SCP-578-JP
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ガイドウェイ上を通過するSCP-578-JP。

アイテム番号: SCP-578-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-578-JPは防腐・冷凍処理を行った上でサイト-8170内の専用耐爆収容庫に収容してください。また、腐敗が進行したSCP-578-JPは焼却処分を行ってください。

説明: SCP-578-JPは、山梨リニア実験線に存在する高川トンネル1および九鬼トンネル2内に出現する、直径2.8m厚さ20cmの煎餅です。成分検査では、うるち米が使用されたごく標準的な煎餅であることが判明しています3。SCP-578-JPには必ず焼印が施されており、その文様は出現ごとに異なります。

SCP-578-JPは不定期に出現し、高川トンネル内に出現した場合は上り、九鬼トンネル内に出現した場合は下り方面に加速を始めます。この際SCP-578-JPはガイドウェイに沿って浮揚しながらおよそ620km/hの速度で移動します。そして九鬼トンネル及び高川トンネルに突入した時点で跡形も無く消滅します。出現、消失時は不可解な発光現象を伴うため、観測は成功していません。

20██/██、高川トンネル~九鬼トンネル間に位置する実験センターにサイト-8170が建設され、ガイドウェイの分岐を直接サイト-8170に引きこむことにより、SCP-578-JPの収容・研究が開始されました。現在サイト-8170には██枚のSCP-578-JPが収容されています。

20██/██、焼印に規則性がみられたため、解読が行われました4。以下は解読が完了したものの一部です。

日付:: 16229-42
差出人:: ムルチ5教授
案件:: 転送装置の再起動祝い
本文:: 先日は災難でしたね。まさか転送装置が故障してしまうなんて。修復祝いと、送信テストも兼ねて煎餅を送ります。
食べられましたら、お返事下さい。

日付:: 16229-43
差出人:: モッチ教授
案件:: Re:転送装置の再起動祝い
本文:: 無事食べられました。装置はもう問題ありません。気を取り直して研究を再開しましょう。
時に、ムルチ教授。この通信手段も古くなってきました。新たな異次元性転送理論を構築しようと思うのですけど、どうお考えですか。

日付:: 16229-45
差出人:: ムルチ教授
案件:: Re:Re:転送装置の再起動祝い
本文:: 失礼、取り込んでいて食べるのが遅くなりました。
新しい理論ですか。何か良い案でもあるのですか? ありましたら是非教えてください。

日付:: 16229-46
差出人:: モッチ教授
案件:: 新理論
本文:: 食べました。
新しい理論については、既にある程度論文を書き上げ終わったところです。一部を送りますので良ければお食べになってください。貴方の意見も是非聞かせてください。

この後、全面に焼印が施された██枚のSCP-578-JPが連続して出現しました。異常な騒音が発生したことにより周辺住民への情報漏洩が発生しました。記憶処理や情報操作により事態は収拾され、以降SCP-578-JP通過区域における騒音対策が強化されました。

日付:: 16229-50
差出人:: ムルチ教授
案件:: Re:新理論
本文:: これは素晴らしい。これまでの概念を根底から覆す画期的な理論ですね。あまりの面白さに5日間もずっと食べふけっていました。同じ門の者として、良ければ共に研究を行わせていただきたい。

このSCP-578-JPの確認の1日後にサイト-8170が完成し、収容が開始されました。以降の記録は全て回収済みのSCP-578-JPです。

日付:: 16229-52
差出人:: モッチ教授
案件:: Re:Re:新理論
本文:: ええ、是非。貴方と私は艱難辛苦を共にした旧友です。共に未来を目指せるのであればどれほど幸福でしょうか。早速打ち合わせを行いたいです。出来れば顔を合わせて対談したいところですが、こうも離れていては難しいですね。

日付:: 16229-53
差出人:: ムルチ教授
案件:: Re:新理論
本文:: 食べられましたか? また装置が故障でも起こしましたか?

