アイテム番号: SCP-659-JP
オブジェクトクラス: Euclid
エージェント██自宅のリビングから回収される直前の
SCP-659-JP
特別収容プロトコル: 回収されたSCP-659-JPは各国のサイトへ協力の要請を行い各サイトにつき1点のSCP-659-JPをサイト内の厳重な施錠と防火設備が完備された収容倉庫に保管してください。いかなる場合でもSCP-659-JPを同一のサイトに3点以上収容することは禁止されています。
SCP-659-JPを用いて実験を行う際はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の承認が必要です。現在SCP-659-JPの破壊・損傷が発生する可能性がある実験は禁止されています。
説明: SCP-659-JPは████社によって製造されたポリエステル生地の手すり付き4人用ローソファーです。SCP-659-JPは製造時から劣化の兆候を見せておらず当初の使用感を保持しています。SCP-659-JPは使用者に対して眠気を誘発しますが、これはSCP-659-JP本来の使用感の心地よさから起こるものであり異常性はありません。
SCP-659-JPの異常性はSCP-659-JPの上で人間(以下使用者と表記)が30分以上の睡眠をとった場合に発生します。SCP-659-JPの上で睡眠を30分以上行った使用者は即座に金縛りの状態となり一切体を動かすことができなくなります。同時に使用者の意識は金縛りになった時点で覚醒します。この金縛りは使用者が第三者によってSCP-659-JPから引き離されない限り回復することはありません。目を開けることが出来ないため視界は塞がれますが聴覚や嗅覚、気配などで周りの様子を知覚することは問題なく行うことが可能です。
金縛りの発生後、使用者は自身の意思に関係なく寝返りを打ち体の体勢を変え始めます。寝返りの結果、使用者の顔はSCP-659-JPの背もたれ・座面・手すり・SCP-659-JPの上に置かれているクッション・自身の腕などに押し付けられるような形となり呼吸が阻害されます。その後約10分ごとに身をよじらせ徐々に呼吸が不可能な体勢へと移行します。この特性により使用者は通常より長い時間をかけ窒息死することになります。通常の窒息と異なり痙攣・失禁・脱糞などの症状が起こらないため後述する異常性と合わさり周囲の人間が使用者の異常に気が付くことは困難です。
異常性が発生している間、周囲の人間はSCP-659-JP上で使用者が不自然な体勢・呼吸を行っているのにも関わらず、使用者が熟睡・安眠していると認識します。そのため多くの場合使用者はSCP-659-JPの影響下で放置されることになります。この効果は極めて弱いものであり他者からの命令や使用者を起こす必要性が出た場合は問題なく使用者の目を覚まさせるための行動をとることが可能です。使用者が窒息する前に第三者によりSCP-659-JPから引き離された場合、使用者を救出することが可能です。しかし第三者の行動が使用者の体勢を変えるのみに留まり、使用者をSCP-659-JPから引き離さなかった場合、使用者は再び寝返りを打ち呼吸が困難な体勢へと戻ります。
SCP-659-JPは国内で不慮の事故による窒息死が多発していることに対して調査を行っている最中、調査に関与しているエージェントの息子である██ █が「ソファーで幽霊に殺されそうになった」との証言を行ったことが報告されました。その後の██ █に対するインタビューを経てSCP-659-JPの異常性が発見、本格的な収容作業が開始されました。
SCP-659-JPの製造元である株式会社大林家具は経営不振により200█年に倒産しており、製造されたSCP-659-JPは大林家具の倒産に伴い商品として販売される以前に複数の中古家具店・オークションサイトへと売却されたことが判明しました。大林家具、およびSCP-659-JPを製造した工場の関係者に異常な点は確認されませんでした。どの時点でSCP-659-JPに異常性が発生したのかは現時点では不明です。
製造記録によるとSCP-659-JPは計1██点製造されており、現在財団では██点のSCP-659-JPを保管しています。
対象: エージェント██の次男██ █
インタビュアー: ████博士
<録音開始>
████博士: それでは今からインタビューを開始します、今日は先日聞いた話をできるだけ詳しく説明してください。
██ █: 分かりました。
████博士: あのソファーは事故が起こる2週間前にアウトレット店で購入されたようだけどその時の印象はどんな感じだったかな。
██ █: 特別何も・・・中古のソファーなんて嫌だなって最初は思いましたけどほとんど新品と変わらない使い心地だったからすぐに気にならなくなりました。
████博士: そうですか・・・では次に事故が起きた時の様子と君が体験した内容を教えてもらえるかな?
██ █: はい、あの日は祝日で学校が休みだったので、昼ご飯を食べた後ソファーの上で漫画を読んでいました。でもお昼を食べた後だったので眠くなってしまって・・・そのまま仰向けの姿勢でソファーの上で寝てしまったんです。
████博士: そのあとしばらくして金縛りになったのですね?
