異空間内部の神社と思しき施設にて撮影されたSCP-618-JP-1-c
アイテム番号: SCP-618-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-618-JPの存在する区域は、カバーストーリー「土砂崩れ」を適用し、一般人の侵入を防ぐために警備員による巡回を行ってください。侵入者は即座に拘束し、クラスA記憶処理を施した上で解放してください。SCP-618-JPの内部を調査する場合、level3以上の職員3名以上の許可を取った上で、日本国籍を持たない日本滞在年数3年未満のDクラス職員を用いて行ってください。
説明: SCP-618-JPは、アメリカ合衆国███████州█████の山地に存在する5m×5mの区域です。普段は特に異常はなく、不活性状態にあります。SCP-618-JPを、日本国籍を持たない滞在年数3年未満の人物(以下被験者と表記)が通過した際にSCP-618-JPは活性化し、異空間を作り出します。このとき、被験者は強制的にSCP-618-JPの作り出した異空間の内部に引きずり込まれることが判明しています。人数の上限は、現在の実験段階では██人ですが、実際にはそれ以上の人数が引きずり込まれるであろうと推測されます。また、被験者の所持しているGPSの信号はSCP-618-JPの近辺を指し示しますが、該当地点に被験者の姿を認めることは不可能です。
SCP-618-JPの作り出す異空間の内部は現在半径10kmの円形となっており、円の外部へと出ようとすると視認の不可能な壁のような物体に阻まれます。被験者が現れる地点は無作為であることが判明しています。円の中心には富士山に酷似した山が存在しており、その周囲に江戸時代のものと推測される建造物江戸時代から現代までの特徴を有する様々な建造物が乱立しています。北部には無風状態でも高波が発生する海が確認されており、西部の上空2000m地点には空中浮遊する姫路城らしき城郭が視認できます。
空は白く、太陽は赤い丸として観測され、日没することはありません。ただし時間経過は現実世界と同期しており、3時間の経過もしくは異空間内で死亡することで被験者は強制的に現実世界へと排出されます。この際、映像を記録していた場合は不自然に途切れることが確認されています。また、映像記録が途切れてから現実世界に排出されるまでには、最長5分程度のラグが確認されています。排出される地点は被験者が引きずり込まれた箇所に限定されており、被験者が排出されてから3時間の間に、再びSCP-618-JPが活性化した例はありません。
異空間の内部には、人型を含む多数の実体(以下SCP-618-JP-1と表記)が存在しており、それぞれが「日本」を強く想起させる特徴を持ち合わせています。SCP-618-JP-1に対する接触による現実世界への影響は確認されていません。また、SCP-618-JP-1に対してインタビューを行う試みは現在成功していません。
分類: SCP-618-JP-1-a
概要: ナス(Solanum melongena)を掴んだオオタカ(Accipiter gentilis)に酷似した実体。SCP-618-JPの作り出した異空間の空を飛び回っており、一度も着地することはない。基本的に被験者には不干渉である。
分類: SCP-618-JP-1-b
概要: 江戸時代の武士身分の人間と服装の酷似した人型実体。被験者がSCP-618-JP-1-bに衝突する、しつこく話し掛けるなどの干渉を行った場合、「切り捨て御免」と言い放ち帯刀している日本刀で斬りつける、あるいは被験者に切腹を迫ることが確認されている。
分類: SCP-618-JP-1-c
概要: 折り鶴と推測される実体。通常の鳥類と同様に飛翔することが可能であり、相当数の個体が異空間内で観測されている。被験者が接近すると逃走するため、詳しい生態調査は実施できていない。
追記: 20██/██/██に実施した調査において、SCP-618-JP-1-cの捕獲に成功。折り鶴を開いたところ、一枚の折り紙で構成されていたことが確認される。その折り紙を用いてカエルなどの別の動物を作成したが、折り鶴以外が動き出すことはなかった。
分類: SCP-618-JP-1-d
概要: 江戸時代に存在した芸子、いわゆる「芸者」に服装の酷似した人型実体。被験者を発見すると即座にすり寄り、一番近い建造物に連れ込もうと試みる。SCP-618-JP-1-dの誘いに応じた場合、音声による通信および映像記録は途絶され、被験者の所持していたGPSの発する信号が消失する。SCP-618-JP-1-dの誘いに応じた被験者が回収された例は現在存在していない。
分類: SCP-618-JP-1-e
