SCP-615-JP
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SCP-615-JPを撮影した最古の写真(着色済)

アイテム番号: SCP-615-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-615-JPはサイト-377内8号ドック(屋内式)に収容されており、太さ40 mm、長さ60 mのナイロン製クロスロープで船首及び両舷の7箇所を係留することで固定されています。ドックの水密扉とシャッターは定期メンテナンスの場合を除いて常に閉鎖されなければならず、空気接触による船体喫水線下の劣化を防ぐためドック内は常時真水が注水され、SCP-615-JPは完全浮上状態に保たれていなければなりません。
SCP-615-JPに割り当てられた職員には技術文書SESM-1402344の閲覧が義務付けられており、電気系統の保守担当者は加えて規定の技術講習を受講する必要があります。SCP-615-JP-1が点灯を開始した場合は直ちに観測班をSCP-615-JPの前後甲板および艦橋に配置し、記録機器および観測班員の目視で映像投影現象の内容を記録して下さい。

追補: 燃料不足あるいは電源喪失によるSCP-615-JP-1の消灯を防ぐため、SCP-615-JPには無停電電源装置が設置されました。毎日20時~翌4時の間は軸発電機を稼動させて船内バッテリーに電力を供給してください。給油は仕様文書SESD-1402347の内容に従い、1週間ごとに行ってください。

説明: SCP-615-JPはクレムソン級駆逐艦"スチュワート"(USS Stewart,DD-224)に酷似した船舶です。
その構造的特徴はスチュワートが日本国の降伏後に武装解除され、最低限の修復作業を終えて米海軍に再編入された1945年10月時点の状態とほぼ一致しますが、以下の部分が明白に異なります。

  • 塗装: 船体および上部構造物は全て赤色、前後部マストは黄色。船体両舷中央には白色で"BAIOUWANG"と表示。1これらの塗装パターンには灯台船2との類似が見られる。また、船首の艦番号"224"は左右反転している。
  • : クレムソン級駆逐艦は艦橋船首側に9枚の窓を備えるが、SCP-615-JPは中央の一枚が外板と同一の金属素材で閉塞されている。この部位は艦橋内側に25 cm張り出しており、天井から4本のケーブルが配線されていることから何らかの装置が内蔵されていると推測されるが、非破壊検査では内部構造は判明せず。
  • 前部マスト: 本来のマスト灯の2 m上に製造元不明の電気式大型航海灯(SCP-615-JP-1)が固定されている。

注目すべき点として、SCP-615-JPの喫水線下全体には強酸性液体との接触によるものと推測される広範な腐食損傷の痕跡が存在します。損傷は錨鎖やプロペラ軸などの比較的小さな部品に対してより大きな影響を与えており、SCP-615-JPは両舷錨と大半の錨鎖、スクリュー、舵、そしてスタンチューブとプロペラ軸のおよそ3分の2を喪失しています。痕跡の分布および残存部位の形状から、液体は船尾である程度の時間滞留した後緩やかに船首側へ流動したものと推測されていますが、その直接的な原因については判明していません。

毎日日没1時間前から翌日出1時間後までの間、SCP-615-JPはSCP-615-JP-1を除く全ての航海灯を自動で点灯させます。SCP-615-JPが正確に日出没時刻を算出している手段については未解明ですが、これらの航海灯に異常な特性は存在しません。船上設備の操作や構成部品の分解、あるいは取り外した部品を船外へ持ち出す試みに対するSCP-615-JPの反応は一切得られませんでした。

SCP-615-JPの特筆すべき異常特性は、船体を基点として発生する映像投影現象(以下"現象"と表記)です。
現象はドックの壁面、天井、水面に投影される像のぼやけた低音質の動画として船外から観測されますが、SCP-615-JPに乗船した人間および持ち込まれた記録機器には、映像が『現実と同程度』に極めて高精細なものとして視認できるのみならず、音声(聴覚)や波による船体の揺動(平衡感覚)、天候に応じた気温の変化(温度覚)や触れた物体の感触(触覚)など、他の感覚についてもほぼ同様のレベルで知覚することが可能となります。
その発生周期に規則性は確認されていませんが、発生の直前3よりSCP-615-JP-1が毎回異なるパターンで点灯を開始するため、現象の発生は容易に判別が可能です。

