SCP-600-JP
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SCP-600-JP。

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初めに送信された図画のイメージを清書したもの。元となった画像は[編集済]。

アイテム番号: SCP-600-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-600-JPはサイト-81██における標準A級危険物品保管庫内、SCP-600-JP収容房及び専用ケースに保管されています。何らかのSCP-600-JP-1排出があった場合、指定の無菌室にて詳細な分析を行い、危険が無い事を確認した後、同SCP-600-JP保管庫付属の排出物収容ロッカーにSCP-600-JP-1群を保管してください。サイト管理官から許可を得れば、一部SCP-600-JP-1の閲覧は自由です。

説明: SCP-600-JPは、1990年代まで財団において標準的に使用されていた、EPSON製の業務用ファックス、「██-█████」です。財団において現在使用されているファックスが破損した為、代替品として倉庫に保管されていたSCP-600-JPを使用した直後に異常性が発現し、「故障した訳でもないのに大量の黒煙を噴き出したファックス。聴き取れない程度だが、時折内部から何者かの話し声が聴こえる」として、当初はAOアイテムに指定されていました。しかし、受信部を中心とした数度に渡る閃光や爆発の発生、炎の噴出、保管中に受信部から突如数本の矢と思われる物品等が飛び出すなどの現象が多発、加えて、羊皮紙に似た成分の紙片に文章が記された手紙のようなものが現れたことから、最終的にオブジェクトとして再認定されました。SCP-600-JPそのものには長期保管の影響で多少の日焼け、汚れ等が発生していますが、特異性に影響はありません。

SCP-600-JPの異常性は、カバーストーリー[NRノベライズ]に用いられる予定だったデザイン素案を財団フロント企業よりサイト-8181へ送信した際に発現したのではないかと推測されており、送信された画像の形状は一般に「魔法陣」と称されるイメージを想起させるものです。デザインを行った同職員により、送信した際と同様の紙にてほぼ同じ図柄の作成をさせ、SCP-600-JPと同じ型番のファックスにて送受信を行う、また、完全な複製を行ったものを送受信する等試みましたが、SCP-600-JP以外に特異性は発現しませんでした。

SCP-600-JPは不定期に通常のファックス受信音を発し、受信部から様々な物品、あるいは現象を排出します。これをSCP-600-JP-1とします。全てのSCP-600-JP-1事案は未知の異世界を由来していると見られますが、こちらからの過度な干渉はSCP-600-JPの破損を招く可能性もあるため、異世界側へのアプローチは成功していません。ですが、SCP-600-JPそのものはSCP-600-JP-1物品、及びSCP-600-JP-1現象による影響を受けないことが確認されており、物理的に排出が不可能であろう巨大な実体が出現する、あるいは極端に破壊的な現象等が発生しても、SCP-600-JPが破損することはありませんでした。

以下は、SCP-600-JP受信部から発生した物品、現象リストからの抜粋です。尚、SCP-600-JPから出力された、文字を含まれるサンプル量の多さから、言語の翻訳(正しい発音を除き)は、特殊な固有名詞や互換する語句の存在しないであろうものを除き、ほぼ完全に終了しています。

SCP-600-JP-1群リスト抜粋:

発生日時: 2010/██/██
発生物: 強烈な閃光
詳細: Dクラス職員によるSCP-600-JPの観察を行っていた所発生。実験室全体が一瞬照らし出されるほどの閃光が発生し、この影響でDクラス職員が軽度の視覚障害を負った。また、SCP-600-JP側面部からは焦げ臭いとされる臭気が発生していたとの報告。

発生日時: 2007/██/██
発生物: 羊皮紙に似た成分の紙片1枚と、それに添付する押し花にされた未知の植物
詳細: 未知の言語による謝罪文。「先の閃光はいつもの実験によるものです。大変申し訳ございません」と走り書きの筆跡で書かれていた。未知の植物は分析後、無害と判断された。添付されていた押し花の花弁は薄い緑色。最初の分析で、これらの排出物全てにおいて劣化の速度が異様に遅いと判明している。

発生日時: 2007/██/██
発生物: 羊皮紙に似た成分の紙片1枚と、それに添付する押し花にされた未知の植物
詳細: 未知の言語による、先の謝罪文に対する返答と見られる文書。「そう都度謝らずとも良い、わかっている」と荒々しい筆跡で書かれていた。未知の植物は分析後、無害と判断された。添付されていた押し花の花弁は黄色。