概要: SCP-618-JP-1-bより「将軍」「殿」と呼称される人型実体。SCP-618-JP-1-eの出現時には「殿のおなり」という声が響き渡る。通過する際に被験者が頭を下げなかった場合、SCP-618-JP-1-bによって斬りつけられることが判明している。また、SCP-618-JP-1-eは西部に確認される空中浮遊する姫路城らしき城郭を本拠としていることがSCP-618-JP-1-b同士の会話により判明した。
分類: SCP-618-JP-1-f
概要: [編集済]と推測される人型実体。ごくまれに塀の上や屋根の上に居るところを確認されるものの、SCP-618-JP-1-fを視認した瞬間に謎の飛翔体によって被験者の頭部が貫かれるため、詳しい調査は今のところなされていない。
分類: SCP-618-JP-1-g
概要: 木製の屋台を引く人型実体。市街部に出現し、屋台に表記された食品を売り歩いている様子を見せる。今まで確認できた屋台は「スシ」「スキヤキ」「テンプラ」「オコノミヤキ」「ソバ」「イモ」。他の人型のSCP-618-JP-1群との会話より、店主の名前は「キム・オオタ」、「ワン・イムゾ」、「カトウ・チュンジ」などが確認されている。被験者がSCP-618-JP-1-gの売り歩く食品を摂取することによる異常は現在確認されていない。
分類: SCP-618-JP-1-l
概要: 20██/██/██以降、主に北部の海上上空に確認されるようになった、零式艦上戦闘機とみられる飛行実体。ある点を中心として円運動を行っているが、被験者が接近するとその軌道から外れ突撃を行う。統率の取れた編隊飛行を行うSCP-618-JP-1-l群の存在も確認されている。操縦席には人型実体の姿が確認されているが、接近しての調査が困難なため詳細は現在不明である。
分類: SCP-618-JP-1-m
概要: 20██/██/██以降確認されるようになった、スーツを身に纏い携帯電話を用いて通話をしている人型実体。常に相槌を打つような仕草、もしくはお辞儀を繰り返しており、被験者からの接触に反応を示さない。
分類: SCP-618-JP-1-n
概要: 20██/██/██以降市街部に確認されるようになった、日本車と推測される実体。車種は不定であり、搭乗者およびナンバープレートは確認されていない。推測で時速██kmで、障害物を回避して走行している。衝突した場合もSCP-618-JP-1-nに損傷を確認することはできなかった。
映像記録618-10
被験者: D-618-07(アメリカ合衆国出身、日本滞在歴2年9ヶ月)
オペレーター: 鳴蝉博士
付記: 資料の会話内容は英語を日本語訳したものです。また、D-618-07は日本の文化に精通しています。
<記録開始>
鳴蝉博士: 聞こえますか、D-618-07。周囲の状況を報告してください。
D-618-07: 聞こえています、博士。……町外れにいるようです。大きな神社の前にいます。……これは本当に神社ですか?[十字架の取り付けられた大きな鳥居が映し出される]
鳴蝉博士: 中に進入し、様子を報告してください。
D-618-07: 了解しました。……狐と狛犬のようなものが交互に並んでいます。……大きな建物が見えてきました。
鳴蝉博士: 周囲にSCP-618-JP-1の気配はありますか?
D-618-07: 全く感じられません。無人のようです。ひとまず中を、確認してみます……わあ、神社にキリストの像が飾ってあります。
鳴蝉博士: 他に異常は確認されませんか?
D-618-07: 十分異常だと思いますが……他には何もありません。
鳴蝉博士: では、移動してください。次は市街部へお願いします。
D-618-07: はい。
[30分の移動]
鳴蝉博士: では、次は右方向に見える高層ビルに進入し内部の様子を報告してください。
D-618-07: 了解。……とても奇妙です、ビルなのに中一面畳敷きです。これは土足で入ってもいいのですか?
鳴蝉博士: 構いません。
D-618-07: 本当ですか?しかし、その方が楽ではあります。
[40分かけて調査]
D-618-07: ……結局全部の階が畳敷きでした。エレベーターまで畳敷きなのはどういうことなんでしょう?
鳴蝉博士: お疲れさまでした、D-618-07。暫く市街部の探索を続行し、気になるものがあれば報告をしてください。
D-618-07: はい。
[50分の散策]
D-618-07: 博士!見てください、新幹線が通っています![駅のような場所が映し出され、新幹線らしき実体と多数のSCP-618-JP-1-bおよびSCP-618-JP-1-mが確認される]
鳴蝉博士: 可能であれば乗車し行先を確認してください。
D-618-07: 了解しました。……新幹線ですがまるで満員電車のようです……ええと、終点は███・キャッスルです。あの空に浮かんでいる城でしょうか?
