SCP-652-JP
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SCP-652-JP-1a

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SCP-652-JP-1b

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SCP-652-JP-1c

 
※本報告書は「事例:652-2現出」以後に作成されたものです※
 
アイテム番号: SCP-652-JP
 
オブジェクトクラス: Euclid
 
特別収容プロトコル: SCP-652-JP-1a、1b、1cはそれぞれ10km以上離れた異なるサイトで収容を行ってください。それぞれに共通する収容規定として、SCP-652-JP-1a、1b、1c自体は静物保管用の金庫に収容した上でセキュリティクリアランス3以上の認証キーを必要とする収容室内に保管してください。
各オブジェクトには独自の研究チームが割り当てられますが、比較検証や同時実験、緊急時の円滑な対処に備えて、各チームには専用のホットラインが設けられています。
 
各オブジェクトの被験者は、各オブジェクトと同じサイトで隔離・収容を行い、それぞれの被験者が接触しないよう、対異常物品収容と同等の警備態勢を以て管理と監視にあたってください。
 
現在、SCP-652-JP-1aと被験者a群はサイト-8105に収容されています。
現在、SCP-652-JP-1bと被験者b群はサイト-8132に収容されています。
現在、SCP-652-JP-1cと被験者c群はサイト-8169に収容されています。
 
SCP-652-JP-2は現在サイト-8193に移送・収容されています。収容プロトコル制定のための研究が現在でも進行中であり、詳細は当該研究チームに問い合わせてください。
 
説明: SCP-652-JP-1a、1b、1cはいずれも、一般的な素材によって構成された、バナナ・スプリットと呼ばれる菓子です。使用されているバナナはいずれもキャベンデッシュ種のバナナ(学:Musa spp.)として市販品との差異も認められないものであり、付属するシロップ類、果実類、アイスクリーム類、ウエハース類、クッキー類、チョコ類、クリーム類等にも組成上目立った異常はありません。
しかしながら、SCP-652-JP-1a、1b、1cいずれも、その構成物質が腐敗する兆候は見受けられず、バナナが熟していくような様子も観察されていません。また、どのような破損も7秒以内に、食器の上に盛り付けられた状態で即座に修復されます。この修復は破損部を引き寄せて繋ぎ合わせるのではなく、破損部が新たに生成されることで行われます。よって、SCP-652-JP-1群に対する摂食行動は中断されません。
 
SCP-652-JP-1群のバナナ部分を人間が摂食した場合、被験者にはそれぞれのオブジェクトに応じた固有の異常が発生します。以下は、それらオブジェクト固有の具体的な異常を簡易的にまとめたものです。

  • SCP-652-JP-1a(被験者a群): 摂食後4秒以内に被験者は昏睡します。その後、約2週間以内に被験者の表皮に於いて4〜7本のバナナの苗が生育します。これは被験者の皮膚と完全に融合しており、被験者の皮膚と筋肉の一部が変化して形成されるものであると思われます。苗は6〜7ヶ月間生育を続け、その間被験者の肉体の体表面はバナナの草本の偽茎底部と同一の物質へと変異し、楕円形の根茎部であるかのような形態へと変化しますが死亡することはなく、脳科学的に一定の昏睡状態を保ちます。バナナの草本は、果実が収穫できるまでに生育した時に成長を停止し、以後は果実を生成し続けます。果実に異常性は見られませんでした。

 

  • SCP-652-JP-1b(被験者b群): 摂食後ただちに被験者の全ての筋肉組織がキャベンディッシュ種のバナナの果肉に置換されます。同様に、皮膚は同品種の皮に、血液と脳組織は同品種を素材としたバナナジュースに、内臓は同品種の種子の集合物へと置換されます。これらの置換は骨格や血管あるいは神経系に影響を及ぼさず、また、従来の人体が持つ機能をも有しています。しかしながら、脳組織の全てがバナナジュースに置き換わったことによって、内臓機能や自律神経に影響は無いものの知能は0歳児とほぼ同等のものへ変化し、発育の兆候も認められませんでした。被験者b群は全員、バナナに強い関心を示しますが、皮を剥いて果肉を目の当たりにした時、必ず泣き出してバナナを放り捨てます。

