実験記録は主要なもののみを抜粋しています。また、メモに書かれた文章そのものは斜体で表されています。
実験記録2 - 日付199█/03/29
対象: D-4556
実施方法: 23時から0時までの間、D-4556をSCP-663-JP内部に留まらせた。D-4556には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: 23時50分頃、呻き声のような音がするとD-4556が報告してきた。しかし、録音機器にはそのような音は記録されておらず、外部で待機していた職員もそのような音は聞いていないと証言した。その後、0時になった瞬間にD-4556は細切れに切断された。この瞬間、定点カメラにはD-4556以外の姿は映されていなかった。
メモの文章: 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、死刑に処す。
実験記録3 - 日付199█/04/04
対象: D-4567
実施方法: 23時から呻き声が聞こえ出すまでの間、D-4567をSCP-663-JP内部に留まらせた。D-4567には、呻き声が聞こえたら外部へ脱出するように指示していた。D-4567には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: 実験2の時と同様に、23時50分頃に呻き声のような音がするとD-4567が報告してきた。その直後にD-4567はSCP-663-JP外部への脱出を試み、無事脱出することが出来た。そして0時になっても、外部にいたD-4567が切断されることはなかった。
メモの文章: メモの出現は確認されなかった。
分析: 実験記録2,3を踏まえ、切断の対象となるのは深夜0時から日の出の時刻までの間に特定の行為を行った人物であると推測された。また、Dクラス職員が聞いた呻き声は、ある種の警告の役割をしていると推測された。
実験記録4 - 日付199█/04/05
対象: D-4567
実施方法: 深夜1時にSCP-663-JP内部への侵入を試みた。D-4567には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: D-4567が玄関の扉を開け足を踏み入れた瞬間に、D-4567は細切れに切断された。切断される直前までのD-4567からの報告から、実験記録2,3の時のような呻き声はどこからもしていなかったことが明らかとなっている。
メモの文章: 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、死刑に処す。
分析: 深夜0時から日の出の時刻までの間に侵入を試みた場合は、警告すらなく切断されることが明らかとなった。
実験記録6 - 日付199█/04/08
対象: D-4588
実施方法: 深夜1時にSCP-663-JP内部への侵入を試みた。その際、玄関の扉を開ける前にノックを3回行い、「ごめん下さい」と言うようにD-4588に指示していた。D-4588には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: D-4588が「ごめん下さい」と発言した瞬間に扉がひとりでに開いた。その後D-4588はSCP-663-JP内部へ足を踏み入れたが切断されることはなく、日の出の時刻となるまでの間ずっとSCP-663-JP内部へ留まることが出来た。その間目立った現象は確認されなかった。
メモの文章: メモの出現は確認されなかった。
分析: 深夜0時から日の出の時刻までの間であっても、SCP-663-JPの『許可』を得れば、内部へ入ることができると明らかになった。また、この結果から、深夜0時から日の出の時刻までの間に内部で人間が活動を行った場合のSCP-663-JPの反応が確認できると考えられた。
実験記録7 - 日付199█/04/09
対象: D-4588
実施方法: 実験記録6と同様の方法で深夜1時にSCP-663-JP内部へ進入した後、内部の物を何か持って外部へ出ようとするようにD-4588に指示した。D-4588には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: D-4588は居間のテーブルの上にあったコップを持って外部への脱出を試みた。そして玄関から外部へ出ようとした瞬間、D-4588は細切れに切断された。この際、コップは地面に落ちて粉々に割れたが、翌日の0時に元の状態でテーブルの上に出現した。
メモの文章: 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、死刑に処する。
実験記録8 - 日付199█/04/12
対象: D-4434
実施方法: 実験記録6と同様の方法で深夜1時にSCP-663-JP内部へ進入した後、内部の物を何か持って外部へ出ようとするようにD-4434に指示した。その際、「持ち帰らせていただきます」と言うようにD-4434には指示していた。D-4434には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: 「花瓶を持ち帰らせていただきます」と言った後、D-4434は居間のテーブルの上にあった花瓶を持って外部への脱出を試みた。そして玄関から外部へ出ようとした瞬間、D-4434は細切れに切断された。実験記録7と同様に、花瓶は地面に落ちて粉々に割れたが、翌日の0時に元の状態でテーブルの上に出現した。
メモの文章: 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、死刑に処する。
分析: 「盗みの許可が出るわけがない」あるいは「実験記録6の場合と異なり、SCP-663-JPが許可を出す方法がない」という2つの意見が、研究チーム内で出された。
実験記録9 - 日付199█/04/14
対象: D-3451
実施方法: 実験記録6と同様の方法で深夜1時にSCP-663-JP内部へ進入した後、内部の物を破壊するようにD-3451に指示した。D-3451には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: D-3451は居間のテーブルの上にあった花瓶を床に叩き付け、粉々に割った。その瞬間、D-3451は細切れに切断された。割れた花瓶は翌日の0時に元の状態でテーブルの上に出現した。
メモの文章: 他人の物を損壊し、又は傷害した者は、死刑に処する。
実験記録11 - 日付199█/04/19
対象: D-3918
実施方法: 外部からSCP-663-JPの窓ガラスをバールを用いて破壊するようにD-3918に指示した。D-3918には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。
結果: D-3918が窓ガラスを割った瞬間、D-3918は細切れに切断された。割れた窓ガラスは、花瓶等と異なり翌日の0時になっても復元されなかった。
メモの文章: 人の身体を傷害した者は、死刑に処する。
分析: メモの内容から、SCP-663-JPは自身のことを『人』であると認識している可能性が示唆された。このことを踏まえ、SCP-663-JPとコミュニケーションを取る試みが検討された。
実験記録15 - 日付199█/04/25
対象: SCP-663-JP
実施方法: SCP-663-JP内部のコルクボードに、「あなたは何者か。」と書かれたメモ用紙を貼り付けた。このメモに対する反応で、コミュニケーションを取ることが可能かを確認した。
結果: 翌日の0時になった瞬間にメモは消失した。しかし、その後に目立った現象は確認されなかった。
メモの文章: メモの出現は確認されなかった。
分析: 実験記録15を含めて、こちらの呼びかけに対してSCP-663-JPが反応を示したのは、侵入時に「ごめん下さい」と言った時のみであった。よって、SCP-663-JPとコミュニケーションを取ることは困難であると推測された。