██ █: そうです、気が付いたときにはもう体が動かないし目も開かなくて・・・この時は普通の金縛りだと思っていたので、早く動ける様にならないかなーとか思いながら台所でお母さんがお皿を洗っている音やテレビの音を聞いていました。
██ █: でも金縛りになってちょっと経った後、体が勝手に動き出したんです。仰向けから横向きの姿勢になって、顔がソファーの背もたれに押し付けられました。鼻がつぶれて鼻から息ができなくなって・・・自分の吐く息が顔にかかって気持ち悪かったです。
██ █: 嫌な姿勢になったと思って体に力を入れて動こうとしたけどピクリとも動かなくて・・・そうしているうちにまた体が動き出しました。今度はさっき以上に顔が背もたれに押し付けられて、鼻から少し息が出来る様になった代わりに今度は口からほとんど息ができなくなって・・・。お母さんに助けてもらうためには鼻息を立てて何度も必死に息をしました。そうしたらお母さんが近づいてくる足音が聞こえてきたのでこれで助かったと思いました。
████博士: だけどお母さんは君の異常に気が付かなかったのですね?
██ █: はい、お母さんはただ僕にタオルケットをかけてくれただけでした。その時また体が動いて今度は唇の端からほんの少し空気が吸えるだけでほとんど息ができなくなりました。何とかして気が付いてもらおうと今まで以上に激しく呼吸をしましたがお母さんは気が付かずそのままベランダの方へ行ってしまいました・・・。行かないでって・・・助けてって・・・何度もそう思ったのに全然気が付いてくれなくて・・・あんなにすぐ近くにいたのに・・・何で・・・。
████博士: 落ち着いてください、もう今は安全だから。・・・話によると最初に君の様子がおかしい事に気が付いたのは君のお兄さんだったね。
██ █: はい・・・その時はもう気絶してしまって覚えてないですけど。
████博士: 話に聞いている分を説明してもらえれば大丈夫ですよ、お兄さんはどうやって君の様子に気が付いたのか聞いていますか?
██ █: はい、えっと・・・実は金縛りにあった日の何日か前にお兄ちゃんが大切にしていた・・・なんとかって言う選手のフィギアを壊してしまっていて、その事を黙っていたんです。その事に丁度僕がソファーで金縛りに会っているときに気が付いたらしくて。怒ったお兄ちゃんは僕の事を起こそうとしたらしいです。けどいくら揺さぶっても全然目を覚まさない僕に余計に腹を立てて、僕をソファーの上から突き落としたそうです。そこで初めて僕の様子がおかしい事に気が付いてお母さんと救急車を呼んだと言っていました。
████博士: そうですか・・・ありがとうございます、今日のインタビューはこれで終わりです。また何か話を聞かせてもらうことがあるかもしれません。ところで杖を使って歩くのにはもう慣れましたか?
██ █: まだあんまり・・・動くときは誰かと一緒じゃないと不安です。
████博士: 私たちは今後も君の新しい生活をお手伝いさせてもらいます、何か必要なものがあったら遠慮なく言ってください。
██ █: はい、ありがとうございます。
<録音終了>
数度のインタビューの後、エージェント██の家族に記憶処置が行われました。
次男の██ █には酸素欠乏の後遺症による重度の視力の低下、軽度の記憶・運動機能の障害が見られています。現在、財団管理下の病院にて治療とリハビリが行われています。
SCP-659-JPの破壊実験の結果、SCP-659-JPにさらなる異常性が発見されました。SCP-659-JPが直接的・間接的にソファーとしての機能が失われるのに十分な損傷を受けた場合、損傷を与えた人物はSCP-659-JP-Bへと変化します。SCP-659-JP-Bとなった人物がいかなる方法であれ睡眠をとった場合、SCP-659-JP-Bに対してSCP-659-JPを使用し睡眠を行った場合と同様の異常性が発生しSCP-659-JP-Bは窒息により死亡します。複数人でSCP-659-JPの破壊を行った場合、破壊活動に関与した全員がSCP-659-JP-Bへ変化することが確認されました。SCP-659-JPが同一の人物によって複数破壊された場合、SCP-659-JP-Bとなる対象が段階的に増加していきます。現在財団によって確認されている最大のSCP-659-JP破壊記録は3点であり、この時点でSCP-659-JPを破壊した人物を中心とする直系の6親等と傍系の4親等及びその配偶者がSCP-659-JP-Bへと変化したことが確認されています。現在SCP-659-JP-Bへ変化した人物を戻す方法は発見されていません。
保管されているSCP-659-JPの一部を終了予定のDクラスを用いて廃棄処分する計画は現在審議中です。
ページリビジョン: 17, 最終更新: 10 Jan 2021 16:15