 

  • SCP-652-JP-1c(被験者c群): 摂食後外見上の変化はありませんが、どの被験者も、およそ1週間をかけて人格が変化し、積極性の向上や社会性の向上、楽観主義への転向と共に、全員が同一人物であるかのような、振る舞いや口調の模倣的変化が発生します。その後、被験者はあらゆる行動にバナナあるいはバナナの一部を使用するようになり、その目的に於いて、キャベンディッシュ種のバナナの果実を空間中に生成する能力を獲得します。以下は、被験者が実際に行った「バナナを用いた奇行」の部分的一覧です。また、被験者c群は全ての食事をバナナで済ませ、バナナジュース以外の水分を摂りませんが、健康への悪影響が観察されたことはありません。

・バナナの皮でスリッパを作成し常用
・バナナの皮で衣服を作成し着用
・バナナの皮の後端部をペン先としてインクに浸し筆記を行う
・バナナの皮を袋状に縫い合わせたものにバナナの果肉を詰めて枕を含んだ寝具として使用
・喧嘩にバナナを武器として使用
・バナナの果肉を削ってスプーンや箸として使用
・バナナの果肉を口や鼻に詰めて、バナナを介した呼吸の実践を試みる
・バナナの皮を雑巾やタオルの代用として、清掃や吸湿に使用する
・バナナの種子を集めて体に押し当て、垢擦りとして活用
・バナナを銃器に改造し、種子を弾丸として発砲しようとする
・バナナの皮で装丁を、バナナの果肉繊維でページを、バナナの種子で点字文字を構成しての書籍作成
・負傷部位にバナナの皮や果肉を押し当てる、あるいは巻きつけて炎症の抑制または回復の促進を図る
・バナナを工具として使用し、1/1バナナ立体造形の作成を完遂
・HPMCカプセルにバナナの果肉を詰め、薬剤として自らに服用
・輪切りのバナナを加工し、指輪やピアス等の装飾品として着用

 
被験者c群被験者へのインタビュー記録抜粋:

対象: D-652-16 被験者c群に分類されてより6日目

インタビュアー: 横樹博士

付記: 対象はSCP-652-JP-1cのバナナ部分を摂食後、人格が完全に変容している。実験前の様子と比較する場合は研究チームに資料652-B-N-Aとして申請すること。また、このときD-652-16はバナナの皮で構成された自作の衣服と帽子を着用している。

<記録開始>

横樹博士: あー、で、この資料によると、君は昨夜バナナの皮でIDカードを自作しようとしたようだね。一体どうして、それをしようと思ったのかな?

D-652-16: それがバナナ・スピリッツだからだぜドクター。

横樹博士: すまない。もうすこし分かりやすく、詳しく教えてくれると助かる。

D-652-16: [7秒間沈黙。その間、ため息をつきながら頭部を左右に小さく振る] いいか、まずここにバナナがあるよな?

D-652-16が自身の右手上にバナナを出現させる。保安要員が鎮圧を行いかけるが横樹博士により制止

D-652-16: 続けるぞ? まずこのバナナだが、こいつはタネと、果肉と、皮で出来てるよな? 重要なのはこの三つなんだ。外側の皮があって(バナナの皮を剥き始める)、中の果肉があって、奥にタネが入ってる(バナナの果肉をかじり、内部にあるタネを横樹博士に見せつける)。これがバナナの全てだ。そしてこの構造は、バナナだけの法則じゃねえ。あらゆるモンが、この三つを一つとして成り立ってんだ。三位一体ってやつ、わかる? アーハン?

横樹博士: [5秒沈黙] 続けてくれ。

D-652-16: ってことはだ、この宇宙はバナナと同じなんだよ。そんでこの一本のバナナも、宇宙と同じなんだ。だからどんなモンでもバナナになれるし、バナナはどんなモンにもなれるんだ。それが分かりゃあ、当然なんでもバナナにした方がいいだろ? 元の価値を否定するわけじゃねえが、バナナでないよりは、バナナだった方が良いに決まってるだろ? だからバナナは世界で一番食べられてるフルーツなのさ。

横樹博士: [7秒沈黙] それで、終わりかな? それがバナナ・スピリッツというものなのか?