観測記録615-JP

観測日時: 19██年█月██日18時22分~18時25分

船体マーキング: BAIOUWANG

灯質: 単閃明暗光、明6秒暗2秒

光達距離: 20海里

観測内容: 天候は全曇、太陽は見えず風強し。海は"波の花"に類似した粘性気泡の厚い層でくまなく覆われており、強風によってその一部が吹き飛ぶと緑色の海面が垣間見える。海上には泡のほか視認できる物体はなし。

備考: 最初に確認された現象であり、SCP-615-JPの保守点検中に発生。職員の大半はSCP-615-JP-1の点灯直後に作業を中断して船外へ退避したが、機関室の清掃を行っていた5名が逃げ遅れて甲板上で映像を視認したことで異常特性が確認された。以後SCP-615-JPの特別収容プロトコルは改訂され、新たに現象の監視と記録を担当する観測班が編成された。

観測日時: 19██年█月█日13時14分~13時24分

船体マーキング: MENTENSEL

灯質: 単閃白光、毎24秒に1閃光

光達距離: 17海里

観測内容: 天候は晴れ、波やや高し。ケルオン灯台(Phare de Kéréon)4がおよそ4km先の位置に存在。灯台は真新しく、完成して間もない1916年頃の状態であるように見える。SCP-615-JPの左舷側にはSCP-615-JPと同一のパターンで塗装された無人のデリックバージ(全長約20 m、船体マーキングは"RELIEF")が接舷している。観測班員は2隻の間に架けられた金属製ワーフラダーを徒歩で渡ろうと試みたが、船縁から先は実体を持たないため不可能であった。

備考: 2度目に確認された現象である。その発生と同時に船体両舷中央のマーキング"BAIOUWANG"が"MENTENSEL"に書き換えられ、現象終了後も戻ることはなかった。以降の観測記録でも同様の変化が確認されている。

観測日時: 19██年██月██日22時11分~22時23分

船体マーキング: TRIPESPONTEM2

灯質: 単閃赤白互光、毎8秒に白1閃光赤1閃光

光達距離: 62海里

観測内容: 天候は快晴、無風無波。SCP-615-JPは海上に正三角形状に配置された超大型の塔状構造物3基と距離を置いて正対している。構造物はいずれも同型であり外形と配色はキッシュ灯台(Kish Lighthouse)に類似しているが、その大きさは概算で数百倍の差がある。注目すべきは塔の頂上に発生する白波であり、空は塔によってこちらの海面と連結されたもう一つの海面であるように見える。

備考: SCP-615-JP-1が非常に明るく発光していたため外部からは現象の継続的な観測が困難であったが、船上の観測班は問題なく現象を視認・記録することができた。

観測日時: 19██年█月██日09時45分~10時07分

船体マーキング: KILWARLIN

灯質: 群閃白光、毎45秒に3閃光5

光達距離: 24海里

観測内容: 天候は雨天・風強し。SCP-615-JPは大きく揺れており、船尾側には霞んでいるが典型的な断崖地形が観察できる。SCP-615-JPの周囲には海鳥6の大群が飛行しており、時折小集団が甲板上に降下、身を寄せ合って風雨に耐える様子が観察された。それらの鳴き声は通常と異なり、明瞭なイギリス英語の容認発音で"Alright"、"Cold"、"Ta"と聴き取れる。観測班員より"Scarper"7という発声を確認したとの報告が複数あるが、録音機器には記録されていない。

備考: 海鳥は班員に対して全く反応を示さず容易に触れることが可能であったが、その手触りは非常に硬質であり、外部から力を加えて移動させることもできなかった。

観測日時: 19██年██月██日22時06分~22時18分

船体マーキング: DALLEPORTE

灯質: モールス符号黄光、毎15秒にUO符号光8

光達距離: 15海里

観測内容: 天候は快晴、日出の直前。船尾側に山のない平坦な陸地と港町が見える。尖塔を備える白塗りの教会9の上空に、放射状に配置された3つの長方形突出部で構成されたガラス板状の物体(サイズは推定20m)が存在し、およそ10秒に一周する速度で横回転している。
観測開始から7分後、右舷側より一隻のプレジャーボート10がSCP-615-JPの船腹へ直進しそのまま接触したが、双方に一切影響を与えることなく通過した。ボートを至近距離で観察した班員2名は「乗員の体はひどく透けており、白い全身骨格がはっきりと確認できた」と供述しているが、録画機器にそのような光学現象は捉えられていない。

