SCP-616-JP
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アイテム番号: SCP-616-JP

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: 現在、SCP-616-JPはサイト-81██の標準的人型実体居住セルに収容されています。SCP-616-JPは、表向きにはレベル0スタッフとして財団に雇用されており、重要度の低い事務作業にのみ割り当てられます。担当職員は健康診断と偽り、定期的にSCP-616-JPの異常特性について再評価を行なってください。再分類以前の特別収容プロトコルについては、別紙616-JP-Aを参照してください。

説明: SCP-616-JPは███ ██として知られていた2█歳1の一般的な日本人女性です。SCP-616-JPの異常性は、周囲の人間に対して不定期に発揮される精神作用特性を持つ点です。この精神作用の影響を受けた人間(以下、SCP-616-JP-A)は、「ここはSCP-616-JPの夢の中である」と瞬時に思い込みます。この思い込みに起因する「SCP-616-JPが夢から醒めれば、夢の中の自分は消えてしまう」というSCP-616-JP-Aに共通した恐怖/不安感を理由に、「SCP-616-JPの覚醒を妨げるため」と称して以下のような行動を取ります。

  • SCP-616-JPが望んでいると思ったことを叶える/欲していると思ったものを与える
  • SCP-616-JPの怪我に繋がる可能性がある要因を取り除く
  • SCP-616-JPに敵対する存在を可能な限り排除する

約9割のSCP-616-JP-Aからは、記憶処理によって容易に精神作用の影響を取り除くことが可能です。また、個体差はあるものの、記憶処理を行わずとも数時間から数ヶ月の内に精神作用の影響は消失します。一方で記憶処理に対して一定の耐性を示す個体も存在し、他のSCP-616-JP-A以上に「この世界はSCP-616-JPの見ている夢である」と妄信的に思い込み、SCP-616-JPに対するストーキング行為への発展、SCP-616-JP-A自身の実生活の崩壊などを招きます。

また、精神作用特性が発揮される条件・スパンに加え、正確な有効範囲は現在まで不明なままです。大抵の場合、異常特性はSCP-616-JPから数mの範囲にいる人物に対して発揮されますが、観測上1kmほど離れた地点の人物に対して発揮されたケースも存在しています。なお、精神作用の影響を受けやすい人物の特徴として、その人物が「SCP-616-JPの願望を叶えられる状況/立場にいる人物」である傾向が多くみられます。

SCP-616-JPは19██/██/██、京都府███区███で発生した警察官(以下、SCP-616-JP-A-1)の異常行動を調査した際に発見・確保されました。当時、SCP-616-JP-A-1はSCP-616-JPのストーカー被害2申請の対応時に精神作用の影響を受け、自身の上司に「SCP-616-JPに対する身辺警護を実施すべきである」と直談判を行いました。結果として、その異常行動が潜入エージェントの目に留まり、SCP-616-JPの発見に繋がりました。なお、収容後のSCP-616-JPに対するインタビューより、SCP-616-JPは自身の異常特性について認識していないことが判明しています。

補遺: 以下はインタビュー記録の内、注目すべき内容の抜粋です。



事案報告: 20██/11/14、監視下にあった█体のSCP-616-JP-Aから精神作用の影響が消失しました。精神分析においても、全てのSCP-616-JP-Aから異常性は診断されず、「この世界はSCP-616-JPの見ている夢である」などの思い込みやそれに起因する恐怖/不安感なども解消されていることが判明しました。この異常事態を受け、SCP-616-JPに対して緊急の検査/検証が実施されましたが、精神的/身体的に普段と変わりなく、異常も確認されませんでした。█日前に実施された記憶処理との関係が指摘されていますが、依然として事案要因は明らかになっていません。

追記1: 20██/11/20、京都府██市██町で██年間の昏睡状態から奇跡的に回復したことで知られていた██ ███氏の自殺事件が発生しました。別件として調査を担当していたエージェント・牧村は、██氏の遺品の確認作業中、SCP-616-JPに関する可能性がある記述を██氏の遺書らしき文章から発見、SCP-616-JP担当職員へと報告しました。以下の文章は██氏の遺書からの抜粋です。

真っ暗な夢の中で、気が付くと私は███ ██4という知らない女の人になっていました。私よりも年上で、背も高くてきれいなお姉さんでした。お姉さんが見たものを私も見れて、お姉さんが思ったことや考えたことが私にも伝わってくる。だから、お姉さんが喜んだり楽しいと思うと私も楽しくなって、反対にお姉さんが悲しくて泣いちゃうと私も悲しくなりました。

悲しいのはいや。辛いのも、苦しいのも。だからお姉さんには悲しまないでいてほしい。そう念じていたら、だれかがお姉さんを助けてくれて、ほしいものはいつの間にかもらえて、どんな願いも叶いました。だから毎日が夢のように楽しく、うれしいことばかり。最初はどうなるかわからなくて怖かったのも、いつのまにか私が本当にお姉さんになった気がしてきて、夢から覚めたいと思わなくなっていました。むしろ、ずっと夢の中にいたいくらい。そう思えば思うほど、みんなはお姉さんが助けてくれるようになり、願い事も叶うようになっていました。

でも、ある日、お姉さんは病気になってしまい入院することになりました。お姉さんは元気でした。だけど、病院の先生はまだ退院できないと何度も言って、お姉さんを退院させてくれません。何日も、何年もそれが続き、お姉さんは悲しくなって、私も悲しくなりました。だけど、念じても念じてもお姉さんの病気は治らず、いつまでも悲しいままでした。楽しい夢から覚めたくない。

██日前、お姉さんは先生に怒ってしまいました。だから先生も怒ってお姉さんに注射をしました。目を覚ますとお姉さんはもう怒っていませんでした。でもお姉さんは今までと違って、何だか様子が変でした。私は悲しいのに、お姉さんは悲しくない。私はまた最初のころの怖さを思い出しました。だから、私はつい、夢から覚めたいと何度も願ってしまいました。

気付いたら、私は目を覚ましていました。だけど、私の目の前には知らないおばあさんとおじいさんがいて、私は知らない人になっていて、事故のせいで私の足はうまく動かせません。目が覚めてもずっと怖いままでした。だからまた夢に戻ろうと何度もがんばりました。でも、夢はすぐに覚めてしまいます。何度ためしても、怖くて、痛くて。それでも、私は夢に戻りたい。それにはきっと、もっと長く夢を見ていなければダメなんだと思いました。だから、ごめんなさい。お母さんの眠れないときに飲むお薬を勝手に持ち出して。でも、今度は少し眠るだけ。きっとすぐに戻るから。だからまた、あの夢に行ってきます。

文章の回収後、██氏について身辺調査が行われましたが、[編集済]SCP-616-JPとの関連性を結論付ける証拠は得られませんでした。また、██氏の遺体は調査開始時すでに火葬されており、精密な検査/検証は実行できませんでした。本件を受け、SCP-616-JP再評価に関する議論が現在まで続けられています。

追記2: SCP-616-JPの異常特性が最後に発揮されてから██年以上の間、新たなSCP-616-JP-Aが発生していないことを加味した結果、議論はSCP-616-JPから異常特性が消失したと結論付ける形で決着を迎えました。これにより、20██/11/05をもって、SCP-616-JPは再分類されました。この再分類に伴い、██氏をSCP-616-JP本体または一要素としてナンバリングすべきという提案も、半永久的に凍結されることとなりました。

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