SCP-588-JP
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正面から撮影されたSCP-588-JP。

アイテム番号: SCP-588-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-588-JPが存在する地点-588-JPの周囲には、財団フロント企業"株式会社シグマ・クリエイティブプロダクツ"の物流倉庫を装った収容施設が建設されます。SCP-588-JPの周囲には武装した保安職員が複数配置され、SCP-588-JPが肉操作魔術カルノマンシー、もしくは現実改変に類する能力を発露する徴候を見せた場合は、非常用に備え付けられたスクラントン現実錨(SRA)を起動の上で早急な制圧を行ってください。

SCP-588-JPの肛門から何らかの物品が出現した場合、可及的速やかに超宇宙業務部門の担当職員へその詳細を伝達してください。

説明: SCP-588-JPは北緯35度4█分██.██秒 東経137度4█分██.██秒地点1の上空約1.5mにおいて超次元的に固定された、中年男性の下半身です。SCP-588-JPは地点-588-JPから南西に臀部を突き出し、両足を下方に投げ出した状態を維持しています。

刺激テスト、膝蓋腱反射といった神経学的検査にSCP-588-JPは反応を見せず、老化や毛の伸長等の生物学的変化もこれまで記録されていません。しかしながらSCP-588-JPは規則的な脈拍が存在することや創傷に対する高い治癒能力を示すことが確認されており、これは後述するPoI-3676の特異性に起因するものと考えられています。

収容経緯: SCP-588-JPの作成はPoI-3676に由来しています。PoI-3676は"カルキスト・ヴァルザスク"として知られるネオ-サーキック・カルト組織の上位構成員であり、高等な肉操作魔術カルノマンシーによる異常な有機存在(SK-BIO)の創造・使役に長けると同時に、特化した肉体の再生能力を保持していたことで複数の正常性維持機関による追跡の対象となっていました。

20██/08/12、財団は以前から計画されていた対PoI-3676確保作戦"オペレーション・イオラーオス"を展開しました。これはPoI-3676及びSK-BIO群と財団機動部隊との大規模戦闘に発展することとなりましたが、戦闘が長期化するにつれ財団の強固な包囲網と戦力の逐次投入によって、戦局は財団勢力の有利に傾いていきました。

その結果として機動部隊の飽和攻撃により消耗したPoI-3676は、GoI-101("エルマ外教")によって作成されたものと見られる電子デバイス2を起動し、逃走のため地点-588-JPの上空約1.5mにヘルマン=ストラトス・次元間ゲートウェイ理論3に基づくポータルを生成しました。しかし、PoI-3676が跳躍しこのポータルに上半身を挿入させた瞬間、PoI-3676の下半身はこちらの次元に残ったまま不明な理由によって空中に固定されました。

PoI-3676は数秒苦しむように足を動かし、その後沈黙しました。PoI-3676はこれ以降こちらからの呼びかけや尋問、非言語的コミュニケーションに反応を示さず、SCP-588-JPとして収容されて以後もその態度を継続しています。


補遺588-JP.1: 別次元に位置していると推測されるSCP-588-JPの上半身の状態を把握するための実験が提言されました。提言は承認され、実験はCCDカメラ付き財団製特殊スコープをSCP-588-JPの肛門から挿入することによって行われました。以下はその映像記録です。

映像記録


日付: 20██/09/03

実験担当者: ジョセフィン・コリール博士 財団医療部門 胃腸科外科医


[記録開始]

[00:00]: カメラはスコープをゴム手袋越しに持つコリール博士とその同僚たちを映している。コリール博士がスコープを傾けると、服を脱がされた状態のSCP-588-JPの臀部が正面に映る。臀部が少しづつクローズアップされていき、カメラが肛門に挿入され画面が暗転する。

[00:34]: スコープに接続されたライトが点灯すると、SCP-588-JPの大腸の壁が照らし出される。カルノマンシーによるものとみられるキチン質に覆われたポリープや由来不明の発光脈動する組織を除けば、一般的なヒトの大腸と変わらない構造に見える。しばらく観察を続けた後、カメラはより内部へと進行する。

[02:21]: 内壁の見た目の変化から、カメラが小腸へ到達したことが確認される。柔毛の動きが食物の消化を助けるキネトグリフ4を描いていること以外には特筆すべき点は無し。

[05:46]: 一般的なヒト小腸の長さである7mを超えてSCP-588-JPの小腸が長く続いているため、スコープの延長をするためにカメラの進行が停止し、ライトが消される。コリール博士はこの作業の間SCP-588-JPの大腸が標準的な長さであったことについて話題に触れ、小腸との差異について同僚たちと軽い議論を交わした。

[08:29]: ライトが点灯し、カメラの進行が再開される。ある時点から小腸の柔毛の動きは異常性のないものに変わっている。

[12:05]: カメラに映る内壁が、小腸ともその先に位置するはずの胃とも異なる構造に変化する。コリール博士はこの構造が一般的なヒトの大腸に外見上類似していることを指摘する。

[13:12]: 画面が光に包まれ、体外にカメラが出たことが分かる。周囲にはコリール博士とその同僚たちと外見が一致する実体が存在し、一様に驚きの表情を浮かべている。カメラが反転すると、このカメラのスコープは中年男性の下半身と思しき実体の肛門から突き出していることが判別できる。


[記録終了]

SCP-588-JPの体内を通して行われた交信の結果、SCP-588-JPの反対側に位置する世界の財団(後にSCPF-HER86と分類)の記録から、"SCP-588-JPはKTE-2801-Newton Greenとして世界オカルト連合に追跡されていたレベルⅣ現実改変者であり、GOCによる粛清から逃走する際にポータルに上半身を挿入、固定され、SCPF-HER86の収容下に置かれた"というベースラインとは一部異なるSCP-588-JPの収容経緯が判明しました。

以上の情報から、双方の世界が接続されたポータルにPoI-3676とKTE-2801-Newton Greenが双方向から同時に上半身を挿入した結果、ポータル内の超次元空間においてPoI-3676とKTE-2801-Newton Greenの肉体が衝突し両者の上半身が対消滅することで両者は絶命、その後それぞれの世界に残存した下半身がPoI-3676の特異性によって治癒・接合したことでSCP-588-JPが偶発的に生成されたと推測されています。

「利用時に一定の危険性が伴う新規ポータルの構築に代えて、SCP-588-JPによる安定的な生体性宇宙間接続を活用し、SCPF-HER86宇宙との安全な移動経路を確立する」というスティーブ・ドーキンス博士(超宇宙業務部門588-JP担当職員)の提言は、倫理的な問題と財団職員の士気への影響、異常実体の体内を経由することのリスク、加えて行き先がSCPF-HER86宇宙に限定された移動法であるというSCP-588-JPの性質に起因する利便性の薄さ等の観点から、倫理委員会により棄却されました。

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