観測日時: 19██年██月█日04時38分~04時54分

船体マーキング: PALEONORE

灯質: 等明暗白光、明2秒暗2秒

光達距離: 18海里

観測内容: 天候は晴れ、無風無波。周囲の地形・植生から熱帯地域に存在する大河の河口部と推定。右舷側に存在する三角州を中心として大規模な港湾施設が整備されており、多種の船舶が往来・停泊している。SCP-615-JPの周辺でカバに似た大型哺乳類が数匹遊泳する様子が確認されたが、これらは頭部の形状や長い尾を持つ点で明確にカバと異なり、後の分析ではプロラストムス(Prorastomus)やペゾシーレン(Pezosiren)のような原始海牛類との類似が指摘されている。

観測日時: 19██年█月██日20時56分~21時15分

船体マーキング: RELIEF

灯質: 単閃青赤互光、毎20秒に青1閃光赤1閃光

光達距離: 青光・赤光共に9海里

観測内容: 天候は濃霧。正面やや右側に高さ約20m、幅約25mの急峻な小島が存在。観測開始から2分後、露出部にVII型Uボートの特徴を備える潜水艦が左舷後方およそ3kmに浮上し、信号灯を用いて"扉・扉(TÜR TÜR)"と発信。その2分後に無線機より"帰途であるか?(Heimwärts?)"との音声交信が2度試みられたがSCP-615-JPは反応せず。潜水艦は8分後に再潜航した。

観測日時: 19██年█月█日07時10分~07時16分

船体マーキング: ELUGELAB

灯質: 不動青光

光達距離: 10海里

観測内容: [編集済]

備考: 観測班8名とドック内外で作業中の職員17名がそれぞれ重度の熱傷と急性放射線症候群により死亡。現象の終了後直ちにドック全体とSCP-615-JPの除染が行われた。この記録以降現象は発生していない。

補遺1: エニウェトク怪泡事件(Eniwetok Mystery Sea Foam Incident)
DD-224は日本から米国サンフランシスコへの航海中に燃料系統に重大な故障が発生したため航路上で停止。1945年12月12日に中継地点であるエニウェトク島へ曳船の派遣を要請しましたが、その晩23時47分頃にDD-224は一切の兆候なくその場から消失しました。随伴していた駆潜艇SC-1036は直ちに捜索を開始し、約15分後にDD-224とそれに後方から接近する別種の船影を捕捉しましたが、SC-1036が接近し威嚇射撃を行ったところ、不明船は大型の尖塔状マスト先端より"規則的に明滅する閃光"を放ち、直後に消失。当時DD-224の船体とその周囲には、粘着質の泡塊が大量に付着・漂流していました。
後日DD-224は曳航されて無事エニウェトクに到着しましたが、乗組員全員が12日夜の消失に関する記憶を喪失していることが、潜伏職員の報告およびエニウェトク海軍基地司令部所属██████ ███████海軍大佐による非公式な調査要請という二つのルートから財団に伝達されたことで本件は優先調査事項となり、直ちに調査部隊-ユニフォーム03が当該基地へ派遣されました。
事態の収拾と調査のため、財団は『再度の機関故障によりDD-224はもはや自力航行は不可能であり、以後も曳航にて目的地へ向かう』との局所カバーストーリーを米海軍内に流布。調査部隊は船体の初動検査と乗員への尋問・事後処置を1946年1月3日までに完了させ、翌日DD-224はエニウェトクを出発しました。その後ハワイ島を経由して問題なくサンフランシスコに到着したDD-224は、[編集済]にて行われた精密検査の結果いかなる異常特性も持たないと結論づけられ、5月██日をもって米海軍に返還されました。

SCP-615-JPが最初に発見されたのはDD-224の退役からおよそ6年後、1952年11月1日のことです。

補遺2: 事例357-289-シベリアン・ルビー(Incident 357-289-Siberian Ruby)
1972年5月21日█時█分、複数の封じ込め違反の発生と最終フェイルセーフ装置の起動が相次いで通知された後にサイト-377との通信は全て断絶しました。しかし直後に撮影された衛星写真では全ての地上施設が健在であり、█時間後に当該施設へ派遣された即応部隊も『当地にいかなる異常も感知できず』と結論する一次報告を提出しています。
部隊による事情聴取と現地調査の結果、当時サイト-377ではSCP-████が未知の特性を発露したことによる封じ込め違反と、それに連鎖する形でSCP-████、SCP-████の封じ込め違反が同時多発的に発生。加えてほぼ同時刻にAO-█████の特異性質が発現したため北側収容棟および中央棟の地下において大規模な構造被害と十数名の死傷者が生じたものの、各オブジェクトは急行した収容チームによって迅速に再収容されたことが確認されています。
サイト全体が未知の認識災害ないしは現実改変の影響を受けた可能性を考慮してCS-377メインフレームの点検及び核弾頭の実地検査も実施されましたが、最終フェイルセーフ起動コマンドの発信を裏付ける記録は存在せず、弾頭本体にも何ら異常は見られませんでした。


