SCP-622-JP
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20160128

SCP-622-JP入口から1500kmの地点でドローンが撮影したSCP-622-JP内部の写真

アイテム番号: SCP-622-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-622-JPは公には民間企業が所有する植物の遺伝情報実験施設として取り扱います。SCP-622-JPの存在する敷地は企業の私有地として民間人の立ち入りを禁止し、SCP-622-JPの周囲には2重の電流柵を設置します。SCP-622-JPに無許可で侵入した人物はその時点で公的には行方不明者として扱います。またSCP-622-JPへ入口以外から進入する行為、およびSCP-622-JPの上空30m以内に柵を越えて物品を投入する行為は禁止されています。物品、人員を問わず、入退場は必ずSCP-622-JP入口を用いて行ってください。

特別に許可された実験以外でSCP-622-JP内の植物に触れることは禁止します。SCP-622-JP内の移動の際には必ず通路の中央近くを通り、装備やケーブル類を含めあらゆる物品が花壇および植物に接触しないよう注意してください。またSCP-622-JP内にテッポウユリが出現した場合、直ちに分析対策班を招集してください。なおSCP-622-JPの影響がSCP-622-JP外部に及んだ事例は確認されていませんが、担当職員は定期的に自動計測装置の測定結果に異常がないか確認してください。

説明: SCP-622-JPは滋賀県████に存在する面積約30000平方メートルの庭園です。外部からの観測ではSCP-622-JPの異常性は確認できず、正常なバラ園のように見えます。内部からの観測ではSCP-622-JPの面積を測定することに成功しておらず、無限遠まで平坦な敷地が続いているように見えます。カメラを積載したドローンをSCP-622-JP入口から直線上に走行させる計測実験では、切れ目なく続く石畳とその両脇の花壇が、少なくとも2600km以上続いていることが確認されました。

SCP-622-JP内に植えられた植物は、不定期に吹く風と同期してランダムに変化します。全ての植物が開花しているという点では共通していますが、変化の法則は不明です。最も多く観測された植物はバラであり、他にチューリップ、コスモス、カンゾウ、ヒガンバナなどに変化したケースが確認されています。非接触検査ではこれらの植物には組成上の異常がないことが判明しています。またSCP-622-JPはなんらかの方法で外見をカモフラージュしており、SCP-622-JP内部の植物がどのように変化しても外部からは常にバラ園であるように見えます。

生物がSCP-622-JP内の植物に対して能動的に接触した場合、対象の生物の血管系内部に人間由来のB型(RH+)の血液が出現します。血液の出現は体内の総血液量がおおよそ4リットルを超えるか対象が死亡するまで続きます。対象の生物の血液型によっては、異型の血液型の輸血による溶血により、対象は死亡または重篤な障害を負うことがあります。この現象は対象自身が植物に触れたことを意識している場合のみ発生し、SCP-622-JPが対象の意識をどのように判別しているのかは不明です。またSCP-622-JP内の植物を傷つけたり花壇に踏み入ったりする行動は、対象の全体液の瞬間的消失という現象を引き起こします。この現象は対象の意識の有無に関わらず発生する点に注意してください。これらの体液に対する異常反応は、手袋や道具を用いて間接的に接触した場合にも発生します。自動化した装置を用いて接触した場合、装置を操作した人物および操作を指示した人物に影響が発生します。このため、SCP-622-JP内の植物との接触実験は現在凍結されています。

SCP-622-JP内には、SCP-622-JP-Aに指定される人型実体が存在します。外見上は上下グレーのツナギを着た50歳前後の日本人男性に見えます。呼吸をし脈拍もありますが、食事や睡眠を必要とする様子はありません。SCP-622-JP-Aは庭師を自称していますが、個人名や雇用主の名前を明かしたことはありません。SCP-622-JP-Aの平時の行動は通常の庭園の整備作業と同様ですが、どのようにして広大な敷地内を一人で管理しているかは不明です。研究チームはSCP-622-JP-Aの観測可能な行動とSCP-622-JPおよび敷地内の植物への影響には直接的な関連性がないものと推測しています。SCP-622-JP-Aへの攻撃、拘束、強制的な移動に成功した事例はなく、それらの行為は行為者の体液の消失現象を引き起こします。

実験記録 622-JP-1 概略: SCP-622-JPに柵を越えて侵入した場合の出現位置を特定する実験の結果、あらゆる投入物が消失し追跡不能になることが判明しました。この影響は地表からSCP-622-JPの上空20m前後の地点まで発生することが確認されています。またブタ、ウシ、ヒトなどの大型の動物を投入した場合、SCP-622-JP敷地内全体で数日間にわたり腐臭が発生することが確認されました。次回の生物投入実験は無期限に延期されています。

インタビューログ 622-JP-2:

<記録開始>

██博士: こんにちは。

SCP-622-JP-A: やあ、お久しぶりです。

██博士: 今日はいくつか質問したいことがあるのですが、よろしいですか?