D-652-16: ああ、そうだぜ。あのバナナを食べてから、俺のハートじゃあ、最高にトロピカルでホットでファンキーなリズムが鳴りっぱなしなんだ! これまでの人生が霞んじまうようなイカしたミュージックがエンドレスで鳴り続けてんだ。それが俺のバナナ・スピリッツ、バナナの魂なんだよ。

横樹博士: [10秒沈黙] わかった。今日はここまでにしよう、協力に感謝する。

D-652-16: こちらこそだドクター、最高のセッションだったぜ。バナナ食うかい?

<記録終了>

終了報告書: ここまで奇怪な状態は初めて見た。強迫的でも義務的でもなく、ただありのままの常識として、バナナへの置き換えを肯定している。実験前の記憶や、自身が大きく変化した自覚も持っているのに、そのズレに対して葛藤するでもなく、現状を受け入れている。しかも、薬物等による興奮の兆候や一時的昂揚の様子も見られない。あたかも、元からあのような人格であったかのように、平常そのものである。もっと多くのケースで実験し、比較することでこれらの変化の本質が探れるかもしれない。

 
 
 
事例:652-2現出記録:
 
19██/05/██、SCP-███-JPの収容違反がサイト-8141内で発生。当時、各被験者群と各SCP-652-JP-1群の相互性比較のため、各被験者群をサイト-8141内に一時的に収容していた。
SCP-███-JPの収容違反による二次収容違反の発生時、被験者c群個体が脱走。施設の構造や収容室の割り当てを知らないにも関わらず、迷うことなく被験者b群個体の収容室へ向かうと、道中で拾得したIDを用いて収容を違反。
引き続いて被験者c群個体は被験者b群個体の手を引いて、被験者a群個体の収容室へ向かい、同様の手口を用いて収容室内に侵入した。
 
侵入後、被験者c群個体と被験者b群個体は同時に被験者a群個体に接触。その直後に被験者a群個体、b群個体、c群個体は融合。各個体は高速で混ざり合いながら空中に浮遊し始め、直径50cmほどの完全な球体へと変化した。
変化後、しばらくの間球体は緩慢に表面が流動するのみで大きな変化は見られなかったが、一週間後、表面から被験者a群が生育させるものと同様の、バナナの草本が一本のみ、40日間かけて成長を始める。
草本はバナナの果実を一本のみ、成熟した状態で生じさせると、果実を落とし急速に枯死した。この果実には腐敗や更なる熟成が見られないが、SCP-652-JP-1群のような摂食時の異常性は有していない。
草本の枯死後も球体は依然として状態を維持し続けており、研究チームによってSCP-652-JP-2として認定され、研究と収容プロトコルの策定を要する対象であると定められた。
 
また、本事例によって各SCP-652-JP-1は以前よりの予測通り相関的関係にあるものと確定し、同一ナンバーのオブジェクトとして扱われることとなった。
 
補遺: SCP-652-JP-2内部の継続的な有機スキャンと成分検査の結果、SCP-652-JP-2の表面部分はバナナの皮と、バナナジュースと、未知のコラーゲンタンパク質がゼラチンへ変性したものとが混合した、ゲル状の物質であると判明しました。
また、表面部分の奥にはキャベンディッシュ種と似た未知のバナナの果肉が詰まっています。この果肉部分の中心部には直径およそ5mm程度の空洞部分があり、磁気検査や放射線測定、放射線スキャン撮影の結果、この空洞部分は宇宙空間とほぼ同様の環境であると思われます。不明な理由から、無重力の空間でもあり、球体の浮力の源ではないかとも推測されています。
 
この空間に対して追加の調査や観察を実行したところ、内部の物質は、少なくとも本来の1/400のサイズである、バナナの皮や果肉、種子の欠片で構成されていることが判明しました。銀河系や惑星や恒星のような存在も確認されており、独自の生命体が存在する可能性も示唆されています。
 
SCP-652-JP-2に対する追加調査と研究、特別収容プロトコルの策定は現在も進行中です。

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