SCP-610-JP
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アイテム番号: SCP-610-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-610-JPは国の生態系研究下におかれているとして、一般人の侵入を阻止してください。また、上空への航空機による侵入は阻止してください。SCP-610-JPは巡視艇及び無人ドローンを使用し24時間体制の監視を行うとともに、生物の侵入を阻止してください。生物が侵入した場合は即座に確保に移り12時間以内にSCP-610-JP内から排除を行ってください。また、生物が射出された場合は、目撃者にAクラスの記憶処置を行ってください。

説明: SCP-610-JPは太平洋上に存在する孤島です。SCP-610-JP内にはSCP-610-JP-A、SCP-610-JP-B以外、植物のみが繁殖しており、真菌を含む他の動物は存在していません。SCP-610-JPの異常性はSCP-610-JP-A、SCP-610-JP-B以外の生物がSCP-610-JP内に侵入し、12時間以上経過した際に発生します。SCP-610-JP内に侵入し12時間以上経過した生物はSCP-610-JP表面に接触している部分が僅かに沈下し、その後5分以内に第三宇宙速度で上空へ向け射出されます。射出に際しては本来発生する衝撃波等の現象は確認されていません。また、射出された生物は急激な速度の上昇による負荷及び宇宙空間への移動という条件にもかかわらず、死亡せず、一般的な行動が可能であり、また、いかなる状況においても初速を維持していることが確認されています。

SCP-610-JPは財団所有の人工衛星が撮影した宇宙空間を飛行する人型実体の素性を調査する過程で、その実体が生物学者の██ ██氏であると確認、氏の行動を追跡した結果、SCP-610-JPへ生態系の調査を行うために近隣の島を出港したことを最後に行方不明になっていたことからSCP-610-JPを調査、その異常性が判明しました。現在時点でSCP-610-JPの周囲20kmには有人島が存在しておらず、また、周辺地域では神の島とされていたことにより入島そのものが禁忌とされていたため、現在に至るまでSCP-610-JP内に侵入した人物はごく僅かです。

SCP-610-JP-A,Bはそれぞれ生後約1年未満とみられるヒツジ(Ovis aries)と生後約10年以上と推測されるアオダイショウ(Elaphe climacophora)です。SCP-610-JP-A、Bはどちらも発見当時から成長、あるいは老化していないことが確認されています。SCP-610-JP内にはSCP-610-JP-A、Bを除く動物が存在していないにもかかわらず、SCP-610-JP-A、B及び他の植物が生存し続けられる理由は不明です。射出される対象が人間である場合のみ、SCP-610-JP-Aは射出される対象から逃走し、SCP-610-JP-Bは接近を行います。これらの行動をとる意図は現在不明ですが、SCP-610-JP-Bの接触が射出時間を早めるという報告も存在し、現在因果関係を調査中です。

実験記録610-JP
19██/██/██、実験対象として録音、通信機材を所持させたD-1223をSCP-610-JP内に12時間以上逗留させ、射出後の通信を試みました。以下はその音声記録です。

<録音開始>

源博士: 12時間が経過します、D-1223、報告してください

D-1223: はい、といっても何も変わりませんよ。あの蛇はずっと俺の近くにいますけど…、って、え、なんだ、これ!?

源博士: どうしました、D-1223、報告を

D-1223: あ、足が地面に埋もれて、ぬ、抜けない、…お、おい、近寄んなよ! …ぁ!?

(直後、風を切るような音が数分間続く、D-1223からの応答は無し)

源博士: 応答してください、D-1223。…ダメか?

D-1223: せ、先生

源博士: 応答がありました、どうしました、D-1223

D-1223: お、俺、とんでる

(直後、何らかの衝突音とともに音声が途絶える)

<録音終了>

その後D-1223から通信は入らず、また、D-1223の回収は困難として、実験は凍結されました。なお、D-1223の所持していた記録装置の充電は約██年間使用可能だったため、連絡が入らない理由は機器の故障とみられています。

補遺1: 数回にわたる実験において、SCP-610-JPによって射出された生物の軌道を計測したところ、どの場合においても約██光年離れた惑星へ最終的に到達することが確認されました。対象の惑星は財団の観測の結果、ゴルディロックスゾーン1に属する惑星であり、約██%の確率で地球と類似した環境が存在すると考えられています。対象の惑星に生物が存在するかについては現在も調査中です。

補遺2: 2███/██/██、約██年間連絡の途絶えていたD-1223から通信が入りました。以下はその音声記録です。

<録音開始>

楠木博士: D-1223、報告してください

D-1223: はい、私はずっと飛んでいます、宇宙の闇を、永遠の孤独を

楠木博士: …まず確認しましょう、今まで通信が取れなかった理由は?

D-1223: あの直後、私は何かにぶつかりました、おそらくは何らかの礫でしょうがね。そして機器が破損してしまったのでそこから修理をし、何とかこうやって通信できるまでにこぎつけたのです

楠木博士: なるほど、では、現在の状況を教えてもらえますか?

D-1223: はい、私は久遠の旅路を彷徨い続けています。道中で様々な脱落者を目撃しました。岩に刺さる聖人、氷に砕かれた烏、彼らはあのまま生き続けるのでしょう。ですが、きっとそれらを乗り越えた苦難の先には天国が待っている。私は永遠にも等しき孤独の中でそれを理解したのです

楠木博士: …すいません、もう少し簡潔にお願いしたいのですが

D-1223: ああ、申し訳ない。私の先達たちは不幸な事故によってその志を達することできず、今この永遠の藻屑となってしまったのです、ですが、それは彼らに何かしらの咎があったため、いずれ、その咎も許されまた私と同じ道をたどることができるでしょう

楠木博士: …つまり、あなたの言うそれは以前に射出された対象であり、あなたは今の状況を何らかの救済に至る道だと捉えているのですね?

D-1223: はい、今は苦しく、長い旅ですがいずれ天国へ導かれる。…少々孤独は堪えましたが、今先生という話し相手も得ました、先生、私は目的の地まであと何年かかるのでしょうか。おそらくもうそろそろ到着するのではと期待に胸を高鳴らせているのですが

楠木博士: …D-1223、重大な連絡があります

D-1223: ? 何でしょうか。今の私は非常に満ち足りています、どんな連絡でも

楠木博士: バッテリーの残量が無くなりました

<録音終了>

財団天文部による試算の結果、D-1223が対象の惑星に到達するまでには約██████████年を要するという結論が出ました。また、その行程中に存在する他の惑星、及びブラックホール等による引力の影響といった様々な障害を加味する場合、辿り着ける可能性は約0.00000██%以下であると推測されます。D-1223を回収する計画は現在の技術面から不可能と判断され結論は保留されています。

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