アイテム番号: SCP-623-JP
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-623-JPは分割されて、密閉された厚さ0.5mの金属製のコンテナにそれぞれ収容されます。コンテナの内部にはカメラが設置され、常にSCP-623-JPを監視します。何か異常が感知された時もしくはコンテナの摩耗が確認された場合、即時サイト管理者に連絡をしてください。コンテナの入れ替えを行う場合、SCP-623-JPの感知範囲より既存のコンテナを囲うようにして、新たなコンテナを投下してください。
SCP-623-JPの職務に携わる全職員は精神スクリーニングテストの基準を満たしたDクラス職員ではない職員によって構成されます。職員は防護服を着用することが義務付けられています。
実験以外の理由でDクラス職員がSCP-623-JPの4m範囲に接近することは許可されません。Dクラス職員を用いた実験はLevel3の職員3名以上の承認がなければ、実行されてはなりません。
収容違反事例より、実験は無期限に停止されました。全職員はSCP-623-JP収容コンテナの周囲4mに侵入してはなりません。SCP-623-JPの分断はすべて無人機によって実行されます。SCP-623-JPを分割する場合、常に本体を確認しながら、作業を遂行してください。
説明: SCP-623-JPは高さ約2.3m、幅約4m、長さ約5m、体積約4600万立方cmの泥の山のように見える実体です。SCP-623-JPの容貌は細部を除けばほぼ一定です。SCP-623-JPの表面はざらついていますが、わずかに水分を含んでいるような見た目をしています。SCP-623-JPの収容当時の質量は2,235kgでしたが、現在のSCP-623-JPの質量は約2,521kgに増加しています。SCP-623-JPの質量の増加量は実験に参加したDクラス人員の体重の量と同値でした。そのため、消失させた物質に応じて、SCP-623-JPの質量は増加すると推定されています。このとき、SCP-623-JPの体積は増加しません。
SCP-623-JPは常に約3km/hで移動しています。SCP-623-JPの接触した個所にはSCP-623-JPの構成物質が付着します。SCP-623-JPの移動に伴い、SCP-623-JPが接触した個所は摩耗していきます。SCP-623-JPに接触したDクラス職員および精神薄弱者(以下、対象)は瞬時に消失します。対象以外がSCP-623-JPに接触しても消失現象は引き起こされません。対象を消失させたSCP-623-JPは即時消失した対象の質量に応じて質量を増加させます。
SCP-623-JPは知性は有していませんが、知覚を有しています。この知覚能力には2種類があり、大まかに対象の場所を把握する能力と一定の知覚範囲に対象が侵入した時に活性化する能力です。前者の能力によってSCP-623-JPは対象の位置を把握し、自らを活性状態へと移行させる距離へと移動します。SCP-623-JPは対象以外に圧力を加えられても反応しません。
活性状態は対象がSCP-623-JPの知覚範囲から脱出するもしくはSCP-623-JPが対象を消失させるまで継続します。活性状態時のSCP-623-JPは約20km~200km/hで移動します。このとき、SCP-623-JPはその構成物質をあたりに分離しながら対象へと接近します。SCP-623-JPと対象の間に障害物がある場合、SCP-623-JPは構成物質を障害物に擦りつけて摩耗させます。この摩耗は非常に高速で行われ、障害物にSCP-623-JPが通るのに十分な穴が開くまで継続します。