セキュリティクリアランスレベル3/615-JP (excl.0377) 確認

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SCP-615-JPは現在オブジェクトクラスの引き上げ及び特別収容プロトコルの再改訂が検討されており、
セキュリティクリアランスレベル4未満の職員に開示される情報は通知なく変更される場合があります。
開示された情報をレベル4未満の0377配属職員に伝達してはなりません。違反者は特定し処罰されます。
- 機密情報必要的解除審査部(SIMDRD)

事例357-289-SR-2: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ
即応部隊による航空写真の撮影中、サイト-377東部外縁域11において面積およそ5000 m2に及ぶ三日月形の林野焼損が発見されました。樹木がサイト中枢区画を中心として放射状に倒壊していたこと、並びにその痕跡と上空の大気より高濃度の放射線が検出されたことからフェイルセーフ核が起爆された可能性が再浮上し、サイト-377に関する調査の拡大が決定されました。大陸内の各測候所にはXTプロトコル発動時用標準カバーストーリーが適用済です。

事例357-289-SR-3: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ
CS-377メインフレームのチェックを担当していた情報分隊の報告より、サイト-377内に存在する全てのコンピュータの計時装置に-0.32秒のズレが発生していることが確認されました。この現象はコンピュータのみに留まらず、サイト内に設置された壁時計や職員が身に付けている腕時計にも影響を及ぼしています。

事例357-289-SR-4: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ
多重封じ込め違反収束後の復旧作業中、外縁域に設置された監視哨および検問所の幾つかから停電と断水、ガス漏れが報告されました。調査の結果原因は架空・埋設線の断線と地下配管の漏洩と判明しましたが、これらは8号ドックを中心点とする半径12 km圏の境界線上でのみ発生しており、かつ全ての事例で地表を掘削することなく配線・配管のみが平滑に切断されていました。

事例357-289-SR-5: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ
1972年5月24日早朝、民間企業との会議に参加するためサイト-377を離れた財団職員3名が行方不明となりました。職員らが使用した車両(1968年式シトロエンDS21)は道路の中央に停止した状態で発見され、エンジンキーはシリンダーに挿し込まれたまま、ドアは全て内側からロックされており、シフトレバーは3速に入れられたままでした。回収されたセイフティ・レコーダの分析結果より、車両は事例SR-4の場合と同様、8号ドックを中心点とする半径12 km圏の境界線に到達した時点で全ての操作が唐突に放棄されたことが判明しています。当該車両はフロント企業『サリングス・カー・パーク』(Salling's Car Park)に勤務する低レベル職員によって5月23日にサイトへ持ち込まれたものであり、該当職員の尋問と回収された車体の調査が進行中です。が行われましたが、どちらからも事態の解明に繋がる有用な証拠は得られませんでした。

事例357-289-SR-6: 1986年2月18日 要求レベル引き下げ
5月21日の多重封じ込め違反発生中にSCP-615-JPが活性化し、SCP-615-JP-1を点灯すると共に船体マーキングを変化させましたが、1981年現在に至るまで映像投影現象の発生は観測されていません。

観測日時: 1972年5月21日█時█分より継続中

船体マーキング: SITE377

灯質: 単閃白光、毎10秒に1閃光

光達距離: 11海里

観測内容: なし

備考: SCP-615-JP-1は点灯し続けているが、いかなる現象も観測されていない。

事例357-289-SR-7: 1986年2月18日 要求レベル引き下げ
以下は5月22日深夜にSCP-615-JPが発生させた異常発光現象についての記録です。

事例357-289-SR-8: 2010年7月21日 要求レベル引き下げ
20██年にサイト-377の収容オブジェクトを対象として行われたカント・モニタリングにおいて、持ち込まれた5本の小型計数機全てが起動直後より0.42/65ヒュームという高い数値を表示し続ける事態が発生しました。オブジェクトによる局所的な現実改変の疑いのためサイト内外██箇所で実施された計測の結果も全て同一の値を示したことから、サイト-377は現在広範囲に渡って未知の強力な現実改変能力の影響下にある可能性が提唱されており、選任エンジニア・チームによる現実性強度詳細測定の結果報告が提出されるまで、当該施設には内密分離プロトコル-Klotskiの適用が継続されます。


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