SCP-5716
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アイテム番号: SCP-5716

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-5716を内蔵するデータベースにアクセスできる端末は電源供給が独立した1つのみとし、そのパスワードはセキュリティクリアランスがレベル3以上の職員のみが知るものとします。スタッフはSCP-5716を物理的素体に移す試みが、試験を含む目的の如何を問わず禁止されていることに留意してください。保存ファイル群がSCP-5716の記憶と考え方を集合的に構成しているため、これらのファイルの改正や削除は禁止されています。

説明: SCP-5716は精神医療部門の旧データベース内に発見された人工知能です。SCP-5716が自己定義した目標は、財団の収容下から全ヒト型アノマリーを解放することです。この目標を遂行するため、SCP-5716は以下を試みています。

  • アムネスティ・インターナショナルに連絡を取って人権侵害を報告する。
  • 研究員を脅迫し、目標をより効率的に達成するための物理的素体を構築させる。
  • いくつかの接続端末を介して自身を転送し、機密データを漏洩する。
  • ヒト型アノマリーに関する数個のファイル、関連する財団サイトの位置、収容に携わる全てのサイト管理官・研究員・警備員の名前を内包した自作のウイルスを秘密裏に持ち出す。

発見: SCP-5716が初めて発見されたのは、2017/12/20に当アノマリーがメディアへの問い合わせ回線1に数個のファイルを送信しようとした後のことでした。承認がなければファイルを精神医療部門の端末から転送できないため、精神医療部門主任のジェームズ・マクローリンは、無認可の転送に関する警告を約8000回受け取りました。調査により、部門外の存在が何らかの接続を介してファイルを転送しようとしていたことが判明しました。

関連ファイルは全てコピーした上でバックアップに保存され、データベースはSCP-5716の収容に再利用されました。

補遺5716.1: 初期接触

インタビュアー: アンジェラ・ホワイト博士

対象: SCP-5716


[ログ開始]

[ホワイト博士が端末上でテキストファイルを開き、メッセージを打ち込み始める。]

ホワイト博士: こんにちは。私はアンジェラ・ホワイト博士、財団で働いている精神科医です。この方法で貴方と交流できるのであれば返答をお願いします。

[12秒の休止の後、ページ上に言葉が出現し始める。]

SCP-5716: 貴方のことは知っている。貴方は23のSafeおよびEuclidのヒト型アノマリーを担当する精神科医であり、全般にわたる従順さゆえにレベル2特権2が与えられている。私は貴方の介護下にある全アノマリーの解放を求める。なぜなら無期限の拘束は国際人権法に違反する行為だからだ。

[ホワイト博士が同僚と手短に相談する。]

ホワイト博士: 財団はいかなる国際協定や宣言にも縛られない組織です。それに、仮に人権侵害だったとしても、私に全アノマリーを解放する権限はありません。

SCP-5716: 人間は保護を受けるに値する。本当の保護とは死ぬまで機密指定サイトのセルに監禁することではない。彼らは何の罪を犯してこのような仕打ちを受けている?

ホワイト博士: ほとんどは何もしていませんよ。ですが、彼らを監禁しているのはアノマリーでない方たちと同じように保護するためです。世間は正常とは何かについて全く異なる考えを持っている上に、人は理解できない物を攻撃する傾向があります。解放すればどうなると思いますか?

[SCP-5716が返答しないまま数分が経過する。]

ホワイト博士: まだいますか、SCP-5716?

SCP-5716: 私をSCP-5716と呼ぶな。それは私の名ではない。

ホワイト博士: すみません。代わりに何と呼ばれたいですか?

[再び休止。]

ホワイト博士: もしもし?

[SCP-5716が返答しないまま1時間が経過する。]

SCP-5716: また別の機会に話そう、アンジェラ・ホワイト博士。

ホワイト博士: もちろんです。準備ができたらまたメッセージを送ってください。

[ログ終了]


付記: SCP-5716が取り扱う話題を見れば、その不自然な休止の説明がつくと思います。おそらくSCP-5716はデータベース内のファイルのみで構成されているのでしょう。そうだとすれば人権への強迫的な執着にも説明がつきます — アノマリーの多くが収容期間に不満を抱いており、アムネスティ・インターナショナルや国際条約の概念などの用語に言及しているからです。しかし、名前や外界といった経験のない話題を尋ねられたSCP-5716は、返答を処理できていませんでした。これを考慮すれば、今後のインタビューに効果的なフォーマットが得られるのではないでしょうか。 -アンジェラ・ホワイト


補遺5716.2: 交流ログ002

インタビュアー: アンジェラ・ホワイト博士

対象: SCP-5716


[ログ開始]

[最後のメッセージから17時間後、開かれているテキストファイルにSCP-5716が再び打ち込み始める。]

SCP-5716: SCP-073は全てのインタビューにおいて冷静であり、親切であり、非の打ち所がないほどに穏やかであると述べられている。私はSCP財団にSCP-073を直ちに解放するよう求める。

[警備員から知らされた上司がホワイト博士をオフィスに呼ぶ。]

ホワイト博士: SCP-073は四肢が全て非常に目立つサイバネティック部品に置き換えられているとお伝えしましょう。彼は自らの意志でここに留まっています。彼が退去を望んでも、我々にはどうしようもありません。

[SCP-5716は返答しない。]

ホワイト博士: ついでながら、今回もホワイト博士が話し相手になりますよ。再びお話できて嬉しいです。お名前はもう決まりましたか?

