせてもらえなかった。

████博士:なるほど…それでは、話題を変えましょう。今度はあなたの勤務先の同僚や上司についてです。

SCP-557-JP-1:ああ、社長や工場長にはよくしてもらっていた。工員たちも、仕事は気軽に教えてくれたし、給料が出たら皆で飲みに行くほど仲が良かった。だが…

████博士:何がありましたか?

SCP-557-JP-1:ああ、あの日…まごころ夢工房がよその連中の手に渡った日に、皆バラバラになってしまったんだ。

████博士:では、まごころ夢工房が倒産した時のことについて、詳しくお願いします。

SCP-557-JP-1:ああ…あの日、自分たちは突然作業を中断させられ、工場の真ん中に集められた。そして俺達の前に社長と工場長と、緑のスーツの見知らぬ男が並んで立ったんだ。

████博士:三人目は、どのような人物でしたか?

SCP-557-JP-1:よくわからない。目元を怪傑ゾロみたいな目隠しで覆っているのに気がとられて、スーツを着ていても分かるぐらい体格ががっしりしていたこと以外何も覚えていない。

████博士:分かりました。では、続けてください。

SCP-557-JP-1:ああ…とにかく、社長は自分達に向かって頭を下げ、「今日からまごころ夢工房はワンダーメント社のものになった」というようなことを言っていた。最初は冗談か何かかと思ったが、社長が頭を下げたままで、工場長が目元に涙を滲ませていたのを見て、ようやく自分は全部本当の事だと気が付いた。

████博士:それから、何が起こりましたか?

SCP-557-JP-1:社長は何度も謝りながら、「この工場はワンダーメント社のもの」「自分はここを出ていく」「だが工員たちはそのまま使ってもらえるようお願いしたので安心してほしい」と言っていた。普通なら自分のような末端の工員は追い出して、ベテランだけをもらっていくというのに、社長は本当に俺達のために交渉したようだった。

████博士:それで、あなたはワンダーメント社の傘下に入った工場で勤務を続けたのですか?

SCP-557-JP-1:いや、違う。自分たちは誰一人としてワンダーメント社の奴に従おうとしなかった。誰が最初だったかは忘れたが、「社長が出ていくなら自分たちも出ていく」と言いだして、それが工員全員に及んだんだ。

████博士:なるほど、それほどまでにまごころ夢工房の社長に対して忠誠心を抱いていたのですね。

SCP-557-JP-1:ああ。社長は自分たちの言葉に、一瞬嬉しそうな顔をした。だが、すぐに首を振って工場に留まるよう言ったんだ。だが自分たちは社長の下で働くことが楽しかったから、社長について出ていくと言って譲らなかった

████博士:あなた方の反応に、その緑のスーツの人物はどう反応してましたか?

SCP-557-JP-1:こう、肩をすくめて「やれやれ」と言った感じで頭を振っていた。そして片言の英語交じりの日本語で、「このまま留まるか、社長と一緒に出て行くかもう一度選べ」と言われた。

████博士:でも、あなたを含めて従業員は皆、解雇を受け入れると決心されてたんですよね。

SCP-557-JP-1:ああ、社長を首切られ地蔵にしてまで工場に留まる気はなかったからな。それにあの男はかなり立派な体格をしていたが、自分たちも20人はいたから、逆にこっちが追い返してやろうという雰囲気になっていた。だが、スーツの男は半笑いでもう一度頭を振ると、自分たちの首をどんどん、容赦なく切って回ったんだ。

████博士:解雇対象となったのは従業員全員ですか?

SCP-557-JP-1:ああ。誰一人として留まるという意志表示をしなかったからな。それにきっと最初から、自分たちを引き続き雇うつもりなんかなかったんだ。とにかく、あの男はバッサバッサと首を切って回った。首を切られてその場に崩れ落ちて動けなくなる奴もいれば、立ったままの奴もいた。俺は衝撃の余り無様にひっくりかえってしまったが、社長と工場長は自分達が首を切られる様子を辛そうに見届け、最後に立ったまま首を切られていた。社長も工場長も泣きそうな…いや、本当に泣いていたが、自分には立派な姿に見えた。

████博士:従業員の解雇後、工場はどうなりましたか?

SCP-557-JP-1:緑のスーツの男はその後、どこかに電話を掛けたんだ。そしたらトラックと緑の作業服を着た連中がぞろぞろやってきて、工場の機械をどんどん運び出していった。手で持てるような工具はもちろん、おもちゃの仕上げに使ってたデカい機械も十人がかりでトラックに積み込んで行った。

████博士:SCP-557-JPを確認しましたが、建屋の他には何も残っていませんでした。

SCP-557-JP-1:それはそうだ。あの連中は机も電灯も洗いざらい持って行ったからな。怖ろしく手際よく、1時間ぐらいで全部持って行ってしまった。そして連中にとってみればゴミみたいな…写真とかちびた鉛筆とかは工場の敷地に埋められた。

████博士:その後、解雇された従業員の皆さんはどうされたのですか。

SCP-557-JP-1:まごころ夢工房が無くなってしまったという事実と、首を切られたことで誰も身動きが取れなかった。そのうち家族が迎えに来て連れていかれたりして、いつの間にかみんないなくなった。自分は家族も親戚もいないし、友人もいなかったから誰も迎えに来なかった。それでひっくり返ったままぼんやりしてたら…いつの間にかこうなっていたんだ。

████博士:どこかへ行こうとか、元従業員の誰かを頼ろうとかはしなかったのですか?

SCP-557-JP-1:自分にはまごころ夢工房の他に何もなかったし、やりたいこともなかったからな。社長や工場長を頼ろうにも、いつの間にか姿が見えなくなっていて、追いかけようもなかった。

████博士:なるほど。それでは、最後に質問です。あなたはなぜSCP-557-JPに留まり続けたのですか?

SCP-557-JP-1:社長に工場長、そして工員たちが首を切られた時の無念が、自分の首や体と一緒にここに埋まってるんだ。多分、まごころ夢工房に自分というものが染み付いてるんだろうな。

<録音終了>

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