SCP-589-JP
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アイテム番号: SCP-589-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-589-JPが存在する森林の周囲に立入禁止フェンスを設置し、警備員を常駐させます。この森林を避ける形で███線の新線を敷設し、全列車をそちらに迂回させます。

2017年04月██日追記: 2018年██月██日以降、JR東日本の協力のもと、███線の全列車にエージェントを乗務員として乗車させ、車内検札を実施します。SCP-589-JP-Aと確認された場合のみ、旧線内のSCP-589-JPに停車し、降車させてください。その際、他の乗客に対してクラスA記憶処理を行った上で、カバーストーリー「安全確認のため緊急停車」を流布してください。SCP-589-JP-A収容のため、SCP-589-JPには職員を常駐させるほか、警備員を増員します。

説明: SCP-589-JPはJR███線██~███駅間の旧線に建設中の駅です。SCP-589-JP内部およびその周辺で、作業員や建機が確認されたことが一度もないにもかかわらず、工事は進行しています。現在の工事の進捗および進行ペースから逆算すると、工事が開始されたのは100年以上前とみられます。駅舎は平屋建ての煉瓦造りで、ほぼ全体がツタに覆われています。2017年04月██日時点で、駅舎およびホームはほぼ完成しているように見受けられますが、駅名を示すものは確認できません。周囲少なくとも300m以内は森林であり、SCP-589-JP以外の建造物や道路等は一切存在しません。

SCP-589-JPは1968〜1971年にかけて、現地を列車に乗って通過した財団エージェント・須蒲の目に留まり、発見されました。関係者の証言やDクラス職員を用いた探査、長期にわたる観測の結果、この建造物が駅であり、何らかの異常性によって建設されていることが判明しました。

最初は廃駅か何かだと思っていたが、どうやら違うようだ。あの「新駅」を造っているのは誰だ?それとも、あれ自体が成長しているとでもいうのか? - エージェント・須蒲

補遺1: 関係者の証言

その場所に駅があったことも、計画されたこともありません。新駅の建設予定もありません。- 日本国有鉄道・広報担当者

ほぼ毎日通るけど、ただの廃墟だと思ってましたね。駅? あんな所に作っても誰も使わないんじゃないですか? - ███線利用者(20代女性)

そういえば、この森の辺りって置石が度々あるんですよ。ええ、それで緊急停止して。迷惑な話です。 - 貨物列車運転士(40代男性)

不審者ですか? この辺りで目撃されたことは無いですね。まあ大人も近寄らない場所ですから。薄気味悪い森です。周りの森はだいたい開拓で伐採しちゃったって聞きますけど、なんであそこだけ残ってるんですかね。 - 地元警察官(30代男性)

タヌキかなんかのイタズラじゃねぇかな。駅? 言われてみれば、そう見えなくも無いかもな……まあ、今のところ運行の支障にはなってないし。問題があれば解体なりするだろうけど、市の仕事じゃねぇか? - 保線作業員(50代男性)

はい、あの一帯は市有地になっています。……ええ、そんなものが。昔からある廃墟か何かではないでしょうか? - 地元自治体職員(40代女性)

小さい頃、祖父によく言われたもんよ。「この森にはオバケが出るから入っちゃなんねえ」って。ワシは怖がりだったから入んなかったけどよお。ああ、入ったやつはおるよ。シンノスケってな、村一番のガキ大将で有名だったよ。そいつが夜中に手下を連れて入ってなあ……出てきたときのあいつの顔は、今でも忘れらんねえ。あれ以来、あいつはすっかり大人しくなっちまった。何を見たかって? 何度聞いても「何も見てねえ」の一点張りよ。 - 近隣住民(70代男性)

補遺2: 探査記録589-JP

日付: 1971年11月11日
責任者: 宇都宮博士
対象: D-589-JP-1
実施方法: 昼間(10:00~)に森林に入り、SCP-589-JPの周囲および内部を探査する。
結果: 時折、小動物と思われる物音を確認。異常無し。

日付: 同上
責任者: 同上
対象: 同上
実施方法: 夜間(23:00~)に森林に入り、SCP-589-JPの周囲および内部を探査する。監視カメラを8箇所に設置。
結果: 小動物と思われる物音多数。D-589-JP-1は「誰かに見られている気がする」としきりに訴える。