SCP-622-JP-A: 失礼ながら、作業をしながらでもよろしいでしょうか。

██博士: ええ、もちろん。

SCP-622-JP-A: では、どうぞ。

██博士: この庭園が作られた目的は何ですか?

SCP-622-JP-A: さあ、わかりません。でも、花を愛でるのに理由が必要なのでしょうか。

██博士: あなた以外に、この庭園内に人はいますか?

SCP-622-JP-A: 今はあなたがただけですよ。多分。

██博士: 植えられた花が風ともに変化する現象について、原因を知っていますか?

SCP-622-JP-A: 変化とはどういうことですか?

██博士: 例えば今はバラが咲いていますが…ああ、ちょうどいいですね。

[風が吹く音]

██博士: ほら、菊に変わりました。

SCP-622-JP-A: ええ、自慢の菊園です。

██博士: なぜバラから菊に変化したのですか?

SCP-622-JP-A: どういう意味ですか?

██博士: 先ほどまで、ここにはバラが咲いていましたよね。

SCP-622-JP-A: 菊園にバラはありませんよ。バラが見たいならば、バラ園にご案内しましょうか。ちょうど見頃ですよ。

██博士: …この場所は以前から菊園でしたか?

SCP-622-JP-A: ええ。

██博士: 私が今日最初にあなたに話しかけたのも、この場所でしたか?

SCP-622-JP-A: ええ。大丈夫ですか? 気分がおわるいとか?

██博士: いえ、大丈夫です。お気遣いなく。

SCP-622-JP-A: そうですか。

[風が吹く音]

██博士: 今度はヒマワリか。

SCP-622-JP-A: この季節にヒマワリの花を維持するのは、こう見えてなかなか手間なんですよ。

██博士: バラ園と菊園はどちらですか?

SCP-622-JP-A: ちょっと遠いですよ。ご案内しますか?

██博士: いえ、結構。それよりこの花についてですが…[ヒマワリに手を伸ばす素振りをする]

SCP-622-JP-A: 触っちゃダメだ!

██博士: おっと。

SCP-622-JP-A: …失礼。しかし、花には触れないでください。主人に叱られますので。

██博士: 申し訳ない。この花に触れると、どうなるのですか?

SCP-622-JP-A: 花は生きています。そして、とてもデリケートです。触れることにより花の健康を害することが多々あります。少なくとも、触れれば花の生き方に影響を与えてしまいますから、ご遠慮いただいております。

██博士: あなたは触れても大丈夫なのですか?

[風が吹く音]

SCP-622-JP-A: 僭越ながら、プロですからね。私の仕事は、新しい花を植え、花が元気に育つよう手伝い…ときどき摘み取ることです。

██博士: 摘み取ることもあるのですか?

SCP-622-JP-A: 必要があればですけどね。…うん? これはもうダメかな… [植物の茎を剪定用のハサミで切り取る] よかったら、一輪どうぞ。あまり日持ちはしませんが。

██博士: これはどうも。キミ、ちょっと。

[D-8175がスイセンの花を受け取る。異常性は発現しない。]

██博士: ありがとうございました。

SCP-622-JP-A: またいつでもいらしてください。

<記録終了>

終了報告書: 回収したスイセンの花からは異常性は確認されませんでした。

探査記録 622-JP-3 報告: カメラ積載ドローンによる内部探索中、入り口から2544kmの地点で明らかに異常な風景が数秒間撮影されました。同時刻、入り口付近には異常は発生しておらず、映像の分析が進められています。

探査記録 622-JP-3 映像内容抜粋:

<-0:03> : 風が植物を揺らす音がしはじめる。

<0:00> : ドローンの周囲を風が吹き抜ける。

<0:01> : 空が緋色に染まる。植物は細長いスプーンような形状に変化。拡大すると、人間の顔のような模様と、垂れ下がった腕のような葉が確認できる。

<0:04> : ドローンが小石を踏み、音を立てる。同時に周囲のスプーン状植物が一斉に、ドローンを注視するように姿勢を変える。

<0:14> : スプーン状植物は走行するドローンを追いかけるように姿勢を変化させ続けている。

<0:15> : 風が吹き、周囲の植物がテッポウユリに変化する。以後異常現象なし。

インタビューログ 622-JP-4:

<記録開始>

██博士: こんにちは。

SCP-622-JP-A: どうも。よほどここが気に入られたようですね。

██博士: 今日はちょっと伺いたいことがありまして。この写真なんですが。[スプーン状植物の写真を見せる]

SCP-622-JP-A: ああ、キョウチクトウですね。

██博士: これがキョウチクトウ?