鳴蝉博士: では終点まで乗車をお願いします。
D-618-07: ……了解しました。
[その後被験者は乗車中に異空間より排出された]
<記録終了>
映像記録618-12
被験者: D-618-08(イギリス出身、日本滞在歴1年11ヶ月)
オペレーター: 鳴蝉博士
付記: 資料の会話内容は英語を日本語訳したものです。
<記録開始>
鳴蝉博士: 聞こえますか、D-618-08。周囲の状況を報告してください。
D-618-08: みたところ街中のようです。サムライとゲイシャ……SCP-618-JP-1-bとSCP-618-JP-dが沢山居ます。
鳴蝉博士: では、それらになるべく直接的な接触はしないようにSCP-618-JP-1-bの様子を観察してください。
D-618-08: 了解です。[SCP-618-JP-1-bの1個体を30分追跡]……えー、特に変わったことはありません。食事をして、他の個体と話をしています。
鳴蝉博士: 話の内容は聞き取れましたか?
D-618-08: 私には聞き取ることができませんでした。恐らくですが、日本語で喋っています。
鳴蝉博士: ……映像記録に会話の内容が残っているかもしれません。その件に関しては後で解析を行うので、D-618-08は次の任務を実行してください。
D-618-08: 了解しました。次はSCP-618-JP-1-gとの接触……ああっ!?
鳴蝉博士: どうしましたか?
D-618-08: 先ほど追跡していたSCP-618-JP-1-bがハラキリしています![切腹を行った白装束のSCP-618-JP-1-bの死体が映し出される]
鳴蝉博士: [映像を確認]先ほどと服装が違いますね。切腹の理由および服装の変化した理由は分かりますか?
D-618-08: いえ、さっぱり……本当に急に腹を斬りました!服もいつの間に着替えたのか分かりません。
鳴蝉博士: 周囲の様子はどうなっていますか?
D-618-08: ……何事もなかったかのように平然としています。もっと騒ぎになっていてもおかしくないと思うのですが。
鳴蝉博士: 了解しました。任務の変更を伝えます。切腹したSCP-618-JP-1-bの死体がどうなるかを観察して……。
D-618-08: 博士……死体がありません。
鳴蝉博士: なんですって?……誰かが処分したのですか?
D-618-08: いえ、目の前で勝手に消えました。
鳴蝉博士: ……了解しました。調査を継続してください。
[以下重要な情報を得られなかった為省略]
<記録終了>
終了報告書: D-618-08の帰還後、映像記録の音声を解析しましたが、映像のSCP-618-JP-1-bのものと思われる音声からは、切腹の理由を含めた重要な情報は得られませんでした。また、この調査の直後に█████において身元不明の白骨化した遺体が発見されましたが、関連性は不明です。
SCP-618-JPは、█████で19██/██/██に発見された身元不明の遺体の遺留品のカメラに、不自然な風景の写真が残っていたことから収容するに到りました。初期収容の際、日本国籍を持っておらず、日本における滞在経験のないエージェント██名がSCP-618-JPの作り出した異空間に一度に引き込まれる事案が発生しています。その後の調査で活性化の条件が明らかになると、SCP-618-JPは日本支部の管理下に置かれることとなりました。
補遺: 以下の映像記録は20██/██/██にSCP-618-JPの作り出した異空間内で撮影されたものです。
映像記録618-██
被験者: D-618-12(カナダ出身、日本滞在歴2年3ヶ月)
オペレーター: 鳴蝉博士
付記: 資料の会話内容は英語を日本語訳したものです。
<記録開始>
鳴蝉博士: 聞こえますか、D-618-12。周囲の状況を報告してください。
D-618-12: 聞こえています。……私は今、森の中にいます。人の気配はありません。
鳴蝉博士: では、開けた場所に出るまで移動してください。
D-618-12: 了解しました。[映像が大きくぶれ、周囲が急に暗くなる]うわっ。
[銅鑼のものと推測される金属音が3回記録される]
鳴蝉博士: どうしましたか、D-618-12?
D-618-12: 分かりません。急に大きく揺れたと思ったら、暗くなりました。
鳴蝉博士: 周囲の状況を報告してください。
D-618-12: 了解しました。[10秒の沈黙]……[短い悲鳴]
鳴蝉博士: D-618-12?報告を……
D-618-12: [息を切らす音]あ、あの、[金属の衝突音]が[軋み合うような巨大な音]しています!
[正体不明の鳴き声らしき音声]
鳴蝉博士: 何があったんですか!?D-618-12!
D-618-12: [悲鳴]
[D-618-12が映像機器を放棄、全長25mを越すと推測される人型の機械と、それに相対する爬虫類に酷似した外見の巨大な生物が映し出される。その後2時間に渡って両者の戦闘する映像が撮影された]
<記録終了>
終了報告書: 映像が撮影された後、SCP-618-JPにて激しく損傷したD-618-12の遺体が回収されています。映像で確認された実体は今までの調査では報告されていなかった存在であり、新たにSCP-618-JP-1-rおよびSCP-618-JP-1-sと分類されました。