日付: 1971年11月12日
責任者: 同上
対象: 同上
実施方法: 探査589-JP-1に同じ。監視カメラのテープを回収。
結果: 建設中の跨線橋の階段が1段増えていると報告。映像に目立った動き無し。

日付: 同上
責任者: 同上
対象: 同上
実施方法: 探査589-JP-2に同じ。さらに、監視カメラの前で駅舎の一部を破壊するよう指示。
結果: D-589-JP-1が指示通り駅舎の一部を破壊。直後、通信途絶。D-589-JP-1は森林の入口付近で気を失っていたところを発見された。「何者かに足を掴まれ、引きずり出された」と報告。

日付: 1971年11月14日
責任者: 同上
対象: D-589-JP-2
実施方法: 探査589-JP-1に同じ。
結果: D-589-JP-1が破壊した箇所は修復済。監視カメラのテープは全て抜き取られており、映像は確認できなかった。以降、原則月1回、昼間に工事の進捗のみ確認する方針に変更。

日付: 1980年10月01日
結果: 跨線橋が完成。

日付: 1987年04月01日
結果: ホームが完成。駅舎工事、進捗率60%。

日付: 2007年04月01日
結果: 駅舎工事、進捗率90%。

日付: 2011年03月██日
結果: 数日前の大地震により駅舎等が損壊。これまでの工事の進行ペースから、復旧に少なくとも30年はかかると見積もられた。

日付: 2011年07月██日
結果: 予想をはるかに超えるペースで復旧が進行。森林内にてタヌキ、キツネ、野鳥等の小動物の数が地震前の数倍に増えているのが確認された。

日付: 2017年03月██日
結果: 駅舎が完全に復旧。小動物の数が地震前の水準に戻る。

日付: 2017年04月01日
結果: 以下、音声記録より抜粋。

<記録開始>

[D-589-JP-███がSCP-589-JP内外を一通り探索。進捗を確認し報告]

氏家博士: ……ああ、わかった、戻っていいぞ。

[約20秒後、車のウィンドウをノックする音]

氏家博士: 早いな、どうし……

初老の男性: ごめんください。

氏家博士: [ウィンドウを開ける音]あの、どなたでしょう。

男性: ここに住む者ですが。

氏家博士: ああ、住民の方ですか。すみませんね、ここは生態系調査のため立入禁止となって……

男性: ええ、知っています。もう随分と前から。[振り向き、辺りを見回す]すっかり、変わってしまいましたね。私の小さい頃は見渡す限り畑と、森ばかりでした。あっちの方に小さな集落があったくらいで……

氏家博士: はぁ。

男性: この森が、いまこうして手付かずのままあるのは、貴方がたのお陰です。どなたか存じ上げませんが、森を守ってくれて、ありがとうございます。

氏家博士: いえ、私は何も。

男性: 一つ、お願いがあるのですが。あれが出来たら、また汽車を通して欲しいのです。かつて一緒に暮らした仲間たちが、この森を去って散り散りになっていた仲間たちが戻って来る日のために。では、失礼。

氏家博士: えっ、どういうことです? あなたは一体……

[後略]

<記録終了>

終了報告書: 氏家博士が一瞬目を離した間に男性は消失。身長150cm程度で頭髪は黄褐色、狐目と観察された。その発言からSCP-589-JPとの関連が強く疑われ、当該存在をSCP-589-JP-Aに指定した。これ以外にSCP-589-JP-Aの出現は確認されていない。

補遺3: 2017年04月██日に発表されたJR東日本のニュースリリースに、SCP-589-JPの完成イメージ図とみられる図面および文章が一時掲載されました。文章は「2018年██月██日」という日付、およびSCP-589-JPの両隣の駅名以外は判読不能な文字で書かれていました。担当者は「掲載した覚えは無い」と証言し、翌日、文章および図面は手違いだったとして削除されました。Webサーバーにはハッキングされた形跡がありましたが、犯人の特定には至っていません。財団は、文章の内容およびSCP-589-JP-Aの発言から、当該日付以降に予想される一般人への影響を考慮し、特別収容プロトコルの改訂を実施しました。

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