SCP-622-JP-A: ええ。きれいですが、毒性があるので触らないでくださいね。

██博士: 私の知っているキョウチクトウとは違うようですね。[タブレットを操作する]これがキョウチクトウの花では?

SCP-622-JP-A: ええ、そうですね。

██博士: この二つが同じ?

SCP-622-JP-A: キョウチクトウですね。

██博士: 私には同じには到底見えないのですが、同名の異なる種類の植物ということでしょうか?

[風が吹く音]

██博士: …医療班!

[SCP-622-JP-Aが石畳に倒れている。心肺停止状態であり、眼球と耳がひきちぎられたような傷跡を残して取り除かれている。胴体部の厚みが減少していることから、主要な骨や臓器も失われていることが推測される。周囲の花壇にはケイトウが咲いている]

[風が吹く音]

SCP-622-JP-A: …おや、またいらしたんですか。

[SCP-622-JP-Aは通常の状態に戻っている]

██博士: テッポウユリだ。

SCP-622-JP-A: ええ、テッポウユリ、見事な造形ですよねえ。

██博士: さきほどまでのことを覚えていらっしゃいますか?

SCP-622-JP-A: はい?

██博士: …いえ、また来ます。

<記録終了>

終了報告書: テッポウユリと異常現象には何らかの関連が疑われる。テッポウユリが出現した場合、直前直後の詳細分析を行うこと。

事案記録 622-JP-3: 20██/1/██、警備に当たっていたレベル1職員がSCP-622-JP内に新たな人型実体を発見しました。SCP-622-JP-Bに指定されたこの実体は、映像または音声を記録することができず、またその場に居合わせた各職員が異なる姿、異なる言動を認識していることから、何らかの精神影響存在であった可能性が高いと推測されています。下記インタビューログは、██博士、機動部隊員アルファ、ブラボー、およびチャーリーの証言に基づいて再現されたものです。

インタビューログ 622-JP-5:

SCP-622-JP-B(1): [██博士が認識した実体。容姿はスーツを着た長身痩躯の欧米人風の若い男性]
SCP-622-JP-B(2): [アルファが認識した実体。容姿は「ボロボロのジーパンと革ジャンを着たヒッピー」と表現された]
SCP-622-JP-B(3): [ブラボーが認識した実体。全身を白い布で覆い、肌は見えなかったと証言]
SCP-622-JP-B(4): [チャーリーが認識した実体。薄桃色の肉で造られた檻のような人型実体だったと証言]

<記録開始>

██博士: こんにちは。きれいなコスモスですね。

SCP-622-JP-B(1): こんにちは、初めまして、クライマー。
SCP-622-JP-B(2): 失せな、クライマー。
SCP-622-JP-B(3): 悪辣だ、膨張するクライマー。
SCP-622-JP-B(4): 天竜の橋、作家のクライマー。

██博士: 私は██、登山家ではなく植物学者です。ちょっとお話を伺えませんか。

SCP-622-JP-B(1): 時間がありません、急いでください。
SCP-622-JP-B(2): やめときな、てめぇは何も分かってない。
SCP-622-JP-B(3): 登るのだ。ありえぬ山へ。
SCP-622-JP-B(4): 冬の銀の壁、人は頂きに。

██博士: この場所は何なのですか?

SCP-622-JP-B(1): 流刑地です。すべての罪人の辿り着く場所です。
SCP-622-JP-B(2): てめえの墓場だよ。花くらい手向けてほしいだろ?
SCP-622-JP-B(3): 救済の雨が肝臓のウサギからアイロンへ至る土地だ。
SCP-622-JP-B(4): 奈落、金色の奈落、欠けた月の巫女。

██博士: あなたは何者ですか?

SCP-622-JP-B(1): 観察者、誰がこの地へ来るのか見届ける者です。
SCP-622-JP-B(2): 俺は[アルファの本名]、情けねえ名前だろ?
SCP-622-JP-B(3): 虚無の王であり夢のしもべ。主は我に名を与えず。
SCP-622-JP-B(4): 威嚇の罪はありえぬ嵐へ、野火の処刑、鶴の声。

██博士: この場所が存在する目的は?

SCP-622-JP-B(1): おまえのためだよ、クライマー。
SCP-622-JP-B(2): おまえのためだよ、クライマー。
SCP-622-JP-B(3): おまえのためだよ、クライマー。
SCP-622-JP-B(4): おまえのためだよ、クライマー。

[風が吹く音]

[SCP-622-JP-Bは消失。周囲にはテッポウユリが咲いている。]

<記録終了>

終了報告書: 本事案以外ではSCP-622-JP-Bの出現は確認されていません。SCP-622-JP-Aへのインタビューにおいても、SCP-622-JP-Bに関する有意な情報を得ることはできませんでした。

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