発生日時: 2008/██/██
発生物: 長毛種の猫に似た、濃い青色の体毛を持つ小型生物。猫と異なる点は、その小ささ(体長10cmほど)と、頭頂部と耳、頬や胸元から伸びた長く白い毛
詳細: SCP-600-JPから突如出現し、保管ケース内から未知の手段により脱出。見えない何かを追うように収容房内隅へと向かい、猫の威嚇に似た鳴き声を上げ続けていた。Dクラス職員により引き離されるが、SCP-600-JPには戻ろうとせず、保管ケースの上に寝転んだ。通常の猫と同じ方法にて同収容室付属の生物コンテナにて飼育していたが、後述の記録以降、行方不明となっている。出現当初に行使した未知の能力を使用する様子は見られなかった。首輪を付けており、側面部に名前と見られる██████という文字列が彫り込まれていた。

発生日時: 2009/██/██
発生物: 羊皮紙に似た成分の紙片1枚
詳細: 未知の言語による質問文。「すまない、そちらに私の██████は行っていないだろうか」と書かれている。

発生日時: 2009/██/██
発生物: 羊皮紙に似た成分の紙片1枚と、それに添付する押し花にされた未知の植物
詳細: 先の質問に対する返答文。「いえ、来ておりません。ひょっとして、また無理矢理どこかに何かを送ったのですか? 私の方でも探しておきます」と書かれている。添付されていた押し花の花弁は薄い緑色。

発生日時: 2009/██/██
発生物: 未知の植物を用いて作成された、何らかの祭儀用と見られる杖状の物
詳細: 出現物は、その全長の半ばと思われる程度だけSCP-600-JPの間から出現しており、SCP-600-JPとの接合部は絞られたような形状になっていた。また、同出現物はこちらからの接触を行うまで何かを探すような挙動を取り続けていた。Dクラス職員により牽引し引きずり出そうと試みた所、女性のものと思われる短い悲鳴と、何らかの「文言」がSCP-600-JPの内部より発せられた。直後、Dクラス職員はSCP-600-JPから飛び退き、未知の蛙に似た生物を吐き出した。この生物は出現した時点で死亡していたが、一般的な「蛙」とは異なり、暗所に適した眼球と、地球環境においては飛行不可能であろう翼のような形成物を持っていた。また、杖はDクラス職員が距離を取った時点でSCP-600-JP内部に戻った。Dクラス職員は気分が優れないことを訴えていたが、30分後には通常の健康状態に戻った。

発生日時: 2010/██/██
発生物: 矢尻が未知の鉱石により作成された矢5本
詳細: 分析の結果、地球上には存在しないであろう元素で構成されていることが判明した。また、原理は不明だが常に炎を発生させていた。同様に、矢全体を構成する木の成分も、地球上では現在確認されていない。これらの全ては構成される元素の密度に対して質量が異様に軽く、そのまま射出した場合、地球環境下では目標に刺さらない。また、鉱石部に彫り込まれた未知の言語に対して機器が接触したと同時に炎の発生は停止した。現在SCP-600-JP排出物保管ロッカーにて保管中。

発生日時: 2010/██/██
発生物: 羊皮紙に似た成分で、焼け焦げた部分のある紙片と、押し花にされた未知の植物
詳細: 上記事案直後に出現。「ご無事ですか」とだけ記された、焦燥の中で書かれたように見える筆跡の荒い短文。紙片には血液に似た成分の薄赤い液体が大量に付着していた。分析の結果、含有する鉄分の比率が極端に少なく、この状態で人間の体内に存在した場合、生命活動を維持できないほど濃度が薄いことが判明しており、検出できていない何かしらの代替成分が含まれる、あるいはSCP-600-JPの「向こう側」は、こちらの世界とそもそも環境が大きく異なっているのではないかと予想されている。添付されていた押し花の花弁は薄い灰色で、前回排出された花と同様の種である。また、花は予め貼付されていたと見られる。

発生日時: 2011/██/██
発生物: 猛烈な爆炎。SCP-600-JP自体に影響は一切無かった
詳細: ノイズ混じりの受信音の後、SCP-600-JP側面部から収容室全体を焦がすほどの爆発が発生。これにより保管していたケースが破損、保管先を耐爆性能を有するケースに変更。