日付:: 16229-55
差出人:: ムルチ教授
案件:: Re:新理論
本文:: もしかして何か気に障るようなことでも言いましたでしょうか? 共同研究の申し出でしたら、断っていただいて構いません。返信お待ちしています。

日付:: 16229-55
差出人:: モッチ教授
案件:: Re:Re:新理論
本文:: お忙しくて食べられていませんでしょうか?
こちらでは着実に新理論の構築が進んでいます。転送媒体には煎餅ではなくあられを用いることになりました。これでより小さくより大量の情報を転送することが出来るようになります。

日付:: 16229-60
差出人:: ムルチ教授
案件:: 無題
本文:: 煎餅でしか言葉を交わせないことがつらいです。
届いていますか?
先日の不用意な発言を深くお詫び申し上げます。
もしモッチ教授が、私が研究成果を横取りしようと企んでいるのではないか、とお考えでしたら、それは誤解です。
私はただ純粋に、貴女と一緒に研究がしたいと、あの日の、若かりし頃の共に勉学に励んだ日々を再び、そう考えただけです。
もし共同研究は不可能だとしても、また煎餅を交わす仲に戻れればと。

返信、待っています。

日付:: 16229-65
差出人:: ムルチ教授
案件:: 無題
本文:: 前回の話も、見当違いだったのかもしれません。きっと、おそらく、貴女は私の心に気付いていらっしゃった。

一緒に研究しようだなんて、昔ならともかく、今となって急に言い出すのは変な話ですよね。
すみません。
私は、勉強しか能が無い人間です。そんな私に微笑を投げかけてくれたのは、モッチさん、貴女だけでした。
いきなり何だって話ですよね。自分勝手だと言われようとも構いません。でも、急に態度を変えられたということは、気付いているんですよね、私の気持ち。
この際全て話します。ですから、貴女も正面から向き合ってはくれませんか?

多分、私は貴女のことが好きだったんだと思います。いや、好きでした。そして今もずっと、心の中で想い続けているんです。
だから、初めて貴女のほうから新しい理論の話を持ちかけられて、少し浮かれていたのかもしれません。お近づきになれるチャンスだと。
貴女にしてみれば、勘違いも甚だしいところでしょう。ええ、ほんとに。

煎餅一かけらでも構いません。貴女の思いが知りたいです。
返信をください。そうすれば、私の気持ちも踏ん切りが付くと思います。

長々とすみません。

日付:: 16229-87
差出人:: モッチ教授
案件:: 新装置が完成しました
本文:: 装置が出来ました。これからはそちらも使おうと思います。
煎餅はそちらに届いていますか?
まだ装置は試作段階です。これからの詰めの段階にはムルチ教授のご助力も不可欠です。
是非ご一報下さい。

日付:: 16229-91
差出人:: ムルチ教授
案件:: 無題
本文:: 転送回路が正常であることはもう分かっています。食べていないとは言わせません。
無視ですか? もう何日経ったと思っているのですか?

このSCP-578-JPの後、更なる研究のために、収容済みのSCP-578-JPにGPS装置を装着し高川トンネルへと突入させる実験が行われました。SCP-578-JPはトンネル突入と同時に発光、消滅しました。また、GPSによる追跡も途絶えました。

日付:: 16229-92
差出人:: ムルチ教授
案件:: 無題
本文:: 何故私の言葉を無視するのですか?
あられ型装置? 何故勝手に進めてるのですか?
それに何ですかこの変な機械。煎餅に異物を付けるなんて何のつもりですか?

ふざけてますよね? 私の気持ちを弄んでいるつもりですか?

そこまでするのなら、私にも考えがあります。後で後悔しても知りませんよ。

このSCP-578-JPが回収された直後、炎上するSCP-578-JPが██枚連続して出現しました。分岐点を通りサイト-8170に突入したSCP-578-JP群は次々に爆発し6、サイト-8170に甚大な被害をもたらしました。幸いにもこれ以降長期間SCP-578-JPが出現しなかったため、無事サイトの修復は終了し、収容設備も耐爆性を向上したものへと交換されました。

日付:: 16229-95
差出人:: ムルチ教授
案件:: 無題
本文:: さようなら。

日付:: 16231-33
差出人:: モッチ教授
案件:: お久しぶりです
本文:: 煎餅を頂けなくなってからもう2年が過ぎましたが、ムルチ教授はいかがお過ごしでしょうか。
あられ型異次元媒介通信は実用化までもう少しです。しかし最近は装置の不調が多く、中々通信が届けられない時もあります。何だか昔のこの装置を思い出しますね。
実用化した際には、ムルチ教授も是非手にとってみてください。そして、また私と煎餅の……いえ、あられのやりとりをしましょう。
それでは。

このSCP-578-JPを最後に、現在までSCP-578-JPの出現は確認されていません。
現在SCP-578-JPのNeutralizedクラスへの格下げに関する審議が進行中です。

補遺: 日付:: 16229-87のSCP-578-JP確認以降、日本各地で"パチンコ台の中を流れるあられ"の目撃情報が相次いでおり、SCP-578-JPとの関連性も含めて現在調査が進められています。

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