分離された構成物質は活性状態時、3km/hで対象に向かって移動します。構成物質は非活性状態への移行と同時に200km/hでSCP-623-JP本体に回収されます。回収される構成物質に接触した対象は消失します。しかし、障害物によって回収が阻害されると、即時SCP-623-JPの構成物質は非活性状態に移行します。分離した構成物質が対象を消失させた時、SCP-623-JPの質量が増加します。
SCP-623-JPは能動的に分割することが可能です。さらに、分割されたSCP-623-JPはその知覚範囲を大幅に減少させます。しかし、活性条件に緩和は見られません。分割されたSCP-623-JPのなかで最も体積が大きいものが本体です。分割されたSCP-623-JPは非活性状態時でも本体同様に対象の方向を把握します。
SCP-623-JPは未知の物質と少量の人間の細胞で構成されています。細胞のDNAは██県に在住する現在行方不明の男性████のものと一致しました。████の調査を行ったところ、████およびその両親の消息は不明でしたが、████年█月█日、████によって、両親の行方不明届が提出されていたことが確認されました。
SCP-623-JPは地元警察によって██県██市██町の廃工場で発見され、その特異性から財団に応援要請がなされました。即時財団エージェントは現場に急行し、SCP-623-JPを収容しました。回収班との合流時、SCP-623-JPが活性化、収容が破られるという事例が引き起こされました。SCP-623-JPはエージェント██████を消失させ、非活性状態へと移行しました。SCP-623-JPは再収容され、サイト81██に移送されました。
その後、エージェント██████のGPS反応を確認したところ、██県██市██町の空き家に位置が移動していたことが確認されました。さらに、エージェント██████との通信が可能であることが発覚し、██████博士によるインタビューが実行されました。詳細はインタビュー記録にて確認してください。██県██市██町の空き家の探索中、文書が発見され、確保されました。詳細は補遺1より参照してください。
対象:エージェント██████
インタビュアー:██████博士
<録音開始>
██████博士:エージェント██████聞こえますか?
エージェント██████:ああ、聞こえるよ。クソッ、ここはどこなんだよ。真っ暗で何も見えねえ。それに……、なんかに包まれてるみたいだ。これは……、泥か?>
██████博士:あなたは██████町の廃屋にいるようです。
エージェント██████:そんなに遠くに移動したわけではないみたいだな。だが、おかしいな。ここは家の中なんかじゃないぞ?……んっ、なんか聞こえるな。いや、聞こえるというよりも意識か何かが流れ込んでくるみたいだ。
██████博士:流れ込んでくる?
エージェント██████:ああ、うまく言葉にはできないんだが、とにかく、「お前は暴力を振るわなくてもいい」、「お前は許されている」、「お前は苦しまなくてもいい」、「お前は許されなければならない」、「お前は弱い」って感覚があるんだ。それにその感覚はそれぞれ独立にあるんじゃなくて、、何か交り合ってるみたいなんだ。みんな考えていることは違うけど最終的には全会一致で可決される議題に参加しているみたいな……。ああ、とにかく、表現が難しい。難しいこと考えてたら、眠くなってきやがった……。
██████博士:気をしっかり持ってください。現在、あなたの救出方法を模索中です。
エージェント██████:そいつはいい。だが、ここにいるのも悪くはないような気がするな。[あくびと思われる音]クソッ……。しゃべってられないほど、眠い……
██████博士:職務の途中です眠ってはなりませんよ、エージェント██████。エージェント██████?応答してください!