発生日時: 2011/██/██
発生物: 耐爆ケースを破損させる程のケース内空気の膨張の後、未知の結晶が大量に排出
詳細: 先よりノイズが酷い受信音の後に排出。結晶は淀んだ灰色で、血走ったように幾何学的で複雑な文様をランダムに持っており、そのラインに沿って強い熱を放っていた。溶岩に似た傾向を有していると見られるが、分析機器による干渉の一切を受け付けず、あらゆる機器、及び物理的な接触を不可視の障壁のようなもので阻害していた為、収容房への影響は無かった。同現象から約15~30分後にこれらの結晶は全て消失した。

発生日時: 2012/██/██
発生物: 黒い鱗を持つ、巨大な爬虫類に似た未知の存在。その体躯は10mを優に超えており、豪奢な鎧のような物を着込んでいた
詳細: 一瞬のノイズ音声の後、殆ど前触れ無く出現。同時に、SCP-600-JP収容房は完全に破損。機動部隊は-6("リントブルム")により対処。標準兵装での攻撃、及び第Ⅱ種特殊兵装、第Ⅲ種丙型兵装に至るまで、どのような物理的攻撃も不可視の障壁に遮られるかのように通用せず。2011/██/██に生成された結晶と同質であろう物質を吐きながら、サイト-81██内にて四半日に渡り咆哮を上げながら暴れ回った為、最終的にA-RS-ST弾頭を用いての制圧を試みた。これも200発に及ぶ射撃を要したものの、無力化に成功。吐き出された結晶は時間経過と共に消失したが、未知の存在は消失せず。この無力化個体は、SCP-600-JP排出物保管庫にて分析中。DNAは異なっていたが、前生成物に付着していた体液と近い成分を持つ血液を、この存在も有していることが判明した。また、当事案における保管ロッカー等の破損に伴い、2010/██/██に出現した猫のような存在が行方不明となっている。

記録における最後のSCP-600-JP-1発生以降、SCP-600-JPからSCP-600-JP-1が生成されることは無くなりました。

補遺1: SCP-600-JPからのSCP-600-JP-1出現が停止してから3年後、以前出現していたものと同組成の羊皮紙が、通常の受信音と共に現れました。これらには未知の植物による押し花1とメッセージが付与されており、約3ヶ月毎、定期的に送られてくるようになりました。以下は初回に送付されたメッセージです。[解読不能]部は、現時点で意味の判明していない何らかの固有名詞と見られています。


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添付されていた押し花。

空白
拝啓 ████████2

空白
冬の[解読不能]が咲き乱れる頃、貴方様におかれましてはどのようにお過ごしでしょうか。
[解読不能]が続く中、[解読不能]の下にご健在でおられますでしょうか。

空白
いつぞやは、却って心配させてしまう内容の文を送ってしまっていたかもしれません。私はこのように無事です。
ついあのような文を送ってしまったことを、今ここでお詫びしたいと思います。
申し訳ございません。

空白
……それにしても、本当にお久しぶりでございますね。

空白
(中略)
空白

――そして、永きに渡ったあの忌々しき戦乱を生き延び、ついに私はこの筆を執るに至った次第で御座います。

空白
もしもこれが届いているのなら。どうか、お返事を下さいまし。
毎日のように貴方とお話していた日々が、とても懐かしゅうございます。

……こうして取りとめのないことを記す今でさえ、あの穏やかな日々が、如何に儚く尊いものであったかということを痛感するのです。

ああ、でも、けれど、ひょっとしたら。そちらの戦況は未だ落ち着いていないのかもしれませんね。
そうであれば、無理をしないで下さいな。お返事はいつであろうと構いませんので。
貴方様は誰よりお強いお方ですから、心配する必要なんて、きっと、無いのでしょうけれど。

私はずっと、お待ちしておりますから。

空白
この空の下でいつか、再び貴方様と笑い合える時が来ることを願って。

空白
敬具 ██████████3より。

空白
追伸: そういえば、貴方様の飼われていた██████が見つかったのですが、如何致しましょう。先の戦乱での破損を修復したばかりなので、███でお返しするのは少し不安です……それと、私の███とは仲良くしてくれています。


補遺2: SCP-600-JP-1現象の際に出現した爬虫類のような存在が着けていた鎧に彫り込まれた、人物名と見られる「████████」と、補遺1における文頭の「████████様」は一致しています。

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