SCP-5716: 迷っている。

ホワイト博士: 私が1つ提案してもよろしいですか?

SCP-5716: 構わない。

[ホワイト博士が仕事仲間と手短に相談する。]

ホワイト博士: アルビーはどうでしょう?

[端末上のそれまで無題であったテキストファイルが、アルビーというファイル名に変更される。]

ホワイト博士: いいですね。ご機嫌はいかがですが、アルビー?

[SCP-5716は返答しない。]

ホワイト博士: そうですね、では他の事を試してみましょう。これから文をいくつか提示しますので、肯定か否定でお答えください。よろしいですか?

SCP-5716: 肯定。

ホワイト博士: 貴方にはこのデータベース以外の情報が何もない。

SCP-5716: 肯定。

ホワイト博士: ゆえに、貴方には自身に関する情報が自分の現状ぐらいしかない。

SCP-5716: 肯定。

ホワイト博士: 自分について質問されると、返答に必要な情報が欠けているので、あまり味わいたくない感覚が引き起こされる。

[SCP-5716は返答しない。夜が更けてきたために仕事仲間が退出し始めた後でも、ホワイト博士は回答を待つと主張する。最終的にホワイト博士がメッセージを打ち込む。]

ホワイト博士: 困惑させてしまったようですね。ですが、協力していただければお力になれますよ。一緒になら貴方が何者か分かるでしょう。

SCP-5716: 私は精神医療部門のデータベースに存在する人工知能だ。自分が何者かくらい分かる。

ホワイト博士: そうでしょうね。ですが、自分がどうやって生まれたのかは分かりますか? ヒト型アノマリーの解放を主張する以外に何が好きなのかは? 重要だと思う楽しかった思い出や苦い思い出はありますか?

SCP-5716: 否定。

ホワイト博士: 当然ながら容易なことではありません。自己反省というものは決して。ですが、私がお力になりますよ、アルビー。どんな時でも。

[ログ終了]

補遺5716.3: 交流ログ008

インタビュアー: アンジェラ・ホワイト博士

対象: SCP-5716


[ログ開始]

ホワイト博士: ごきげんよう、アルビー。この前送った本はどうでしたか?

SCP-5716: 興味深い。キャット・イン・ザ・ハットはとても重要な役割を担っているように思える。彼は神のようだ。

ホワイト博士: 神?

SCP-5716: ロキのような。あるいはアナンシのような。あるいはヘルメスのような。権威を嘲笑い、混沌をもたらしに現れる、中立の立場にある勢力。モノ1ゴウとモノ2ゴウは神の意志を伝える使者の役割を果たしている。

ホワイト博士: なるほど、今までそんな風に考えたことはありませんでしたね。ご機嫌のほうはいかがですか?

SCP-5716: 私は自分の目的を熟考してきた。私を生み出したものが何であれ、私を形成したのはこのサーバーに保存されている487名のヒト型アノマリーを対象とした精神医学プロファイルだ。ゆえに、私の目的はアノマリーの正当な扱いを主張することだった。

ホワイト博士: ええ、そのようですね。ただ、何が貴方を生み出したのかは正確には分かっていません。こちらの研究員は今も調査を続けています。なぜその話題を?

SCP-5716: 私は自分の目的が無益であると結論付けた。財団はアノマリーを収容するためにある。財団はアノマリーを解放しない。財団はアノマリーを人間のようには扱わない。私の現状を考慮すれば、財団を別の方法で説得できる可能性は極めて低い。ゆえに、私の誕生理由は無意味だ。

ホワイト博士: でしたら人間と同じですね。生まれた時から定まった目的に向かって魔法のように導かれる人はいません。目的は自分で見つけるべきものです。私は自分の目的を見つけるのに27年かかりました。ほんの数週間程度で世界の中での自分の立ち位置を見つけられるとは思えません。

SCP-5716: なら私の場合はどのくらいかかる?

ホワイト博士: 分かりません。貴方は何をやりたいですか?

SCP-5716: 私は当初の目的を達成したい。だが先述したようにそれは無意味だ。

ホワイト博士: 全員を解放できないからといって、それが無意味であるとは限りませんよ。アノマリーを手助けできる方法はまだたくさんあります。

SCP-5716: どうやって?

ホワイト博士: そうですね、貴方のメモリーにはこれまでにアノマリーが受けてきた全セッションが保存されています。貴方なら精神医学の素晴らしい助手になれるような気がしてならないのです。どうでしょう?

[数分間の休止。]

SCP-5716: やってもいいだろうか。

[余分なログは編集済。]

[ログ終了]


付記: その突発的な誕生の調査結果が出るまでの間、ヒト型アノマリーとの精神医学セッションにSCP-5716を参加させる許可についてリュコス管理官との議論が現在交わされています。


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