エージェント██████:あっ、なんか口に、[もがく音]きも…ち…い。
その音声を最後にエージェント██████は応答しなくなりました。
<録音終了>
その後、定期的に連絡を試みましたが、寝息の音以外の音声は確認されませんでした。
収容違反事例後、音声に粘着質な音が混じり始めました。最終的にエージェント██████との通信が途絶えました。通信機が何らかの理由で機能しなくなったことが予測されます。
SCP-623-JPの特別収容プロトコルを制定するための初期実験が行われました。
内容:簡易収容ケースに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査
対象:D-788(痴情のもつれの果てに女性を殺害)
結果: D-788が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。SCP-623-JPは簡易収容を破り、 D-788を消失させました。
内容:厚さ0.1mの金属製のコンテナに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査
対象:D-1025(右手が先天的に欠損しています。大規模な詐欺を行い、複数の人物を自殺に追い込んでいます。)
結果:D-1025が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。収容を破り、D-1025を消失させました。
内容:厚さ0.5mの金属製のコンテナに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査
対象:エージェント████(本人の志願。SCP-623-JPの初期収容メンバーでした。初期収容参加前に後天的に左腕を失っています。殺人の経験の記録はありません。)
結果:エージェント████がSCP-623-JPの200m範囲に侵入したが活性状態へは移行しなかった。
内容:厚さ0.5mの金属製コンテナに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査
対象:エージェント██(本人の志願。家庭内暴力によって、厳重注意を受けています。殺人の経験はありません。)
結果:エージェント██が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。簡易収容を破られる前にエージェント██は感知範囲から逃れ、SCP-623-JPは非活性状態に移行。
内容:厚さ0.5mの金属製コンテナに入れられたSCP623の感知範囲および感知対象の調査
対象:██博士(SCP-███-JPに暴露したところ、精神疾患が発生。終了の予定でしたが、実験に参加することになりました。殺人の経験の記録はありません。)
結果:██博士が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性化した。██博士は即座に感知範囲から引き出され、SCP-623-JPは非活性状態へ移行。
以上より、収容コンテナの厚さを0.5mに設定し、最大でも200m範囲を立ち入り禁止にすることでSCP-623-JPを収容することが可能だと推定されました。
██████博士の提言によって、SCP-623-JPの分断実験が行われました。結果、体積が2万立方cm以下であれば、感知範囲を最小であると予測される約3mに抑えられることが発覚しました。
以上の事実を踏まえ、特別収容プロトコルが制定されました。
[補遺1:
あれらが沁みわたってくる。「お前は弱者だ」と意識に(何かの筆跡)
弱者とは何か。私は弱者なのか。(何かの筆跡)
そうだ。泥がいい。すべてを包み込む、物言わぬ泥となるのがいい。言葉など意志など(何かの筆跡)
救えないものにこそ安息を。
収容違反事例1: SCP-623-JPの対象把握能力の実験中にSCP-623-JPの収容違反事例が発生しました。SCP-623-JPがエージェント████を対象に活性状態へと移行しました。エージェント████を消失させたSCP-623-JPはDクラス宿舎へと移動し、宿舎にいたDクラス職員すべてを消失させ、非活性状態へと移行しました。その後、SCP-623-JPは職員に再確保され、収容違反事例は収束しました。
エージェント████が初期収容や実験に参加していたにも関わらず本事例でSCP-623-JPを活性化させたことから、活性条件に新しく「身体欠損を持つ者」が追加されたことが推測されます。
実験により、SCP-623-JPの質量は増加していましたが、この収容違反事例が引き起こされるまで、活性条件の追加は確認されませんでした。そのため、SCP-623-JPの活性条件の追加には質量が関係していることが予測されます。
この収容違反事例より、特別収容プロトコルは改訂されることとなり、あらゆるDクラス職員を用いた実験は禁止されました。
収容違反事例2: プロトコルの改訂後、すべてのSCP-623-JPが感知対象無しに活性化しました。さらに、SCP-623-JPがコンテナに接触すると同時に非活性状態へと移行しました。この事例によってSCP-623-JPの収容違反事例の収束が取り消され、財団は即時SCP-623-JP本体の探索をしました。結果、財団周辺に位置していた██村で非活性状態のSCP-623-JPが発見されました。その時のSCP-623-JPの質量は約10,297kgでした。現在、██村の住民のすべてが行方不明です。
SCP-623-JPの再収容のためにエージェント██がSCP-623-JPに接近したところ、SCP-623-JPは活性状態に移行しました。エージェント██は迅速にSCP-623-JPの感知範囲から逃れました。その後、無人機によってSCP-623-JPは分断され、感知範囲外からのコンテナの投下によって収容され、収容違反事例は収束しました。
以上から、SCP-623-JPはすべての人間を対象とするほどに活性条件を緩和させたと推測されます。SCP-623-JPは再度サイト-81██に移送されました。その後実験が停止され、職員もSCP-623-JPの感知範囲に侵入しなかったためSCP-623-JPの活性化は一度も観測されませんでした。完全な収容手順が確定したため、SCP-623-JPのオブジェクトクラスをSafeへと再分類する申請がなされ、受理されました。